婚約者はこの世界のヒロインで、どうやら僕は悪役で追放される運命らしい

結城芙由奈@コミカライズ連載中

文字の大きさ
83 / 221

第83話 あまりにも意外な話

しおりを挟む
「本当にお夕食を食べて行かれなくて宜しいのですか?」

エントランスの外迄見送りに出てくれたエディットが尋ねてきたので笑顔で返事をした。

「うん、大丈夫だよ。気持ちだけ受け取って置くよ」

あまり長居をして迷惑を掛けたくなかったし、少し気持ちの整理をしたかった。
何よりあのドレスを見てから前世で読んだ『コイカナ』の原作のワンシーンを思い出し、自分の心が不安定になってしまったのが一番の原因だった。


「あの……もしかして体調でも悪いのですか?何だか先ほどから元気が無いようにみえたので」

エディットは心配そうに僕を見つめている。

「まさか、そんなこと無いよ。僕は至って元気だから大丈夫だよ。打撲の怪我も殆ど治っているし」

わざと大げさに身体を動かしてみた。

「そうですか?それなら良かったですが……。あ、あの…ところでアドルフ様。少し、お伺いしたいことがあるのですけど……宜しいでしょうか?」

エディットは何やら遠慮がちに尋ねて来た。

「うん。僕で答えられるならいいよ」

「あの……ブラッドリー様は記念式典に参加するパートナーはもう決まったのでしょうか…?」

「え……?」

エディットの質問は……あまりに意外な内容だった――。



****


エディットの家からの帰り道――。

あの後……エディットから帰りの馬車を出すと言われたのを頑なに断り、屋敷を出たところで運良く辻馬車を拾うことが出来た。

そして今、ガラガラと音をたてて走り続ける馬車の中から日が落ちた外の景色を見つめていた。

「一体……エディットの質問はどういう意味があったのだろう……?」

疑問に思う言葉が思わず口をついて出てしまい、先ほどエディットと交わした会話の内容を思い出していた――。


**


「え?エディットはブラッドリーが誰と記念式典パーティーに行くのか知りたいのかい?」

「は、はい……。そうです……」

俯きながら返事をするエディット。

「う~ん……僕の知る限り、相手はまだ決まっていないはずだけどな……。他の友人たちもまだパートナーが決まっていないみたいだし」

でも何故ブラッドリーのパートナーのことを気にするのだろう?

「エディット、聞いてもいいかな?」
「は、はい!」

エディットの小さな肩がピクリと跳ねる。
その様子も何だか気になった。

「どうしてブラッドリーのパートナーが決まったか知りたいんだい?」

2人の様子からエディットもブラッドリーも互いに顔見知りのようだ。
そもそも馬に蹴られる前のアドルフの記憶が殆んど無い僕にはど2人がどれほど互いのことを知っているのかが分からない。

それに同じ学院で同学年、それにとエディットは婚約者だから僕を通じて2人は知り合いになったのだろう。

だけど、ブラッドリーのパートナーが誰かをエディットが気にかけるなんて……。

「……」

エディットは中々口を開こうとしない。
……ひょっとして、僕は何かマズイことを尋ねているのだろうか?

「エディット?」

再度名を呼ぶと、エディットが顔を上げて僕を見た。

「あ、あの……私の話を聞いて、お気を悪くなさらないで頂けますか?」

その目は真剣だった。

「うん、分かったよ。エディットがそう望むなら……気を悪くしたりはしないよ」

エディットを安心させる為に僕は笑った。

「本当ですか?それでしたら……お話します」

「うん。頼むよ」

少し緊張しながらも頷いた。

「実は…私、1ヶ月程前にブラッドリー様から記念式典パーティーのパートナーにならないかと声を掛けられたのです」

「え……?」

それは、あまりにも意外な話だった――。



****


「はぁ……」

 黄昏色に染まる空の下を走る馬車の中で、思わずため息が漏れてしまった。

「まさか、ブラッドリーがエディットをパートナーに誘っていたなんて……」

あまりにも意外な話すぎて、未だに信じられなかった。

この話を終えると、エディットは必死に僕に訴えてきた。

誘われたのは今から1ヶ月以上前だし、当然ブラッドリーに声を掛けられたその場ですぐに断りを入れたそうだ。
自分には僕と言う婚約者がいるのだから、悪いけれども他の人を当たってくれと。

すると、すぐあっさりとブラッドリーは引き下がったらしいけど……。

「今から1ヶ月以上前の話か……」

ということは僕が馬に蹴られる前の話だな…。だけど何故ブラッドリーはそのことを僕に言わなかったのだろう?

「全く……ただでさえ王子のことで頭を悩ませているのに、このうえブラッドリーまで絡んでくるなんて……」


頭を抱え、一番星を眺めながらため息をついた――。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

子供が可愛いすぎて伯爵様の溺愛に気づきません!

屋月 トム伽
恋愛
私と婚約をすれば、真実の愛に出会える。 そのせいで、私はラッキージンクスの令嬢だと呼ばれていた。そんな噂のせいで、何度も婚約破棄をされた。 そして、9回目の婚約中に、私は夜会で襲われてふしだらな令嬢という二つ名までついてしまった。 ふしだらな令嬢に、もう婚約の申し込みなど来ないだろうと思っていれば、お父様が氷の伯爵様と有名なリクハルド・マクシミリアン伯爵様に婚約を申し込み、邸を売って海外に行ってしまう。 突然の婚約の申し込みに断られるかと思えば、リクハルド様は婚約を受け入れてくれた。婚約初日から、マクシミリアン伯爵邸で住み始めることになるが、彼は未婚のままで子供がいた。 リクハルド様に似ても似つかない子供。 そうして、マクリミリアン伯爵家での生活が幕を開けた。

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません

嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。 人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。 転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。 せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。 少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。

愛のない結婚をした継母に転生したようなので、天使のような息子を溺愛します

美杉日和。(旧美杉。)
恋愛
目が覚めると私は昔読んでいた本の中の登場人物、公爵家の後妻となった元王女ビオラに転生していた。 人嫌いの公爵は、王家によって組まれた前妻もビオラのことも毛嫌いしており、何をするのも全て別。二人の結婚には愛情の欠片もなく、ビオラは使用人たちにすら相手にされぬ生活を送っていた。 それでもめげずにこの家にしがみついていたのは、ビオラが公爵のことが本当に好きだったから。しかしその想いは報われることなどなく彼女は消え、私がこの体に入ってしまったらしい。 嫌われ者のビオラに転生し、この先どうしようかと考えあぐねていると、この物語の主人公であるルカが声をかけてきた。物語の中で悲惨な幼少期を過ごし、闇落ち予定のルカは純粋なまなざしで自分を見ている。天使のような可愛らしさと優しさに、気づけば彼を救って本物の家族になりたいと考える様に。 二人一緒ならばもう孤独ではないと、私はルカとの絆を深めていく。 するといつしか私を取り巻く周りの人々の目も、変わり始めるのだったーー

竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜

四葉美名
恋愛
「危険です! 突然現れたそんな女など処刑して下さい!」 ある日突然、そんな怒号が飛び交う異世界に迷い込んでしまった橘莉子(たちばなりこ)。 竜王が統べるその世界では「迷い人」という、国に恩恵を与える異世界人がいたというが、莉子には全くそんな能力はなく平凡そのもの。 そのうえ莉子が現れたのは、竜王が初めて開いた「婚約者候補」を集めた夜会。しかも口に怪我をした治療として竜王にキスをされてしまい、一気に莉子は竜人女性の目の敵にされてしまう。 それでもひっそりと真面目に生きていこうと気を取り直すが、今度は竜王の子供を産む「運命の花嫁」に選ばれていた。 その「運命の花嫁」とはお腹に「竜王の子供の魂が宿る」というもので、なんと朝起きたらお腹から勝手に子供が話しかけてきた! 『ママ! 早く僕を産んでよ!』 「私に竜王様のお妃様は無理だよ!」 お腹に入ってしまった子供の魂は私をせっつくけど、「運命の花嫁」だとバレないように必死に隠さなきゃ命がない! それでも少しずつ「お腹にいる未来の息子」にほだされ、竜王とも心を通わせていくのだが、次々と嫌がらせや命の危険が襲ってきて――! これはちょっと不遇な育ちの平凡ヒロインが、知らなかった能力を開花させ竜王様に溺愛されるお話。 設定はゆるゆるです。他サイトでも重複投稿しています。

悪女役らしく離婚を迫ろうとしたのに、夫の反応がおかしい

廻り
恋愛
第18回恋愛小説大賞にて奨励賞をいただきました。応援してくださりありがとうございました!  王太子妃シャルロット20歳は、前世の記憶が蘇る。  ここは小説の世界で、シャルロットは王太子とヒロインの恋路を邪魔する『悪女役』。 『断罪される運命』から逃れたいが、夫は離婚に応じる気がない。  ならばと、シャルロットは別居を始める。 『夫が離婚に応じたくなる計画』を思いついたシャルロットは、それを実行することに。  夫がヒロインと出会うまで、タイムリミットは一年。  それまでに離婚に応じさせたいシャルロットと、なぜか様子がおかしい夫の話。

治療係ですが、公爵令息様がものすごく懐いて困る~私、男装しているだけで、女性です!~

百門一新
恋愛
男装姿で旅をしていたエリザは、長期滞在してしまった異国の王都で【赤い魔法使い(男)】と呼ばれることに。職業は完全に誤解なのだが、そのせいで女性恐怖症の公爵令息の治療係に……!?「待って。私、女なんですけども」しかも公爵令息の騎士様、なぜかものすごい懐いてきて…!? 男装の魔法使い(職業誤解)×女性が大の苦手のはずなのに、ロックオンして攻めに転じたらぐいぐいいく騎士様!? ※小説家になろう様、ベリーズカフェ様、カクヨム様にも掲載しています。

【完結済】隣国でひっそりと子育てしている私のことを、執着心むき出しの初恋が追いかけてきます

鳴宮野々花@書籍4作品発売中
恋愛
 一夜の過ちだなんて思いたくない。私にとって彼とのあの夜は、人生で唯一の、最良の思い出なのだから。彼のおかげで、この子に会えた────  私、この子と生きていきますっ!!  シアーズ男爵家の末娘ティナレインは、男爵が隣国出身のメイドに手をつけてできた娘だった。ティナレインは隣国の一部の者が持つ魔力(治癒術)を微力ながら持っており、そのため男爵夫人に一層疎まれ、男爵家後継ぎの兄と、世渡り上手で気の強い姉の下で、影薄く過ごしていた。  幼いティナレインは、優しい侯爵家の子息セシルと親しくなっていくが、息子がティナレインに入れ込みすぎていることを嫌う侯爵夫人は、シアーズ男爵夫人に苦言を呈す。侯爵夫人の機嫌を損ねることが怖い義母から強く叱られ、ティナレインはセシルとの接触を禁止されてしまう。  時を経て、貴族学園で再会する二人。忘れられなかったティナへの想いが燃え上がるセシルは猛アタックするが、ティナは自分の想いを封じ込めるように、セシルを避ける。  やがてティナレインは、とある商会の成金経営者と婚約させられることとなり、学園を中退。想い合いながらも会うことすら叶わなくなった二人だが、ある夜偶然の再会を果たす。  それから数ヶ月。結婚を目前に控えたティナレインは、隣国へと逃げる決意をした。自分のお腹に宿っていることに気付いた、大切な我が子を守るために。  けれど、名を偽り可愛い我が子の子育てをしながら懸命に生きていたティナレインと、彼女を諦めきれないセシルは、ある日運命的な再会を果たし────  生まれ育った屋敷で冷遇され続けた挙げ句、最低な成金ジジイと結婚させられそうになったヒロインが、我が子を守るために全てを捨てて新しい人生を切り拓いていこうと奮闘する物語です。 ※いつもの完全オリジナルファンタジー世界の物語です。全てがファンタジーです。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

処理中です...