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第83話 あまりにも意外な話
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「本当にお夕食を食べて行かれなくて宜しいのですか?」
エントランスの外迄見送りに出てくれたエディットが尋ねてきたので笑顔で返事をした。
「うん、大丈夫だよ。気持ちだけ受け取って置くよ」
あまり長居をして迷惑を掛けたくなかったし、少し気持ちの整理をしたかった。
何よりあのドレスを見てから前世で読んだ『コイカナ』の原作のワンシーンを思い出し、自分の心が不安定になってしまったのが一番の原因だった。
「あの……もしかして体調でも悪いのですか?何だか先ほどから元気が無いようにみえたので」
エディットは心配そうに僕を見つめている。
「まさか、そんなこと無いよ。僕は至って元気だから大丈夫だよ。打撲の怪我も殆ど治っているし」
わざと大げさに身体を動かしてみた。
「そうですか?それなら良かったですが……。あ、あの…ところでアドルフ様。少し、お伺いしたいことがあるのですけど……宜しいでしょうか?」
エディットは何やら遠慮がちに尋ねて来た。
「うん。僕で答えられるならいいよ」
「あの……ブラッドリー様は記念式典に参加するパートナーはもう決まったのでしょうか…?」
「え……?」
エディットの質問は……あまりに意外な内容だった――。
****
エディットの家からの帰り道――。
あの後……エディットから帰りの馬車を出すと言われたのを頑なに断り、屋敷を出たところで運良く辻馬車を拾うことが出来た。
そして今、ガラガラと音をたてて走り続ける馬車の中から日が落ちた外の景色を見つめていた。
「一体……エディットの質問はどういう意味があったのだろう……?」
疑問に思う言葉が思わず口をついて出てしまい、先ほどエディットと交わした会話の内容を思い出していた――。
**
「え?エディットはブラッドリーが誰と記念式典パーティーに行くのか知りたいのかい?」
「は、はい……。そうです……」
俯きながら返事をするエディット。
「う~ん……僕の知る限り、相手はまだ決まっていないはずだけどな……。他の友人たちもまだパートナーが決まっていないみたいだし」
でも何故ブラッドリーのパートナーのことを気にするのだろう?
「エディット、聞いてもいいかな?」
「は、はい!」
エディットの小さな肩がピクリと跳ねる。
その様子も何だか気になった。
「どうしてブラッドリーのパートナーが決まったか知りたいんだい?」
2人の様子からエディットもブラッドリーも互いに顔見知りのようだ。
そもそも馬に蹴られる前のアドルフの記憶が殆んど無い僕にはど2人がどれほど互いのことを知っているのかが分からない。
それに同じ学院で同学年、それにとエディットは婚約者だから僕を通じて2人は知り合いになったのだろう。
だけど、ブラッドリーのパートナーが誰かをエディットが気にかけるなんて……。
「……」
エディットは中々口を開こうとしない。
……ひょっとして、僕は何かマズイことを尋ねているのだろうか?
「エディット?」
再度名を呼ぶと、エディットが顔を上げて僕を見た。
「あ、あの……私の話を聞いて、お気を悪くなさらないで頂けますか?」
その目は真剣だった。
「うん、分かったよ。エディットがそう望むなら……気を悪くしたりはしないよ」
エディットを安心させる為に僕は笑った。
「本当ですか?それでしたら……お話します」
「うん。頼むよ」
少し緊張しながらも頷いた。
「実は…私、1ヶ月程前にブラッドリー様から記念式典パーティーのパートナーにならないかと声を掛けられたのです」
「え……?」
それは、あまりにも意外な話だった――。
****
「はぁ……」
黄昏色に染まる空の下を走る馬車の中で、思わずため息が漏れてしまった。
「まさか、ブラッドリーがエディットをパートナーに誘っていたなんて……」
あまりにも意外な話すぎて、未だに信じられなかった。
この話を終えると、エディットは必死に僕に訴えてきた。
誘われたのは今から1ヶ月以上前だし、当然ブラッドリーに声を掛けられたその場ですぐに断りを入れたそうだ。
自分には僕と言う婚約者がいるのだから、悪いけれども他の人を当たってくれと。
すると、すぐあっさりとブラッドリーは引き下がったらしいけど……。
「今から1ヶ月以上前の話か……」
ということは僕が馬に蹴られる前の話だな…。だけど何故ブラッドリーはそのことを僕に言わなかったのだろう?
「全く……ただでさえ王子のことで頭を悩ませているのに、このうえブラッドリーまで絡んでくるなんて……」
頭を抱え、一番星を眺めながらため息をついた――。
エントランスの外迄見送りに出てくれたエディットが尋ねてきたので笑顔で返事をした。
「うん、大丈夫だよ。気持ちだけ受け取って置くよ」
あまり長居をして迷惑を掛けたくなかったし、少し気持ちの整理をしたかった。
何よりあのドレスを見てから前世で読んだ『コイカナ』の原作のワンシーンを思い出し、自分の心が不安定になってしまったのが一番の原因だった。
「あの……もしかして体調でも悪いのですか?何だか先ほどから元気が無いようにみえたので」
エディットは心配そうに僕を見つめている。
「まさか、そんなこと無いよ。僕は至って元気だから大丈夫だよ。打撲の怪我も殆ど治っているし」
わざと大げさに身体を動かしてみた。
「そうですか?それなら良かったですが……。あ、あの…ところでアドルフ様。少し、お伺いしたいことがあるのですけど……宜しいでしょうか?」
エディットは何やら遠慮がちに尋ねて来た。
「うん。僕で答えられるならいいよ」
「あの……ブラッドリー様は記念式典に参加するパートナーはもう決まったのでしょうか…?」
「え……?」
エディットの質問は……あまりに意外な内容だった――。
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エディットの家からの帰り道――。
あの後……エディットから帰りの馬車を出すと言われたのを頑なに断り、屋敷を出たところで運良く辻馬車を拾うことが出来た。
そして今、ガラガラと音をたてて走り続ける馬車の中から日が落ちた外の景色を見つめていた。
「一体……エディットの質問はどういう意味があったのだろう……?」
疑問に思う言葉が思わず口をついて出てしまい、先ほどエディットと交わした会話の内容を思い出していた――。
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「え?エディットはブラッドリーが誰と記念式典パーティーに行くのか知りたいのかい?」
「は、はい……。そうです……」
俯きながら返事をするエディット。
「う~ん……僕の知る限り、相手はまだ決まっていないはずだけどな……。他の友人たちもまだパートナーが決まっていないみたいだし」
でも何故ブラッドリーのパートナーのことを気にするのだろう?
「エディット、聞いてもいいかな?」
「は、はい!」
エディットの小さな肩がピクリと跳ねる。
その様子も何だか気になった。
「どうしてブラッドリーのパートナーが決まったか知りたいんだい?」
2人の様子からエディットもブラッドリーも互いに顔見知りのようだ。
そもそも馬に蹴られる前のアドルフの記憶が殆んど無い僕にはど2人がどれほど互いのことを知っているのかが分からない。
それに同じ学院で同学年、それにとエディットは婚約者だから僕を通じて2人は知り合いになったのだろう。
だけど、ブラッドリーのパートナーが誰かをエディットが気にかけるなんて……。
「……」
エディットは中々口を開こうとしない。
……ひょっとして、僕は何かマズイことを尋ねているのだろうか?
「エディット?」
再度名を呼ぶと、エディットが顔を上げて僕を見た。
「あ、あの……私の話を聞いて、お気を悪くなさらないで頂けますか?」
その目は真剣だった。
「うん、分かったよ。エディットがそう望むなら……気を悪くしたりはしないよ」
エディットを安心させる為に僕は笑った。
「本当ですか?それでしたら……お話します」
「うん。頼むよ」
少し緊張しながらも頷いた。
「実は…私、1ヶ月程前にブラッドリー様から記念式典パーティーのパートナーにならないかと声を掛けられたのです」
「え……?」
それは、あまりにも意外な話だった――。
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「はぁ……」
黄昏色に染まる空の下を走る馬車の中で、思わずため息が漏れてしまった。
「まさか、ブラッドリーがエディットをパートナーに誘っていたなんて……」
あまりにも意外な話すぎて、未だに信じられなかった。
この話を終えると、エディットは必死に僕に訴えてきた。
誘われたのは今から1ヶ月以上前だし、当然ブラッドリーに声を掛けられたその場ですぐに断りを入れたそうだ。
自分には僕と言う婚約者がいるのだから、悪いけれども他の人を当たってくれと。
すると、すぐあっさりとブラッドリーは引き下がったらしいけど……。
「今から1ヶ月以上前の話か……」
ということは僕が馬に蹴られる前の話だな…。だけど何故ブラッドリーはそのことを僕に言わなかったのだろう?
「全く……ただでさえ王子のことで頭を悩ませているのに、このうえブラッドリーまで絡んでくるなんて……」
頭を抱え、一番星を眺めながらため息をついた――。
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