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第84話 悪役令息と悪友
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翌朝――
王子とブラッドリーの件で頭を悩ませていたせいか、昨夜は中々寝付くことが出来ずに、今朝は不眠症気味だった。
「フワァ……」
家族揃っての朝食の席で、思わず大欠伸が出てしまった。
「どうしたのだ?アドルフ。そのように大欠伸をして」
食事の手を止めて父が尋ねてきた。
「また遅くまで勉強していたのかしら?最近は本当によく勉強するようになったものね」
母が紅茶を飲みながら僕を見る。
「アハハハ……まぁそうですね」
コーヒーを飲みながら返事をする。
「それで?今日の予定はどうなっているのだ?エディットと会うのだろう?」
「そうよね?2人は最近本当に仲が良いから、私達も安心だわ」
父と母がニコニコと笑いながら尋ねてきた。
「いえ、今日はブラッドリーと出掛けてきます」
すると、途端に2人の顔が曇る。
「ブラッドリー君か……」
「また彼と一緒なのね?」
「え?あ……はい」
ひょっとして両親はブラッドリーのことをあまり良く思っていないのだろか?
「まぁ友人関係にどうこう口を挟む年齢でも無いしな……」
「ええ、そうね」
どうも2人の反応があまり良くないものの、理由を追求する気にもなれなかった。
正直に言えばブラッドリーは授業態度も悪いし、成績も振るわない。
きっと両親はそこが気に入らないのだろう。
けれど、アドルフにとってブラッドリーは親友だ。
あまり彼の話を両親の前ですれば、友人関係をやめるように言われるかもしれない。
ここは早々に退散したほうが良さそうだ。
「ごちそうさまでした」
席を立つと、2人が声を掛けてきた。
「何だ、もういいのか?」
「まだ食事が残っているわよ?」
「ええ、もう今朝は大丈夫です。あまり食欲も無いので……それでは失礼します」
頭を下げると、逃げるようにダイニングルームを後にした――。
****
午前10時――
上下の茶色のカジュアルなジャケットスーツにトレンチコートを羽織った姿で、正面玄関の前に立ってブラッドリーがやって来るのを待っていた。
やがて正面の正門をくぐり抜け、1台の馬車がこちらへ向かって走ってきた。
恐らくあの馬車にブラッドリーが乗っているに違いない。
案の定、馬車は僕の前で止まると窓が開いてブラッドリーが顔をのぞかせてきた。
「よぉ!おはよう、アドルフッ!」
笑顔で僕に挨拶してくるブラッドリーはいつもの彼と変わらなかった――。
****
「待たせたな。もしかして大分待ったか?」
馬車に乗り込んだ僕に早速ブラッドリーは声を掛けてきた。
「そんな事はないよ。せいぜい5分くらいしか待っていない」
「ふ~ん。そうか」
今日のブラッドリーはタータンチェックの上下揃いのスーツを来ていた。襟にはご丁寧にも蝶ネクタイを結んでいる。
「……随分気合の入った格好しているね?」
「当然だろう?今日は記念式典パーティーに来ていくスーツを選ぶんだからな。ちゃんと俺に付き合えよ?」
「あ、それなんだけどね。僕も今日式典に来ていくスーツを買うことにしたから」
「え?お前も買うのか?何でだよ?家にあるスーツを着ていくって言っていたのに?」
するとブラッドリーが身を乗り出してきた。
え?アドルフはそんなことを言っていたのか?
だけど……。
「当然だよ、何と言っても衣装を揃えて……」
そこまで言いかけて、僕は口を閉ざした。
ブラッドリーは1ヶ月前にエディットにパートナーの申込みをし…断られている。
何故エディットに申込みをしたのか尋ねたかったけれども、ブラッドリーに悪い気がしたので知らんふりをしようと思っていた。
けれどエディットと衣装を揃える話をするなら、ブラッドリーに尋ねるチャンスかも知れない。
「何だよ?言いかけて途中でやめるなよな」
ブラッドリーは手足を組むと、唇を尖らせた。
「分かった……言うよ。実はエディットのドレスと色を揃えたスーツを買おうと思ったからだよ」
覚悟を決めてブラッドリーに白状した。
「あぁ、そうか。なるほどな。パートナーで参加する場合は大抵、お互いの衣装に合わせるからな。それでエディットは何色のドレスだったんだ?」
ブラッドリーがエディットのドレスのことを尋ねてきた。
「薄い……水色のドレスだよ」
彼の反応を確認しながら、ゆっくりと答えた。
「水色か……。それなお前も水色のスーツを買うんだな?」
「う、うん。そういうことに…なるかな?」
「そうか、なら俺がお前に合いそうなスーツを探してやるよ」
ブラッドリーの反応はいつもの彼と変わりなかった。
よし……。なら、ブラッドリーに尋ねよう。
「ブラッドリー」
「何だ?」
「ちょっと、聞きたいことがあるんだけど…いいかな?」
「聞きたいこと?俺に?一体何だよ」
「うん。エディットに聞いたんだけど……以前、ブラッドリーはエディットに記念式典のパートナーの申込みをしたんだって?」
僕は意を決して、ブラッドリーに質問した――。
王子とブラッドリーの件で頭を悩ませていたせいか、昨夜は中々寝付くことが出来ずに、今朝は不眠症気味だった。
「フワァ……」
家族揃っての朝食の席で、思わず大欠伸が出てしまった。
「どうしたのだ?アドルフ。そのように大欠伸をして」
食事の手を止めて父が尋ねてきた。
「また遅くまで勉強していたのかしら?最近は本当によく勉強するようになったものね」
母が紅茶を飲みながら僕を見る。
「アハハハ……まぁそうですね」
コーヒーを飲みながら返事をする。
「それで?今日の予定はどうなっているのだ?エディットと会うのだろう?」
「そうよね?2人は最近本当に仲が良いから、私達も安心だわ」
父と母がニコニコと笑いながら尋ねてきた。
「いえ、今日はブラッドリーと出掛けてきます」
すると、途端に2人の顔が曇る。
「ブラッドリー君か……」
「また彼と一緒なのね?」
「え?あ……はい」
ひょっとして両親はブラッドリーのことをあまり良く思っていないのだろか?
「まぁ友人関係にどうこう口を挟む年齢でも無いしな……」
「ええ、そうね」
どうも2人の反応があまり良くないものの、理由を追求する気にもなれなかった。
正直に言えばブラッドリーは授業態度も悪いし、成績も振るわない。
きっと両親はそこが気に入らないのだろう。
けれど、アドルフにとってブラッドリーは親友だ。
あまり彼の話を両親の前ですれば、友人関係をやめるように言われるかもしれない。
ここは早々に退散したほうが良さそうだ。
「ごちそうさまでした」
席を立つと、2人が声を掛けてきた。
「何だ、もういいのか?」
「まだ食事が残っているわよ?」
「ええ、もう今朝は大丈夫です。あまり食欲も無いので……それでは失礼します」
頭を下げると、逃げるようにダイニングルームを後にした――。
****
午前10時――
上下の茶色のカジュアルなジャケットスーツにトレンチコートを羽織った姿で、正面玄関の前に立ってブラッドリーがやって来るのを待っていた。
やがて正面の正門をくぐり抜け、1台の馬車がこちらへ向かって走ってきた。
恐らくあの馬車にブラッドリーが乗っているに違いない。
案の定、馬車は僕の前で止まると窓が開いてブラッドリーが顔をのぞかせてきた。
「よぉ!おはよう、アドルフッ!」
笑顔で僕に挨拶してくるブラッドリーはいつもの彼と変わらなかった――。
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「待たせたな。もしかして大分待ったか?」
馬車に乗り込んだ僕に早速ブラッドリーは声を掛けてきた。
「そんな事はないよ。せいぜい5分くらいしか待っていない」
「ふ~ん。そうか」
今日のブラッドリーはタータンチェックの上下揃いのスーツを来ていた。襟にはご丁寧にも蝶ネクタイを結んでいる。
「……随分気合の入った格好しているね?」
「当然だろう?今日は記念式典パーティーに来ていくスーツを選ぶんだからな。ちゃんと俺に付き合えよ?」
「あ、それなんだけどね。僕も今日式典に来ていくスーツを買うことにしたから」
「え?お前も買うのか?何でだよ?家にあるスーツを着ていくって言っていたのに?」
するとブラッドリーが身を乗り出してきた。
え?アドルフはそんなことを言っていたのか?
だけど……。
「当然だよ、何と言っても衣装を揃えて……」
そこまで言いかけて、僕は口を閉ざした。
ブラッドリーは1ヶ月前にエディットにパートナーの申込みをし…断られている。
何故エディットに申込みをしたのか尋ねたかったけれども、ブラッドリーに悪い気がしたので知らんふりをしようと思っていた。
けれどエディットと衣装を揃える話をするなら、ブラッドリーに尋ねるチャンスかも知れない。
「何だよ?言いかけて途中でやめるなよな」
ブラッドリーは手足を組むと、唇を尖らせた。
「分かった……言うよ。実はエディットのドレスと色を揃えたスーツを買おうと思ったからだよ」
覚悟を決めてブラッドリーに白状した。
「あぁ、そうか。なるほどな。パートナーで参加する場合は大抵、お互いの衣装に合わせるからな。それでエディットは何色のドレスだったんだ?」
ブラッドリーがエディットのドレスのことを尋ねてきた。
「薄い……水色のドレスだよ」
彼の反応を確認しながら、ゆっくりと答えた。
「水色か……。それなお前も水色のスーツを買うんだな?」
「う、うん。そういうことに…なるかな?」
「そうか、なら俺がお前に合いそうなスーツを探してやるよ」
ブラッドリーの反応はいつもの彼と変わりなかった。
よし……。なら、ブラッドリーに尋ねよう。
「ブラッドリー」
「何だ?」
「ちょっと、聞きたいことがあるんだけど…いいかな?」
「聞きたいこと?俺に?一体何だよ」
「うん。エディットに聞いたんだけど……以前、ブラッドリーはエディットに記念式典のパートナーの申込みをしたんだって?」
僕は意を決して、ブラッドリーに質問した――。
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