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第90話 気がかりな言葉
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「ごめん、2人共。大分待ったかな?」
丸テーブル席に座りながら、僕はエディットとサチを交互に見ながら声を掛けた。
「大丈夫ですよ。3人で色々お話をしながらお茶を飲んでいましたから」
「ええ、そうですよね~」
右隣に座っているエディットとサチが互いに笑いながら頷き合っている。
「何だか2人は随分仲が良くなったようだね?」
セドリックが意味深な笑みを浮かべて、サチを見た。
「え?え、ええ……まぁそうですね」
曖昧に返事をするサチ。
サチは僕とセドリックの間に何か変化があったことに気付いているように見えた。
「ああ、この2人。もう親友同士になったみたいだぞ?」
ブラッドリーが話に混ざってきた。
「そう言えば、アリスはもうドレスは選べたのかな?」
セドリックがサチに尋ねる。
「はい、エディットさんはとてもセンスがいいんですよ。12月初めにはドレスが仕立て上がるそうです」
「そうか……ならもう帰れるよね?」
「「「「え?!」」」」
セドリックの言葉に僕達全員の声がハモる。
「お前……たった今店に入ったばかりなのにすぐに帰るつもりなのか?何も頼まずに?」
ブラッドリーが呆れた様子でセドリックに声を掛けた。
「うん、ちょっと大事な用があるからね。それじゃ行こうか?アリス」
顔は笑顔だけれども、どこか有無を言わさない迫力があった。
ははぁん……きっとセドリックはサチに追求するつもりなんだ。
自分たちが日本人としての記憶を持っているのに、しかも僕はサチの兄であるのに、何故そのことを黙っていたのかと。
けれど、それは僕も知りたい事だった。
だったら……。
「そうだね。大事な用があるなら2人はもう帰った方がいいかもね」
「え?!」
僕の言葉に驚いた様子で振り向くサチ。その顔にはありあリと書いてあった。
(お兄ちゃんの裏切り者~!!)
と……。
よし、近い内にセドリックにサチからどんな話を聞かされたか尋ねてみよう――。
**
結局、あの後サチは半ば強引にセドリックによって店から連れ出されてしまった。
そして喫茶店には僕とエディット、そしてブラッドリーが残された。
「よし、それじゃ俺も帰るかな」
ブラッドリーは2人が店を出るとすぐに立ち上がった。
「え?ブラッドリー?」
「ブラッドリー様?」
突然帰ると言い出したブラッドリーに僕とエディットは驚いた。
「何で帰るんだい?これから一緒にお昼食べるんじゃなかったっけ?」
声を掛けると、ブラッドリーは肩をすくめた。
「何言ってるんだよ?今から2人はデートするんだろう?恋人同士の仲を邪魔するほど、俺は無粋な男じゃないからな」
「こ、恋人って……」
告白だってしていないのに、僕達はまだそんな関係じゃ……。
そう言おうとしてエディットの顔を見ると、何と真っ赤になって俯いている。
「……」
そんな顔をされたらブラッドリーには何も言えなくなってしまう。
ブラッドリーもエディットの様子に気付いたのか、フッと笑った。
「それじゃあな、お2人さん」
ブラッドリーは椅子に掛けておいた上着を羽織ると、僕達を振り返ること無く手を振ると店を出ていってしまった。
「ブラッドリー……」
今日はブラッドリーと約束していたのに、途中で追い返すような形にしてしまったな……。
するとエディットも同じことを考えていたのか、去っていくブラッドリーの背中を見つめながらポツリと言った。
「何だか……ブラッドリー様に悪いことをしてしまった気がします。折角久しぶりに3人で顔を揃えられたのに……」
「え?」
久しぶりに3人で……?
妙にその言葉が脳裏に引っかかった。つまり、以前はよく3人で会っていたということだろうか?
けれど、僕にはそんな記憶は無い。
「エディット、今の話は……」
「はい、何でしょう?」
大きな瞳で僕をじっと見つめるエディット。
それを目にした途端に尋ねる気が失せてしまった……と言うか、知らなほうが良いと思う気持ちが上回っていた。
「う、ううん。何でも無いよ」
「そうですか?ところでアドルフ様は何も注文されないのですか?」
エディットがメニュー表を差し出しながら尋ねてきた。
「それじゃ何か飲み物でも頼もうかな。丁度喉が乾いていたんだよ。へ~色々な飲み物が揃っているね。どれにしようかな……」
僕は努めて明るく振舞い……胸の内に込み上げてくる、訳の分からない不安な気持ちをごまかした――。
丸テーブル席に座りながら、僕はエディットとサチを交互に見ながら声を掛けた。
「大丈夫ですよ。3人で色々お話をしながらお茶を飲んでいましたから」
「ええ、そうですよね~」
右隣に座っているエディットとサチが互いに笑いながら頷き合っている。
「何だか2人は随分仲が良くなったようだね?」
セドリックが意味深な笑みを浮かべて、サチを見た。
「え?え、ええ……まぁそうですね」
曖昧に返事をするサチ。
サチは僕とセドリックの間に何か変化があったことに気付いているように見えた。
「ああ、この2人。もう親友同士になったみたいだぞ?」
ブラッドリーが話に混ざってきた。
「そう言えば、アリスはもうドレスは選べたのかな?」
セドリックがサチに尋ねる。
「はい、エディットさんはとてもセンスがいいんですよ。12月初めにはドレスが仕立て上がるそうです」
「そうか……ならもう帰れるよね?」
「「「「え?!」」」」
セドリックの言葉に僕達全員の声がハモる。
「お前……たった今店に入ったばかりなのにすぐに帰るつもりなのか?何も頼まずに?」
ブラッドリーが呆れた様子でセドリックに声を掛けた。
「うん、ちょっと大事な用があるからね。それじゃ行こうか?アリス」
顔は笑顔だけれども、どこか有無を言わさない迫力があった。
ははぁん……きっとセドリックはサチに追求するつもりなんだ。
自分たちが日本人としての記憶を持っているのに、しかも僕はサチの兄であるのに、何故そのことを黙っていたのかと。
けれど、それは僕も知りたい事だった。
だったら……。
「そうだね。大事な用があるなら2人はもう帰った方がいいかもね」
「え?!」
僕の言葉に驚いた様子で振り向くサチ。その顔にはありあリと書いてあった。
(お兄ちゃんの裏切り者~!!)
と……。
よし、近い内にセドリックにサチからどんな話を聞かされたか尋ねてみよう――。
**
結局、あの後サチは半ば強引にセドリックによって店から連れ出されてしまった。
そして喫茶店には僕とエディット、そしてブラッドリーが残された。
「よし、それじゃ俺も帰るかな」
ブラッドリーは2人が店を出るとすぐに立ち上がった。
「え?ブラッドリー?」
「ブラッドリー様?」
突然帰ると言い出したブラッドリーに僕とエディットは驚いた。
「何で帰るんだい?これから一緒にお昼食べるんじゃなかったっけ?」
声を掛けると、ブラッドリーは肩をすくめた。
「何言ってるんだよ?今から2人はデートするんだろう?恋人同士の仲を邪魔するほど、俺は無粋な男じゃないからな」
「こ、恋人って……」
告白だってしていないのに、僕達はまだそんな関係じゃ……。
そう言おうとしてエディットの顔を見ると、何と真っ赤になって俯いている。
「……」
そんな顔をされたらブラッドリーには何も言えなくなってしまう。
ブラッドリーもエディットの様子に気付いたのか、フッと笑った。
「それじゃあな、お2人さん」
ブラッドリーは椅子に掛けておいた上着を羽織ると、僕達を振り返ること無く手を振ると店を出ていってしまった。
「ブラッドリー……」
今日はブラッドリーと約束していたのに、途中で追い返すような形にしてしまったな……。
するとエディットも同じことを考えていたのか、去っていくブラッドリーの背中を見つめながらポツリと言った。
「何だか……ブラッドリー様に悪いことをしてしまった気がします。折角久しぶりに3人で顔を揃えられたのに……」
「え?」
久しぶりに3人で……?
妙にその言葉が脳裏に引っかかった。つまり、以前はよく3人で会っていたということだろうか?
けれど、僕にはそんな記憶は無い。
「エディット、今の話は……」
「はい、何でしょう?」
大きな瞳で僕をじっと見つめるエディット。
それを目にした途端に尋ねる気が失せてしまった……と言うか、知らなほうが良いと思う気持ちが上回っていた。
「う、ううん。何でも無いよ」
「そうですか?ところでアドルフ様は何も注文されないのですか?」
エディットがメニュー表を差し出しながら尋ねてきた。
「それじゃ何か飲み物でも頼もうかな。丁度喉が乾いていたんだよ。へ~色々な飲み物が揃っているね。どれにしようかな……」
僕は努めて明るく振舞い……胸の内に込み上げてくる、訳の分からない不安な気持ちをごまかした――。
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