45 / 204
第43話 フィリップの不在
しおりを挟む
馬車で片道2時間かけてアンバー家へ到着した。
扉を開けて屋敷に入ると慌てた様子でチャールズさんがエントランスへとやってきた。
「あ、エルザ様…お帰りになったのですね?てっきり本日も御実家に泊まられるのかとばかり思っておりました」
「え…?」
もしかして…本当は帰って来ないほうが良かったのだろうか?
「もしかして…もう2、3日滞在していた方が良かったですか?」
何とか平静を装う為に髪をなでつけながらチャールズさんを見た。
「い、いえ。決してその様な意味で申し上げたのではございません。申し訳ございません。今のは私の言い方がいけませんでした」
慌てたように頭を下げてくるチャールズさん。ついうっかり、私は余計な事を口にしてしまった。
「ごめんなさい。そんなつもりで言ったのではないんです。今のは…私の言い方が悪かったですね」
「いいえ、私の方こそ勘違いさせてしまう言い方をしてしまい、大変失礼致しました。お疲れではありませんか?お部屋で夕食までお休みになられてはいかがですか?」
「ええ。そうね…。でもその前にフィリップに会いたいのだけど…今は仕事中よね?書斎に行けば会えますか?」
すると途端にチャールズさんの顔が曇った。
「あの…フィリップ様はただいま…御不在なのです」
「まぁ、そうなの?それでは本館にいるのですか?」
「いえ、本館にも…いらっしゃいません」
「え…?そうなの…?それでは一体何処へ?」
「そ、それは…申し訳ございません。私も…どちらへ行かれたかは存じ上げないのです…」
チャールズさんは伏し目がちに返事をした。その反応で私は分かってしまった。本当はフィリップの居場所を知っているのに…恐らく口止めされているのだろうと。けれど、親切にしてくれるチャールズさんを問い詰めて困らせたくはなかった。
「そう、でも夕食時には戻ってきますよね?」
いくら何でも夕食の時間には会えるだろう。しかし、意外な言葉がチャールズさんから出た。
「申し訳ございません。それも私には答えかねるのです…」
チャールズさんの顔は苦しげだった。
え…?ど、どうして…?まさか、フィリップは今夜は離れに戻って来ないという事なのだろうか?
心臓がドクンドクンと早鐘を打ち始めた。
何故…?何故ここまでして私は蚊帳の外に置かれてしまうのだろう?私は一体何の為にここにいるのだろう…?
ズキン
頭が突然痛くなってきた。子供の頃から偏頭痛持ちだった私は過度のストレスがかかると頭痛を起こしていた。その兆候が現れてしまった。
「う…」
思わず額を押さえると、チャールズさんが慌てた様子で声を掛けてきた。
「エルザ様?どうされたのですか?顔色が悪いようですが?」
「い、いえ…大丈夫です。それでは私、部屋に戻りますね」
頭が割れそうに痛い…。ベッドに横になって休んでいよう。
「お部屋までご一緒致します」
「いいえ、大丈夫です。1人で戻れますから」
「さようでございますか…?」
尚も心配そうな顔で私を見つめるチャールズさんに言った。
「夕食まで休むことにしますね」
それだけ告げると、チャールズさんは頭を下げた。
「承知致しました」
私も会釈を返すと、ズキズキと痛む頭を抑えながら1人自室へ足を向けた―。
扉を開けて屋敷に入ると慌てた様子でチャールズさんがエントランスへとやってきた。
「あ、エルザ様…お帰りになったのですね?てっきり本日も御実家に泊まられるのかとばかり思っておりました」
「え…?」
もしかして…本当は帰って来ないほうが良かったのだろうか?
「もしかして…もう2、3日滞在していた方が良かったですか?」
何とか平静を装う為に髪をなでつけながらチャールズさんを見た。
「い、いえ。決してその様な意味で申し上げたのではございません。申し訳ございません。今のは私の言い方がいけませんでした」
慌てたように頭を下げてくるチャールズさん。ついうっかり、私は余計な事を口にしてしまった。
「ごめんなさい。そんなつもりで言ったのではないんです。今のは…私の言い方が悪かったですね」
「いいえ、私の方こそ勘違いさせてしまう言い方をしてしまい、大変失礼致しました。お疲れではありませんか?お部屋で夕食までお休みになられてはいかがですか?」
「ええ。そうね…。でもその前にフィリップに会いたいのだけど…今は仕事中よね?書斎に行けば会えますか?」
すると途端にチャールズさんの顔が曇った。
「あの…フィリップ様はただいま…御不在なのです」
「まぁ、そうなの?それでは本館にいるのですか?」
「いえ、本館にも…いらっしゃいません」
「え…?そうなの…?それでは一体何処へ?」
「そ、それは…申し訳ございません。私も…どちらへ行かれたかは存じ上げないのです…」
チャールズさんは伏し目がちに返事をした。その反応で私は分かってしまった。本当はフィリップの居場所を知っているのに…恐らく口止めされているのだろうと。けれど、親切にしてくれるチャールズさんを問い詰めて困らせたくはなかった。
「そう、でも夕食時には戻ってきますよね?」
いくら何でも夕食の時間には会えるだろう。しかし、意外な言葉がチャールズさんから出た。
「申し訳ございません。それも私には答えかねるのです…」
チャールズさんの顔は苦しげだった。
え…?ど、どうして…?まさか、フィリップは今夜は離れに戻って来ないという事なのだろうか?
心臓がドクンドクンと早鐘を打ち始めた。
何故…?何故ここまでして私は蚊帳の外に置かれてしまうのだろう?私は一体何の為にここにいるのだろう…?
ズキン
頭が突然痛くなってきた。子供の頃から偏頭痛持ちだった私は過度のストレスがかかると頭痛を起こしていた。その兆候が現れてしまった。
「う…」
思わず額を押さえると、チャールズさんが慌てた様子で声を掛けてきた。
「エルザ様?どうされたのですか?顔色が悪いようですが?」
「い、いえ…大丈夫です。それでは私、部屋に戻りますね」
頭が割れそうに痛い…。ベッドに横になって休んでいよう。
「お部屋までご一緒致します」
「いいえ、大丈夫です。1人で戻れますから」
「さようでございますか…?」
尚も心配そうな顔で私を見つめるチャールズさんに言った。
「夕食まで休むことにしますね」
それだけ告げると、チャールズさんは頭を下げた。
「承知致しました」
私も会釈を返すと、ズキズキと痛む頭を抑えながら1人自室へ足を向けた―。
186
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi(がっち)
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
元侯爵令嬢は冷遇を満喫する
cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。
しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は
「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」
夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。
自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。
お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。
本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。
※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
本日、私は大切な人達を2人同時に失います
<子供の頃から大好きだった幼馴染が恋する女性は私の5歳年上の姉でした。>
両親を亡くし、私を養ってくれた大切な姉に幸せになって貰いたい・・・そう願っていたのに姉は結婚を約束していた彼を事故で失ってしまった。悲しみに打ちひしがれる姉に寄り添う私の大好きな幼馴染。彼は決して私に振り向いてくれる事は無い。だから私は彼と姉が結ばれる事を願い、ついに2人は恋人同士になり、本日姉と幼馴染は結婚する。そしてそれは私が大切な2人を同時に失う日でもあった―。
※ 本編完結済。他視点での話、継続中。
※ 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています
※ 河口直人偏から少し大人向けの内容になります
タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒―
私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。
「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」
その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。
※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています
探さないでください。旦那様は私がお嫌いでしょう?
雪塚 ゆず
恋愛
結婚してから早一年。
最強の魔術師と呼ばれる旦那様と結婚しましたが、まったく私を愛してくれません。
ある日、女性とのやりとりであろう手紙まで見つけてしまいました。
もう限界です。
探さないでください、と書いて、私は家を飛び出しました。
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ
あなたの愛が正しいわ
来須みかん
恋愛
旧題:あなたの愛が正しいわ~夫が私の悪口を言っていたので理想の妻になってあげたのに、どうしてそんな顔をするの?~
夫と一緒に訪れた夜会で、夫が男友達に私の悪口を言っているのを聞いてしまった。そのことをきっかけに、私は夫の理想の妻になることを決める。それまで夫を心の底から愛して尽くしていたけど、それがうっとうしかったそうだ。夫に付きまとうのをやめた私は、生まれ変わったように清々しい気分になっていた。
一方、夫は妻の変化に戸惑い、誤解があったことに気がつき、自分の今までの酷い態度を謝ったが、妻は美しい笑みを浮かべてこういった。
「いいえ、間違っていたのは私のほう。あなたの愛が正しいわ」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる