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第73話 扉の外で揉める声
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チャールズさんが部屋から去って行った後、1人きりになった私は紅茶を飲みながら先程の話を思い出していた。
フィリップは私の顔を見たいが為に、体調が悪い所を無理に退院して帰ってきた…。
「こんなに素敵な部屋も用意してくれて、食事だって私の好きなメニューを出してくれているのに…私はフィリップの為に何もしてあげられていないわ…」
自分の不甲斐なさにため息をついた時、廊下で騒ぎが聞こえてきた。
『お待ち下さい、奥様っ!今エルザ様は…』
『いいからそこをどきなさいっ!アンバー家に嫁いでおいて一度も挨拶に来ないなら、こちらから顔を出すしか無いでしょう?!』
廊下から聞こえてくる声はフットマンのデイブとお義母様の声だ。いつまでたっても挨拶に行かない私に痺れを切らし、ここまで尋ねて来たのだろう。
フィリップが今迄私をお義父様やお義母様から守ってくれていた。
自分の体調が悪いにも関わらず…。
だったら私は…。
椅子から立ち上がると扉へ向かった。
「奥様!こちらのお部屋は…!」
「離しなさいっ!使用人のくせにっ!」
扉のすぐ向こうでは、揉めているデイブとお義母様の声が間近に聞こえて来る。
意を決してノブに手を掛けると、扉を開いた。
カチャッ
すると眼前にお義母様とデイブが立っている姿が飛び込んできた。お義母様の顔は険しく…デイブの顔は困りきっていた。
「あ、あら。エルザ、やっと姿を見せたわね?」
お義母様は突然扉が開かれたことで一瞬驚いた顔を見せた。
「エルザ様…」
デイブは青ざめた顔でこちらを見ている。
「こんにちは、お義母様。結婚以来、一度もお伺いせずに大変申し訳ございませんでした」
お義母様に丁寧に頭を下げた。
そう、私が出来ること…それはフィリップの負担を少しでも軽くしてあげることだ。
「本当にそうね。結婚してから半月近く経過しているのに一体今迄貴女は何をしていたのかしら?まぁいいわ。わざわざここまで尋ねてきたのだから、部屋に入れてもらいましょうか?」
「奥様…それは…」
デイブが背後から声を掛けると、義母は声を荒らげた。
「お黙りなさい!そんなことよりもお茶の準備でもしてきたらどうなの?」
「ええ、お願いできる?」
私はデイブに声を掛けた。
「は、はい。…申し訳ございません。すぐに御用意させて頂きます…」
デイブは頭を下げると足早に廊下の奥に消えていった。その後姿を見届けながらお義母様が忌々しげに言った。
「全く、ここで働く使用人たちは皆気が利かないわね…。フィリップは反対するかもしれないけれど、やはり使用人の入れ替えを考えたほうがいいかもしれないわ」
お義母様はとんでもないことを口に出してきた。けれど、この離れで働いてくれている使用人は皆良い人達ばかりだった。
何故ならフィリップが私の為に吟味し、選んでくれた人達なのだから。
それなのに、お義母様の一存で使用人を入れ替えるなんて…。
取り敢えず、今はその話からそらさなくては。
「とりあえず、立ち話もなんですから中に入ってお話をしませんか?」
「ええ、そうね。そうさせてもらうわ」
扉を大きく開けると、お義母様は素早く部屋の中に入って来た。
そして部屋の中をキョロキョロと見渡し、私の方を振り向いた。
その目は険しく…まるで私を睨みつけているような眼差しだった―。
フィリップは私の顔を見たいが為に、体調が悪い所を無理に退院して帰ってきた…。
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扉のすぐ向こうでは、揉めているデイブとお義母様の声が間近に聞こえて来る。
意を決してノブに手を掛けると、扉を開いた。
カチャッ
すると眼前にお義母様とデイブが立っている姿が飛び込んできた。お義母様の顔は険しく…デイブの顔は困りきっていた。
「あ、あら。エルザ、やっと姿を見せたわね?」
お義母様は突然扉が開かれたことで一瞬驚いた顔を見せた。
「エルザ様…」
デイブは青ざめた顔でこちらを見ている。
「こんにちは、お義母様。結婚以来、一度もお伺いせずに大変申し訳ございませんでした」
お義母様に丁寧に頭を下げた。
そう、私が出来ること…それはフィリップの負担を少しでも軽くしてあげることだ。
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「奥様…それは…」
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「ええ、お願いできる?」
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