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第25話 蚊帳の外
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ウェディングドレスの採寸が終わり、ソフィアとローラが試着室から出てきた。
するといつの間に戻っていたのか、店内に置かれたソファに座って新聞を読んでいるアダムの姿があった。
「どうも、お待たせいたしました。ジョンソン様」
ローラが声をかけると、アダムは新聞を畳んで立ち上がる。
「いえ、大丈夫です。終わったのですね?」
「はい、終わりました。3週間もあれば仕上がりますわ」
ローラの話に、アダムは頷く。
「なるほど、3週間ですね? 分かりました。では出来上がりましたら私の会社に電話をください。名刺を渡しておきます」
アダムは懐から名詞を取り出すと、ローラに手渡した。
「かしこまりました。仕上がり次第、早急にジョンソン様に連絡を入れさせていただきますわ」
「お願いします」
そんな2人のやりとりを、ソフィアは無言で見つめていた。
自分のことなのに、置き去りにされている。
2人の会話がまるで他人事のように思えて、ソフィアの胸に虚しい気持ちが込み上げてくる。
それは試着室から出てきたソフィアにアダムが一度も視線を向けないからだ。まるで自分には一切の興味も無いと言われているようで寂しかった。
(駄目よ、そんな風に考えたら……。アダムさんは会社経営者。忙しい方なのに、私の為にわざわざ時間を費やしてくれているのだから)
ソフィアは必死で自分に言い聞かせる。すると、突然アダムが振り向いた。
「ソフィアさん」
「あ、は、はい!」
突然声をかけられ、慌ててソフィアは返事をした。
「それでは用事も済んだことですし、行きましょうか?」
アダムの口元には笑みが浮かんでいた……。
**
ローラに見送られ、店を出るとすぐにアダムが訪ねてきた。
「ソフィアさん、これから2人で花屋に行きませんか?」
「え? お花屋さんですか?」
(まさか私にお花のプレゼントを……?)
ソフィアは花が好きだった。期待に胸を膨らませてアダムを見つめる。
「はい、そうです。この近くに花屋があります。では参りましょう」
「はい、アダムさん」
先程の悲しい気持ちから一転、ソフィアは笑顔で頷いた。
****
花屋までの道のりは、ローラの店から徒歩分程の場所にあった。
赤いレンガ造りの花屋は店先には色とりどりの花が売られいる。バラやカトレア、ランといった高級花々にソフィアの目は釘付けになる。
「まぁ……なんて綺麗なのかしら……」
久しぶりに見る美しい花々に思わず感嘆の声が洩れる。
「花がお好きなのですか?」
アダムが尋ねてきた。
「はい、好きです。母も花が好きなので家の花壇で花を育てているんです」
ソフィアもアメリも花が大好きだった。今の家に移り住む前……大きな屋敷に住んでいた頃は至る所に花を飾って楽しんだ。
けれどムーアが借金を作ってからというもの、花を買うことは無くなってしまったのだった。
「そうですか。お花が好きだったのですね。それなら良かったです。では早速注文することにしましょう」
「え? 注文……?」
何のことか分からず、首を傾げる。
「ソフィアさん、店に入りましょう」
「は、はい」
促され、返事をするソフィア。
「ここでとびきりの花を注文することにしましょう」
アダムはドアベルを鳴り響かせながら扉を開けた――
するといつの間に戻っていたのか、店内に置かれたソファに座って新聞を読んでいるアダムの姿があった。
「どうも、お待たせいたしました。ジョンソン様」
ローラが声をかけると、アダムは新聞を畳んで立ち上がる。
「いえ、大丈夫です。終わったのですね?」
「はい、終わりました。3週間もあれば仕上がりますわ」
ローラの話に、アダムは頷く。
「なるほど、3週間ですね? 分かりました。では出来上がりましたら私の会社に電話をください。名刺を渡しておきます」
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「お願いします」
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(駄目よ、そんな風に考えたら……。アダムさんは会社経営者。忙しい方なのに、私の為にわざわざ時間を費やしてくれているのだから)
ソフィアは必死で自分に言い聞かせる。すると、突然アダムが振り向いた。
「ソフィアさん」
「あ、は、はい!」
突然声をかけられ、慌ててソフィアは返事をした。
「それでは用事も済んだことですし、行きましょうか?」
アダムの口元には笑みが浮かんでいた……。
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ローラに見送られ、店を出るとすぐにアダムが訪ねてきた。
「ソフィアさん、これから2人で花屋に行きませんか?」
「え? お花屋さんですか?」
(まさか私にお花のプレゼントを……?)
ソフィアは花が好きだった。期待に胸を膨らませてアダムを見つめる。
「はい、そうです。この近くに花屋があります。では参りましょう」
「はい、アダムさん」
先程の悲しい気持ちから一転、ソフィアは笑顔で頷いた。
****
花屋までの道のりは、ローラの店から徒歩分程の場所にあった。
赤いレンガ造りの花屋は店先には色とりどりの花が売られいる。バラやカトレア、ランといった高級花々にソフィアの目は釘付けになる。
「まぁ……なんて綺麗なのかしら……」
久しぶりに見る美しい花々に思わず感嘆の声が洩れる。
「花がお好きなのですか?」
アダムが尋ねてきた。
「はい、好きです。母も花が好きなので家の花壇で花を育てているんです」
ソフィアもアメリも花が大好きだった。今の家に移り住む前……大きな屋敷に住んでいた頃は至る所に花を飾って楽しんだ。
けれどムーアが借金を作ってからというもの、花を買うことは無くなってしまったのだった。
「そうですか。お花が好きだったのですね。それなら良かったです。では早速注文することにしましょう」
「え? 注文……?」
何のことか分からず、首を傾げる。
「ソフィアさん、店に入りましょう」
「は、はい」
促され、返事をするソフィア。
「ここでとびきりの花を注文することにしましょう」
アダムはドアベルを鳴り響かせながら扉を開けた――
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