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8話 ついに登場
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「うわぁ~大きい満月ね~ 日本ではこんなに大きな満月なんて見たことなかった」
夜空にポッカリと浮かぶ満月に私はすっかり感動していた。
あの後――
私は何人もの男性からダンスの申込みを受けたが、全て断り続けた。
自分の踊るダンスの相手はたったひとり。王子様だけだと言って。それでも申込者が耐えなかったので、私はとうとうバルコニーから外に出てきてしまったのだ。
「それにしても断るだけで、疲れちゃったわ」
バルコニーから芝生の庭に降りてくると、近くにあったベンチに座った。
「今、何時頃なのかなぁ……魔法使いに、王子のハートを射止めてこい! なんて言われたけれど、本当に射止めてこないと駄目なのかな? そもそも王子に選ばれなかった場合ってシンデレラはどうなってしまうのだろう?」
腕組みしながら考える。
そもそも私はシンデレラでは無い。現代社会で働く日本人OLなのだ。別に物語のように素直に従って生きる必要性はあるのだろうか?
「そうよ。シンデレラは継母と二人の義理の姉にいじめられていたのよ。そもそも、そんな家に戻らなければいいだけの話じゃないの。確か、全財産だって奪われてしまっていた気がするし」
うん、そうしよう!
それならもう長居は無用だ、さっさと城を出よう。私はベンチから立ち上がった。
その途端――
「失礼、そこのご令嬢。もしや私をお探しではありませんか?」
背後から声をかけられた。
「え?」
振り向くと、そこには今まで見たこともない程に美しい容姿をした青年がこちらを見つめて立っていた。しかも真っ白なスーツに赤いマント姿が似合いすぎている。
「うわぁ……」
まるでハリウッドスターのようなハンサムな青年に思わず見惚れていると、彼はニコリと笑みを浮かべる。
「お噂通り、本当にお美しいお方ですね」
そして青年は近づいてくると、私の眼前でピタリと足を止める。
「あの……もしやあなたは……王子様?」
「ええ、そうです。私はこの国の王太子です」
王太子……つまり、ゆくゆくは国王になる人。ついに……出会えたんだ!!
ここで私が喜ぶ……はずはない。何しろついさっき、私は『シンデレラ』の小説から外れた行動を取ろうとしていたのだから。
「そうでしたか、王子様。お会いできて光栄です、それでは私はこれで失礼致します」
「え?」
王子の顔に困惑が浮かぶ。
お辞儀をすると、私は王子様の前を素通りし……
「ちょ、ちょっと待って下さい!」
突然手首をつかまれた。
「あの、離していただけませんか? 帰りたいので」
「ええ!? か、帰るですって!? 舞踏会はまだ終わらないのにですか!?」
「はい、そうです。お恥ずかしいお話ですが、私は全く踊りを踊れないのです。最初からこの舞踏会に来る資格など、なかったのです」
「え……そうなのですか……?」
「はい、そうです」
だから、さっさと離してほしい。きっと王子だって、こんな話を聞かされれば諦めてくれるだろう。
そう思っていたのに……
「偶然ですね。実は私もこんな舞踏会、参加したくなかったのですよ」
そして王子はにこりと笑った――
夜空にポッカリと浮かぶ満月に私はすっかり感動していた。
あの後――
私は何人もの男性からダンスの申込みを受けたが、全て断り続けた。
自分の踊るダンスの相手はたったひとり。王子様だけだと言って。それでも申込者が耐えなかったので、私はとうとうバルコニーから外に出てきてしまったのだ。
「それにしても断るだけで、疲れちゃったわ」
バルコニーから芝生の庭に降りてくると、近くにあったベンチに座った。
「今、何時頃なのかなぁ……魔法使いに、王子のハートを射止めてこい! なんて言われたけれど、本当に射止めてこないと駄目なのかな? そもそも王子に選ばれなかった場合ってシンデレラはどうなってしまうのだろう?」
腕組みしながら考える。
そもそも私はシンデレラでは無い。現代社会で働く日本人OLなのだ。別に物語のように素直に従って生きる必要性はあるのだろうか?
「そうよ。シンデレラは継母と二人の義理の姉にいじめられていたのよ。そもそも、そんな家に戻らなければいいだけの話じゃないの。確か、全財産だって奪われてしまっていた気がするし」
うん、そうしよう!
それならもう長居は無用だ、さっさと城を出よう。私はベンチから立ち上がった。
その途端――
「失礼、そこのご令嬢。もしや私をお探しではありませんか?」
背後から声をかけられた。
「え?」
振り向くと、そこには今まで見たこともない程に美しい容姿をした青年がこちらを見つめて立っていた。しかも真っ白なスーツに赤いマント姿が似合いすぎている。
「うわぁ……」
まるでハリウッドスターのようなハンサムな青年に思わず見惚れていると、彼はニコリと笑みを浮かべる。
「お噂通り、本当にお美しいお方ですね」
そして青年は近づいてくると、私の眼前でピタリと足を止める。
「あの……もしやあなたは……王子様?」
「ええ、そうです。私はこの国の王太子です」
王太子……つまり、ゆくゆくは国王になる人。ついに……出会えたんだ!!
ここで私が喜ぶ……はずはない。何しろついさっき、私は『シンデレラ』の小説から外れた行動を取ろうとしていたのだから。
「そうでしたか、王子様。お会いできて光栄です、それでは私はこれで失礼致します」
「え?」
王子の顔に困惑が浮かぶ。
お辞儀をすると、私は王子様の前を素通りし……
「ちょ、ちょっと待って下さい!」
突然手首をつかまれた。
「あの、離していただけませんか? 帰りたいので」
「ええ!? か、帰るですって!? 舞踏会はまだ終わらないのにですか!?」
「はい、そうです。お恥ずかしいお話ですが、私は全く踊りを踊れないのです。最初からこの舞踏会に来る資格など、なかったのです」
「え……そうなのですか……?」
「はい、そうです」
だから、さっさと離してほしい。きっと王子だって、こんな話を聞かされれば諦めてくれるだろう。
そう思っていたのに……
「偶然ですね。実は私もこんな舞踏会、参加したくなかったのですよ」
そして王子はにこりと笑った――
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