タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売

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プロローグ 

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 カチコチカチコチ・・

静まり返った部屋に無情にも時計の音だけが響き渡る―。


約束の時間になったと言うのに、いつまでたっても控室にオスカー様は迎えに現れない。

「どうしたのかしら・・・。予定ではもう王広間にいないといけないのに・・・。」

我慢が出来なくなった私は椅子から立ち上がり、ドアに向かった。そしてドアを開けようとしたのだが・・・。

ガチャガチャ!

「え・・?」

押しても引いてもドアが開かない。ま・まさか・・・閉じ込められた?!途端に自分の顔が青ざめていくのが分かった。

「お願いっ!誰かっ!ここを開けてっ!」

ドンドンドアを叩いても誰も開けてくれない。と言うか人の気配すらドアの向こうで感じられない。

「そ、そんな・・誰もいない・・・の・・?」

ドアに寄りかかり、崩れ落ちた私は何とか外へ出る方法が無いか部屋中を見渡した。
ここはお城の2階にある控室。部屋には応接セットが置かれてるだけの粗末な部屋。始めにここに通された時は一瞬物置部屋では無いかと思った程だ。
大きなアーチ型の窓には少し日に焼けて黄ばんだカーテンがぶら下がっている。

「あのカーテン・・・使えないかしら・・。」

私は窓に近付き、カーテンを見た。・・・かなり丈夫そうだ。これなら使えるかも・・。髪留めを外し、鋭利な先端でカーテンの布を3枚に切り裂いた。そしてこれを結んでいく・・・。


「出来たわっ!」

即席脱出用布・・・これがあれば・・・。窓の下を覗くと高さ的に見て
この布でも足りそうだ。
窓際に置かれたソファの足に結び付け、地面に放り投げると丁度地面すれすれまで届いた。
よ、よし・・・。
幸い私は子供の頃から木登りは得意だ。ハイヒールを地面に投げ落とし、素足になると布をしっかりつかみ、ゆっくり慎重に降りて行く・・・・。

数分後―

「な・・何とか降りる事が出来たわ。」

安堵のため息をつくと、脱ぎ捨てたヒールを片手で持って私は急いで王広間へと走った―。


「駄目ですっ!ここから先へは絶対にお通しできませんっ!」

王広間へ続く扉の前で私は騎士達に行く手を塞がれた。

「何故よっ!私はアイリス・イリヤ!今日オスカー様と婚約発表をする事になっているのよ?!何故通してくれないのっ?!」

すると一人の騎士が言った。

「いいよ・・・通してやろう・・。」

「レイフ・・・。」

彼の名前はレイフ。王宮騎士で私の幼馴染でもある。

「し、しかしっ!」

1人の騎士の言葉をレイフはさえぎった。

「いや・・・真実を自分の目で見て知っておいた方がいいかもしれない・・行けよ。アイリス。」

「え?ええ・・・・。」

そして私は王広間の扉を開けた。




今にして思えば、私はこの時城を逃げ出すべきだったのだ。

そうしていればあんなことにはならなかったのに・・。

この時ほど私は人生で死ぬほど後悔した事はなかった―。




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