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第4章 12 フリードリッヒ3世の秘密
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「オ・・・オスカー様・・?」
オスカーは私を強く抱きしめ、髪に顔をうずめている。強い抱擁に息が詰まりそうになり・・気が付いた。オスカーの身体が震えているのだ。
オスカーは私を抱きしめたまま語り掛けてきた。
「アイリス・・・。昨日から・・怖い思いをさせてすまなかった・・。俺は自分が許せない。エルトリアの呪いに侵された別人格を押さえきれなかった自分が・・。あのオスカーは・・アイリス。おそらくお前の命を狙っている・・・。」
「!な・・・何故私の命を・・・?」
「それは・・・俺がお前を・・。」
しかし、オスカーは途中で口を閉ざして私の身体を離した。
「アイリス。先程も言ったがこの都市『リオス』は女神像によって守られている。あの女神像がここにある限り呪いに侵された俺も・・・悪魔に身体を乗っ取られらた父も近づくことは出来ないから安心して暮らしていればいい。呪いや悪魔と言うものは・・聖なる存在を恐れるものだからな。それに『自由都市、リーベルタース』にあるアカデミーは王族ですら手が出せない都市だ。だから・・アイリス。お前の生活は保障されているから心配はするな。ただ・・・・。」
「ただ・・?」
「俺には気をつけろ・・・。」
「!」
「俺はいつどこで別人格が現れるか分からない。だから俺には近づかない方がいい。そうでなければ・・いつまたあんな危険な目にあわせてしまうか分からない。俺は・・・お前を自分の手で傷付けたくないんだ・・・。」
オスカーは苦し気に顔をゆがめて私を見た。
「オ・・オスカー様は・・まさか・・王宮には戻りません・・・よね・・?」
「・・・。」
しかし、オスカーは何も答えない。
「お、お願いです。あの陛下は・・・普通じゃありませんでしたっ!オスカー様の身体になったんですよ?!し、しかも・・・陛下の部屋には・・わ、私の肖像画で溢れていて・・私に言ったんです・・・自分の婚約者になるように・・って・・!」
それを聞いたオスカーは目を見開いた。
「ま、まさか・・・それは本当の話・・なのか?」
「はい・・・。」
するとオスカーが言った。
「まずい事になった・・・。父はもう完全に悪魔に身体を支配されてしまったのかもしれない・・・!」
「え・・・・?」
「俺の考えでは・・・恐らくお前の母を愛したのも、お前を父が望んだのも・・多分父ではなく憑りついている悪魔なのではないかと思っている。」
「ど、どういう事ですか・・?」
私は目を見開いてオスカーを見た。するとオスカーは言った。
「父は・・俺の弟が生まれてすぐに、一方的に母に離縁を言い渡し・・王宮から追い出してしまったのだ。母はそのショックで死んでしまったらしい。あの頃から父は頻繁に狂気に走っていた。だが・・・ふとした瞬間、正気に戻るとき・・一方的に母に離婚をつきつけ・・死なせてしまった事を嘆きかなしんでいたのだ・・!だが、今まで身体を変化させた事は一度も無かった・・。」
「それなら!尚の事・・戻ってはダメですっ!」
私は必死で言った。おそらく70年前、私に残虐非道なふるまいをしたのは呪いに侵されたていたオスカーだったのだ。だが・・・今目の前にいるオスカーは違う。信じてもいい人だ。その事は先程指輪の力により、もう十分承知している。
「ああ・・分かっている。もう王宮に戻らない。だが・・・あの集落の様子をみに行かなければならない。」
そうだ・・。ここに帰ってくる前に立ち寄ったあの謎の集落は・・?
「オスカー様。あの集落は・・一体なんなのですか?」
「あの集落は・・・皆王宮に勤めていた者達で・・全員優秀な家臣たちだった。しかし・・・父に意見し、逆鱗に触れて追放されてしまった。そこで彼らはあの集落を作り上げ・・再起を図っていたのだ・・時間がない、アイリス。悪いが話はここまでだ。あいつらが心配だからなっ!」
それだけ言うとオスカーは駆け出し、城門につながれた馬に飛び乗ると走り去ってしまった―。
オスカーは私を強く抱きしめ、髪に顔をうずめている。強い抱擁に息が詰まりそうになり・・気が付いた。オスカーの身体が震えているのだ。
オスカーは私を抱きしめたまま語り掛けてきた。
「アイリス・・・。昨日から・・怖い思いをさせてすまなかった・・。俺は自分が許せない。エルトリアの呪いに侵された別人格を押さえきれなかった自分が・・。あのオスカーは・・アイリス。おそらくお前の命を狙っている・・・。」
「!な・・・何故私の命を・・・?」
「それは・・・俺がお前を・・。」
しかし、オスカーは途中で口を閉ざして私の身体を離した。
「アイリス。先程も言ったがこの都市『リオス』は女神像によって守られている。あの女神像がここにある限り呪いに侵された俺も・・・悪魔に身体を乗っ取られらた父も近づくことは出来ないから安心して暮らしていればいい。呪いや悪魔と言うものは・・聖なる存在を恐れるものだからな。それに『自由都市、リーベルタース』にあるアカデミーは王族ですら手が出せない都市だ。だから・・アイリス。お前の生活は保障されているから心配はするな。ただ・・・・。」
「ただ・・?」
「俺には気をつけろ・・・。」
「!」
「俺はいつどこで別人格が現れるか分からない。だから俺には近づかない方がいい。そうでなければ・・いつまたあんな危険な目にあわせてしまうか分からない。俺は・・・お前を自分の手で傷付けたくないんだ・・・。」
オスカーは苦し気に顔をゆがめて私を見た。
「オ・・オスカー様は・・まさか・・王宮には戻りません・・・よね・・?」
「・・・。」
しかし、オスカーは何も答えない。
「お、お願いです。あの陛下は・・・普通じゃありませんでしたっ!オスカー様の身体になったんですよ?!し、しかも・・・陛下の部屋には・・わ、私の肖像画で溢れていて・・私に言ったんです・・・自分の婚約者になるように・・って・・!」
それを聞いたオスカーは目を見開いた。
「ま、まさか・・・それは本当の話・・なのか?」
「はい・・・。」
するとオスカーが言った。
「まずい事になった・・・。父はもう完全に悪魔に身体を支配されてしまったのかもしれない・・・!」
「え・・・・?」
「俺の考えでは・・・恐らくお前の母を愛したのも、お前を父が望んだのも・・多分父ではなく憑りついている悪魔なのではないかと思っている。」
「ど、どういう事ですか・・?」
私は目を見開いてオスカーを見た。するとオスカーは言った。
「父は・・俺の弟が生まれてすぐに、一方的に母に離縁を言い渡し・・王宮から追い出してしまったのだ。母はそのショックで死んでしまったらしい。あの頃から父は頻繁に狂気に走っていた。だが・・・ふとした瞬間、正気に戻るとき・・一方的に母に離婚をつきつけ・・死なせてしまった事を嘆きかなしんでいたのだ・・!だが、今まで身体を変化させた事は一度も無かった・・。」
「それなら!尚の事・・戻ってはダメですっ!」
私は必死で言った。おそらく70年前、私に残虐非道なふるまいをしたのは呪いに侵されたていたオスカーだったのだ。だが・・・今目の前にいるオスカーは違う。信じてもいい人だ。その事は先程指輪の力により、もう十分承知している。
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そうだ・・。ここに帰ってくる前に立ち寄ったあの謎の集落は・・?
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それだけ言うとオスカーは駆け出し、城門につながれた馬に飛び乗ると走り去ってしまった―。
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