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第4章 13 1日の終わりに
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父と母、そして私の家族3人の食後の団欒後、母は言った。
「アイリス、今日は疲れたでしょう。今夜はゆっくりお部屋でおやすみなさい。」
「ああ、そうだな、アイリス。それに明日はアカデミーを休んだ方かいいだろう。」
「いいえ・・・行きます。」
しかし、私は父の言葉に頭を振った。
「アイリス?何故だ?昨日お前は大変な目に遭ったのだから、明日は1日アカデミーを休んだ方が良い。」
父は心配気な顔で私を見る。
「いいえ・・・行きます。オスカー様が心配なので・・・」
私はギュッと両手をテーブルの下で握りしめると言った。
「アイリス、なぜオスカー様を気にするのだ?もともとオスカー様はお前の仮の婚約者であるのだから、断ることだって可能なのだよ?いや・・・ウィンザード家の話を知った以上・・・私はむしろ破談にするべきだと思っているよ。」
「え・・?破談・・・?」
オスカーとの婚約を破談・・・。
「どうしたのです?アイリス・・・そんな浮かない顔をして・・もともと貴女だってオスカー様を怖がっていたではありませんか?それにあなたは陛下に狙われていると話を聞いた以上はウィンザード家から完全に縁を切るべきです。」
母の話はもっともだと思う。だけど・・・私は前世では見せてくれなかったオスカーの様々な顔を見てきた。そしてオスカーの私に対する気持ちを知ってしまった以上、無下にする事は出来なかった。
「わ、私は・・・もう少しこのままオスカー様の様子を・・伺いたいと思います。それに・・・お気の毒ではありませんか。エルトリアの呪いに侵されているだけでなく、王位を継いだ暁には・・悪魔に身体を憑依されてしまうなんて・・・何か助ける方法があるなら・・私は助けてあげたいのです・・。」
そうだ・・・。ひょっとすると私が70年前にタイムリープしたのは・・何か本当は意味があったのかもしれない。単に自分の人生をやり直すだけではなく・・もっと別の・・・。
俯いていると、父がため息をついて声を掛けてきた。
「・・・顔を上げなさい、アイリス。」
言われて顔を上げると父はじっと私を見つめながら言った。
「分かった・・・アイリス。お前の好きにするといい。オスカー様はお前を王宮から救い出してくれたお方だからな。」
「お父様・・・・。」
「アカデミーにも通えばいい。せっかく入学したばかりだと言うのに、あっさりやめるわけにもいかないだろう?幸い、アカデミーにはレイフがいるからな。彼に護衛をお願いすることにしよう。」
「ありがとうございます。お父様。」
父の提案が嬉しくなり、私は笑みを浮かべた。
「いや。いいんだよ。可愛い娘の願いは叶えてやりたいからね。それではレイフにはこちらから連絡を入れておこう。明日は2人で一緒にアカデミーへ行くとよい。」
「はい、そうさせて頂きます。」
恐らくオスカーは当分の間アカデミーへ来ることはないだろう。
「それではお父様、お母様。これで失礼致します。」
頭を下げると、早めに退席させてもらった。
ダイニングルームを出ると、大きな窓からは月明かりが差しこみ、通路を青白く照らし出している。
ホウとため息をつくと、私は自室を目指して歩き始めた。
・・それにしても何て長い1日だったのだろう。オスカーは・・今どうしているのだろう?おそらくあの状況では王宮には戻っていないだろう。それではあの集落にいるのだろうか・・?
そして私は願った。
どうか明日・・・アカデミーでオスカーに会えますように―と。
「アイリス、今日は疲れたでしょう。今夜はゆっくりお部屋でおやすみなさい。」
「ああ、そうだな、アイリス。それに明日はアカデミーを休んだ方かいいだろう。」
「いいえ・・・行きます。」
しかし、私は父の言葉に頭を振った。
「アイリス?何故だ?昨日お前は大変な目に遭ったのだから、明日は1日アカデミーを休んだ方が良い。」
父は心配気な顔で私を見る。
「いいえ・・・行きます。オスカー様が心配なので・・・」
私はギュッと両手をテーブルの下で握りしめると言った。
「アイリス、なぜオスカー様を気にするのだ?もともとオスカー様はお前の仮の婚約者であるのだから、断ることだって可能なのだよ?いや・・・ウィンザード家の話を知った以上・・・私はむしろ破談にするべきだと思っているよ。」
「え・・?破談・・・?」
オスカーとの婚約を破談・・・。
「どうしたのです?アイリス・・・そんな浮かない顔をして・・もともと貴女だってオスカー様を怖がっていたではありませんか?それにあなたは陛下に狙われていると話を聞いた以上はウィンザード家から完全に縁を切るべきです。」
母の話はもっともだと思う。だけど・・・私は前世では見せてくれなかったオスカーの様々な顔を見てきた。そしてオスカーの私に対する気持ちを知ってしまった以上、無下にする事は出来なかった。
「わ、私は・・・もう少しこのままオスカー様の様子を・・伺いたいと思います。それに・・・お気の毒ではありませんか。エルトリアの呪いに侵されているだけでなく、王位を継いだ暁には・・悪魔に身体を憑依されてしまうなんて・・・何か助ける方法があるなら・・私は助けてあげたいのです・・。」
そうだ・・・。ひょっとすると私が70年前にタイムリープしたのは・・何か本当は意味があったのかもしれない。単に自分の人生をやり直すだけではなく・・もっと別の・・・。
俯いていると、父がため息をついて声を掛けてきた。
「・・・顔を上げなさい、アイリス。」
言われて顔を上げると父はじっと私を見つめながら言った。
「分かった・・・アイリス。お前の好きにするといい。オスカー様はお前を王宮から救い出してくれたお方だからな。」
「お父様・・・・。」
「アカデミーにも通えばいい。せっかく入学したばかりだと言うのに、あっさりやめるわけにもいかないだろう?幸い、アカデミーにはレイフがいるからな。彼に護衛をお願いすることにしよう。」
「ありがとうございます。お父様。」
父の提案が嬉しくなり、私は笑みを浮かべた。
「いや。いいんだよ。可愛い娘の願いは叶えてやりたいからね。それではレイフにはこちらから連絡を入れておこう。明日は2人で一緒にアカデミーへ行くとよい。」
「はい、そうさせて頂きます。」
恐らくオスカーは当分の間アカデミーへ来ることはないだろう。
「それではお父様、お母様。これで失礼致します。」
頭を下げると、早めに退席させてもらった。
ダイニングルームを出ると、大きな窓からは月明かりが差しこみ、通路を青白く照らし出している。
ホウとため息をつくと、私は自室を目指して歩き始めた。
・・それにしても何て長い1日だったのだろう。オスカーは・・今どうしているのだろう?おそらくあの状況では王宮には戻っていないだろう。それではあの集落にいるのだろうか・・?
そして私は願った。
どうか明日・・・アカデミーでオスカーに会えますように―と。
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