タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない

第8章 14 助けてくれた人物は

「キャアアアーッ！！」

私は悲鳴を上げ、真っ逆さまに下へと落ちて行った―。




　ザーッ・・・

何処かで激しく雨が降っている音が聞こえて来る・・・。

「う・・・。」

ゆっくり目を開けた私の目に見慣れない薄汚れた木の天井が目に入った。
小屋の中は狭くて薄暗く、壁の隙間から外の明かりがさしこみ、かろうじて中の様子がうかがえた。小屋の壁は板を荒く釘で打ち付けたような簡単な作りなのだろうか・・・あちこちに隙間が空いており、時折外から吹き付けて来る強い風が隙間から吹き込み、ヒューッと高い音が小屋の中に響き渡る。

「ここは・・？」

身体を起こした時、カサカサと乾いた音が聞こえた。よく見ると私は藁を敷き詰めた上で寝かされていたのである。

「どうして、こんなところに・・・・？私は確かタバサの『邪眼』の力でバルコニーから下へ・・・。」

その時・・・。

ギイィ～・・・・

きしんだ音が室内に響き渡り、音の聞こえた方向を見るとそこにはドアを開けてマントを頭から被った人物が立っていたのだ。

「ア・・・アイリス・・？気が付いたのかっ？！」

「え・・？」

その声は・・・。

「アイリスッ！」

その人物はびしょ濡れのマントを外した。するとそこから姿を現したのはレイフだった。

「レ・・レイフ・・。」

「アイリスッ！」

レイフは私に駆け寄って来ると強く抱きしめてきた。

「よ・・良かった・・・アイリス・・目が覚めて・・。」

「レ、レイフ・・。」

私にはさっぱり訳が分からなかった。何故レイフがここにいるのだろう？ひょっとして・・私を助けたのは・・？


「レイフ・・・もしかして私を助けてくれたのは・・レイフ・・貴方なの・・・？」

するとレイフは私から身体を離すと肩に両手を置いた。

「ああ・・・そうだ。アイリス、俺がお前を助けたんだ。・・ひょっとして覚えているのか？」

私は首を振ると言った。

「ごめんなさい・・何も覚えていないの・・。ただ・・私はタバサの『邪眼』の力によって、無理やりバルコニーから飛び降りをさせられて・・。」

その時の恐怖を思い出し、私は両肩を抱えた。

「アイリス・・。少し待ってろ。」

レイフは神妙な面持ちになると小屋の奥へ向かい、木で出来た丸椅子を2つ持ってくると、私の目の前に椅子を置いた。

「座って・・話をしよう。」

「ええ・・。」

椅子に座ると、早速レイフが口を開いた。

「俺は・・・アイリス。お前がどこの部屋に捕らえられたのか、分っていたんだ。それで・・本当にたまたまなんだが・・下から手すりにつかまってお前のいる部屋へ登ろうとしたときに・・突然お前がバルコニーへとやって来た。後ろにタバサを連れてな・・・。」

「！」

「何だか雰囲気がおかしいと思い、様子を伺っていたら・・・突然お前が手すりにつかまり、下を覗き込んで・・・・。」

そこでレイフは一瞬強く目を強く閉じ・・そして目を開けると言った。

「お前を・・・抱き留められたのは本当に運が良かった・・・。あの時・・・一歩でも遅れていれば・・・。」

レイフの身体は小刻みに震えていた。

「レイフ・・・。」

私はレイフを落ち着かせるために、そっと左手でレイフの震える右手に触れると、強く握りしめられた。

「良かった・・・アイリス・・・お前を・・お前を今度は助ける事が出来て・・。」

「え・・？今度はって・・？」

私は自分の耳を疑った。

「あ・・？」

すると自分で言った台詞にも関わらず、レイフは戸惑いの表情を浮かべると言った。

「お、俺は・・・あれは夢の話なのに・・・。」

そして深いため息をついた。
え・・・？夢って一体何・・？まさか、レイフは・・？

「ねぇ・・・レイフ・・・夢の話って・・一体何の事？」

私はどうしてもレイフの夢の話が何なのか気になり・・尋ねてみる事にした―。