期間限定の悪役令嬢

結城芙由奈@コミカライズ連載中

文字の大きさ
35 / 45

エピソード33 海を眺めて

しおりを挟む
 部屋に戻り、窓から見える夕日が沈んでいく美しい海をバルコニーのビーチベッドの上で私はクッションを抱えたままじっと眺めていた。顔は熱く、胸はドキドキしている。
何これ?こんなの変だ。どうして胸がこんなに早鐘を打っているんだろう。

「ひょとして・・・私・・アレクの事が好き・・なのかな・・?」

一度言葉にしてしまえば、後はもう止める事は出来なかった。この島に来て3週間・・・アレクと一緒に過ごした楽しい日々が思い出される。そのことを思い出す度、幸せな気持ちに包まれ、笑みが浮かんでしまう。間違いない、私はアレクに恋してる。だけど・・・。

「駄目だ・・・やっぱり私とアレクじゃ・・・身分が違うに決まってるもの・・・。」

アレクは一度だって自分の爵位の話をしたことがない。だけど、王子様の付き人をしているんだから、絶対爵位は高いと思う。それに・・・フォスティーヌは以前アレクの事を育ちが悪そうだと私に話したことがあるけど・・絶対にそんな事は無い。だってずっと近くで見てきたの私には分かる。アレクは言葉遣いは確かに乱暴かもしれないけれど・・その仕草にはどこか気品を感じる。これは私がアレクを好きだから欲目で見ているとか・・・そんなんじゃない。だってアレクからは時々眩しいオーラのようなものを放っているように感じる事があるから・・・。

「ふぅ~・・・。」

私は溜息をついた。いつの間にか太陽は海に沈み、徐々に空はオレンジから紺色の美しいグラデーション色に染まっている。星は空に瞬きはじめ、海から吹く潮風は少しだけ湿り気を帯びていた。

「・・身体冷えちゃうかも。部屋に中に入ろう。」

ビーチベッドから立ち上ると私はコテージの窓をガラガラと開けて、部屋の中へと入って行った。確か・・今夜は海辺でキャンプファイヤーの後、皆でパーティーをするんだっけ・・・。

「私は身分の低い男爵令嬢。アレクには・・私なんかよりもずっとふさわしい女性が似合ってるんだから・・・なるべくアレクからは距離を取っていよう。」

私は心に決めた―。



****

 海辺ではやぐらが組まれ、赤い大きな炎が燃えて、当たりをオレンジ色に染めている。
私はビールを片手に岩場に隠れるようにお皿に乗せた串焼きを食べていた。
周囲を観察してみると、ほぼほぼカップルは成立していた。フォスティーヌも皇子と一緒に過ごしている。2人はとても雰囲気が良い感じだ。これも・・・きっと2人の前で私が演じた悪役令嬢が功を成したのかもしれない。

ぐぃーっとビールを一気飲みし、私は海を眺めていると不意に近くで話し声が聞こえてきた。え?誰かいる?慌てて岩場に隠れてそっと様子をうかがうと、そこにはアレクと同じサマースクール参加者の女性が立っていた。

「あ、あの・・・アレク。返事・・・聞かせてくれる?」

彼女はじっとアレクを見つめると尋ねた。え・・?もしかしてあの2人・・・交流があったの?返事って・・・あれだよね?きっとあれの事しかないよね・・・?
アレクは難しい顔をして立っていたけど、口を開いた。

「悪い。俺・・・好きな女がいる。」

ドキッ!その言葉に心臓が飛び跳ねた。

「だ、誰よ・・・その人・・まさか・・あの落ちぶれた男爵令嬢?!」

落ちぶれた・・・確かに事実だけど、誰かに指摘されると多少は傷つく。
すると・・・。

「リアをそんな風に言うなっ!」

アレクの厳しい声が聞こえた―。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

悪役令嬢と誤解され冷遇されていたのに、目覚めたら夫が豹変して求愛してくるのですが?

いりん
恋愛
初恋の人と結婚できたーー これから幸せに2人で暮らしていける…そう思ったのに。 「私は夫としての務めを果たすつもりはない。」 「君を好きになることはない。必要以上に話し掛けないでくれ」 冷たく拒絶され、離婚届けを取り寄せた。 あと2週間で届くーーそうしたら、解放してあげよう。 ショックで熱をだし寝込むこと1週間。 目覚めると夫がなぜか豹変していて…!? 「君から話し掛けてくれないのか?」 「もう君が隣にいないのは考えられない」 無口不器用夫×優しい鈍感妻 すれ違いから始まる両片思いストーリー

タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒― 私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。 「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」 その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。 ※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています

乙女ゲームのヒロインに転生したのに、ストーリーが始まる前になぜかウチの従者が全部終わらせてたんですが

侑子
恋愛
 十歳の時、自分が乙女ゲームのヒロインに転生していたと気づいたアリス。幼なじみで従者のジェイドと準備をしながら、ハッピーエンドを目指してゲームスタートの魔法学園入学までの日々を過ごす。  しかし、いざ入学してみれば、攻略対象たちはなぜか皆他の令嬢たちとラブラブで、アリスの入る隙間はこれっぽっちもない。 「どうして!? 一体どうしてなの~!?」  いつの間にか従者に外堀を埋められ、乙女ゲームが始まらないようにされていたヒロインのお話。

気配消し令嬢の失敗

かな
恋愛
ユリアは公爵家の次女として生まれ、獣人国に攫われた長女エーリアの代わりに第1王子の婚約者候補の筆頭にされてしまう。王妃なんて面倒臭いと思ったユリアは、自分自身に認識阻害と気配消しの魔法を掛け、居るかいないかわからないと言われるほどの地味な令嬢を装った。 15才になり学園に入学すると、編入してきた男爵令嬢が第1王子と有力貴族令息を複数侍らかせることとなり、ユリア以外の婚約者候補と男爵令嬢の揉める事が日常茶飯事に。ユリアは遠くからボーッとそれを眺めながら〘 いつになったら婚約者候補から外してくれるのかな? 〙と思っていた。そんなユリアが失敗する話。 ※王子は曾祖母コンです。 ※ユリアは悪役令嬢ではありません。 ※タグを少し修正しました。 初めての投稿なのでゆる〜く読んでください。ご都合主義はご愛嬌ということで見逃してください( *・ω・)*_ _))ペコリン

悪役令嬢の心変わり

ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。 7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。 そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス! カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!

婚約破棄された悪役令嬢の心の声が面白かったので求婚してみた

夕景あき
恋愛
人の心の声が聞こえるカイルは、孤独の闇に閉じこもっていた。唯一の救いは、心の声まで真摯で温かい異母兄、第一王子の存在だけだった。 そんなカイルが、外交(婚約者探し)という名目で三国交流会へ向かうと、目の前で隣国の第二王子による公開婚約破棄が発生する。 婚約破棄された令嬢グレースは、表情一つ変えない高潔な令嬢。しかし、カイルがその心の声を聞き取ると、思いも寄らない内容が聞こえてきたのだった。

彼女が高級娼婦と呼ばれる理由~元悪役令嬢の戦慄の日々~

プラネットプラント
恋愛
婚約者である王子の恋人をいじめたと婚約破棄され、実家から縁を切られたライラは娼館で暮らすことになる。だが、訪れる人々のせいでライラは怯えていた。 ※完結済。

処理中です...