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第3章 1 一夜の過ち (イラスト有り)
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1
午後5時に女子会はお開きとなり、皆とにこやかに手を振って私達はそれぞれの自室へ戻った。
荷造りはほぼ終わっている。セント・レイズシティへ自分の不要になった衣類やアクセサリーをかなりの量売ったので、大分私の手持ちの荷物はすっきり片付いた。
トランクケースでおよそ2つ分。これだけが今回私が実家へ持って帰る量。
私はベッドに寝転がると天井を見上げた。
つい最近までは帰省中に遠い地へ逃亡を企てる事しか考えていなかった私だが、今日の出来事で、完全にその気持ちは揺らいでしまった。
改めて友情の絆が深まった、エマ・リリス・クロエ・シャーロット・・。
そして新しく出来た友人のミリア・ハンナ・クレア。
彼女達とはどうしても別れがたい。
「やっぱり、学院に戻って来ようかな・・。今日の出来事でアラン王子達がソフィーを見る目が大分変ったような気がするし。」
最期にあの場を去る時に私は一度だけ、ソフィー達の方を振り返った。アラン王子達はソフィーに付き添っていたが、彼等の目はとても冷たい視線に感じた。
もしかすると、アラン王子達はもうソフィーに興味を無くしてしまったかもしれない。
だとしたら・・・自分の運命を変えることが出来のでは無いだろうか?
しかし一番気がかりな事がまだ残っている。
それはアラン王子だ。
私が初めて見た予知夢?では生徒会長達は私を庇ってくれた。只、アラン王子だけはソフィーに言われるままに私に罰を下したのだ。
更に2回目に見た夢では私が必死で逃亡している所をソフィーと共に馬に乗って捕まえにやってきた。
アラン王子は今もソフィーの事を好きなのだろうか?もし未だに彼女に心奪われているとしたら、彼女の言うがままに私を悪女に仕立てて捕らえる事等造作も無いだろう。・・・国に帰る前に確認しておかなければ安心出来ない。状況によってはやはり私は冬の休暇の間に逃げなくてはならくなってしまう。
どうする?男子寮まで行って、グレイかルークにアラン王子の事を尋ねてみようか・・?でもそんな事をして知り合いに見つかれば何かと厄介だ。
「そうだ、私が誰か分からないように変装していけば・・・。」
確か以前に仮装ダンスパーティーで使用した小道具があったはず。
恐らくマリウスは忙しいと言っていたのでばったり出会う事は無いだろうし、ここはあの時の変装で出かける事にしよう。
数分後―。
「よし、完璧。」
鏡の前で自分の姿を写してみる。
シルバーの髪を結い上げたヘアスタイルに、変装用の眼鏡。
そして白いエプロンを付けた黒いロングワンピース。
「これなら私がジェシカだってばれないよね。」
鏡の前でクルリと一回転してみせる。私はグレイとルークに今夜7時に女子寮付近で会いたいとメッセージを書き、男子寮へ向かった。
「それではこちらの手紙をグレイ・モリス、ルーク・ハンターの部屋に届ければ良いのですね?」
男子寮に駐在する守衛の男性はメモを受け取ると私の姿をジロジロと見つめる。
う・・・何?この男性の目踏みするような眼つきは・・・。
「は、はい。よろしくお願いします!」
頭を下げると私は逃げるように男子寮を後にした。ふう・・・一体今のは何だったのだろう?
女子寮へ向かって、トボトボ歩いていると突然背後から声をかけられた。
「おい、そこのメイド。こんな所でなにをしているのだ?」
ビクッ!!
そ、その声は・・・・。
恐る恐る振り返ると、ああ・・やはりそこに立っていたのは生徒会長だった。
何と答えれば良いか分からず、愛想笑いをすると再び同じ質問を受けた。
「一体こんな場所で何をしたいたのだ?他のメイド達はもう仕事が終わり、宿舎へ戻って行ったぞ?ん?それとも新人か?迷子になってしまったのなら俺が送って行ってやるぞ?」
そ、そんな親切な事しなくて大丈夫だってば!
「い、いえ。大丈夫ですので。どうかお気になさらずに・・・。」
慌てて踵を返し、足早に立ち去ろうとして私はワンピースの裾を踏んづけてしまった。
いけない、転ぶ―!
ガシッ!
背後から腕を掴まれ、私は転ぶのを免れた。恐る恐る見上げると生徒会長が私の両腕を支えて転ぶのを抱きとめてくれたのである。
「危なかったな、気を付けるんだぞ。」
生徒会長は私から離れると言った。
「は、はい。ありがとうございます・・・。」
お礼を言って立ち去ろうとすると、再び生徒会長に呼び止められた。
「おい、待て。」
も~っ!一体何なのよ?
「はい、何でしょう?」
眉間にしわがよりそうなのを必死に我慢しつつ、私は返事をすると生徒会長は言った。
「お前の顔・・・何処かで見たことがあるな・・・?」
生徒会長は顎に手をやりつつ、私の顔をマジマジと見つめる。
う・・・ま、まずい・・・!
「さ、さあ?気のせいではありませんか?何処にでもある顔ですから。」
一歩後ずさると私は言った。
「いや!お前のような顔立ちの人間が何処にでもあるはずは無い!そうだな・・よし、俺が思い出すまで少し付き合え。」
言うと生徒会長は私の左腕を掴むと、大股で歩き出す。
や、やだ!離してよっ!焦る私。このままでは正体がバレてしまうかもしれない。それどころか、グレイとルークの待ち合わせに間に合わない可能性も・・・!
何、この状況。
私は今生徒会長とカフェに来て、丸テーブルに向かい合わせに座らされてた。
暴君生徒会長は黙ってホットココアを飲んでいる。
どうして私は今、ここにこうしておっかない生徒会長と一緒にいるのだ?
じっとテーブルの上のコーヒーを見つめていると、声をかけられた。
「どうした?飲まないのか?冷めるぞ?」
不思議そうな顔で私を見つめる生徒会長。
ここで不審な態度を取ればますます疑いの目で見られてしまうに決まっている。
「い、いえ・・・では頂きます。」
カップを手に取り、一口飲む。ゴクリ。うん、美味しい。
「う~む・・・しかし、見れば見る程誰かに似ている・・。」
相変わらず無遠慮にジロジロ見つめて来る生徒会長。普段はポンコツのくせに、たまに妙に勘が鋭い時があるので困った男だ。もうこうなったらさっさとコーヒーを飲んで退散しよう。
私は一気にコーヒーをあおると、言った。
「それでは飲み終えたので、私はこれで失礼します。」
席を立とうとしたのに止められた。
「まあ、いい。俺の良く知っている人物に似ているお前に聞いて欲しい事がある。」
あの?私、失礼しますと言ったんですけど?
「実は俺はある女生徒と入学式の時に運命的な出会いを果たした。」
はいはい、それは私の事ですよね?
「彼女は俺の運命の相手で間違いは無いと一目見た時に直感でそう思った。生涯の伴侶となる女性がまさか突然目の前に現れたのだから、これほどの衝撃は今迄感じた事が無かった。」
生徒会長は遠くを見るような眼つきで語る。一方、私の心境は穏やかではない。
何?何寝ぼけた事言ってる訳?こ・・怖すぎる・・っ!あまりの恐怖で震えを押さえるのがやっとだ。駄目だ、この男はあまりに妄想癖が強すぎる。こんな事なら強引に病院へ連れて行き、脳の検査を受けさせるべきだった—!
「おや?どうした?先程から顔色が悪いようだが・・・?」
生徒会長は私の顔色が青ざめているのに気が付いたのか、声をかけてくる。
「い、いえ。大丈夫です・・・お気になさらずに・・・。」
言った後で激しく後悔した。
ああっ!私の馬鹿!気分が悪いとでも言えばこの場を解放して貰えたかもしれないのに・・・!
「俺は一生懸命彼女を愛でようとしたが、照れ屋の彼女はいつも俺から逃げようとしていた。そこがまた可愛いのだが・・・。」
いいえ、照れて逃げていたのではありません!心底、嫌だったから、逃げていたんですっ!
「だが、ある日・・俺は別の女性に恋してしまったっ!俺だけじゃない、彼女に横恋慕していた他の男共も、突然にだ!」
アメリアの事を言ってるのかな・・・?
「その女性には一緒にいる意地の悪いピンクの髪の女がいつも付きまとっていて・・・何かと俺達に熱烈にアプローチしてきたが、俺を含めて他の男共も、最初は誰も相手になどしてこなかった・・・・はずだったのに、気が付いてみると俺達はピンク髪の女の虜になっていたのだっ!」
何故か悔しそうに語る生徒会長。やはり、ソフィーの取り巻きになったのは自分の意思では無かったのかなあ?
「そして、今日決定的な事が起こった!俺の愛を取り戻そうと彼女が戻って来たのだ!」
生徒会長は恍惚の表情を浮かべると叫んだ。
え?ちょっと待ってよ。愛を取り戻す?一体何の事?
「彼女は見事にピンク髪の女の悪事を友人達と暴き、再び俺達の前から姿を消してしまった・・・・。」
がっくりと項垂れる生徒会長。
別に私は愛を取り戻すとか、悪事を暴く為にあんな事をしたわけでは無い。でも弁明するのも面倒だし、このままでいよう。
でも今の話しぶりだと、恐らくはソフィーに対する気持ちは冷めている。
まあ、それだけ聞ければこの時間も無駄では無かったのかも・・・。よし、今度こそ帰ろう。
「お話は済みましたね?それでは失礼します。」
「おい、まだ俺の話は・・・。」
生徒会長が何か言いかけたが、私は逃げるように席を立つと急ぎ足でカフェを出て行った。
「ふう・・・危ない所だった・・。」
「おい!待て!そこのメイド!」
何と生徒会長が追いかけてきている。に、逃げなくてはっ!
私はスカートの裾をまくると走り出した。
「お、おい?何故逃げるっ?!」
それでも無視して走り続けたが、体力のないジェシカの身体。
あっという間に生徒会長に回り込まれてしまった。
「何故、俺から逃げた?」
ジロリと睨み付ける生徒会長。う・・・そ、それは・・・。
「も・・・門限が・・門限が近いからですっ!」
咄嗟に嘘をつく。
「何だ、そんな事か。だったらそう言えばいいのに。」
言いながら私の前にイヤリングを差し出す。
「ほら、落とし物だ。」
あ・・・いつの間に・・・。
「あ、ありがとうございます。」
受け取った私に生徒会長が何かに気付いたかのように言った。
「おい、随分髪型が乱れているぞ?」
そう言って私の頭に手を伸ばし・・・
ズルリ。
カツラが完全に外れてしまい、私の栗毛色の髪の毛がバサアッと広がる。
し、しまった—!
生徒会長の顔が驚愕の表情を浮かべる・・・。
2
「ハアッ、ハアッ」
息を切らしながら私は何とか女子寮まで走り切る事が出来た。振り返っても生徒会長の姿は見えない。良かった・・・・何とか無事に撒くことが出来た。
時計を見ると18時15分を指している。
何とかグレイとルークとの約束の時間に間に合った・・。
私はノロノロと重い身体を引きずるように自室へと向かう。
さて、私がどうしてあの生徒会長の魔の手から逃げる事が出来たかと言うと・・。
時間は今から約10分程前に遡る―。
「おい、随分髪型が乱れているぞ?」
生徒会長が私の髪の乱れに気が付き、私の頭に手を伸ばした。
ズルリ。
カツラが完全に外れてしまい、私の栗毛色の髪の毛がバサアッと広がる。
し、しまった—!
生徒会長が驚愕の表情を浮かべる・・・。
「お、おい!お前・・・ジェシカだったのか?!」
驚愕の表情から途端に喜びの表情へと変わる生徒会長。
「そうか、お前は他の連中の目を気にして変装までしてこの俺にわざわざ会いに来てくれたのだな?やはり俺の事が忘れられなかったのだろう?」
何処をどう解釈すれば、その様に自分本位の考えに至るのだろう?冗談じゃないっ!
生徒会長など死んでもお断りだ!
私はフルフルと無言で首を振って後ずさる。
そして、再び踵を返して猛ダッシュで逃げだした。
「おい?!ジェシカッ!逃げるなっ!」
生徒会長の怒声が響き渡り、私の後を追っかけて来るのが分かった。
ヒイイイイッ!こ、怖いっ!
私は咄嗟に目の前に見えた校舎の建物の陰に隠れる。
しかし・・・。
「どうした、ジェシカ?そんな校舎の陰に隠れて逃げられるとでも思っているのか?観念して出て来い。」
最早完全に悪役のような台詞を吐きながらゆっくりと近づいてくる生徒会長。
「見つけたっ!」
生徒会長は私が隠れた校舎の建物を覗き込む。
が、しかし・・・。
「うん・・・?何故いないのだ?」
木の陰や茂みの中等、私の事を一生懸命探し回る生徒会長。
そして私はそんな彼を他所に、ケビンにプレゼントしてもらった指輪で自分の姿を消して、反対側から抜け出していたのだ。
生徒会長から十分距離を取ると、今度は一気に女子寮に向かって駆けだす。
早く、早く指輪の効果が切れる前に・・・。
こうして私は無事に生徒会長の魔の手から逃げ出す事に成功した。
まさか、こんな場面でも指輪が役に立てるとは・・・ケビンには本当に感謝だ。後で何かお礼をしないと・・。
「それにしても・・・本当に心臓に悪い鬼ごっこだった・・・。」
私はまだバクバクしている心臓を押さえながら言った。出会ったのが生徒会長だったのは本当に不運だった。これがまだノア先輩やダニエル先輩だったらマシだったのに・・・。
その後、私は約束の時間まで荷造りを済ませて7時少し前に防寒着を着て女子寮の入り口まで出てみた。
「「ジェシカッ!」」
2人は既に待ってくれていて、同時に私の名前を呼ぶ。
「良かった、2人一緒に出てこれたんだね。」
「ああ、全ての荷造り作業が終わったからな。あ~それにしても肩が凝ったよ。」
ルークは首をコキコキ鳴らしながら言った。
「ごめんね、疲れている所呼び出しちゃて。」
「何言ってるんだよ、今夜は誘ってくれて嬉しかったぜ。」
グレイはニコニコしながら言う。
「それじゃ、何処か食事でも行くか。」
伸びをしながらグレイが言うと、ルークが提案して来た。
「セント・レイズシティの門の近くに安くて美味いステーキハウスが出来たんだ。そこへ行って見ないか?」
「おお~それは素敵ね!私、行ってみたいな。」
「ああ、それはいい考えだな。よし、行って見ようぜ。」
グレイも迷うことなく賛成した。
こうして私達3人はステーキハウスで夕食を取る事になったのだ。
「うん、美味しい!このカットステーキ!」
私は熱々の一口大のお肉を口に入れると、うっとりした。
「俺のも美味いぜ。このサーロインステーキ、最高だぜ!ルーク、お前良い店知ってたんだな?」
グレイも嬉しそうに肉を口に頬張っている。
「だろう?偶然この店が目に入って一度だけ食事したことがあったんだ。その時はランチの時間帯だったが、余りに安くて美味くて感動したんだよ。」
ルークの頼んだメニューはロースステーキ。こちらもとても美味しそうだ。
暫くはお互いの肉がどれだけ美味しいかの議論をしながら3人でテーブルを囲んでのディナータイムを楽しんだ。
そして、食後のコーヒーを飲む頃にようやく本題へ。
「ジェシカ、俺達を今晩呼んだのはアラン王子の事だろう?」
ルークがじっと私の目を見ながら尋ねて来た。
「うん、そうなんだけど・・・・。どう?アラン王子の様子は。今日は色々とショッキングな1日だったからね。」
私がため息交じりに言うと、グレイとルークは2人で目を合わせ、ルークが口を開いた。
「ああ・・・。その事なんだけどな、ジェシカ。実はアラン王子・・・すごく不機嫌な顔で帰って来たんだよ。一体町で何があったんだ?」
隠していても仕方が無いか・・・。それにグレイもルークも私達が出掛ける時のエマ達の様子を見ているのだから、おおよその見当はついているかもしれない。
「実は・・・。」
私は事の全てを話した。見る見るうちに青ざめた顔になっていくグレイとルーク。
それは当然だろう、何せ一国の王子に攻撃魔法をしかけているのだから。おまけに男と女のド修羅場事件まで現場では起こったのだ。
「そうか・・・それでか・・。」
ルークは頭を押さえて言った。
「何?何があったの?」
「ああ、実は寮に戻ってから少しして、ソフィーから呼び出された様でアラン王子は一度外出したんだ。けれど、1時間も経たないうちに寮に戻って来てからはずっと機嫌が悪く、話しかけてもろくに返事すらしてくれなくて・・・。」
グレイはげんなりした表情で語る。
「そうだったんだ・・・ご苦労様。」
私は2人にねぎらいの言葉をかけた。やはり俺様王子のお守は大変だね。
そこで私はある事に気が付いた。
「ねえ、そんなにアラン王子が機嫌悪いなら、勝手に出てきたらまずかったんじゃ無いの?!」
「「・・・。」」
グレイとルークは同時に顔を見合わせたが、すぐにルークが応えた。
「ああ、確かにそうかも知れないが・・・俺達にとってはジェシカからの誘いの方が大事だからな。」
「だ、だけど・・・っ!」
今日のあの騒ぎを実際に彼等は目にしていないから、そんな呑気な事を言っていられるのだ。恐らくアラン王子は相当イラついているに違いない。
「ね、ねえ!すぐに学院に戻ろう?アラン王子の機嫌が悪くなる前に。」
私は2人を促すと、会計を済ませて早々に店を後にした。
門を抜けてセント・レイズ学院に戻ると・・・案の定、アラン王子が気難し気に暗闇のなか、門の付近で腕組みをして立っていた。
「おい!グレイにルークッ!お前達・・・明日は国へ帰ると言うのに一体何処へ行っていたのだ?!」
グレイとルークは私をアラン王子の視界から隠す様に立っている。
「申し訳ございませんでした、アラン王子。外で外食をしてきたもので・・・。」
ルークは頭を下げる。
「申し訳ございませんでした!」
グレイも頭を下げた時に、アラン王子は私に気が付いたのか声をかけてきた。
「うん?誰かと一緒だったのか?」
どうもアラン王子からは逆光になっているのか、私の姿が見えない様だ。
仕方が無い・・・・。私は溜息をつくと一歩前に進み出て声をかけた。
「こんばんは、アラン王子様。私が彼等を夕食に誘ったのです。なので2人を責めないで頂けますか?」
「ジェシカ・・・・。」
アラン王子は呆然とした顔で、その場に立ち尽くしていた—。
3
「今夜は私の我儘に付き合ってくれてありがとう。それじゃ、また来学期に会いましょう。元気でね。グレイ、ルーク。」
私はアラン王子に叱責されないようにわざと言うと、グレイとルークの交互に握手をした。
「それではアラン王子様、失礼致します。」
頭を下げて、歩き始めるとアラン王子から声をかけられた。
「待ってくれ、ジェシカ。」
振り向くとアラン王子は何やら思い詰めた顔をしている。
「何か御用でしょうか?アラン王子様。」
「お願いだ・・・少し・・・ほんの少しの時間でも構わないから、話をさせて貰えないか?」
切羽詰まったように声をかけてくるアラン王子。一体何だと言うのだ?私にはもうアラン王子と話したい事等一切無いのに。
だが・・・仮にも一国の王子。無下に断る事等出来ない。
「そうですか・・・ご命令とあれば、お受けします。」
「命令・・・?」
何故か酷く傷ついた顔をするアラン王子。そんな私達をハラハラした様子で眺めるグレイとルーク。
「い、いや・・・命令と言う訳では・・・・。」
困ったように目を伏せるアラン王子。何だかそんな姿を見ていると私が酷い事をしているような罪悪感が募って来る。仕方が無い・・・。
「アラン王子様、お食事はお済ですか?」
「い、いや。まだだ。」
「そうですか・・・。外は寒いので、お話なら何処かのお店に入ってしませんか?風邪でも引きましたらいけないので。」
「え?い、いいのか?」
途端に明るい表情になるアラン王子。
そして今、私達はサロンへ来ている。アラン王子は軽食とワイン、私はスパークリングワインを頼んだ。
そう言えば、今までに何回もサロンへ来ているが、アラン王子と2人で来るのは初めてだなあ・・・等と考えていると、カウンター席の隣に座るアラン王子から声をかけられた。
「何を考えているんだ、ジェシカ?」
「え?」
私は顔を上げてアラン王子の顔を見つめた。
「いえ、特に何も考えてはいませんでしたが。」
「そうか・・・。」
再び目を伏せるアラン王子。
「それより、私に何かお話が合ったのでしょう?どうぞ、話して下さい。アラン王子様も明日は早くご出発されるのでしょう?」
時計を見ると、既に22時を過ぎている。
「あ、ああ。そうだな・・・。早く帰って休まないと明日に響くからな・・・。」
私はアラン王子の前に置かれているサンドイッチに目をやる。・・・が、殆ど手付かずのままだ。
「お食事・・・召し上がらないのですか?」
「ああ。この所、あまり食欲が無くて・・・な。」
アラン王子の横顔を見ると、以前にもましてやつれてしまったようにも見える。
「お食事は・・・きちんと摂られた方が良いですよ。お国の方々も・・・心配されると思います。」
「すまない・・いや、すまなかった。」
いきなり謝罪してくるアラン王子。
「それは・・何に対しての謝罪ですか?お食事を摂れていない事の?それとも・・・本日の出来事についてですか?」
しかし、それには答えず私を見つめるアラン王子。
「俺が贈ったネックレスは・・・もうつけてくれないのか?」
え?ネックレス?そう言えば・・・あの日以来付けるのをやめていたんだっけ。
「ええ、そうですね・・・。思い出の品として箱に入れてしまってあります。」
「思い出の品・・・か。」
自嘲気味にフッと笑うアラン王子。
「俺が、どうしても会って話がしたいと言ったのは・・・分かり切っているとは思うが、他でもない。ソフィーの事なんだ。」
ああ、やはりそうか。と言うか、その話以外にあり得ないだろう。
「ええ・・・そうでしょうね。だと思いました。」
私はスパークリングワインを飲むと答えた。
「彼女がお前に乱暴な真似を働いて、助けてやれなかった事を謝らせて欲しい。」
頭を下げるアラン王子。
「お待ちください。アラン王子様から私に謝罪して頂く義理は一切ありませんので、どうか頭を上げてください。」
確かに太いつららが何本も自分目掛けて飛んで来たり、平手打ちされたのは痛かったが、全部それはソフィーがやった事。アラン王子には何の関係も無い。
「俺は・・・正直、ソフィーがあそこまで酷い女だとは思っていなかった・・・。生徒会長やダニエル・ノアはもうすっかり嫌気が差したと言って彼女の傍から離れて行ったよ。だが、俺は・・・。」
アラン王子はそこで言葉を切って黙って俯く。
やはりそうか。
ソフィーの元々の狙いはアラン王子。生徒会長はさておき、ノア先輩やダニエル先輩にはそれ程強く固執していなかったと言う訳だ。
私はもう確信している。
ソフィーは私と同様、魅了の魔法を使えるか、強い催眠暗示でアラン王子の心を縛り続けているのだろう。
可哀そうなアラン王子。
この世界のソフィーが私が小説の中で書いたソフィーの様に優しい心の持ち主だったらアラン王子も幸せになれるのに・・・。
「俺は・・・今日のソフィーを見て、心底ゾッとした。どこまで彼女はあさましいのだと思った。あんな人間は絶対受け入れてはいけないと頭の中では分かっているのにどうしても・・・あの目、あの声を聞くと抗えなくなるんだ・・っ!」
アラン王子は両手で頭を押さえて俯く。何て気の毒なのだろう。
でも、アラン王子の心配ばかりしている場合では無くなってきた。
生徒会長達はソフィーの呪縛から逃れることが出来た。けれどもアラン王子は?
心の中では彼女を嫌悪しているにも関わらず、離れることが出来ない。となれば・・
私が夢で見たあの時の状況が現実となってしまうのではないだろうか?
どうしよう、どうすればいい?
ソフィーによって囚われたアラン王子の心をどうすれば解放する事が出来るのだろう?
ああ、もう!お酒に逃げたくなってしまうっ!
気が付けば私はスパークリングワインを2本も空けてしまっていた。
グラリ。
私の頭が大きく傾く。
アラン王子も食事には殆ど手を付けずにワインばかり飲んでいる。
やがて・・・すっかり酔いが回ってしまった私はうつらうつらしながらアラン王子の話を聞いていた。
「ジェシカ・・・。俺を助けてくれないか?このままでは俺の心は本当にソフィーによって囚われてしまいそうだ。あの女は・・・まるで魔女だ。」
気が付けば、私はアラン王子の肩にもたれるように座っていた。
「助・・ける・・?」
「ああ・・。俺を助けられるのは、もうジェシカしかいない。」
アラン王子の声に熱が籠っている。きっと王子も相当酔っているのだろう。
「どう・・・やって・・・?」
私しかアラン王子を助けられない?でもソフィーによってアラン王子の囚われそうな心を救う事が出来たなら、自然と自分の不幸な未来を回避できるのであるとしたら・・・。
でも何故私しか出来ないと言うのだろう?
「わ・・私には・・他の人達のように・・魔法を使えないのに・・?」
駄目だ、酔いが回る。やっぱり飲みなれない種類のお酒は飲むべきじゃ無かったかも・・・。
「ああ、ジェシカにだけしか出来ない。何故なら俺が本当に心惹かれた女性はジェシカだから。お前なら俺の呪縛を・・きっと解けるはずだ。」
何故か抱き寄せられたかのような感じを抱いた。
そうか、それなら・・・。
「わかり・・・ました・・。」
でも、どうやって・・・?
そこから先の記憶は覚えていない—。
翌朝—
私は見知らぬ部屋でパニックを起こしていた。
う・・嘘でしょうっ?!
何で何で何で?!
目が覚めた私は自分が何も服を着ていない事に気が付いた。そして隣には私と同様の姿でスヤスヤと眠っているアラン王子。
震える手で床に落ちているシーツで身体を包むと、自分の服を探す。
みるとご丁寧にテーブルの上に畳まれて置かれているではないか。
服を掴み、バスルームを捜した。
あっ!あった!
バスルームに駆け込むと大急ぎで服を着る。
着替え終わると、そっとベッドルームを伺う。
アラン王子はぐっすり眠っているようだ。
い、今のうちに・・・。
私は逃げるように部屋を飛び出した。
どうしようどうしようどうしようーっ!!
頭の中はパニックを起こしていた・・・。
午後5時に女子会はお開きとなり、皆とにこやかに手を振って私達はそれぞれの自室へ戻った。
荷造りはほぼ終わっている。セント・レイズシティへ自分の不要になった衣類やアクセサリーをかなりの量売ったので、大分私の手持ちの荷物はすっきり片付いた。
トランクケースでおよそ2つ分。これだけが今回私が実家へ持って帰る量。
私はベッドに寝転がると天井を見上げた。
つい最近までは帰省中に遠い地へ逃亡を企てる事しか考えていなかった私だが、今日の出来事で、完全にその気持ちは揺らいでしまった。
改めて友情の絆が深まった、エマ・リリス・クロエ・シャーロット・・。
そして新しく出来た友人のミリア・ハンナ・クレア。
彼女達とはどうしても別れがたい。
「やっぱり、学院に戻って来ようかな・・。今日の出来事でアラン王子達がソフィーを見る目が大分変ったような気がするし。」
最期にあの場を去る時に私は一度だけ、ソフィー達の方を振り返った。アラン王子達はソフィーに付き添っていたが、彼等の目はとても冷たい視線に感じた。
もしかすると、アラン王子達はもうソフィーに興味を無くしてしまったかもしれない。
だとしたら・・・自分の運命を変えることが出来のでは無いだろうか?
しかし一番気がかりな事がまだ残っている。
それはアラン王子だ。
私が初めて見た予知夢?では生徒会長達は私を庇ってくれた。只、アラン王子だけはソフィーに言われるままに私に罰を下したのだ。
更に2回目に見た夢では私が必死で逃亡している所をソフィーと共に馬に乗って捕まえにやってきた。
アラン王子は今もソフィーの事を好きなのだろうか?もし未だに彼女に心奪われているとしたら、彼女の言うがままに私を悪女に仕立てて捕らえる事等造作も無いだろう。・・・国に帰る前に確認しておかなければ安心出来ない。状況によってはやはり私は冬の休暇の間に逃げなくてはならくなってしまう。
どうする?男子寮まで行って、グレイかルークにアラン王子の事を尋ねてみようか・・?でもそんな事をして知り合いに見つかれば何かと厄介だ。
「そうだ、私が誰か分からないように変装していけば・・・。」
確か以前に仮装ダンスパーティーで使用した小道具があったはず。
恐らくマリウスは忙しいと言っていたのでばったり出会う事は無いだろうし、ここはあの時の変装で出かける事にしよう。
数分後―。
「よし、完璧。」
鏡の前で自分の姿を写してみる。
シルバーの髪を結い上げたヘアスタイルに、変装用の眼鏡。
そして白いエプロンを付けた黒いロングワンピース。
「これなら私がジェシカだってばれないよね。」
鏡の前でクルリと一回転してみせる。私はグレイとルークに今夜7時に女子寮付近で会いたいとメッセージを書き、男子寮へ向かった。
「それではこちらの手紙をグレイ・モリス、ルーク・ハンターの部屋に届ければ良いのですね?」
男子寮に駐在する守衛の男性はメモを受け取ると私の姿をジロジロと見つめる。
う・・・何?この男性の目踏みするような眼つきは・・・。
「は、はい。よろしくお願いします!」
頭を下げると私は逃げるように男子寮を後にした。ふう・・・一体今のは何だったのだろう?
女子寮へ向かって、トボトボ歩いていると突然背後から声をかけられた。
「おい、そこのメイド。こんな所でなにをしているのだ?」
ビクッ!!
そ、その声は・・・・。
恐る恐る振り返ると、ああ・・やはりそこに立っていたのは生徒会長だった。
何と答えれば良いか分からず、愛想笑いをすると再び同じ質問を受けた。
「一体こんな場所で何をしたいたのだ?他のメイド達はもう仕事が終わり、宿舎へ戻って行ったぞ?ん?それとも新人か?迷子になってしまったのなら俺が送って行ってやるぞ?」
そ、そんな親切な事しなくて大丈夫だってば!
「い、いえ。大丈夫ですので。どうかお気になさらずに・・・。」
慌てて踵を返し、足早に立ち去ろうとして私はワンピースの裾を踏んづけてしまった。
いけない、転ぶ―!
ガシッ!
背後から腕を掴まれ、私は転ぶのを免れた。恐る恐る見上げると生徒会長が私の両腕を支えて転ぶのを抱きとめてくれたのである。
「危なかったな、気を付けるんだぞ。」
生徒会長は私から離れると言った。
「は、はい。ありがとうございます・・・。」
お礼を言って立ち去ろうとすると、再び生徒会長に呼び止められた。
「おい、待て。」
も~っ!一体何なのよ?
「はい、何でしょう?」
眉間にしわがよりそうなのを必死に我慢しつつ、私は返事をすると生徒会長は言った。
「お前の顔・・・何処かで見たことがあるな・・・?」
生徒会長は顎に手をやりつつ、私の顔をマジマジと見つめる。
う・・・ま、まずい・・・!
「さ、さあ?気のせいではありませんか?何処にでもある顔ですから。」
一歩後ずさると私は言った。
「いや!お前のような顔立ちの人間が何処にでもあるはずは無い!そうだな・・よし、俺が思い出すまで少し付き合え。」
言うと生徒会長は私の左腕を掴むと、大股で歩き出す。
や、やだ!離してよっ!焦る私。このままでは正体がバレてしまうかもしれない。それどころか、グレイとルークの待ち合わせに間に合わない可能性も・・・!
何、この状況。
私は今生徒会長とカフェに来て、丸テーブルに向かい合わせに座らされてた。
暴君生徒会長は黙ってホットココアを飲んでいる。
どうして私は今、ここにこうしておっかない生徒会長と一緒にいるのだ?
じっとテーブルの上のコーヒーを見つめていると、声をかけられた。
「どうした?飲まないのか?冷めるぞ?」
不思議そうな顔で私を見つめる生徒会長。
ここで不審な態度を取ればますます疑いの目で見られてしまうに決まっている。
「い、いえ・・・では頂きます。」
カップを手に取り、一口飲む。ゴクリ。うん、美味しい。
「う~む・・・しかし、見れば見る程誰かに似ている・・。」
相変わらず無遠慮にジロジロ見つめて来る生徒会長。普段はポンコツのくせに、たまに妙に勘が鋭い時があるので困った男だ。もうこうなったらさっさとコーヒーを飲んで退散しよう。
私は一気にコーヒーをあおると、言った。
「それでは飲み終えたので、私はこれで失礼します。」
席を立とうとしたのに止められた。
「まあ、いい。俺の良く知っている人物に似ているお前に聞いて欲しい事がある。」
あの?私、失礼しますと言ったんですけど?
「実は俺はある女生徒と入学式の時に運命的な出会いを果たした。」
はいはい、それは私の事ですよね?
「彼女は俺の運命の相手で間違いは無いと一目見た時に直感でそう思った。生涯の伴侶となる女性がまさか突然目の前に現れたのだから、これほどの衝撃は今迄感じた事が無かった。」
生徒会長は遠くを見るような眼つきで語る。一方、私の心境は穏やかではない。
何?何寝ぼけた事言ってる訳?こ・・怖すぎる・・っ!あまりの恐怖で震えを押さえるのがやっとだ。駄目だ、この男はあまりに妄想癖が強すぎる。こんな事なら強引に病院へ連れて行き、脳の検査を受けさせるべきだった—!
「おや?どうした?先程から顔色が悪いようだが・・・?」
生徒会長は私の顔色が青ざめているのに気が付いたのか、声をかけてくる。
「い、いえ。大丈夫です・・・お気になさらずに・・・。」
言った後で激しく後悔した。
ああっ!私の馬鹿!気分が悪いとでも言えばこの場を解放して貰えたかもしれないのに・・・!
「俺は一生懸命彼女を愛でようとしたが、照れ屋の彼女はいつも俺から逃げようとしていた。そこがまた可愛いのだが・・・。」
いいえ、照れて逃げていたのではありません!心底、嫌だったから、逃げていたんですっ!
「だが、ある日・・俺は別の女性に恋してしまったっ!俺だけじゃない、彼女に横恋慕していた他の男共も、突然にだ!」
アメリアの事を言ってるのかな・・・?
「その女性には一緒にいる意地の悪いピンクの髪の女がいつも付きまとっていて・・・何かと俺達に熱烈にアプローチしてきたが、俺を含めて他の男共も、最初は誰も相手になどしてこなかった・・・・はずだったのに、気が付いてみると俺達はピンク髪の女の虜になっていたのだっ!」
何故か悔しそうに語る生徒会長。やはり、ソフィーの取り巻きになったのは自分の意思では無かったのかなあ?
「そして、今日決定的な事が起こった!俺の愛を取り戻そうと彼女が戻って来たのだ!」
生徒会長は恍惚の表情を浮かべると叫んだ。
え?ちょっと待ってよ。愛を取り戻す?一体何の事?
「彼女は見事にピンク髪の女の悪事を友人達と暴き、再び俺達の前から姿を消してしまった・・・・。」
がっくりと項垂れる生徒会長。
別に私は愛を取り戻すとか、悪事を暴く為にあんな事をしたわけでは無い。でも弁明するのも面倒だし、このままでいよう。
でも今の話しぶりだと、恐らくはソフィーに対する気持ちは冷めている。
まあ、それだけ聞ければこの時間も無駄では無かったのかも・・・。よし、今度こそ帰ろう。
「お話は済みましたね?それでは失礼します。」
「おい、まだ俺の話は・・・。」
生徒会長が何か言いかけたが、私は逃げるように席を立つと急ぎ足でカフェを出て行った。
「ふう・・・危ない所だった・・。」
「おい!待て!そこのメイド!」
何と生徒会長が追いかけてきている。に、逃げなくてはっ!
私はスカートの裾をまくると走り出した。
「お、おい?何故逃げるっ?!」
それでも無視して走り続けたが、体力のないジェシカの身体。
あっという間に生徒会長に回り込まれてしまった。
「何故、俺から逃げた?」
ジロリと睨み付ける生徒会長。う・・・そ、それは・・・。
「も・・・門限が・・門限が近いからですっ!」
咄嗟に嘘をつく。
「何だ、そんな事か。だったらそう言えばいいのに。」
言いながら私の前にイヤリングを差し出す。
「ほら、落とし物だ。」
あ・・・いつの間に・・・。
「あ、ありがとうございます。」
受け取った私に生徒会長が何かに気付いたかのように言った。
「おい、随分髪型が乱れているぞ?」
そう言って私の頭に手を伸ばし・・・
ズルリ。
カツラが完全に外れてしまい、私の栗毛色の髪の毛がバサアッと広がる。
し、しまった—!
生徒会長の顔が驚愕の表情を浮かべる・・・。
2
「ハアッ、ハアッ」
息を切らしながら私は何とか女子寮まで走り切る事が出来た。振り返っても生徒会長の姿は見えない。良かった・・・・何とか無事に撒くことが出来た。
時計を見ると18時15分を指している。
何とかグレイとルークとの約束の時間に間に合った・・。
私はノロノロと重い身体を引きずるように自室へと向かう。
さて、私がどうしてあの生徒会長の魔の手から逃げる事が出来たかと言うと・・。
時間は今から約10分程前に遡る―。
「おい、随分髪型が乱れているぞ?」
生徒会長が私の髪の乱れに気が付き、私の頭に手を伸ばした。
ズルリ。
カツラが完全に外れてしまい、私の栗毛色の髪の毛がバサアッと広がる。
し、しまった—!
生徒会長が驚愕の表情を浮かべる・・・。
「お、おい!お前・・・ジェシカだったのか?!」
驚愕の表情から途端に喜びの表情へと変わる生徒会長。
「そうか、お前は他の連中の目を気にして変装までしてこの俺にわざわざ会いに来てくれたのだな?やはり俺の事が忘れられなかったのだろう?」
何処をどう解釈すれば、その様に自分本位の考えに至るのだろう?冗談じゃないっ!
生徒会長など死んでもお断りだ!
私はフルフルと無言で首を振って後ずさる。
そして、再び踵を返して猛ダッシュで逃げだした。
「おい?!ジェシカッ!逃げるなっ!」
生徒会長の怒声が響き渡り、私の後を追っかけて来るのが分かった。
ヒイイイイッ!こ、怖いっ!
私は咄嗟に目の前に見えた校舎の建物の陰に隠れる。
しかし・・・。
「どうした、ジェシカ?そんな校舎の陰に隠れて逃げられるとでも思っているのか?観念して出て来い。」
最早完全に悪役のような台詞を吐きながらゆっくりと近づいてくる生徒会長。
「見つけたっ!」
生徒会長は私が隠れた校舎の建物を覗き込む。
が、しかし・・・。
「うん・・・?何故いないのだ?」
木の陰や茂みの中等、私の事を一生懸命探し回る生徒会長。
そして私はそんな彼を他所に、ケビンにプレゼントしてもらった指輪で自分の姿を消して、反対側から抜け出していたのだ。
生徒会長から十分距離を取ると、今度は一気に女子寮に向かって駆けだす。
早く、早く指輪の効果が切れる前に・・・。
こうして私は無事に生徒会長の魔の手から逃げ出す事に成功した。
まさか、こんな場面でも指輪が役に立てるとは・・・ケビンには本当に感謝だ。後で何かお礼をしないと・・。
「それにしても・・・本当に心臓に悪い鬼ごっこだった・・・。」
私はまだバクバクしている心臓を押さえながら言った。出会ったのが生徒会長だったのは本当に不運だった。これがまだノア先輩やダニエル先輩だったらマシだったのに・・・。
その後、私は約束の時間まで荷造りを済ませて7時少し前に防寒着を着て女子寮の入り口まで出てみた。
「「ジェシカッ!」」
2人は既に待ってくれていて、同時に私の名前を呼ぶ。
「良かった、2人一緒に出てこれたんだね。」
「ああ、全ての荷造り作業が終わったからな。あ~それにしても肩が凝ったよ。」
ルークは首をコキコキ鳴らしながら言った。
「ごめんね、疲れている所呼び出しちゃて。」
「何言ってるんだよ、今夜は誘ってくれて嬉しかったぜ。」
グレイはニコニコしながら言う。
「それじゃ、何処か食事でも行くか。」
伸びをしながらグレイが言うと、ルークが提案して来た。
「セント・レイズシティの門の近くに安くて美味いステーキハウスが出来たんだ。そこへ行って見ないか?」
「おお~それは素敵ね!私、行ってみたいな。」
「ああ、それはいい考えだな。よし、行って見ようぜ。」
グレイも迷うことなく賛成した。
こうして私達3人はステーキハウスで夕食を取る事になったのだ。
「うん、美味しい!このカットステーキ!」
私は熱々の一口大のお肉を口に入れると、うっとりした。
「俺のも美味いぜ。このサーロインステーキ、最高だぜ!ルーク、お前良い店知ってたんだな?」
グレイも嬉しそうに肉を口に頬張っている。
「だろう?偶然この店が目に入って一度だけ食事したことがあったんだ。その時はランチの時間帯だったが、余りに安くて美味くて感動したんだよ。」
ルークの頼んだメニューはロースステーキ。こちらもとても美味しそうだ。
暫くはお互いの肉がどれだけ美味しいかの議論をしながら3人でテーブルを囲んでのディナータイムを楽しんだ。
そして、食後のコーヒーを飲む頃にようやく本題へ。
「ジェシカ、俺達を今晩呼んだのはアラン王子の事だろう?」
ルークがじっと私の目を見ながら尋ねて来た。
「うん、そうなんだけど・・・・。どう?アラン王子の様子は。今日は色々とショッキングな1日だったからね。」
私がため息交じりに言うと、グレイとルークは2人で目を合わせ、ルークが口を開いた。
「ああ・・・。その事なんだけどな、ジェシカ。実はアラン王子・・・すごく不機嫌な顔で帰って来たんだよ。一体町で何があったんだ?」
隠していても仕方が無いか・・・。それにグレイもルークも私達が出掛ける時のエマ達の様子を見ているのだから、おおよその見当はついているかもしれない。
「実は・・・。」
私は事の全てを話した。見る見るうちに青ざめた顔になっていくグレイとルーク。
それは当然だろう、何せ一国の王子に攻撃魔法をしかけているのだから。おまけに男と女のド修羅場事件まで現場では起こったのだ。
「そうか・・・それでか・・。」
ルークは頭を押さえて言った。
「何?何があったの?」
「ああ、実は寮に戻ってから少しして、ソフィーから呼び出された様でアラン王子は一度外出したんだ。けれど、1時間も経たないうちに寮に戻って来てからはずっと機嫌が悪く、話しかけてもろくに返事すらしてくれなくて・・・。」
グレイはげんなりした表情で語る。
「そうだったんだ・・・ご苦労様。」
私は2人にねぎらいの言葉をかけた。やはり俺様王子のお守は大変だね。
そこで私はある事に気が付いた。
「ねえ、そんなにアラン王子が機嫌悪いなら、勝手に出てきたらまずかったんじゃ無いの?!」
「「・・・。」」
グレイとルークは同時に顔を見合わせたが、すぐにルークが応えた。
「ああ、確かにそうかも知れないが・・・俺達にとってはジェシカからの誘いの方が大事だからな。」
「だ、だけど・・・っ!」
今日のあの騒ぎを実際に彼等は目にしていないから、そんな呑気な事を言っていられるのだ。恐らくアラン王子は相当イラついているに違いない。
「ね、ねえ!すぐに学院に戻ろう?アラン王子の機嫌が悪くなる前に。」
私は2人を促すと、会計を済ませて早々に店を後にした。
門を抜けてセント・レイズ学院に戻ると・・・案の定、アラン王子が気難し気に暗闇のなか、門の付近で腕組みをして立っていた。
「おい!グレイにルークッ!お前達・・・明日は国へ帰ると言うのに一体何処へ行っていたのだ?!」
グレイとルークは私をアラン王子の視界から隠す様に立っている。
「申し訳ございませんでした、アラン王子。外で外食をしてきたもので・・・。」
ルークは頭を下げる。
「申し訳ございませんでした!」
グレイも頭を下げた時に、アラン王子は私に気が付いたのか声をかけてきた。
「うん?誰かと一緒だったのか?」
どうもアラン王子からは逆光になっているのか、私の姿が見えない様だ。
仕方が無い・・・・。私は溜息をつくと一歩前に進み出て声をかけた。
「こんばんは、アラン王子様。私が彼等を夕食に誘ったのです。なので2人を責めないで頂けますか?」
「ジェシカ・・・・。」
アラン王子は呆然とした顔で、その場に立ち尽くしていた—。
3
「今夜は私の我儘に付き合ってくれてありがとう。それじゃ、また来学期に会いましょう。元気でね。グレイ、ルーク。」
私はアラン王子に叱責されないようにわざと言うと、グレイとルークの交互に握手をした。
「それではアラン王子様、失礼致します。」
頭を下げて、歩き始めるとアラン王子から声をかけられた。
「待ってくれ、ジェシカ。」
振り向くとアラン王子は何やら思い詰めた顔をしている。
「何か御用でしょうか?アラン王子様。」
「お願いだ・・・少し・・・ほんの少しの時間でも構わないから、話をさせて貰えないか?」
切羽詰まったように声をかけてくるアラン王子。一体何だと言うのだ?私にはもうアラン王子と話したい事等一切無いのに。
だが・・・仮にも一国の王子。無下に断る事等出来ない。
「そうですか・・・ご命令とあれば、お受けします。」
「命令・・・?」
何故か酷く傷ついた顔をするアラン王子。そんな私達をハラハラした様子で眺めるグレイとルーク。
「い、いや・・・命令と言う訳では・・・・。」
困ったように目を伏せるアラン王子。何だかそんな姿を見ていると私が酷い事をしているような罪悪感が募って来る。仕方が無い・・・。
「アラン王子様、お食事はお済ですか?」
「い、いや。まだだ。」
「そうですか・・・。外は寒いので、お話なら何処かのお店に入ってしませんか?風邪でも引きましたらいけないので。」
「え?い、いいのか?」
途端に明るい表情になるアラン王子。
そして今、私達はサロンへ来ている。アラン王子は軽食とワイン、私はスパークリングワインを頼んだ。
そう言えば、今までに何回もサロンへ来ているが、アラン王子と2人で来るのは初めてだなあ・・・等と考えていると、カウンター席の隣に座るアラン王子から声をかけられた。
「何を考えているんだ、ジェシカ?」
「え?」
私は顔を上げてアラン王子の顔を見つめた。
「いえ、特に何も考えてはいませんでしたが。」
「そうか・・・。」
再び目を伏せるアラン王子。
「それより、私に何かお話が合ったのでしょう?どうぞ、話して下さい。アラン王子様も明日は早くご出発されるのでしょう?」
時計を見ると、既に22時を過ぎている。
「あ、ああ。そうだな・・・。早く帰って休まないと明日に響くからな・・・。」
私はアラン王子の前に置かれているサンドイッチに目をやる。・・・が、殆ど手付かずのままだ。
「お食事・・・召し上がらないのですか?」
「ああ。この所、あまり食欲が無くて・・・な。」
アラン王子の横顔を見ると、以前にもましてやつれてしまったようにも見える。
「お食事は・・・きちんと摂られた方が良いですよ。お国の方々も・・・心配されると思います。」
「すまない・・いや、すまなかった。」
いきなり謝罪してくるアラン王子。
「それは・・何に対しての謝罪ですか?お食事を摂れていない事の?それとも・・・本日の出来事についてですか?」
しかし、それには答えず私を見つめるアラン王子。
「俺が贈ったネックレスは・・・もうつけてくれないのか?」
え?ネックレス?そう言えば・・・あの日以来付けるのをやめていたんだっけ。
「ええ、そうですね・・・。思い出の品として箱に入れてしまってあります。」
「思い出の品・・・か。」
自嘲気味にフッと笑うアラン王子。
「俺が、どうしても会って話がしたいと言ったのは・・・分かり切っているとは思うが、他でもない。ソフィーの事なんだ。」
ああ、やはりそうか。と言うか、その話以外にあり得ないだろう。
「ええ・・・そうでしょうね。だと思いました。」
私はスパークリングワインを飲むと答えた。
「彼女がお前に乱暴な真似を働いて、助けてやれなかった事を謝らせて欲しい。」
頭を下げるアラン王子。
「お待ちください。アラン王子様から私に謝罪して頂く義理は一切ありませんので、どうか頭を上げてください。」
確かに太いつららが何本も自分目掛けて飛んで来たり、平手打ちされたのは痛かったが、全部それはソフィーがやった事。アラン王子には何の関係も無い。
「俺は・・・正直、ソフィーがあそこまで酷い女だとは思っていなかった・・・。生徒会長やダニエル・ノアはもうすっかり嫌気が差したと言って彼女の傍から離れて行ったよ。だが、俺は・・・。」
アラン王子はそこで言葉を切って黙って俯く。
やはりそうか。
ソフィーの元々の狙いはアラン王子。生徒会長はさておき、ノア先輩やダニエル先輩にはそれ程強く固執していなかったと言う訳だ。
私はもう確信している。
ソフィーは私と同様、魅了の魔法を使えるか、強い催眠暗示でアラン王子の心を縛り続けているのだろう。
可哀そうなアラン王子。
この世界のソフィーが私が小説の中で書いたソフィーの様に優しい心の持ち主だったらアラン王子も幸せになれるのに・・・。
「俺は・・・今日のソフィーを見て、心底ゾッとした。どこまで彼女はあさましいのだと思った。あんな人間は絶対受け入れてはいけないと頭の中では分かっているのにどうしても・・・あの目、あの声を聞くと抗えなくなるんだ・・っ!」
アラン王子は両手で頭を押さえて俯く。何て気の毒なのだろう。
でも、アラン王子の心配ばかりしている場合では無くなってきた。
生徒会長達はソフィーの呪縛から逃れることが出来た。けれどもアラン王子は?
心の中では彼女を嫌悪しているにも関わらず、離れることが出来ない。となれば・・
私が夢で見たあの時の状況が現実となってしまうのではないだろうか?
どうしよう、どうすればいい?
ソフィーによって囚われたアラン王子の心をどうすれば解放する事が出来るのだろう?
ああ、もう!お酒に逃げたくなってしまうっ!
気が付けば私はスパークリングワインを2本も空けてしまっていた。
グラリ。
私の頭が大きく傾く。
アラン王子も食事には殆ど手を付けずにワインばかり飲んでいる。
やがて・・・すっかり酔いが回ってしまった私はうつらうつらしながらアラン王子の話を聞いていた。
「ジェシカ・・・。俺を助けてくれないか?このままでは俺の心は本当にソフィーによって囚われてしまいそうだ。あの女は・・・まるで魔女だ。」
気が付けば、私はアラン王子の肩にもたれるように座っていた。
「助・・ける・・?」
「ああ・・。俺を助けられるのは、もうジェシカしかいない。」
アラン王子の声に熱が籠っている。きっと王子も相当酔っているのだろう。
「どう・・・やって・・・?」
私しかアラン王子を助けられない?でもソフィーによってアラン王子の囚われそうな心を救う事が出来たなら、自然と自分の不幸な未来を回避できるのであるとしたら・・・。
でも何故私しか出来ないと言うのだろう?
「わ・・私には・・他の人達のように・・魔法を使えないのに・・?」
駄目だ、酔いが回る。やっぱり飲みなれない種類のお酒は飲むべきじゃ無かったかも・・・。
「ああ、ジェシカにだけしか出来ない。何故なら俺が本当に心惹かれた女性はジェシカだから。お前なら俺の呪縛を・・きっと解けるはずだ。」
何故か抱き寄せられたかのような感じを抱いた。
そうか、それなら・・・。
「わかり・・・ました・・。」
でも、どうやって・・・?
そこから先の記憶は覚えていない—。
翌朝—
私は見知らぬ部屋でパニックを起こしていた。
う・・嘘でしょうっ?!
何で何で何で?!
目が覚めた私は自分が何も服を着ていない事に気が付いた。そして隣には私と同様の姿でスヤスヤと眠っているアラン王子。
震える手で床に落ちているシーツで身体を包むと、自分の服を探す。
みるとご丁寧にテーブルの上に畳まれて置かれているではないか。
服を掴み、バスルームを捜した。
あっ!あった!
バスルームに駆け込むと大急ぎで服を着る。
着替え終わると、そっとベッドルームを伺う。
アラン王子はぐっすり眠っているようだ。
い、今のうちに・・・。
私は逃げるように部屋を飛び出した。
どうしようどうしようどうしようーっ!!
頭の中はパニックを起こしていた・・・。
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