目覚めれば、自作小説の悪女になっておりました

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売

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※マシュー・クラウド ⑧ (イラスト有り)(性的描写有り)

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1

俺の問いにジェシカはどこか曖昧な笑みを浮かべながら答えた。

「私は・・・ジェシカだよ、ジェシカ・リッジウェイ。この物語の・・・悪女。」

この物語?変わった話し方をするジェシカに少し違和感を感じたので、わざとお道化た調子で俺は言った。
「俺には君がとても悪女なんかには見えないけどね?」

「今はそうかもしれないけどね。門を開けたところで私は悪女になるんだよ?」

まるで全てを悟ったかのような表情で答えるジェシカ。それは諦めの表情にも見て取れた。

「確かに・・・門を開けて人間が通るのは大罪を犯す事になるけど・・・。」
俺は愛しい彼女に近付き、髪を一房すくいあげて、口付けしながら言った。
「ジェシカ。君は俺から見たら・・・聖女だよ。聖女はね・・・万人から愛される存在なんだよ。そう、君のようにね。」

ジェシカは何処か狼狽えたような、少し怯えたような瞳で俺を見つめた。

「聖女?私が・・・まさか。だってこの物語の世界の聖女は・・・ソフィーのはず・・・。」

 まただ。ジェシカは・・・まるでこの世界が物語であるかのような言い方をする。何故、君はそんな話し方をするんだい?それにソフィーが聖女だって?冗談じゃない。
あの女は聖女というよりは悪魔に魂を売った堕天使のようにしか俺には見えない。
だから俺は言った。自分の身体には半分魔族の血が流れているから、ソフィーから溢れ出している禍々しい気配を感じると。そしてジェシカには魅了の魔力が身体から放たれている・・・。それこそ、きっとソフィーが手に入れたくて仕方が無いものに違いない。だからこそ嫉妬でジェシカに様々な嫌がらせをしてきたのだろうと俺は教えた。
青ざめていくジェシカに俺は言った。あらかじめ定められた運命なんて俺は絶対信じない。未来を諦めてしまってどうする?今はノア先輩を助け出す事だけを考えるんだ。
 
 そして、簡単に明日の計画をジェシカに話した。ただし、俺にはするべき事があるから。魔界へは1人で向かうようにと・・・。
それを聞いたジェシカは怯えた目で俺に言った。
一体何をするつもりなの?とその顔は今にも泣きそうにも見えた。
いけない、俺は今ジェシカを不安な気持ちにさせている。こんな顔を君にさせるつもりは無かったのに・・・!
 だから敢えて俺は笑顔で答えた。俺には門を守るという使命があるからそれを全うするだけだと。
そして、ジェシカの額にそっと手を乗せる。そこには目に見えない、魔物から身を守るための加護の印が付けてある。その加護をより一層強める為の呪文を唱えた。

「俺の守りの加護がきっとジェシカを守ってくれるはずだ。だから心配する事は無いよ。俺の事を信じてくれるほどに、その加護は強くなるから。必ず君を守ると誓ってみせる。」
ジェシカの瞳を真っすぐ見つめて、俺は言った。

「信じる・・・私、マシューを信じるに決まってるでしょう?」

ありがとう、ジェシカ。
俺は彼女の手を取り、自分の方へ引き寄せると小さな体を強く抱きしめて、ジェシカの耳元にそっと囁いた。
「俺のたった1人の聖女・・・。」
そう、ジェシカこそ俺に取っての紛れもない聖女だ。君を守る為なら俺は喜んで、この命を捧げよう—。

 
 ここは時間が止められた世界。ピンク色の桜の花びらが後から後からヒラヒラと地面に落ちてゆく。
なんて美しい世界なのだろう・・・。でもそれ以上に美しいのは隣に立つジェシカだった。あの紫の瞳に映るのが、俺だけだったらどんなにか良かったのに。だけどジェシカの心は今、恐らくノア先輩に向いている。それを思うと俺の心はチクリと傷んだ。でもそれだけじゃない。
ジェシカ・・・きっと君は昨日公爵と深い仲になったよね?
だって、微かに公爵の魔力の香りが感じられるから。
俺が半分魔族の血を引いていなければ、こんな微量な香りに気付かずにいられたのに。
ふと見ると、ジェシカの髪に桜の花びらが付いている事に気が付いた。彼女の髪に手を伸ばすと驚いた様に俺を振り向く。

「な、何?」

「髪に・・・花びらが付いていたから。」
俺は手に取った花びらをジェシカに見せた。
ありがとうと、はにかむように微笑んだジェシカを見て、思わず自分の考えていた言葉が口をついて出てきた。
「・・・綺麗だね。」
ジェシカ、君は本当に・・・。

「うん、桜って・・・・とても奇麗でしょう。」

 ジェシカの答えは意外なものだった。だから俺は笑いながらジェシカの髪に手を添えた。
桜も綺麗だけど、ジェシカの事を言ったんだよと答えると、彼女は頬を赤く染めてびっくりさせないでと言って来た。
俺は自分の気持ちを正直にジェシカに伝えた。初めて見た時からずっと綺麗だと思っていた事、そして・・・こんな風にジェシカに触れられる日が来るとは思わなかった事・・・。だってそうだろう?彼女は俺の憧れの存在でとても手が届くような相手では無いと思っていたのだから。

 すると、何故かジェシカは今にも泣きだしそうに顔を歪めて俺に言った。
死なないで、私の為にも・・・と。その瞳にはうっすら涙が浮かんでいた。
俺の中でジェシカに対する愛しさが募り、思わず力強く抱きしめるとジェシカも俺を抱きしめ返してくれた。
「ありがとう、ジェシカ。その言葉を貰えただけで・・俺は嬉しいよ。きっと俺が魔族とのハーフで生まれてきたのも、聖剣士としてこの学院に入学してきたのも・・・全てはこの日の為だったんじゃないかと今では思ってる。」
そう、俺の使命はジェシカを守る事なんだ—。

 ジェシカは俺の言葉を聞くと、激しく泣きじゃくった。ジェシカ、俺の為に涙を流してくれるの?
俺は彼女が泣き止むまで、抱きしめて髪をそっと撫で続けた・・・。

 ジェシカが泣き止むと俺達は桜の花びらの上に横たわり、桜の木を見上げていた。
雪のように降って来る花びらを見つめていると、ふいにジェシカが声を掛けて来た。
何と彼女は既に一人協力者を見つけていたというでは無いか。しかもその協力者とは俺も一度会った事があるレオという人物だった。
そうか・・今にして思えば、彼もジェシカの事が好きだったのだ。だからこそ魔力も持たない人間なのに、『ワールズ・エンド』までやってきたのか。俺の中で訳の分からない苛立ちが募る。

 気が付くと、俺はジェシカに覆いかぶさるような姿勢で彼女の話を聞いていた。
自分の中に醜い嫉妬心がフツフツと湧き上がってくるのを感じる。
そんな俺の様子に異変を感じたのか、ジェシカは申し訳なさそうに話を続け、最期に勝手な事をしてごめんなさいと謝って来た。

 そこで俺は我に返る。こんな嫉妬に満ちた顔をジェシカには見られたくない・・!
ジェシカの身体から離れ、背を向けると彼女は怒ってるの?と益々不安げに俺に尋ね、謝って来る。
違う、そんなんじゃないんだ・・・。俺は両手で顔を隠しながらジェシカに言った。
俺はジェシカの側にいる男性達に・・ノア先輩に嫉妬していると白状した。
そうだ、きっとこれでジェシカはもう俺に幻滅してしまったに違いない。

「あ・・あのね・・マシュー・・。」

ジェシカが躊躇いがちに俺の名前を呼ぶ。振り返った俺は・・・。
無意識のうちにジェシカを組み伏せていた。ジェシカは驚いた様に目を見開いて俺を見つめている。そして、その紫の瞳には今は俺だけが映し出されていた。
マシュー?と呼びかける彼女に、・・・気付けば俺はキスをしていた。

てっきり、嫌がられる素振りをされるかと思っていたのだが、彼女は黙って俺を見つめていた。え・・?
「俺の事・・・拒まないの?」
震える声で尋ねた。

「拒むわけ・・・無いでしょう・・?」

ジェシカは慈愛を込めた笑みを浮かべる。本当に?ジェシカ・・・。この俺は半分魔族だよ?それなのに俺を・・受け入れてくれるの・・?
俺はジェシカの頬にそっと触れると言った。

「ジェシカ・・・。大好きだよ。」

するとジェシカは瞳を閉じた。
いいの?俺は・・・もうこれが最後になるかもしれないからジェシカと今、この場所で結ばれたい。
俺を受け入れてくれるって事なんだよね?
試しに腕の中のジェシカを強く抱きしめ、深い口付けをするとジェシカはそれに応えてくれた。一気に俺の心臓の音が高まる。



そうか、それなら・・・。

俺は震える手でジェシカの服に手をかけた—。


もう、俺は思い残す事は何も無い。
仮に明日、死んでしまう事になったとしても・・・今、俺の腕の中で甘い声を聞かせてくれる愛しいジェシカを思えば、死ぬことなんて怖くない。いや、むしろ彼女の為に死ねるなら、本望だと思っている。
だから、ジェシカ・・・。俺の事は気にしないで。
『ワールズ・エンド』へ無事に辿り着く事が出来たら、ノア先輩を助け出す事だけを考えるんだよ。

そして俺は深くジェシカを抱きしめた―。




2

あれからどの位の時間が経過しただろうか・・・。いや、この空間では時間という概念が存在しないから、今の言い方は正しくはないかもしれない。
俺とジェシカは手を繋ぎ、寄り添うように桜の木の下に寄りかかって座っていた。
でも、いつまでもこうしていても仕方が無い。幸せの時間はここまでだ。

「ジェシカ。」
傍らにいるジェシカに声を掛けた。

「・・・行くの?」

俺の考えている事がジェシカに伝わったのだろうか?その質問に答えた。
「うん・・・。レオって人に連絡を入れないとね。この場所に居ても彼とは連絡を取る事が出来ないから。」
立ち上りながらジェシカに手を差し出す。ジェシカは黙って俺の手をそっと握ると立ち上がった。

「私・・・今日の事、一生忘れないから・・。」

 ジェシカは桜の木々を見つめながらポツリと言った。一生忘れない?勿論俺だって同じ気持ちだ。
俺は背後からジェシカを抱きしめると言った。
「俺も・・・絶対に・・・忘れない。」
そして、ジェシカの顎を摘まんで、自分の方を向かせると口付けする。

そう、2人の恋人ごっこの時間はここまでだ―。



 俺はジェシカをセント・レイズシティの宿屋へ残し、諸島が見渡せる港へやってきていた。ここからレオの波長を見つけ出し、彼に連絡を入れるのだ。
ジェシカの話ではこの港から見える何処かの島に隠れ家があるそうだが・・・・。
意識を集中させて俺はレオを探す。彼には一度会ったことがある。
あの波長を探すんだ・・!
集中すること、約1時間・・・・。ついにあの男の波長を掴んだ。俺は魔力を行使して、レオの心に話しかけた―。 

 突然頭の中から話しかけた時、レオは半ばパニックを起こしかけそうになり、危うく通信が途切れそうになった。
そこで、何とかジェシカの話と『ワールズ・エンド』の門番をしていた聖剣士だと名乗る事で、ようやくレオ落ち着かせる事が出来た。
最も、彼自身も近いうち『魔界の門』へ向かう知らせが届くだろうと心の準備をしていたらしいが、流石に頭の中から直接話しかけられるとは思わず、驚いたそうだ。


「ジェシカ。」
宿屋に戻ると、部屋で待っていたジェシカに声をかけた。

「マシュー。レオには連絡取れたの?」

ジェシカは椅子から立ち上がると言った。

「うん、やっと連絡出来たよ。ちょっと彼を探すのに手間取っちゃって、ごめんね。遅くなって。」

「何言ってるの?そんな事・・・。え・・?どうしたの?マシュー。何だかすごく顔色が悪いけど・・?」

ジェシカが心配そうに俺の顔を覗き込んできた。
「いや・・大丈夫だよ。ただ、レオを探すのに魔力を使い過ぎてしまって・・。それで・・・彼がこの島にやって来れるのは今夜10時になるらしいんだ。」
そう、相手の波長を探す魔力はかなりの力を必要とする。ましてや一度しか会った事の無い相手ともなると、尚更だ。

「え・・?そうなの?レオ・・随分忙しいのね。」

今の時間は午後の3時。レオとの待ち合わせまでは7時間もある。さて、どうするか・・・。

するとジェシカが言った。

「ねえ、マシュー。貴方はこの宿屋で仮眠を取ってよ。」

「え?ええ?この部屋で・・・?」

確かに今日はこの部屋を借りたけども、それは明日の打ち合わせをする為に借りた部屋であるが、仮眠を取れなんて・・・。

「だって、マシュー。今にも倒れそうなぐらい具合が悪そうなんだもの。ね?お願い、少し眠って。」

ジェシカは強引に俺をベッドまで押すと、座らせた。

「だけど・・・君はどうするの?学院に・・戻る?」

ジェシカは少し考え込んでいたが、首を振った。

「私は・・・戻らない。だってマリウスやアラン王子、それに公爵に会える自信が無いから。」

確かにジェシカの言う通りだろう。

「それじゃ・・・?」

「セント・レイズシティで買物をしてくるね。ほ、ほら・・・魔界に行った時に何かと必要になる物があるかもしれないから。」

ジェシカは少し慌てたように言った。・・・?何かあるのだろうか・・?
でも、これ以上詮索するのはやめておこう。
「分かったよ。それじゃ・・・お言葉に甘えて、仮眠を取らせてもらうね。」
俺はベッドに潜り込むと言った。

「うん、ゆっくり休んで。それじゃ私は出掛けて来るから。」

ジェシカは手を振ると、部屋を出て行った。
俺は余程疲れていたのだろう。ドアがぱたんと閉まる音を聞いた途端、強い眠気に襲われて・・・深い眠りについた。
そして、そのまま俺は夜の8時まで眠りに就いてしまった—。


「う・・・ん・・。」
俺はゆっくり目を開けた。ここは・・どこだろう?何だか見慣れない部屋だ。
そして傍らにジェシカが居るのを見て一気に頭が覚醒した。
「ジェ、ジェシカッ?!」
俺は急いで飛び起きると彼女の名前を呼んだ。

「マシュー?目が覚めたのね?」

ジェシカは本を読んでいたようだった。膝の上には閉じられた本が乗っている。
窓の外を見て俺は驚いた。いつの間にか夜になっている。

「ジェシカ・・・今・・何時なの?」

「午後の8時よ。」

「え・・ええ?!よ、夜の8時?!」
何てことだ、俺はジェシカを放って置いて5時間も眠ってしまっていたのだ。
「ご、ごめん!ジェシカ!5時間も1人にさせて・・・!」
必死で謝るが、彼女はきょとんとした顔で俺を見ている。

「何故謝るの?ゆっくり休めたようで良かったわ。うん、顔色も良くなっているし・・大丈夫そうだね?」

ジェシカは俺を見つめて、ニッコリ笑った。う、か・可愛い・・・。思わず顔が赤らむ。俺はこんなに素敵な女性と今日・・・・。思わず桜の木の下での出来事を思い出して、動揺してしまう。
そしてそんな俺を不思議そうに見つめるジェシカ。い、いけない。気持ちを引き締めないと。
「ジェシカ、夕食はもう食べたの?」
俺は胡麻化すためにジェシカに話しかけた。

「うううん、まだよ。」

「え?!まだ食べていなかったの?どうして?」

「だって、マシューが寝ていたから。どうせなら2人で一緒に食事を取りたかったの。」

2人で一緒に・・・こんな些細な言葉でも俺はいちいち胸がときめいてしまう。あの頃よりも・・・今の俺の方がずっとジェシカの事を好きになっている自分に改めて気が付く。

「そ、そうなんだね。あ・・ありがとう。それじゃ、ここの宿屋の下の食堂で食事をしようか?」


 食事を食べ終えると、時刻はもう9時半を過ぎていた。

「ジェシカ・・そろそろ行こうか?レオとは港で会う約束をしているんだ。」

「うん、分かったわ。」

そして俺達は港へ向かった―。


 レオは5分程遅れて小型ボートに乗って港へ現れた。挨拶を交わすと、近くの酒場へ3人で移動して、俺とジェシカは顔がばれないようにフードを目深に被ると、一番目立ちにくい奥のテーブル席に座り、打ち合わせを始めた・・・。
そして話が大詰めを迎える頃に俺は突然強い視線を感じた。それはとても恐ろしい憎悪が込められた俺だけに向けられた視線だった。
「!」
思わず俺は窓の方を見る。そこには・・・ほんの一瞬だったが、まるで悪鬼のような表情のソフィーがこちらを見ていた。そしてソフィーの思念が俺の頭の中に流れ込んでくる。
<許さない・・・私の聖剣士であるのに、貴方は裏切るのね・・・?>
全身が総毛だつのを感じた。
な・・何だ・・・?あの女は一体・・?半分は魔族の血を持つ俺をここまで脅かすのは・・。それに今何て言った?お前の聖剣士?冗談じゃない、俺は・・ジェシカだけの聖剣士だ。
 
俺の様子にジェシカとレオは不安げに俺を見ている。
駄目だ、気をしっかり持たなくては―。


 レオと別れた後、俺はジェシカを自室まで送る事にした。時刻はもう深夜を回っていたし、門限を過ぎていたからだ。
ジェシカを部屋まで連れて来ると、俺は言った。

「ジェシカ、30分程でもいいから少しだけ話がしたいんだ。いいかな?」

「私は構わないけど・・・他の寮生にマシューが女子寮に居る事ばれないかな?」

ジェシカの言う事は最もだ。だから俺は特殊なシールドをかけた。このシールドがあれば、決して中へ入る事も出来ないし、音も漏れる事は無い。
俺は最後の説明を終えると言った。

門をくぐり抜けたら、後ろを振り向かずに、走るんだ。決して誰にも捕まらないようにと・・・。
そう、あそこにソフィーが現れたという事は必ず追手が放たれるだろう。俺は何としても時間を稼ぎ、ジェシカを無事に門の外へ送り出さなければいけない。
その為には俺の魔族の力を彼女に分け与えなければ・・・!

「あ、あのね・・。マシュー・・・私、貴方に聞きたい事が・・・!」

 俺のただならぬ様子に何かを感じ取ったのか、ジェシカが話しかけて来た。
だが、その続きの話しはさせない。
ジェシカの腕を掴み、引きよせると俺はジェシカに口付けした。深く深く―
俺の魔族としての魔力を注ぎ込む。
甘く、深い口付けに、注ぎ込む魔力で何度か気が遠くなりそうになる。
でも、まだ駄目だ。まだ足りない、もっと魔力をジェシカに・・・!
ジェシカの唇が震えている、何度か俺に話かけようとしているが・・深い口付けに遮られ、言葉にならない。でも、ジェシカ。それでいいんだ・・・。今は何も聞かず、この俺の魔力を受け取って・・・。

 やがて、魔族の魔力を殆ど注ぎ込むと俺はそっと唇を離して言った。
「お休み、ジェシカ。」

その言葉を告げると、ジェシカはまるで糸の切れた人形のようにガクリと動かなくなる。俺はジェシカを抱きかかえると、そのままベッドまで運んで寝かせた。

「ごめんね、ジェシカ・・・。乱暴な真似をして・・・。」
俺はそっとジェシカの唇を撫でると、灯りを消して部屋を後にした―。
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