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第9章 1 空中に浮かぶ魔王城
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「エルヴィラ・・・ここは・・・?」
そこは・・・私が第三階層へやって来た時に閉じ込められていた地下牢だった。
「はい、こちらはハルカ様が第三階層で過ごされていた記憶の中に眠っていた場所でございます。あまり・・・良い思い出は無い場所かもしれませんが・・・私が転移できる場所はここしかありませんでしたので・・・。申し訳ございません。」
エルヴィラは頭を下げてきた。
「何言ってるの?私は別に何とも思っていないからそんな事気にしないで。それよりも・・・こんなに簡単に魔界の第三階層へ来る事が出来るなんて・・思ってもいなかった。本当に凄いのね。エルヴィラは・・・・・。」
「い、いえ。そんな事は・・・。でも嬉しいです。ハルカ様からお褒めの言葉を頂くのは・・・。」
エルヴィラは頬を染めながら言う。
それにしても・・・私は気が付いたことがあった。
「不思議・・・魔界はすごく寒い場所だったのに・・・何故なんだろう?今は少しも寒さを感じないなんて・・・。」
するとエルヴィラが言った。
「はい、ハルカ様。それはハルカ様が手にいれたアカシックレコードの力によるものでございます。」
「え?アカシックレコードの力・・・?」
「はい、ハルカ様はアカシックレコードを自分の物に致しました。それにより・・・今は膨大な魔力が体内に宿っています。その魔力が働いて、無意識のうちにジェシカ様ご自身が体感温度を変化させているのです。」
そうだったんだ・・・。でも・・何となく分かる。今の私は、以前までの私とは違うって事が・・・。
「エルヴィラ・・・。それじゃ・・ドミニク公爵がいると思われる・・かつて魔王が住んでいたという城を探しましょう。だけど・・・どうやって探せばいいんだろう?」
私が考え込むように言うと、エルヴィラが声を掛けてきた。
「ハルカ様は・・魔王になられる以前の彼を・・・・よくご存じですよね?」
「え?う、うん・・・。」
「それだけではありません。答えにくい質問を致しますが・・・何度もこの方と・・・交わっていらっしゃいまね・・・?」
エルヴィラの質問に私は顔を赤らめたが・・・頷いた。
するとエルヴィラが言った。
「それでしたら・・・ハルカ様。今は彼は魔王となってしまいましたが・・・きっと何処にいるのか居場所を探す事が出来るはずです。さあ・・・目を閉じて…まだ魔王になる前のドミニク様の事を思い浮かべるのです・・・!」
私は言われた通りに瞳を閉じて・・・公爵の事を思い浮かべた。2人で一緒に過ごした日々を・・・何度も彼に抱かれたあの記憶を・・・。
すると・・・頭の中で暗闇の世界で・・一筋の光が差すのが見えた。その光の中には・・公爵がいた。
「エルヴィラ・・・!見つけた・・・私、公爵を見つけたわ!」
目を開けてエルヴィラを見ると興奮を抑えきれず私は叫ぶように言った。
「そうなんですね?!分かりました・・・・。では、ハルカ様。」
エルヴィラは私の手を力強く握りしめると言った。
「強く・・・念じて下さい。ドミニク様の元へ飛ぶ事を・・!」
私は頷くと瞳を閉じて、公爵の事を頭に思い浮かべた。
お願い、アカシックレコード・・・・・。私を・・・私を公爵の元へ導いて・・・!!
すると、その途端・・・フワリと身体が宙に浮くような浮遊感を覚え・・・・すぐに足が地面に着地した。
そして恐る恐る目を開けると・・・・暗雲が立ち込めた空の下に立っていた。
荒廃した大地が広がり・・・その荒れた大地を見下ろすかの如く・・・何とも恐ろし気な城が・・空中に浮かんでいたのである。
「あ・・・あれは・・・?」
思わず声が震えてしまう。
「はい・・・。あの城は・・・かつて魔王が住んでいたとされる・・王城です。間違いありません・・・。魔王はあの城にいます・・!」
エルヴィラはまるで空中要塞のような城を指さすと言った。
「あの城に・・・・ドミニク公爵がいるのね・・?」
その城は・・・まるで暗黒の闇に包まれたかのような空中要塞のようにも見えた。それにしても・・。
「どうすれば・・・あの城へ行く事が出来るんだろう?」
遠目からでもはっきり分かる。
その空中要塞は地上から数キロ上空に浮かんでいる。あんな高い場所に浮かんでいる城へどのようにすれば行けるのだろうか・・・?
するとエルヴィラが言った。
「ハルカ様。ご安心下さい。私は浮遊魔法を使えますので、ハルカ様をお連れしてあの城へ行く事等造作もございません。ただ・・・あの付近で魔法を無力化するシールドが張られていなければ・・・の話ですが。どのみちここからでは遠すぎて分かりません。」
「そう・・・なら、あの城の真下迄行ってみましょう?」
私はエルヴィラと共に薄暗く荒れ果てた荒野を歩き・・・ついに浮遊城の真下へとやって来た。
改めて真下から見上げると、その巨大な城に圧倒されて目がクラクラしてくるようだった。
エルヴィラも黙って城を見上げていたが・・・残念そうに言った。
「・・・駄目ですね・・・・。ハルカ様・・・。強力な魔法が掛けられていて・・・浮遊の魔法を使う事は出来ない様です。」
「そう・・・なら仕方が無いね。・・でもひょとすると他にこの城へ行く方法があるかもしれない。階段とか・・・エレベーター?的な物がないかな・・・?ちょっとこの辺りを探してみましょう?二手に分れて探す?」
するとエルヴィラが険しい顔で言った。
「いいえ、ハルカ様。私は決してハルカ様の御側を離れません。よろしいですか?ここは人間界でも『狭間の世界』でもありません。『魔界』のしかも第三階層・・・魔王の城の真下にいるのですよ?どのような恐ろしい魔族がいつどこで私達の前に現れるか分かりません。確かに今のハルカ様は・・・アカシックレコードによって強大な魔力を持つことが出来ましたが・・・まだままだ不安定で身体に馴染んでいないので自由に魔法を使う事が出来ない状態なのです。もう少し経過すれば・・魔力が馴染んで魔法を自由自在に扱えるようになるかもしれませんが・・・それまでは危険です。なので私はハルカ様をお守りする為に一緒に行動させて頂きます。」
「エルヴィラ・・・。」
そうだったのか・・・・。自分の身体の事なのに・・・今の自分自身の身体の状況が全く分からなかった。それでは・・もう少し時間が経てば・・・私も他の人達みたいに魔法を使えるようになるのだろうか?
「分かったわ、エルヴィラ。それじゃ・・・私から離れないで側にいてね?」
「はい、勿論でございます。ハルカ様。」
その後、私達は城の真上を見上げながら・・・暫く何処か城へ行く事の出来る手掛かりが無いか探し続けたのだが・・・結局見つけることが出来なかった。
「どうしましょう・・・。ハルカ様。城へ行く方法が見当たりませんね。」
「うん・・・。困ったな・・。あ!待って!フレアさんなら・・・知ってるかもしれない!だってフレアさんは魔界に咲く不思議な花の管理人をしていたみたいだから・・・ひょっとしたらあの城へ渡った事があるのかもしれないわ!」
「そうですね!彼女なら・・・行く方法を知ってるかもしれません・・・。」
エルヴィラも笑顔で答えた。
「だけど・・・どうやって連絡を取ればいいのかな・・・?」
「ハルカ様・・・。彼女に念を送ってみます。うまくいけば・・・。」
しかし、私は最後までその言葉を聞く事が出来なかった。
いきなり視界が暗転し、次の瞬間私の目に飛び込んできたのは・・・・広々としたホールにまるで玉座の様な椅子に座り、全身黒づくめの衣装を身にまとった公爵が私を黙って見つめていたのである—。
そこは・・・私が第三階層へやって来た時に閉じ込められていた地下牢だった。
「はい、こちらはハルカ様が第三階層で過ごされていた記憶の中に眠っていた場所でございます。あまり・・・良い思い出は無い場所かもしれませんが・・・私が転移できる場所はここしかありませんでしたので・・・。申し訳ございません。」
エルヴィラは頭を下げてきた。
「何言ってるの?私は別に何とも思っていないからそんな事気にしないで。それよりも・・・こんなに簡単に魔界の第三階層へ来る事が出来るなんて・・思ってもいなかった。本当に凄いのね。エルヴィラは・・・・・。」
「い、いえ。そんな事は・・・。でも嬉しいです。ハルカ様からお褒めの言葉を頂くのは・・・。」
エルヴィラは頬を染めながら言う。
それにしても・・・私は気が付いたことがあった。
「不思議・・・魔界はすごく寒い場所だったのに・・・何故なんだろう?今は少しも寒さを感じないなんて・・・。」
するとエルヴィラが言った。
「はい、ハルカ様。それはハルカ様が手にいれたアカシックレコードの力によるものでございます。」
「え?アカシックレコードの力・・・?」
「はい、ハルカ様はアカシックレコードを自分の物に致しました。それにより・・・今は膨大な魔力が体内に宿っています。その魔力が働いて、無意識のうちにジェシカ様ご自身が体感温度を変化させているのです。」
そうだったんだ・・・。でも・・何となく分かる。今の私は、以前までの私とは違うって事が・・・。
「エルヴィラ・・・。それじゃ・・ドミニク公爵がいると思われる・・かつて魔王が住んでいたという城を探しましょう。だけど・・・どうやって探せばいいんだろう?」
私が考え込むように言うと、エルヴィラが声を掛けてきた。
「ハルカ様は・・魔王になられる以前の彼を・・・・よくご存じですよね?」
「え?う、うん・・・。」
「それだけではありません。答えにくい質問を致しますが・・・何度もこの方と・・・交わっていらっしゃいまね・・・?」
エルヴィラの質問に私は顔を赤らめたが・・・頷いた。
するとエルヴィラが言った。
「それでしたら・・・ハルカ様。今は彼は魔王となってしまいましたが・・・きっと何処にいるのか居場所を探す事が出来るはずです。さあ・・・目を閉じて…まだ魔王になる前のドミニク様の事を思い浮かべるのです・・・!」
私は言われた通りに瞳を閉じて・・・公爵の事を思い浮かべた。2人で一緒に過ごした日々を・・・何度も彼に抱かれたあの記憶を・・・。
すると・・・頭の中で暗闇の世界で・・一筋の光が差すのが見えた。その光の中には・・公爵がいた。
「エルヴィラ・・・!見つけた・・・私、公爵を見つけたわ!」
目を開けてエルヴィラを見ると興奮を抑えきれず私は叫ぶように言った。
「そうなんですね?!分かりました・・・・。では、ハルカ様。」
エルヴィラは私の手を力強く握りしめると言った。
「強く・・・念じて下さい。ドミニク様の元へ飛ぶ事を・・!」
私は頷くと瞳を閉じて、公爵の事を頭に思い浮かべた。
お願い、アカシックレコード・・・・・。私を・・・私を公爵の元へ導いて・・・!!
すると、その途端・・・フワリと身体が宙に浮くような浮遊感を覚え・・・・すぐに足が地面に着地した。
そして恐る恐る目を開けると・・・・暗雲が立ち込めた空の下に立っていた。
荒廃した大地が広がり・・・その荒れた大地を見下ろすかの如く・・・何とも恐ろし気な城が・・空中に浮かんでいたのである。
「あ・・・あれは・・・?」
思わず声が震えてしまう。
「はい・・・。あの城は・・・かつて魔王が住んでいたとされる・・王城です。間違いありません・・・。魔王はあの城にいます・・!」
エルヴィラはまるで空中要塞のような城を指さすと言った。
「あの城に・・・・ドミニク公爵がいるのね・・?」
その城は・・・まるで暗黒の闇に包まれたかのような空中要塞のようにも見えた。それにしても・・。
「どうすれば・・・あの城へ行く事が出来るんだろう?」
遠目からでもはっきり分かる。
その空中要塞は地上から数キロ上空に浮かんでいる。あんな高い場所に浮かんでいる城へどのようにすれば行けるのだろうか・・・?
するとエルヴィラが言った。
「ハルカ様。ご安心下さい。私は浮遊魔法を使えますので、ハルカ様をお連れしてあの城へ行く事等造作もございません。ただ・・・あの付近で魔法を無力化するシールドが張られていなければ・・・の話ですが。どのみちここからでは遠すぎて分かりません。」
「そう・・・なら、あの城の真下迄行ってみましょう?」
私はエルヴィラと共に薄暗く荒れ果てた荒野を歩き・・・ついに浮遊城の真下へとやって来た。
改めて真下から見上げると、その巨大な城に圧倒されて目がクラクラしてくるようだった。
エルヴィラも黙って城を見上げていたが・・・残念そうに言った。
「・・・駄目ですね・・・・。ハルカ様・・・。強力な魔法が掛けられていて・・・浮遊の魔法を使う事は出来ない様です。」
「そう・・・なら仕方が無いね。・・でもひょとすると他にこの城へ行く方法があるかもしれない。階段とか・・・エレベーター?的な物がないかな・・・?ちょっとこの辺りを探してみましょう?二手に分れて探す?」
するとエルヴィラが険しい顔で言った。
「いいえ、ハルカ様。私は決してハルカ様の御側を離れません。よろしいですか?ここは人間界でも『狭間の世界』でもありません。『魔界』のしかも第三階層・・・魔王の城の真下にいるのですよ?どのような恐ろしい魔族がいつどこで私達の前に現れるか分かりません。確かに今のハルカ様は・・・アカシックレコードによって強大な魔力を持つことが出来ましたが・・・まだままだ不安定で身体に馴染んでいないので自由に魔法を使う事が出来ない状態なのです。もう少し経過すれば・・魔力が馴染んで魔法を自由自在に扱えるようになるかもしれませんが・・・それまでは危険です。なので私はハルカ様をお守りする為に一緒に行動させて頂きます。」
「エルヴィラ・・・。」
そうだったのか・・・・。自分の身体の事なのに・・・今の自分自身の身体の状況が全く分からなかった。それでは・・もう少し時間が経てば・・・私も他の人達みたいに魔法を使えるようになるのだろうか?
「分かったわ、エルヴィラ。それじゃ・・・私から離れないで側にいてね?」
「はい、勿論でございます。ハルカ様。」
その後、私達は城の真上を見上げながら・・・暫く何処か城へ行く事の出来る手掛かりが無いか探し続けたのだが・・・結局見つけることが出来なかった。
「どうしましょう・・・。ハルカ様。城へ行く方法が見当たりませんね。」
「うん・・・。困ったな・・。あ!待って!フレアさんなら・・・知ってるかもしれない!だってフレアさんは魔界に咲く不思議な花の管理人をしていたみたいだから・・・ひょっとしたらあの城へ渡った事があるのかもしれないわ!」
「そうですね!彼女なら・・・行く方法を知ってるかもしれません・・・。」
エルヴィラも笑顔で答えた。
「だけど・・・どうやって連絡を取ればいいのかな・・・?」
「ハルカ様・・・。彼女に念を送ってみます。うまくいけば・・・。」
しかし、私は最後までその言葉を聞く事が出来なかった。
いきなり視界が暗転し、次の瞬間私の目に飛び込んできたのは・・・・広々としたホールにまるで玉座の様な椅子に座り、全身黒づくめの衣装を身にまとった公爵が私を黙って見つめていたのである—。
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