13 / 72
第13話 隠れて過ごす1日目の夜
しおりを挟む
その日の夜―
私はメイドのクララがこっそり用意してくれた離れの客室にいた。
「それにしても、おかしいと思わない?」
ドレッサーの前で髪をとかしながらクララに尋ねた。
「何がおかしいのですか?」
ベッドメイキングをしながらクララが返事をする。
「それはデニムの見合いの話に決まっているじゃない」
コトンとブラシをドレッサーに置くと、クララの方を振り返った。
「お見合いの話し…ですか?」
枕カバーをセットしたクララが枕を抱えたまま首を傾げる。
「ええ、そうよ。何故次から次へとデニムに見合い話が舞い込んできているのかしら?私とデニムは離婚はまだしていないけど、恐らくデニムは私達は離婚したと吹聴して回ってるのよね?」
「ええ…そうでしょうねえ?そうでなければ重婚になってしまいますから」
「それにしたって一応世間では26歳離婚歴あり、という身上書が出回っているはずよ?今日お見合いした2人の女性は少なくともデニムよりは10歳は若く見えたわ。普通に考えて、離婚歴のある10歳位年の離れた男性の元へ嫁がせたいと思う親たちはいると思う?」
「そ、それは確かに…」
それに驚いた事に明日もデニムの見合いが入ってるらしい。しかも今回も2件である。
「おかしい、絶対に何か裏があるに決まっているわ。そうでなければ顔しか取り柄の無いデニムの元へ次から次へとお見合い相手が見つかるとは思えないもの。絶対にこれは裏があるに違いないわ」
「そうですね。言われてみれば確かに何だか私も腑に落ちません。それでは奥様、どういたしましょうか?私に出来る事があれば何でも申し付け下さい」
妙にやる気を出して来たクララに私は言った。
「そうね…ではクララ。デニムのフットマンを務めるフレディに、どうしてデニムのお見合相手があっさり見つかっているのかさり気なく尋ねて見て貰えるかしら?もしフレディが拒んだら、こう言ってちょうだい。『一体貴方が貰っているお給料は誰がて支払っているのかしら?』って」
「なるほど、それは彼を脅迫するには持ってこいの話ですね?」
そう、何度も言うがこのお屋敷で働いている使用人のお給料は全て私の実家が工面しておりコネリー家ではびた一文支払っていないのである。これは誰の言う事を聞くかは一目瞭然だ。…余程の愚か者でないかぎりは。
「お任せ下さい。すぐにどういうからくりか吐かせて見せますよ。奥様、大船に乗った気でいて下さい」
「ええ、よろしく頼むわね?それで明日のお見合いの予定はどうなっているのかしら?」
「はい、明日は午後1時から東の塔の『太陽の部屋』で行われます。そして午後4時からは西の塔の『月の部屋』でお見合いが行われる事になっております」
「あら?随分次の見合い時間と時間が近いわね?」
「ええ、そうなんです。何でも先方の時間の都合がどうしてもつかずに、時間の間隔が押し迫ったお見合いのセッティングになってしまったそうですよ?」
「ふ~ん…なるほど‥。でもデニムはそんな短時間で最初のお見合い相手の女性と話を終わらせることが出来るのかしら?」
「さあ…どうでしょうか?」
そこで私にある考えが閃いた。
「ねえ、きっとフレディなら明日のお見合い相手の情報を知っているはずよね?」
「ええ、そう思いますけど…」
「だったら明日、朝一でフレディにお見合い相手の女性の趣味を知っているか聞いてきてもらえる?」
「奥様…何か妙案が閃いたのですね?!」
クララが目を輝かせながら言う。
「ええ、見ていて頂戴?次のお見合いもぶっ潰してやるからっ!」
私はクララにウィンクした―。
私はメイドのクララがこっそり用意してくれた離れの客室にいた。
「それにしても、おかしいと思わない?」
ドレッサーの前で髪をとかしながらクララに尋ねた。
「何がおかしいのですか?」
ベッドメイキングをしながらクララが返事をする。
「それはデニムの見合いの話に決まっているじゃない」
コトンとブラシをドレッサーに置くと、クララの方を振り返った。
「お見合いの話し…ですか?」
枕カバーをセットしたクララが枕を抱えたまま首を傾げる。
「ええ、そうよ。何故次から次へとデニムに見合い話が舞い込んできているのかしら?私とデニムは離婚はまだしていないけど、恐らくデニムは私達は離婚したと吹聴して回ってるのよね?」
「ええ…そうでしょうねえ?そうでなければ重婚になってしまいますから」
「それにしたって一応世間では26歳離婚歴あり、という身上書が出回っているはずよ?今日お見合いした2人の女性は少なくともデニムよりは10歳は若く見えたわ。普通に考えて、離婚歴のある10歳位年の離れた男性の元へ嫁がせたいと思う親たちはいると思う?」
「そ、それは確かに…」
それに驚いた事に明日もデニムの見合いが入ってるらしい。しかも今回も2件である。
「おかしい、絶対に何か裏があるに決まっているわ。そうでなければ顔しか取り柄の無いデニムの元へ次から次へとお見合い相手が見つかるとは思えないもの。絶対にこれは裏があるに違いないわ」
「そうですね。言われてみれば確かに何だか私も腑に落ちません。それでは奥様、どういたしましょうか?私に出来る事があれば何でも申し付け下さい」
妙にやる気を出して来たクララに私は言った。
「そうね…ではクララ。デニムのフットマンを務めるフレディに、どうしてデニムのお見合相手があっさり見つかっているのかさり気なく尋ねて見て貰えるかしら?もしフレディが拒んだら、こう言ってちょうだい。『一体貴方が貰っているお給料は誰がて支払っているのかしら?』って」
「なるほど、それは彼を脅迫するには持ってこいの話ですね?」
そう、何度も言うがこのお屋敷で働いている使用人のお給料は全て私の実家が工面しておりコネリー家ではびた一文支払っていないのである。これは誰の言う事を聞くかは一目瞭然だ。…余程の愚か者でないかぎりは。
「お任せ下さい。すぐにどういうからくりか吐かせて見せますよ。奥様、大船に乗った気でいて下さい」
「ええ、よろしく頼むわね?それで明日のお見合いの予定はどうなっているのかしら?」
「はい、明日は午後1時から東の塔の『太陽の部屋』で行われます。そして午後4時からは西の塔の『月の部屋』でお見合いが行われる事になっております」
「あら?随分次の見合い時間と時間が近いわね?」
「ええ、そうなんです。何でも先方の時間の都合がどうしてもつかずに、時間の間隔が押し迫ったお見合いのセッティングになってしまったそうですよ?」
「ふ~ん…なるほど‥。でもデニムはそんな短時間で最初のお見合い相手の女性と話を終わらせることが出来るのかしら?」
「さあ…どうでしょうか?」
そこで私にある考えが閃いた。
「ねえ、きっとフレディなら明日のお見合い相手の情報を知っているはずよね?」
「ええ、そう思いますけど…」
「だったら明日、朝一でフレディにお見合い相手の女性の趣味を知っているか聞いてきてもらえる?」
「奥様…何か妙案が閃いたのですね?!」
クララが目を輝かせながら言う。
「ええ、見ていて頂戴?次のお見合いもぶっ潰してやるからっ!」
私はクララにウィンクした―。
252
あなたにおすすめの小説
王太子妃は離婚したい
凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。
だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。
※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。
綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。
これまで応援いただき、本当にありがとうございました。
レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。
https://www.regina-books.com/extra/login
婚約破棄ですか? 損切りの機会を与えてくださり、本当にありがとうございます
水上
恋愛
「エリーゼ・フォン・ノイマン! 貴様との婚約は、今この瞬間をもって破棄する! 僕は真実の愛を見つけたんだ。リリィこそが、僕の魂の伴侶だ!」
「確認させていただきますが、その真実の愛とやらは、我が国とノイマン家との間で締結された政略的・経済的包括協定――いわゆる婚約契約書よりも優先される事象であると、そのようにご判断されたのですか?」
「ああ、そうだ! 愛は何物にも勝る! 貴様のように、金や効率ばかりを語る冷血な女にはわかるまい!」
「……ふっ」
思わず、口元が緩んでしまいました。
それをどう勘違いしたのか、ヘリオス殿下はさらに声を張り上げます。
「なんだその不敵な笑みは! 負け惜しみか! それとも、ショックで頭がおかしくなったか!」
「いいえ、殿下。感心していたのです」
「なに?」
「ご自身の価値を正しく評価できない愚かさが、極まるところまで極まると、ある種の芸術性を帯びるのだなと」
「き、貴様……!」
殿下、損切りの機会を与えてくださり本当にありがとうございます。
私の頭の中では、すでに新しい事業計画書の第一章が書き始められていました。
それは、愚かな王子に復讐するためだけの計画ではありません。
私が私らしく、論理と計算で幸福を勝ち取るための、輝かしい建国プロジェクトなのです。
殿下に寵愛されてませんが別にかまいません!!!!!
さら
恋愛
王太子アルベルト殿下の婚約者であった令嬢リリアナ。けれど、ある日突然「裏切り者」の汚名を着せられ、殿下の寵愛を失い、婚約を破棄されてしまう。
――でも、リリアナは泣き崩れなかった。
「殿下に愛されなくても、私には花と薬草がある。健気? 別に演じてないですけど?」
庶民の村で暮らし始めた彼女は、花畑を育て、子どもたちに薬草茶を振る舞い、村人から慕われていく。だが、そんな彼女を放っておけないのが、執着心に囚われた殿下。噂を流し、畑を焼き払い、ついには刺客を放ち……。
「どこまで私を追い詰めたいのですか、殿下」
絶望の淵に立たされたリリアナを守ろうとするのは、騎士団長セドリック。冷徹で寡黙な男は、彼女の誠実さに心を動かされ、やがて命を懸けて庇う。
「俺は、君を守るために剣を振るう」
寵愛などなくても構わない。けれど、守ってくれる人がいる――。
灰の大地に芽吹く新しい絆が、彼女を強く、美しく咲かせていく。
侯爵様に婚約破棄されたのですが、どうやら私と王太子が幼馴染だったことは知らなかったようですね?
ルイス
恋愛
オルカスト王国の伯爵令嬢であるレオーネは、侯爵閣下であるビクティムに婚約破棄を言い渡された。
信頼していたビクティムに裏切られたレオーネは悲しみに暮れる……。
しかも、破棄理由が他国の王女との婚約だから猶更だ。
だが、ビクティムは知らなかった……レオーネは自国の第一王子殿下と幼馴染の関係にあることを。
レオーネの幼馴染であるフューリ王太子殿下は、彼女の婚約破棄を知り怒りに打ち震えた。
「さて……レオーネを悲しませた罪、どのように償ってもらおうか」
ビクティム侯爵閣下はとてつもない虎の尾を踏んでしまっていたのだった……。
「予備」として連れてこられた私が、本命を連れてきたと勘違いした王国の滅亡フラグを華麗に回収して隣国の聖女になりました
平山和人
恋愛
王国の辺境伯令嬢セレスティアは、生まれつき高い治癒魔法を持つ聖女の器でした。しかし、十年間の婚約期間の末、王太子ルシウスから「真の聖女は別にいる。お前は不要になった」と一方的に婚約を破棄されます。ルシウスが連れてきたのは、派手な加護を持つ自称「聖女」の少女、リリア。セレスティアは失意の中、国境を越えた隣国シエルヴァード帝国へ。
一方、ルシウスはセレスティアの地味な治癒魔法こそが、王国の呪いの進行を十年間食い止めていた「代替の聖女」の役割だったことに気づきません。彼の連れてきたリリアは、見かけの派手さとは裏腹に呪いを加速させる力を持っていました。
隣国でその真の力を認められたセレスティアは、帝国の聖女として迎えられます。王国が衰退し、隣国が隆盛を極める中、ルシウスはようやくセレスティアの真価に気づき復縁を迫りますが、後の祭り。これは、価値を誤認した愚かな男と、自分の力で世界を変えた本物の聖女の、代わりではなく主役になる物語です。
「陛下、子種を要求します!」~陛下に離縁され追放される七日の間にかなえたい、わたしのたったひとつの願い事。その五年後……~
ぽんた
恋愛
「七日の後に離縁の上、実質上追放を言い渡す。そのあとは、おまえは王都から連れだされることになる。人質であるおまえを断罪したがる連中がいるのでな。信用のおける者に生活できるだけの金貨を渡し、託している。七日間だ。おまえの国を攻略し、おまえを人質に差し出した父王と母后を処分したわが軍が戻ってくる。そのあと、おまえは命以外のすべてを失うことになる」
その日、わたしは内密に告げられた。小国から人質として嫁いだ親子ほど年齢の離れた国王である夫に。
わたしは決意した。ぜったいに願いをかなえよう。たったひとつの望みを陛下にかなえてもらおう。
そう。わたしには陛下から授かりたいものがある。
陛下から与えてほしいたったひとつのものがある。
この物語は、その五年後のこと。
※ハッピーエンド確約。ご都合主義のゆるゆる設定はご容赦願います。
成人したのであなたから卒業させていただきます。
ぽんぽこ狸
恋愛
フィオナはデビュタント用に仕立てた可愛いドレスを婚約者であるメルヴィンに見せた。
すると彼は、とても怒った顔をしてフィオナのドレスを引き裂いた。
メルヴィンは自由に仕立てていいとは言ったが、それは流行にのっとった範囲でなのだから、こんなドレスは着させられないという事を言う。
しかしフィオナから見れば若い令嬢たちは皆愛らしい色合いのドレスに身を包んでいるし、彼の言葉に正当性を感じない。
それでも子供なのだから言う事を聞けと年上の彼に言われてしまうとこれ以上文句も言えない、そんな鬱屈とした気持ちを抱えていた。
そんな中、ある日、王宮でのお茶会で変わり者の王子に出会い、その素直な言葉に、フィオナの価値観はがらりと変わっていくのだった。
変わり者の王子と大人になりたい主人公のお話です。
逆行転生、一度目の人生で婚姻を誓い合った王子は私を陥れた双子の妹を選んだので、二度目は最初から妹へ王子を譲りたいと思います。
みゅー
恋愛
アリエルは幼い頃に婚姻の約束をした王太子殿下に舞踏会で会えることを誰よりも待ち望んでいた。
ところが久しぶりに会った王太子殿下はなぜかアリエルを邪険に扱った挙げ句、双子の妹であるアラベルを選んだのだった。
失意のうちに過ごしているアリエルをさらに災難が襲う。思いもよらぬ人物に陥れられ国宝である『ティアドロップ・オブ・ザ・ムーン』の窃盗の罪を着せられアリエルは疑いを晴らすことができずに処刑されてしまうのだった。
ところが、気がつけば自分の部屋のベッドの上にいた。
こうして逆行転生したアリエルは、自身の処刑回避のため王太子殿下との婚約を避けることに決めたのだが、なぜか王太子殿下はアリエルに関心をよせ……。
二人が一度は失った信頼を取り戻し、心を近づけてゆく恋愛ストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる