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第21話 手の平で転がされる男
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月の部屋―
この部屋は天井に窓があり、夜には月明かりが部屋を照らし、幻想的な部屋に見える。この部屋に『月の部屋』と名付けたのは他でもない私だ。ここは私のお気に入りの部屋で義父の許しを受け、半分プライベートな部屋となっている。その為、ここは私の趣味のアンティーク家具で統一された落ち着いた空間となっていた。
それなのにあの少女嗜好の変態デニムがこの部屋をよりにもよってお見合いの部屋に指定してくるとは…おのれデニムめ。改めてあの男に対する激しい怒りがフツフツと湧いてきたその時―。
「まあ…何て素敵な部屋なのかしら。お部屋の家具はどれも趣味がいいし、天井にある窓も夜空がよく見えそうね。ここに並べられた観葉植物達はきっと月のあかりで幻想的に見えるのでしょうね?」
うっとりした目つきでジェニー嬢は部屋をベタ褒めした。お付きの侍女も部屋を見渡して感嘆のため息をついている。
おおっ!この女性たち…私と同じ感性を持っているなんて素晴らしい!おまけに話の節々にどこか知性を感じられる。あんな阿呆デニムの見合い相手にしておくには実に惜しい!ここはジェニー嬢の為にもなんとしてでもこの馬鹿げた見合いをぶっ潰してやらなければ!私は新たな決意に燃え、ジェニー嬢に言った。
「ジェニー様はもしかすると天体に興味がお持ちですか?」
「ええ、そうね。私は星を見るのが大好き。星座の神話が大好きだから」
なんてラッキーなのだろう。
「まあ、そうなのですか?それでは少しこちらの椅子に掛けてお待ち頂けますか?お付きの方もご一緒にどうぞ」
アンティーク家具の楕円形テーブルの前に置かれた背もたれ付きチェアを2人に勧めると、私は書棚へ向かった。そして何冊か星座にまつわる小説を取り出すとジェニー嬢の元へと持っていく。
「ジェニー様。ただいまお茶を運んでまいりますのでこちらの本をご覧になってお待ち頂けますか?」
言いながら、彼女のテーブルの前に本を数冊置いた。
「ま、まあ!この本は!私が前から読みたいと思っていた星座の神話の本だわ!」
ジェニー嬢は歓喜の声をあげる。
「お嬢様、良かったですね?」
お付きの少女はジェニー嬢に声を掛け、自分も本を手に取った。どうやらこの2人は本の趣味が同じようだ。恐らく仲も良いことだろう。
「それではこちらでお待ち下さい」
頭を下げて退出すると、私は急いで『太陽の部屋』へと足を向けた。まだデニムとマリア嬢はカードゲームに興じているだろうか?念の為にあの部屋にあった時計は部屋を出る時に隠してきた。恐らくあの時ほろ酔い気分だったデニムはその事に気づいていないだろう。使用人たちにも一切手を出さないように支持を出しているので、誰も次の見合い時間になってもデニムに声を掛けることは無い。
「つ、着いたわ…」
ハアハア息を吐きながら『太陽の部屋』へ辿り着いた私はノックもせずにドアノブを静かに回し、2人の様子を伺い…思わず顔に笑みが浮かんでしまった。何故ならデニムもマリア嬢も完全にカードゲームにはまり、あろうことかお金を掛けてカードにハマっているのだ。どうやらアルコールが良い具合に相乗効果を現したようだ。
私はドアをそっと閉じると、ほくそ笑みながら厨房へ向かった。
本当に馬鹿なデニムだ。屋敷の中で見合い相手とカジノ以外で禁じられている金銭をかけたカードゲームに興じているなんて…ただでさえ、私と離婚が成立していないのに見合いをしているだけでも罪なのに、あの男は自滅していってくれている。
フフフ…本当にマヌケな男で助かったわ。
見ていなさいよ、デニム。もう貴方は私の手のひらで転がされているに過ぎない立場に置かれているのだから。
この上なく楽しい気分で私は廊下を歩き続けた―。
この部屋は天井に窓があり、夜には月明かりが部屋を照らし、幻想的な部屋に見える。この部屋に『月の部屋』と名付けたのは他でもない私だ。ここは私のお気に入りの部屋で義父の許しを受け、半分プライベートな部屋となっている。その為、ここは私の趣味のアンティーク家具で統一された落ち着いた空間となっていた。
それなのにあの少女嗜好の変態デニムがこの部屋をよりにもよってお見合いの部屋に指定してくるとは…おのれデニムめ。改めてあの男に対する激しい怒りがフツフツと湧いてきたその時―。
「まあ…何て素敵な部屋なのかしら。お部屋の家具はどれも趣味がいいし、天井にある窓も夜空がよく見えそうね。ここに並べられた観葉植物達はきっと月のあかりで幻想的に見えるのでしょうね?」
うっとりした目つきでジェニー嬢は部屋をベタ褒めした。お付きの侍女も部屋を見渡して感嘆のため息をついている。
おおっ!この女性たち…私と同じ感性を持っているなんて素晴らしい!おまけに話の節々にどこか知性を感じられる。あんな阿呆デニムの見合い相手にしておくには実に惜しい!ここはジェニー嬢の為にもなんとしてでもこの馬鹿げた見合いをぶっ潰してやらなければ!私は新たな決意に燃え、ジェニー嬢に言った。
「ジェニー様はもしかすると天体に興味がお持ちですか?」
「ええ、そうね。私は星を見るのが大好き。星座の神話が大好きだから」
なんてラッキーなのだろう。
「まあ、そうなのですか?それでは少しこちらの椅子に掛けてお待ち頂けますか?お付きの方もご一緒にどうぞ」
アンティーク家具の楕円形テーブルの前に置かれた背もたれ付きチェアを2人に勧めると、私は書棚へ向かった。そして何冊か星座にまつわる小説を取り出すとジェニー嬢の元へと持っていく。
「ジェニー様。ただいまお茶を運んでまいりますのでこちらの本をご覧になってお待ち頂けますか?」
言いながら、彼女のテーブルの前に本を数冊置いた。
「ま、まあ!この本は!私が前から読みたいと思っていた星座の神話の本だわ!」
ジェニー嬢は歓喜の声をあげる。
「お嬢様、良かったですね?」
お付きの少女はジェニー嬢に声を掛け、自分も本を手に取った。どうやらこの2人は本の趣味が同じようだ。恐らく仲も良いことだろう。
「それではこちらでお待ち下さい」
頭を下げて退出すると、私は急いで『太陽の部屋』へと足を向けた。まだデニムとマリア嬢はカードゲームに興じているだろうか?念の為にあの部屋にあった時計は部屋を出る時に隠してきた。恐らくあの時ほろ酔い気分だったデニムはその事に気づいていないだろう。使用人たちにも一切手を出さないように支持を出しているので、誰も次の見合い時間になってもデニムに声を掛けることは無い。
「つ、着いたわ…」
ハアハア息を吐きながら『太陽の部屋』へ辿り着いた私はノックもせずにドアノブを静かに回し、2人の様子を伺い…思わず顔に笑みが浮かんでしまった。何故ならデニムもマリア嬢も完全にカードゲームにはまり、あろうことかお金を掛けてカードにハマっているのだ。どうやらアルコールが良い具合に相乗効果を現したようだ。
私はドアをそっと閉じると、ほくそ笑みながら厨房へ向かった。
本当に馬鹿なデニムだ。屋敷の中で見合い相手とカジノ以外で禁じられている金銭をかけたカードゲームに興じているなんて…ただでさえ、私と離婚が成立していないのに見合いをしているだけでも罪なのに、あの男は自滅していってくれている。
フフフ…本当にマヌケな男で助かったわ。
見ていなさいよ、デニム。もう貴方は私の手のひらで転がされているに過ぎない立場に置かれているのだから。
この上なく楽しい気分で私は廊下を歩き続けた―。
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