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第23話 準備は万全
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『月の部屋』へ到着した私は早速ドアをノックした。
コンコン
「…」
「おかしいわね…?何故返事がないのかしら?」
試しにもう一度ノックをしてみたが何の反応も無い。仕方無い、開けてみよう。ドアノブを回してカチャリとドアを開けてみた。
「失礼致します…」
ワゴンを押して部屋へ入ると、ジェニー嬢も侍女の少女もテーブルに向かって一心不乱に読書をしていた。余程2人とも本が好きなのだろう。私が入室してきても少しも気付く事無く読んでいる。うん、実に素晴らしい!やはりデニムの見合い相手にするにはあまりに惜しい。なにせデニムときたら大の活字嫌いで読書は愚か、新聞すら読まないのだ。デニムが手にしているのはカードばかりだ。なので今現在お見合い…ではなく、賭博に興じているマリア嬢はまさにお似合いかもしれないが…私と離婚する前に見合いをする罪がどれほど重いか知らしめてやらなければ気がすまない。それに仮にあの阿呆デニムと結婚したとして、いつまた私のように第2、第3の被害者がこの先出てこないとも限らない。今のうちに私の手で断ち切らなければ―!
等と考えていると、ジェニー嬢が顔を上げて私を見た。
「あ、すみませんでした。つい読書に夢中になってしまって…」
「いいえ、ですが本を気に入られたようで良かったです」
私が言うと、侍女の少女も笑顔で言った。
「本当にこの本を集められた方はとても趣味が良いと思います」
「まあ、そうですか?では伝えておきますね。きっと喜ぶと思いますわ。お茶とお茶菓子をお持ちしましたので、どうぞ召し上がって下さい」
私は2人の前に紅茶とドライフルーツの皿をテーブルの上に乗せた。
「まあ、美味しそうですね。これはドライフルーツですね?」
ジェニー嬢が笑顔で言う。
「はい、紅茶と良く合いますよ。それにドライフルーツは読書する時に手が汚れませんからね」
「それはお気遣いどうもありがとうございます。それにしても…あれからどのくらい時間が経過したのでしょうか?」
ジェニー嬢が不安げな顔を見せた。
「そうですね?デニム様の様子を見てまいりますのでお茶をお飲みになってお待ち下さい」
一礼すると、私は急いで部屋を出てデニムと見合い相手がいる『太陽の部屋』を目指した。
****
片道5分かけて私は『太陽の部屋』に到着した。
「ふー。それにしても中々遠くて大変だわ。どれどれ…」
『太陽の部屋』へ到着した私はノックもせずに中の様子をこっそり覗いてみた。すると相変わらず2人はポーカーに夢中になっていた。2人のテーブルには小銭やらお札が乗っている。しかもワゴンの上にこっそり置いておいたウィスキーにも気づいたようで、2人はお酒も飲みながらゲームに夢中になっているのだ。
「フフフ…これだけ状況証拠が揃っていればもう言い逃れは出来ないわね」
ポツリと呟くと、私はスカートを翻して厨房へと向かった。厨房には私の頼もしい仲間たちが待っている!
バンッ!
「皆、お待たせっ!」
勢いよく扉を開けると、そこにはシェフや料理人達以外にもメイドのクララや、デニムのフットマンをつとめるフレディ、他に数名のメイドやフットマンたちが待っていた。
「あ!奥様!今の状況はどうなっておりますか?」
クララが真っ先に駆け寄ってきた。他の者たちも皆私に集中している。
「ええ、聞いて頂戴。今デニムは見合い相手のマリア嬢とウィスキーを飲みながら、テーブルの上に掛け金を置いてポーカーに興じているわ。2人ともアルコールで顔を赤くしながら少々興奮気味ね。それでは今から今日のお見合いをまとめてぶっ潰すわ。ついでにデニムのお見合い計画も今日で破綻させてやるのよ!」
「奥様、では私はマリア嬢のご両親を『太陽の部屋』にお連れしますね」
フレディが言った。
「それでは私はジェニー様と侍女のお2人を連れてまいります」
クララが私を見た。
「ええ、2人とも宜しくね。私は『太陽の部屋』の前でデニムやマリア嬢が何処にも行かないように見張っているから」
そして私は残りの使用人たちに言った。
「いい?あなた達は義母と義父にばれないように見張りを怠らないでちょうだいね?!では各自持ち場へ行って頂戴!」
『かしこまりました!』
そこにいる使用人達は一斉に返事をすると、それぞれの持ち場へ向かって次々と厨房を出ていく。
フフフ…これからデニムの身に起こるイベントが楽しみでたまらない。
私は頼もしい仲間たちの後ろ姿を見送りながら笑みを浮かべた―。
コンコン
「…」
「おかしいわね…?何故返事がないのかしら?」
試しにもう一度ノックをしてみたが何の反応も無い。仕方無い、開けてみよう。ドアノブを回してカチャリとドアを開けてみた。
「失礼致します…」
ワゴンを押して部屋へ入ると、ジェニー嬢も侍女の少女もテーブルに向かって一心不乱に読書をしていた。余程2人とも本が好きなのだろう。私が入室してきても少しも気付く事無く読んでいる。うん、実に素晴らしい!やはりデニムの見合い相手にするにはあまりに惜しい。なにせデニムときたら大の活字嫌いで読書は愚か、新聞すら読まないのだ。デニムが手にしているのはカードばかりだ。なので今現在お見合い…ではなく、賭博に興じているマリア嬢はまさにお似合いかもしれないが…私と離婚する前に見合いをする罪がどれほど重いか知らしめてやらなければ気がすまない。それに仮にあの阿呆デニムと結婚したとして、いつまた私のように第2、第3の被害者がこの先出てこないとも限らない。今のうちに私の手で断ち切らなければ―!
等と考えていると、ジェニー嬢が顔を上げて私を見た。
「あ、すみませんでした。つい読書に夢中になってしまって…」
「いいえ、ですが本を気に入られたようで良かったです」
私が言うと、侍女の少女も笑顔で言った。
「本当にこの本を集められた方はとても趣味が良いと思います」
「まあ、そうですか?では伝えておきますね。きっと喜ぶと思いますわ。お茶とお茶菓子をお持ちしましたので、どうぞ召し上がって下さい」
私は2人の前に紅茶とドライフルーツの皿をテーブルの上に乗せた。
「まあ、美味しそうですね。これはドライフルーツですね?」
ジェニー嬢が笑顔で言う。
「はい、紅茶と良く合いますよ。それにドライフルーツは読書する時に手が汚れませんからね」
「それはお気遣いどうもありがとうございます。それにしても…あれからどのくらい時間が経過したのでしょうか?」
ジェニー嬢が不安げな顔を見せた。
「そうですね?デニム様の様子を見てまいりますのでお茶をお飲みになってお待ち下さい」
一礼すると、私は急いで部屋を出てデニムと見合い相手がいる『太陽の部屋』を目指した。
****
片道5分かけて私は『太陽の部屋』に到着した。
「ふー。それにしても中々遠くて大変だわ。どれどれ…」
『太陽の部屋』へ到着した私はノックもせずに中の様子をこっそり覗いてみた。すると相変わらず2人はポーカーに夢中になっていた。2人のテーブルには小銭やらお札が乗っている。しかもワゴンの上にこっそり置いておいたウィスキーにも気づいたようで、2人はお酒も飲みながらゲームに夢中になっているのだ。
「フフフ…これだけ状況証拠が揃っていればもう言い逃れは出来ないわね」
ポツリと呟くと、私はスカートを翻して厨房へと向かった。厨房には私の頼もしい仲間たちが待っている!
バンッ!
「皆、お待たせっ!」
勢いよく扉を開けると、そこにはシェフや料理人達以外にもメイドのクララや、デニムのフットマンをつとめるフレディ、他に数名のメイドやフットマンたちが待っていた。
「あ!奥様!今の状況はどうなっておりますか?」
クララが真っ先に駆け寄ってきた。他の者たちも皆私に集中している。
「ええ、聞いて頂戴。今デニムは見合い相手のマリア嬢とウィスキーを飲みながら、テーブルの上に掛け金を置いてポーカーに興じているわ。2人ともアルコールで顔を赤くしながら少々興奮気味ね。それでは今から今日のお見合いをまとめてぶっ潰すわ。ついでにデニムのお見合い計画も今日で破綻させてやるのよ!」
「奥様、では私はマリア嬢のご両親を『太陽の部屋』にお連れしますね」
フレディが言った。
「それでは私はジェニー様と侍女のお2人を連れてまいります」
クララが私を見た。
「ええ、2人とも宜しくね。私は『太陽の部屋』の前でデニムやマリア嬢が何処にも行かないように見張っているから」
そして私は残りの使用人たちに言った。
「いい?あなた達は義母と義父にばれないように見張りを怠らないでちょうだいね?!では各自持ち場へ行って頂戴!」
『かしこまりました!』
そこにいる使用人達は一斉に返事をすると、それぞれの持ち場へ向かって次々と厨房を出ていく。
フフフ…これからデニムの身に起こるイベントが楽しみでたまらない。
私は頼もしい仲間たちの後ろ姿を見送りながら笑みを浮かべた―。
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