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第27話 奇妙な同盟関係?
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カチャ…
静かにドアが開き、身だしなみを整えたクラウス夫妻にマリア嬢、その後ろを歩くのはジェニー嬢とお付きの侍女、そして一番最後に出てきたのは項垂れた様子のデニムだった。なるほど…恐らくあの様子だと、双方からこってり油を絞られたに違いない。『太陽の部屋』を出てきたクラウス伯爵はすぐに私の存在に気付いた。
「おお、君は先程の…」
「はい、私はコネリー家のメイド長をしております、メイと申します。」
とっさにその場で思いつく名前を言った。どうせこの阿呆デニムは余程自分に親しい使用人の顔と名前しか知らないのだから構うものか。
「そうか、メイ。それでは我々はデニム殿のご両親に挨拶をしてくる。ジェニー嬢はこのままお帰りになるそうなので馬車の手配をお願いできるか?」
本来であればデニムが言うべきセリフなのに、クラウス伯爵はまるでこの屋敷の主のように命じてきた。命じられた私は念の為にチラリとデニムを見るが、彼は気まずいのか私と視線を合わせようとしない。ならば…ここはクラウス伯爵に従おう。だって肝心のジェニー嬢は真っ青な顔をして、今にも泣き出しそうな顔をしているのだから。
「はい、かしこまりました。それではジェニー様、どうぞこちらへいらして下さい。侍女の方もどうぞ」
「は、はい…」
「分かりました」
2人は素直に返事をする。
「ではエントランスまでご案内致します。クラウス伯爵様、本日はお疲れさまでした」
私が会釈をするとクラウス伯爵は苦笑いをすると私に言った。
「ところでメイ、先程部屋の中で行われていたことは内密にしてくれるか?」
案の定、クラウス伯爵が私に口止めを命じてきた!
「え?何の事でしょう?」
彼の言いたいことは恐らく賭博のことだろう。
「「「「え?」」」」
クラウス夫妻とマリア嬢、そしてクズデニムが声を揃えて私に注目した。
「ひょっとして内密に…というのはデニム様のダブル見合いの事でしょうか?」
首を傾げデニムを見る。
『お、お前!今それを言うのかっ?!』
デニムは目だけで私に語ってきた。
「い、いや。何でも無い、今の話はどうか忘れてくれ。ハハハ…すまなかった。引き止めたりして。」
クラウス伯爵は取り繕ったかのように笑った。彼は恐らくデニムとマリア嬢が賭博をしていた事実を私は知らないと認定したのだろう。
「いいえ、とんでもございません。それでは改めて失礼致します。では参りましょう」
クラウス夫妻に挨拶をし、ジェニー嬢達に声を掛けると私は先頭に立って歩着始めた。すると不意にジェニー嬢が声を掛けてきた。
「あの、メイさん」
一瞬誰の事だろうと思ったが、先程思いつきで名乗った自分の名前であることを思い出し、返事をした。
「はい、何でしょうか?ジェニー様」
ジェニー嬢の隣に並んで歩き始めると、彼女は声を震わせながら訴えてきた。
「デニム様と先程のお見合いの女性…中で何をしていたと思いますか?」
「さあ?何でしょうか?」
知っていたけどしらを切る。
「あの2人…!あの部屋でお金を掛けてカードゲームをしていたのですよ!!」
「まあ、そうなのですか?!」
わざと驚いた声をあげる。
「カジノ場以外でのお金を掛けたカードゲームは法律で禁止されています。それを…クラウス伯爵は隠蔽しようとしています。ご自身の娘を助けるために。これって犯罪ですよね?」
「ええ…そうなりますね」
何だかジェニー嬢の口調が変化してきた。
「クラウス伯爵はメイさんに口止めしようとしていたんです。でも、メイさんは賭博の事を知らなかったから…口を閉ざしたのです」
「左様でございましたか…」
ええ、ええ。良くわかっていますよ。ジェニー嬢。
「だから私、決めました」
ジェニー嬢は意思の強そうな目で私を見た。いつの間にか私達はエントランスに到着していた。
「決めた?一体何を決めたのですか?」
エントランスの扉を開けると、既にそこにはジェニー嬢を自宅に送るべく、馬車が待機している。この馬車を用意してくれたのも、クラウス伯爵の会話を盗み聞きしていた私の仲間の活躍によるものだ。
「まあ!もう馬車が用意されていたのですか?!」
侍女の少女が驚いた。
「はい、そうです。どうぞお乗り下さい」
馬車のドアを開けると、侍女とジェニー嬢が乗り込む。そしてジェニー嬢は馬車の窓から顔を覗かせると言った。
「メイさん、私家に帰ったら父と母にデニム様とクラウス伯爵の事を告発します。私はあの方に口止めされていませんから…このまま泣き寝入りなんて絶対にしません!」
ジェニー嬢の瞳の奥には静かに怒りの炎が揺れている…ように見えた。彼女の決意はどうやら固いようだ。それなら背中を押してあげよう。
「分かりました、ジェニー様。どうぞご自分の心の赴くままに行動して下さい!」
私は力強く言う。
「はい、分かりました!御者さん!馬車をワイルド家までお願いします!出来るだけ飛ばして下さい!」
ジェニー嬢は御者に声を掛ける。
「はい、かしこまりました!」
御者を務める私の仲間は手綱を振るうと、馬は物凄い速さで駆け出した。
ガラガラガラガラ…!!
私はすっかり日の暮れた空の下をジェニー嬢と侍女を乗せた馬車が小さくなるまで見送っていた。
フフフ…
デニム、もうすぐ貴方を破滅させてあげるからね?
私は馬車を見送りながら、心のなかで間抜けなデニムに語りかけるのだった―。
静かにドアが開き、身だしなみを整えたクラウス夫妻にマリア嬢、その後ろを歩くのはジェニー嬢とお付きの侍女、そして一番最後に出てきたのは項垂れた様子のデニムだった。なるほど…恐らくあの様子だと、双方からこってり油を絞られたに違いない。『太陽の部屋』を出てきたクラウス伯爵はすぐに私の存在に気付いた。
「おお、君は先程の…」
「はい、私はコネリー家のメイド長をしております、メイと申します。」
とっさにその場で思いつく名前を言った。どうせこの阿呆デニムは余程自分に親しい使用人の顔と名前しか知らないのだから構うものか。
「そうか、メイ。それでは我々はデニム殿のご両親に挨拶をしてくる。ジェニー嬢はこのままお帰りになるそうなので馬車の手配をお願いできるか?」
本来であればデニムが言うべきセリフなのに、クラウス伯爵はまるでこの屋敷の主のように命じてきた。命じられた私は念の為にチラリとデニムを見るが、彼は気まずいのか私と視線を合わせようとしない。ならば…ここはクラウス伯爵に従おう。だって肝心のジェニー嬢は真っ青な顔をして、今にも泣き出しそうな顔をしているのだから。
「はい、かしこまりました。それではジェニー様、どうぞこちらへいらして下さい。侍女の方もどうぞ」
「は、はい…」
「分かりました」
2人は素直に返事をする。
「ではエントランスまでご案内致します。クラウス伯爵様、本日はお疲れさまでした」
私が会釈をするとクラウス伯爵は苦笑いをすると私に言った。
「ところでメイ、先程部屋の中で行われていたことは内密にしてくれるか?」
案の定、クラウス伯爵が私に口止めを命じてきた!
「え?何の事でしょう?」
彼の言いたいことは恐らく賭博のことだろう。
「「「「え?」」」」
クラウス夫妻とマリア嬢、そしてクズデニムが声を揃えて私に注目した。
「ひょっとして内密に…というのはデニム様のダブル見合いの事でしょうか?」
首を傾げデニムを見る。
『お、お前!今それを言うのかっ?!』
デニムは目だけで私に語ってきた。
「い、いや。何でも無い、今の話はどうか忘れてくれ。ハハハ…すまなかった。引き止めたりして。」
クラウス伯爵は取り繕ったかのように笑った。彼は恐らくデニムとマリア嬢が賭博をしていた事実を私は知らないと認定したのだろう。
「いいえ、とんでもございません。それでは改めて失礼致します。では参りましょう」
クラウス夫妻に挨拶をし、ジェニー嬢達に声を掛けると私は先頭に立って歩着始めた。すると不意にジェニー嬢が声を掛けてきた。
「あの、メイさん」
一瞬誰の事だろうと思ったが、先程思いつきで名乗った自分の名前であることを思い出し、返事をした。
「はい、何でしょうか?ジェニー様」
ジェニー嬢の隣に並んで歩き始めると、彼女は声を震わせながら訴えてきた。
「デニム様と先程のお見合いの女性…中で何をしていたと思いますか?」
「さあ?何でしょうか?」
知っていたけどしらを切る。
「あの2人…!あの部屋でお金を掛けてカードゲームをしていたのですよ!!」
「まあ、そうなのですか?!」
わざと驚いた声をあげる。
「カジノ場以外でのお金を掛けたカードゲームは法律で禁止されています。それを…クラウス伯爵は隠蔽しようとしています。ご自身の娘を助けるために。これって犯罪ですよね?」
「ええ…そうなりますね」
何だかジェニー嬢の口調が変化してきた。
「クラウス伯爵はメイさんに口止めしようとしていたんです。でも、メイさんは賭博の事を知らなかったから…口を閉ざしたのです」
「左様でございましたか…」
ええ、ええ。良くわかっていますよ。ジェニー嬢。
「だから私、決めました」
ジェニー嬢は意思の強そうな目で私を見た。いつの間にか私達はエントランスに到着していた。
「決めた?一体何を決めたのですか?」
エントランスの扉を開けると、既にそこにはジェニー嬢を自宅に送るべく、馬車が待機している。この馬車を用意してくれたのも、クラウス伯爵の会話を盗み聞きしていた私の仲間の活躍によるものだ。
「まあ!もう馬車が用意されていたのですか?!」
侍女の少女が驚いた。
「はい、そうです。どうぞお乗り下さい」
馬車のドアを開けると、侍女とジェニー嬢が乗り込む。そしてジェニー嬢は馬車の窓から顔を覗かせると言った。
「メイさん、私家に帰ったら父と母にデニム様とクラウス伯爵の事を告発します。私はあの方に口止めされていませんから…このまま泣き寝入りなんて絶対にしません!」
ジェニー嬢の瞳の奥には静かに怒りの炎が揺れている…ように見えた。彼女の決意はどうやら固いようだ。それなら背中を押してあげよう。
「分かりました、ジェニー様。どうぞご自分の心の赴くままに行動して下さい!」
私は力強く言う。
「はい、分かりました!御者さん!馬車をワイルド家までお願いします!出来るだけ飛ばして下さい!」
ジェニー嬢は御者に声を掛ける。
「はい、かしこまりました!」
御者を務める私の仲間は手綱を振るうと、馬は物凄い速さで駆け出した。
ガラガラガラガラ…!!
私はすっかり日の暮れた空の下をジェニー嬢と侍女を乗せた馬車が小さくなるまで見送っていた。
フフフ…
デニム、もうすぐ貴方を破滅させてあげるからね?
私は馬車を見送りながら、心のなかで間抜けなデニムに語りかけるのだった―。
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