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第34話 朝の襲撃
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翌朝―
コンコン
私は眠っているデニムの部屋の扉をノックした。
「…」
やはり無反応だ。全く…もう9時になるというのに寝坊助のデニムは起きている気配はない。
「入りますよ、デニム様」
無遠慮にガチャリと扉を開けてズカズカと私は部屋に入っていく。そしてベッドの中を覗き込んだ。
「スゴ-…スゴー…」
奇妙な寝息を立てながらだらしなく口を開けて眠っているデニム。こいつめ…こんなに寝息がうるさかったのか。良かった…一緒の部屋じゃなくて。
「デニム様、朝ですよ!起きてくださいっ!起きないと大変な目に合いますよ!」
しかしやはりデニムは起きる気配は無い。
「一応忠告はしましたからね…」
部屋のカーテンは寝坊助デニム用に遮光カーテンになっている。
「全く…このカーテンもいけないのよ。こんなだから部屋の中に朝日を取り込めないんだわ」
デニムの頭をそっとつかみ、窓の方に顔を向けた。
「スゴ-…スゴー…」
それでもデニムは目を覚まさない。
「顔の位置…よし!」
1人納得すると、私はカーテンに近づき…。
シャーッ!!
思い切りレースのカーテンごと開け放した。すると途端にデニムの顔を直撃する太陽の眩しい光。
「ぐああっ!!ま、眩しいっ!!」
顔面を眩しい太陽の光に照らされ、デニムは枕に顔を押し付けながら叫んだ。
「だ、誰だっ!!俺の眠りを妨げる者はっ!!」
まるで舞台劇のような大袈裟なセリフを吐くデニムに声を掛けた。
「私ですけど?」
腰を両手に当て、太陽を背にして平然とデニムの前に立った。
「あっ!!ま、またお前かっ?!フレディはどうしたっ?!い、いや!それよりも眩しい!せめてレースのカーテンくらいしめろ!後、太陽を背にして立つな!」
デニムは眩しいのか片手で日差しを遮りながら、私の事をビシッと指差す。
全く、文句を言いながら人を指差すとは失礼極まりない。
「フレディさんは今朝は忙しくてデニム様のお世話を出来ないから、私が代わりにきたのですけど?」
レースのカーテンをしめながら私は言った。しかし、それは嘘である。フレディに
デニムを起こす役を変わってもらったのである。
「何?フレディがいない?困ったな…。今朝は頼みたいことがあったのに…」
デニムはベッドの上でブツブツ言っている。頼みたいこと…きっとアレの事に違いない。しかしここは聞こえなかったふりをしておこう。
「デニム様。着替えはベッドサイドに置いておきますので、お支度が終わったらダイニングルームへおこし下さいませ」
ペコリと頭を下げると、私は急ぎ足で馬繋場へと向かった。
****
「おお~っ!皆、仕事が早いわね!」
馬繋場行く5台あったコネリー家の馬車は全て消えていた。
「ええ、奥様の言われたとおり、全ての馬車は修理工場へ運びました。メンテナンスをして下さいとお願いしてきましたよ」
御者長を務める初老の男性が私に言った。彼の背後には5名の御者達がいる。
「皆、朝早くからありがとう!コネリー家の馬車は夕方まで預かってもらうようにお願いしてあるのよね?」
「ええ、勿論です。でも…本当にこのような真似をして良かったのでしょうか…?」
御者長が心配そうに声を掛けてきた。
「いいのいいの。義母もデニムもこの屋敷の事、なーんにも分かっていないんだから。私に任せなさいって!!貴方達だってデニムにギャフンと言わせたいでしょう?」
私は胸を叩きながら言う。いや、実際にデニムがギャフンと言うかどうかは不明だが、御者たちは普段からデニムに馬車で出かける際、無茶振りを普段から命ぜられているから、恨みは持っているはずだ。通行禁止の場所を無理やり走らされたり、馬車を止めてはいけない場所に無理やり止めさせられたり…他にも色々な話を耳にしている。
「奥様に任せておけば我らも安心です」
御者町の言葉に、他の御者達もうなずく。
「ええ、大船に乗ったつもりでいて頂戴、また来るわね!」
私は手を振ると馬繋場を後にし、鼻歌を歌いながらデニムたちが食事をしているダイニングルームへと向かった―。
コンコン
私は眠っているデニムの部屋の扉をノックした。
「…」
やはり無反応だ。全く…もう9時になるというのに寝坊助のデニムは起きている気配はない。
「入りますよ、デニム様」
無遠慮にガチャリと扉を開けてズカズカと私は部屋に入っていく。そしてベッドの中を覗き込んだ。
「スゴ-…スゴー…」
奇妙な寝息を立てながらだらしなく口を開けて眠っているデニム。こいつめ…こんなに寝息がうるさかったのか。良かった…一緒の部屋じゃなくて。
「デニム様、朝ですよ!起きてくださいっ!起きないと大変な目に合いますよ!」
しかしやはりデニムは起きる気配は無い。
「一応忠告はしましたからね…」
部屋のカーテンは寝坊助デニム用に遮光カーテンになっている。
「全く…このカーテンもいけないのよ。こんなだから部屋の中に朝日を取り込めないんだわ」
デニムの頭をそっとつかみ、窓の方に顔を向けた。
「スゴ-…スゴー…」
それでもデニムは目を覚まさない。
「顔の位置…よし!」
1人納得すると、私はカーテンに近づき…。
シャーッ!!
思い切りレースのカーテンごと開け放した。すると途端にデニムの顔を直撃する太陽の眩しい光。
「ぐああっ!!ま、眩しいっ!!」
顔面を眩しい太陽の光に照らされ、デニムは枕に顔を押し付けながら叫んだ。
「だ、誰だっ!!俺の眠りを妨げる者はっ!!」
まるで舞台劇のような大袈裟なセリフを吐くデニムに声を掛けた。
「私ですけど?」
腰を両手に当て、太陽を背にして平然とデニムの前に立った。
「あっ!!ま、またお前かっ?!フレディはどうしたっ?!い、いや!それよりも眩しい!せめてレースのカーテンくらいしめろ!後、太陽を背にして立つな!」
デニムは眩しいのか片手で日差しを遮りながら、私の事をビシッと指差す。
全く、文句を言いながら人を指差すとは失礼極まりない。
「フレディさんは今朝は忙しくてデニム様のお世話を出来ないから、私が代わりにきたのですけど?」
レースのカーテンをしめながら私は言った。しかし、それは嘘である。フレディに
デニムを起こす役を変わってもらったのである。
「何?フレディがいない?困ったな…。今朝は頼みたいことがあったのに…」
デニムはベッドの上でブツブツ言っている。頼みたいこと…きっとアレの事に違いない。しかしここは聞こえなかったふりをしておこう。
「デニム様。着替えはベッドサイドに置いておきますので、お支度が終わったらダイニングルームへおこし下さいませ」
ペコリと頭を下げると、私は急ぎ足で馬繋場へと向かった。
****
「おお~っ!皆、仕事が早いわね!」
馬繋場行く5台あったコネリー家の馬車は全て消えていた。
「ええ、奥様の言われたとおり、全ての馬車は修理工場へ運びました。メンテナンスをして下さいとお願いしてきましたよ」
御者長を務める初老の男性が私に言った。彼の背後には5名の御者達がいる。
「皆、朝早くからありがとう!コネリー家の馬車は夕方まで預かってもらうようにお願いしてあるのよね?」
「ええ、勿論です。でも…本当にこのような真似をして良かったのでしょうか…?」
御者長が心配そうに声を掛けてきた。
「いいのいいの。義母もデニムもこの屋敷の事、なーんにも分かっていないんだから。私に任せなさいって!!貴方達だってデニムにギャフンと言わせたいでしょう?」
私は胸を叩きながら言う。いや、実際にデニムがギャフンと言うかどうかは不明だが、御者たちは普段からデニムに馬車で出かける際、無茶振りを普段から命ぜられているから、恨みは持っているはずだ。通行禁止の場所を無理やり走らされたり、馬車を止めてはいけない場所に無理やり止めさせられたり…他にも色々な話を耳にしている。
「奥様に任せておけば我らも安心です」
御者町の言葉に、他の御者達もうなずく。
「ええ、大船に乗ったつもりでいて頂戴、また来るわね!」
私は手を振ると馬繋場を後にし、鼻歌を歌いながらデニムたちが食事をしているダイニングルームへと向かった―。
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