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第71話 出ていって下さい
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しーん…。
義父の一喝でその場は水を打ったように静かになった。し、知らなかった…義父があのように怒声を張り上げるのは初めてだ。しかし、衝撃を受けているのはデニムと義母も同様だった。
「あ、あなた…」
「ち、父上?」
「全く…お前たち、2人揃ってなんてザマだっ!いいか?もうコネリー家には資産が無いのだ。何とか立て直そうと思い、あちこち資金繰りに駆け回っていたが…もう限界だ。それもこれもお前達2人が贅沢三昧の生活をしていたからだ!それ故、こちらからお願いしてお金持ちの商家の娘さん…フェリシアさんをデニムの妻に迎え入れたのに、お前たちは彼女を家族とも認めず、無視してきおって…私はどれだけ彼女に申し訳なく思ってきたか、お前たちには分かるまい!」
「「…」」
義母とデニムは口を閉ざしてうつむき加減に聞いている。恐らく多少は良心が傷んでいるのだろう。それにしても知らなかった。義父がそのような気持ちを抱えていたなんて。
「デニム、お前が少しも領地経営に力を貸さないから、見兼ねたフェリシアさんが私と一緒に経営管理を手伝ってくれていた。彼女は嫁いでからこの家の為に一度も里帰りすること無く、一生懸命働いてくれたのに…たった一度の帰省で…しかも妹さんの出産祝いで里帰りしたのに、これ幸いと言わんばかりに勝手に離婚届は送りつけるは、離婚していないのに見合いをするわで…まったくもって情けない話だとは思わないのかっ?!」
青筋を立てて怒る義父に、デニムはチラリと私を見た。今…デニムが何を考えてこちらを見ているのかは分からないが…もう私は阿呆デニムも義母も許すつもりはない。
「しかもお前たちは資金の横領をし、改ざんをした。そしてデニム、お前は離婚もしていないのに、離婚は成立したと偽って見合いの公募をした。それだけでも偽証罪に問われる。その上、屋敷内で禁じられた掛け賭博…お前たちには横領罪と偽証罪、そして賭博罪で逮捕状が出ているのだ」
「「た、逮捕状?!」」
義母とデニムが同時に青ざめた。まさか、この2人…これほどまでに自分たちが重い罪を犯していたことに今迄気付かなかったのだろうか?
「しかし、逮捕状が出てはいるが、免れる手はある。爵位の返上、身元引受人の確保、そして金貨1000枚を収めれば逮捕は免除される」
もはや、義母もデニムもガタガタ震え、一言も発することが出来ない。
そこへブレンダ嬢が口を開いた。
「ご安心下さい。私が身元引受人とお金を用意させて頂きました。デニム様とお義母様は私がこれから責任を持ってまとめて面倒を見させて頂きますね?」
ブレンダ嬢はまるで天使のような微笑みを見せた。
「そ、そんな…」
デニムはがっくり膝を付いた。私はデニムに一歩近付くと言った。
「デニム様。ブレンダ様は投資家でして、それは大層な資産をお持ちなんですよ?これからはどうぞブレンダ様を良き伴侶として大切にしてあげてくださいね?何しろ愚な貴方達をご自身の資産を投げ売って助けて下さるのですから。くれぐれも私のように粗末な扱いをしてはなりませんよ?」
そしてにっこり笑った。
「フェ、フェリシア…お、俺が悪かった。頼む!た、助けてくれよ!な、俺は今猛烈にお前に惹かれてるんだよ!お前は頭もいいし、何より器量よしだ。年齢さえ目をつぶれば言うことなしなんだから!な?!」
デニムは顔面蒼白になりながら私に手を伸ばしてきた。するとそこへロバートさんが私とデニムの前に立ちはだかった。
「いい加減にしないか!デニムッ!お前、今まで散々フェリシアさんを蔑ろにしておきながら今更泣きつくなんて虫が良すぎだっ!」
「ええ、私も同感です。それに私と貴方はもう赤の他人なのですから。さぁ、今すぐこの屋敷を出ていって下さい」
「な、なんですってっ?!」
義母が私を睨みつけた。
「ええ、もうお二人の部屋は私が用意しておりますので」
ブレンダ嬢はにっこり笑った。
「分かりませんか?この屋敷の名義はもう私に書き換えられたのですよ?」
私は腕組みをしてデニムを見下ろした―。
義父の一喝でその場は水を打ったように静かになった。し、知らなかった…義父があのように怒声を張り上げるのは初めてだ。しかし、衝撃を受けているのはデニムと義母も同様だった。
「あ、あなた…」
「ち、父上?」
「全く…お前たち、2人揃ってなんてザマだっ!いいか?もうコネリー家には資産が無いのだ。何とか立て直そうと思い、あちこち資金繰りに駆け回っていたが…もう限界だ。それもこれもお前達2人が贅沢三昧の生活をしていたからだ!それ故、こちらからお願いしてお金持ちの商家の娘さん…フェリシアさんをデニムの妻に迎え入れたのに、お前たちは彼女を家族とも認めず、無視してきおって…私はどれだけ彼女に申し訳なく思ってきたか、お前たちには分かるまい!」
「「…」」
義母とデニムは口を閉ざしてうつむき加減に聞いている。恐らく多少は良心が傷んでいるのだろう。それにしても知らなかった。義父がそのような気持ちを抱えていたなんて。
「デニム、お前が少しも領地経営に力を貸さないから、見兼ねたフェリシアさんが私と一緒に経営管理を手伝ってくれていた。彼女は嫁いでからこの家の為に一度も里帰りすること無く、一生懸命働いてくれたのに…たった一度の帰省で…しかも妹さんの出産祝いで里帰りしたのに、これ幸いと言わんばかりに勝手に離婚届は送りつけるは、離婚していないのに見合いをするわで…まったくもって情けない話だとは思わないのかっ?!」
青筋を立てて怒る義父に、デニムはチラリと私を見た。今…デニムが何を考えてこちらを見ているのかは分からないが…もう私は阿呆デニムも義母も許すつもりはない。
「しかもお前たちは資金の横領をし、改ざんをした。そしてデニム、お前は離婚もしていないのに、離婚は成立したと偽って見合いの公募をした。それだけでも偽証罪に問われる。その上、屋敷内で禁じられた掛け賭博…お前たちには横領罪と偽証罪、そして賭博罪で逮捕状が出ているのだ」
「「た、逮捕状?!」」
義母とデニムが同時に青ざめた。まさか、この2人…これほどまでに自分たちが重い罪を犯していたことに今迄気付かなかったのだろうか?
「しかし、逮捕状が出てはいるが、免れる手はある。爵位の返上、身元引受人の確保、そして金貨1000枚を収めれば逮捕は免除される」
もはや、義母もデニムもガタガタ震え、一言も発することが出来ない。
そこへブレンダ嬢が口を開いた。
「ご安心下さい。私が身元引受人とお金を用意させて頂きました。デニム様とお義母様は私がこれから責任を持ってまとめて面倒を見させて頂きますね?」
ブレンダ嬢はまるで天使のような微笑みを見せた。
「そ、そんな…」
デニムはがっくり膝を付いた。私はデニムに一歩近付くと言った。
「デニム様。ブレンダ様は投資家でして、それは大層な資産をお持ちなんですよ?これからはどうぞブレンダ様を良き伴侶として大切にしてあげてくださいね?何しろ愚な貴方達をご自身の資産を投げ売って助けて下さるのですから。くれぐれも私のように粗末な扱いをしてはなりませんよ?」
そしてにっこり笑った。
「フェ、フェリシア…お、俺が悪かった。頼む!た、助けてくれよ!な、俺は今猛烈にお前に惹かれてるんだよ!お前は頭もいいし、何より器量よしだ。年齢さえ目をつぶれば言うことなしなんだから!な?!」
デニムは顔面蒼白になりながら私に手を伸ばしてきた。するとそこへロバートさんが私とデニムの前に立ちはだかった。
「いい加減にしないか!デニムッ!お前、今まで散々フェリシアさんを蔑ろにしておきながら今更泣きつくなんて虫が良すぎだっ!」
「ええ、私も同感です。それに私と貴方はもう赤の他人なのですから。さぁ、今すぐこの屋敷を出ていって下さい」
「な、なんですってっ?!」
義母が私を睨みつけた。
「ええ、もうお二人の部屋は私が用意しておりますので」
ブレンダ嬢はにっこり笑った。
「分かりませんか?この屋敷の名義はもう私に書き換えられたのですよ?」
私は腕組みをしてデニムを見下ろした―。
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