9 / 14
第9話 新妻の働き方改革
しおりを挟む
――翌朝の午前5時
「気持ちの良い朝だわ……」
ジャンヌはダブルベッドの上で目覚めた。結局ヘンリーは帰宅することなく、新妻であるジャンヌは1人の夜を過ごしたのだった。
「ふわぁあ~……良く眠れたわ。きっとベッドが素晴らしかったからね。でも贅沢品だわ。これはきっと旦那様の趣味なのかもしれないわね。さて、仕事が待っているから起きなくちゃ」
働き者ジャンヌはベッドから起きると、手早く着替を始めた――
****
「皆さん、おはようございます」
厨房にジャンヌが現れ、働いていた5人の料理人たちはギョッとした。
「あ、あの……どちら様でしょうか……?」
大柄な男がジャンヌに声をかけた。
「私は昨日からヘンリー様の妻となったジャンヌと言います。皆様の働きぶりを見学するために厨房へ足を運んだ次第です」
「え! そうだったのですか? あまりにも地味なお召し物でしたので、気づきませんでした。大変申し訳ございません!」
男性は白帽子を脱ぐと、謝罪する。
「いいえ、気付かないのは当然です。それで、ここの代表の方はどなたですか?」
「はい、私ですけど」
「お名前を教えてくださいますか?」
「コックと申します」
「コックさんですね? これからよろしくお願いします。では、早速ですが食材を見せて頂けますか?」
ジャンヌは笑顔を見せた――
****
「では、皆さん。お仕事頑張ってくださいね」
「「「「「はい、奥様」」」」」
ジャンヌが厨房から出ていくと、とたんに騒然となる料理人達。
「いや~それにしても若奥様には驚いたよ」
「そうだな、食材をチェックしてこれからは旬の野菜を取り入れて仕入れ価格を押さえるように……なんて言うとは」
「それだけじゃない。もっと農家の人たちを助けてあげるように、領地だけで生産している畜産物を料理に使用するようにだってよ」
「見てくれよ、この価格表。今一番お手頃な食材のリストだぜ」
「本当に昨日嫁いてできたばかりなのか?」
そして、料理人たちは口を揃えた。
「「「「「何て素晴らしい若奥様だろう」」」」」と――
****
その後も屋敷のいたるところにジャンヌは顔出しをし、使用人たちの働き方改革を提案していった。
「洗濯業務を領民たちに委託するなんて斬新な発想ね」
「仕事がない人々に職を与えて給料を支払うなんて素晴らしい考えだ」
「掃除の仕事もそうだよな? 今までは人手不足で手が回らなかったものな」
「掃除もしなくてすむなんて負担が減って嬉しいわ」
そして使用人たちは口々に声を揃えて言う。
「「「「「若奥様は最高に素晴らしい方だ」」」」」
このように、瞬く間にジャンヌは使用人たちの心を鷲掴みにしてしまったのだった。
****
――午前7時半
ジャンヌは明るい日差しが差し込むダイニングルームで食後のお茶を楽しんでいた。
「美味しい朝食だったわ。でも、少し贅沢が過ぎるわね。後で食事内容を見直すプランを立てて厨房に持っていったほうが良さそうね。それよりも今飲んでいるお茶は輸入物かしら……?」
その時。
「ジャンヌ様!」
慌てた様子で執事長マイクが駆け込んできた。
「あら、おはようございます。マイクさん」
「はい、おはようございます。ジャンヌ様、申し訳ございません。実は私、ヘンリー様が昨夜は戻られなかったので今まで領地に捜しに行っていたものですからご挨拶が遅れてしまいました」
マイクは乱れた髪を手で整えた。
「まぁ、そうだったのですね? お手数をかけてしまい、申し訳ございませんでした」
「い、いえ! 謝罪するべきはむしろ私の方です」
恐縮するマイク。
「それで、夫は見つかりましたか?」
「い、いえ……そ、それが……」
胸ポケットからハンカチを取り出すと額の汗を拭うマイク。
「その様子では、つまり夫は見つからなかったということでしょうか?」
「はい……酒場で、昨夜女性とお酒を飲んでいた姿が最後の目撃情報でして……どうやら、その後は……」
「ええ。みなまで言わなくとも分かります。つまり初夜を迎えるはずの新妻を放ったらかして、何処の誰とも分からぬ女性と何処かへシケ込んだということですね?」
ジャンヌはにっこり笑みを浮かべる。
「ゴホッ!! シ、シケこむ……とは……。は、はい。言い方を変えれば、そういうことになりますが……本当に申し訳ございません」
あまりの言葉にむせながら謝罪するマイク。
「大丈夫です、私は全く気にしておりませんので。これもモテる夫を持つ妻の宿命だと甘んじて受け入れるつもりです。ですが……このこともきちんと記録に残させておきますけどね?」
「え? 記録……ですか?」
首を傾げるマイク。
「ええ。記録です」
そしてジャンヌは再び紅茶を飲み……口元に小さな笑みを浮かべるのだった――
「気持ちの良い朝だわ……」
ジャンヌはダブルベッドの上で目覚めた。結局ヘンリーは帰宅することなく、新妻であるジャンヌは1人の夜を過ごしたのだった。
「ふわぁあ~……良く眠れたわ。きっとベッドが素晴らしかったからね。でも贅沢品だわ。これはきっと旦那様の趣味なのかもしれないわね。さて、仕事が待っているから起きなくちゃ」
働き者ジャンヌはベッドから起きると、手早く着替を始めた――
****
「皆さん、おはようございます」
厨房にジャンヌが現れ、働いていた5人の料理人たちはギョッとした。
「あ、あの……どちら様でしょうか……?」
大柄な男がジャンヌに声をかけた。
「私は昨日からヘンリー様の妻となったジャンヌと言います。皆様の働きぶりを見学するために厨房へ足を運んだ次第です」
「え! そうだったのですか? あまりにも地味なお召し物でしたので、気づきませんでした。大変申し訳ございません!」
男性は白帽子を脱ぐと、謝罪する。
「いいえ、気付かないのは当然です。それで、ここの代表の方はどなたですか?」
「はい、私ですけど」
「お名前を教えてくださいますか?」
「コックと申します」
「コックさんですね? これからよろしくお願いします。では、早速ですが食材を見せて頂けますか?」
ジャンヌは笑顔を見せた――
****
「では、皆さん。お仕事頑張ってくださいね」
「「「「「はい、奥様」」」」」
ジャンヌが厨房から出ていくと、とたんに騒然となる料理人達。
「いや~それにしても若奥様には驚いたよ」
「そうだな、食材をチェックしてこれからは旬の野菜を取り入れて仕入れ価格を押さえるように……なんて言うとは」
「それだけじゃない。もっと農家の人たちを助けてあげるように、領地だけで生産している畜産物を料理に使用するようにだってよ」
「見てくれよ、この価格表。今一番お手頃な食材のリストだぜ」
「本当に昨日嫁いてできたばかりなのか?」
そして、料理人たちは口を揃えた。
「「「「「何て素晴らしい若奥様だろう」」」」」と――
****
その後も屋敷のいたるところにジャンヌは顔出しをし、使用人たちの働き方改革を提案していった。
「洗濯業務を領民たちに委託するなんて斬新な発想ね」
「仕事がない人々に職を与えて給料を支払うなんて素晴らしい考えだ」
「掃除の仕事もそうだよな? 今までは人手不足で手が回らなかったものな」
「掃除もしなくてすむなんて負担が減って嬉しいわ」
そして使用人たちは口々に声を揃えて言う。
「「「「「若奥様は最高に素晴らしい方だ」」」」」
このように、瞬く間にジャンヌは使用人たちの心を鷲掴みにしてしまったのだった。
****
――午前7時半
ジャンヌは明るい日差しが差し込むダイニングルームで食後のお茶を楽しんでいた。
「美味しい朝食だったわ。でも、少し贅沢が過ぎるわね。後で食事内容を見直すプランを立てて厨房に持っていったほうが良さそうね。それよりも今飲んでいるお茶は輸入物かしら……?」
その時。
「ジャンヌ様!」
慌てた様子で執事長マイクが駆け込んできた。
「あら、おはようございます。マイクさん」
「はい、おはようございます。ジャンヌ様、申し訳ございません。実は私、ヘンリー様が昨夜は戻られなかったので今まで領地に捜しに行っていたものですからご挨拶が遅れてしまいました」
マイクは乱れた髪を手で整えた。
「まぁ、そうだったのですね? お手数をかけてしまい、申し訳ございませんでした」
「い、いえ! 謝罪するべきはむしろ私の方です」
恐縮するマイク。
「それで、夫は見つかりましたか?」
「い、いえ……そ、それが……」
胸ポケットからハンカチを取り出すと額の汗を拭うマイク。
「その様子では、つまり夫は見つからなかったということでしょうか?」
「はい……酒場で、昨夜女性とお酒を飲んでいた姿が最後の目撃情報でして……どうやら、その後は……」
「ええ。みなまで言わなくとも分かります。つまり初夜を迎えるはずの新妻を放ったらかして、何処の誰とも分からぬ女性と何処かへシケ込んだということですね?」
ジャンヌはにっこり笑みを浮かべる。
「ゴホッ!! シ、シケこむ……とは……。は、はい。言い方を変えれば、そういうことになりますが……本当に申し訳ございません」
あまりの言葉にむせながら謝罪するマイク。
「大丈夫です、私は全く気にしておりませんので。これもモテる夫を持つ妻の宿命だと甘んじて受け入れるつもりです。ですが……このこともきちんと記録に残させておきますけどね?」
「え? 記録……ですか?」
首を傾げるマイク。
「ええ。記録です」
そしてジャンヌは再び紅茶を飲み……口元に小さな笑みを浮かべるのだった――
71
あなたにおすすめの小説
【完結】なんで、あなたが王様になろうとしているのです?そんな方とはこっちから婚約破棄です。
西東友一
恋愛
現国王である私のお父様が病に伏せられました。
「はっはっはっ。いよいよ俺の出番だな。みなさま、心配なさるなっ!! ヴィクトリアと婚約関係にある、俺に任せろっ!!」
わたくしと婚約関係にあった貴族のネロ。
「婚約破棄ですわ」
「なっ!?」
「はぁ・・・っ」
わたくしの言いたいことが全くわからないようですね。
では、順を追ってご説明致しましょうか。
★★★
1万字をわずかに切るぐらいの量です。
R3.10.9に完結予定です。
ヴィクトリア女王やエリザベス女王とか好きです。
そして、主夫が大好きです!!
婚約破棄ざまぁの発展系かもしれませんし、後退系かもしれません。
婚約破棄の王道が好きな方は「箸休め」にお読みください。
望まない相手と一緒にいたくありませんので
毬禾
恋愛
どのような理由を付けられようとも私の心は変わらない。
一緒にいようが私の気持ちを変えることはできない。
私が一緒にいたいのはあなたではないのだから。
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
オネェ系公爵子息はたからものを見つけた
有川カナデ
恋愛
レオンツィオ・アルバーニは可愛いものと美しいものを愛する公爵子息である。ある日仲の良い令嬢たちから、第三王子とその婚約者の話を聞く。瓶底眼鏡にぎちぎちに固く結ばれた三編み、めいっぱい地味な公爵令嬢ニナ・ミネルヴィーノ。分厚い眼鏡の奥を見たレオンツィオは、全力のお節介を開始する。
いつも通りのご都合主義。ゆるゆる楽しんでいただければと思います。
壊れていく音を聞きながら
夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。
妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪
何気ない日常のひと幕が、
思いもよらない“ひび”を生んでいく。
母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。
誰も気づきがないまま、
家族のかたちが静かに崩れていく――。
壊れていく音を聞きながら、
それでも誰かを思うことはできるのか。
今さら泣きついても遅いので、どうかお静かに。
有賀冬馬
恋愛
「平民のくせに」「トロくて邪魔だ」──そう言われ続けてきた王宮の雑用係。地味で目立たない私のことなんて、誰も気にかけなかった。
特に伯爵令嬢のルナは、私の幸せを邪魔することばかり考えていた。
けれど、ある夜、怪我をした青年を助けたことで、私の運命は大きく動き出す。
彼の正体は、なんとこの国の若き国王陛下!
「君は私の光だ」と、陛下は私を誰よりも大切にしてくれる。
私を虐げ、利用した貴族たちは、今、悔し涙を流している。
結婚から数ヶ月が経った頃、夫が裏でこそこそ女性と会っていることを知りました。その話はどうやら事実のようなので、離婚します。
四季
恋愛
結婚から数ヶ月が経った頃、夫が裏でこそこそ女性と会っていることを知りました。その話はどうやら事実のようなので、離婚します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる