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2−13 7回目の「死」の記憶
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その後、私はユベールに頼んで今現在いる南塔の簡単な地図をユベールに書いてもらい、魔石が見つかった部屋をチェックしていくことにした。魔石に近づく度に鳴り響く不気味な音に苦しめられながら5個目の魔石を手に入れた頃…。
ボーン
ボーン
ボーン
本日の魔石探し終了鐘の音が鳴り響いた。
「どうやら今日の魔石探しは終わったようだな?…大丈夫か?」
魔石を見つけた部屋の壁に寄りかかって、ため息をつくとユベールが声を掛けてきた。
「は、はい。大丈夫です…」
音を聞き取るのに全神経を集中させていたからか、それとも初日で慣れていないせいかは分からないが、私は疲労困憊で立っているのがやっとだった。だけどやはりあの魔石から発せられる鐘の音には恐怖を感じる。
「ユベール様。お願いがあるのですが…」
「何だ?」
「あの、私の代わりに魔石を持っていて頂けませんか?」
「お前の代わりに俺が?」
「はい、そうです」
だって、私は魔石を見つけることが出来ても触れることが出来ない。あの音を聞くと怖くて身体がすくんでしまうから。
「分かった、考えてみればお前はこの魔石に触れることが出来なかったな。よし、では預かっておこう」
「ありがとうございます」
私は礼を述べると、ユベールは言った。
「それでは、また明日な。お前の部屋に迎えに行く」
「はい、よろしくお願いします」
そしてユベールは背を向けると部屋の扉を開けて歩き去って行った。
「…私も帰ろう」
開けっ放しになっていた扉から出てきた時、運悪くイメルダ達のグループに遭遇してしまった。
「あら?シルビアさんじゃないの。貴女…ひょっとして1人なのかしら?」
「ええ、そうよ」
「アンリ王子の護衛騎士と一緒じゃなかったかしら?」
気の強そうな令嬢が声を掛けてきた。
「ええ、さっきまで一緒だったけど先に帰られたわ」
「ふ~ん…ところで貴女は魔石を見つけられたのかしら?」
イメルダの質問に心臓が跳ねた。
「そういうイメルダ様はどうなのですか?」
「まあ!貴女…伯爵礼令嬢のくせに侯爵家のイメルダ様に対して…!」
取り巻きのような女性が私に鋭い言葉を投げかけてきた。
「いいのよ、おやめなさい」
イメルダはその女性を嗜めると私を見た。
「そうよね、私達は敵同士。お互いに敵に手の内を見せるわけにはいかないものね?答えないのは懸命な判断だと思うわ。それにどうせ毎月、アンリ王子に魔石の数を報告するのだから、その時に互いの数が分かるしね」
そしてイメルダは私に一歩近づくと言った。
「シルビアさん。今月一杯はお互い魔石探しに集中しましょうね?私達はお互いに邪魔し合ったりしないことにしない?」
「…」
そんな言葉を信じても良いのだろうか?するとイメルダが言った。
「何なら誓約書でも書きましょうか?自分のサインの部分に血判を押してもいいわよ?」
言いながらイメルダが袖をまくってダガーを取り出すのを見て驚いた。
「な、い、一体何をっ?!」
「ふふ、ほんの冗談よ。まあ、血判は冗談としても私の今の言葉は本心だから。それじゃあね」
イメルダは笑みを浮かべると令嬢たちを引き連れて私の前から去っていった。私は彼女たちの後ろ姿が見えなくなるまで、その場に立ち尽くしていた。
「あ…」
突然身体に激しい震えが走り、私は床にうずくまってしまった。間違いない、あのダガーで私は7回目の死を迎えている。あの時はアンリ王子に呼び出された為に、王宮へ向かって歩いていた時に突然前方からダガーが飛んできて、私の胸に突き刺さったのだった。ダガーのポンメル(柄頭)には先ほど同じ赤と青の宝石が上下に埋め込まれていたのですぐに思い出すことが出来た。
「ひょっとして私は複数の人物に命を狙われていたの…?」
しばらくの間私は動くことが出来ず、廊下に座り込んでいた―。
ボーン
ボーン
ボーン
本日の魔石探し終了鐘の音が鳴り響いた。
「どうやら今日の魔石探しは終わったようだな?…大丈夫か?」
魔石を見つけた部屋の壁に寄りかかって、ため息をつくとユベールが声を掛けてきた。
「は、はい。大丈夫です…」
音を聞き取るのに全神経を集中させていたからか、それとも初日で慣れていないせいかは分からないが、私は疲労困憊で立っているのがやっとだった。だけどやはりあの魔石から発せられる鐘の音には恐怖を感じる。
「ユベール様。お願いがあるのですが…」
「何だ?」
「あの、私の代わりに魔石を持っていて頂けませんか?」
「お前の代わりに俺が?」
「はい、そうです」
だって、私は魔石を見つけることが出来ても触れることが出来ない。あの音を聞くと怖くて身体がすくんでしまうから。
「分かった、考えてみればお前はこの魔石に触れることが出来なかったな。よし、では預かっておこう」
「ありがとうございます」
私は礼を述べると、ユベールは言った。
「それでは、また明日な。お前の部屋に迎えに行く」
「はい、よろしくお願いします」
そしてユベールは背を向けると部屋の扉を開けて歩き去って行った。
「…私も帰ろう」
開けっ放しになっていた扉から出てきた時、運悪くイメルダ達のグループに遭遇してしまった。
「あら?シルビアさんじゃないの。貴女…ひょっとして1人なのかしら?」
「ええ、そうよ」
「アンリ王子の護衛騎士と一緒じゃなかったかしら?」
気の強そうな令嬢が声を掛けてきた。
「ええ、さっきまで一緒だったけど先に帰られたわ」
「ふ~ん…ところで貴女は魔石を見つけられたのかしら?」
イメルダの質問に心臓が跳ねた。
「そういうイメルダ様はどうなのですか?」
「まあ!貴女…伯爵礼令嬢のくせに侯爵家のイメルダ様に対して…!」
取り巻きのような女性が私に鋭い言葉を投げかけてきた。
「いいのよ、おやめなさい」
イメルダはその女性を嗜めると私を見た。
「そうよね、私達は敵同士。お互いに敵に手の内を見せるわけにはいかないものね?答えないのは懸命な判断だと思うわ。それにどうせ毎月、アンリ王子に魔石の数を報告するのだから、その時に互いの数が分かるしね」
そしてイメルダは私に一歩近づくと言った。
「シルビアさん。今月一杯はお互い魔石探しに集中しましょうね?私達はお互いに邪魔し合ったりしないことにしない?」
「…」
そんな言葉を信じても良いのだろうか?するとイメルダが言った。
「何なら誓約書でも書きましょうか?自分のサインの部分に血判を押してもいいわよ?」
言いながらイメルダが袖をまくってダガーを取り出すのを見て驚いた。
「な、い、一体何をっ?!」
「ふふ、ほんの冗談よ。まあ、血判は冗談としても私の今の言葉は本心だから。それじゃあね」
イメルダは笑みを浮かべると令嬢たちを引き連れて私の前から去っていった。私は彼女たちの後ろ姿が見えなくなるまで、その場に立ち尽くしていた。
「あ…」
突然身体に激しい震えが走り、私は床にうずくまってしまった。間違いない、あのダガーで私は7回目の死を迎えている。あの時はアンリ王子に呼び出された為に、王宮へ向かって歩いていた時に突然前方からダガーが飛んできて、私の胸に突き刺さったのだった。ダガーのポンメル(柄頭)には先ほど同じ赤と青の宝石が上下に埋め込まれていたのですぐに思い出すことが出来た。
「ひょっとして私は複数の人物に命を狙われていたの…?」
しばらくの間私は動くことが出来ず、廊下に座り込んでいた―。
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