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アゼリア&カイの章 ⑥ また…会えたね(カイside)
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前世の記憶があるせいだろうか?あまり大きな声では言えないけれども僕は予知夢的な物をたまに夢で見る事があった。尤も予知夢と言ってもそれはかなり曖昧なもので、本当にそれを予知夢と言っていいのかどうか怪しいものだったのだけど…今回観た夢はいつもとは違っていた。
そこは僕が良く知っている場所…アゼリアが眠る丘の上だった。季節は夏。青い空に雲一つない美しい空が広がっていた。
僕はバラの花束を手に、アゼリアのお墓参りに来ている。その時背後でパキッと小枝が割れるような音が聞こえて僕は振り返る。
その人の姿は足元しか見えなかったけれども、夢の中の僕は彼女に言う。
『アゼリア…また君に会えたね』
そして、僕はゆっくりと丘を降りて彼女の元へと歩いて行く―。
ピピピピピ…ッ!
突然部屋に携帯でセットし目覚まし時計の音が鳴り響き、僕は夢から覚めて彼女が傍にいない現実世界へ引き戻される―。
「あ…夢か…」
アラームを止めて、ベッドから起き上がると髪の毛をかき上げながらため息をつく。
だけど僕には確信があった。あれは夢ではあるけれども、ただの夢なんかじゃない。きっと予知夢に決まっている。何故ならあんな過去は僕には存在しないからだ。
「アゼリアのお墓…季節は夏…」
僕は口の中で言い聞かせる。
あれは紛れも無い、これから僕の身に起こるそう遠くない未来の話だ。
決めた。今年の夏は…『リンデン』へ行こう。
きっと、そこで僕の愛しい女性に出逢えるはずだ―。
****
僕はラルフと2人で学食で食事をしていた。
「え?夏休みに何所へ行くって?」
ハンバーガーを食べながらラルフが聞き返して来た。
「だから、『リンデン』へ行くんだよ」
フォークにパスタを巻き付けながら僕は答えた。
「だって、今年は実家に里帰りするって言ってたじゃないか。それなのに滞在日程は未定で『リンデン』へ行くって…どう考えてみても、ちょっと妙な話じゃないか」
「うん、予定が変わったんだよ」
「だけど…『リンデン』なんて大したも観光名所が無い場所じゃ…」
「そんな事は無いよ。王宮が残っているし、町の中には運河が流れていて、渡し船があるよ」
「王宮か…確かあそこは100年位前に王族制度が廃止されたんだっけ?今は美術館になっているようだ」
ラルフは手にしていたタブレット端末を操作しながら言う。
「そうだよ」
「まぁ、大きな美術館があるから行ってみるのもいいかもしれないな。『リンデン』ならここ『ハイネ』から飛行機で近いしな」
ラルフの言葉に耳を疑った。
「えっ?!ひょっとして…一緒に行くつもりかい?今年は別荘へ行くって言ってたじゃないか?」
「まぁ、そうなんだけどさ…なんか、『リンデン』て名前を聞いた時、無性に懐かしい気持ちになったんだよ。それでどうしても行ってみたくなったんだよ。いいだろ?カイ。俺も付き合わせてくれよ?」
そう言うと、ラルフは笑って僕を見た―。
そこは僕が良く知っている場所…アゼリアが眠る丘の上だった。季節は夏。青い空に雲一つない美しい空が広がっていた。
僕はバラの花束を手に、アゼリアのお墓参りに来ている。その時背後でパキッと小枝が割れるような音が聞こえて僕は振り返る。
その人の姿は足元しか見えなかったけれども、夢の中の僕は彼女に言う。
『アゼリア…また君に会えたね』
そして、僕はゆっくりと丘を降りて彼女の元へと歩いて行く―。
ピピピピピ…ッ!
突然部屋に携帯でセットし目覚まし時計の音が鳴り響き、僕は夢から覚めて彼女が傍にいない現実世界へ引き戻される―。
「あ…夢か…」
アラームを止めて、ベッドから起き上がると髪の毛をかき上げながらため息をつく。
だけど僕には確信があった。あれは夢ではあるけれども、ただの夢なんかじゃない。きっと予知夢に決まっている。何故ならあんな過去は僕には存在しないからだ。
「アゼリアのお墓…季節は夏…」
僕は口の中で言い聞かせる。
あれは紛れも無い、これから僕の身に起こるそう遠くない未来の話だ。
決めた。今年の夏は…『リンデン』へ行こう。
きっと、そこで僕の愛しい女性に出逢えるはずだ―。
****
僕はラルフと2人で学食で食事をしていた。
「え?夏休みに何所へ行くって?」
ハンバーガーを食べながらラルフが聞き返して来た。
「だから、『リンデン』へ行くんだよ」
フォークにパスタを巻き付けながら僕は答えた。
「だって、今年は実家に里帰りするって言ってたじゃないか。それなのに滞在日程は未定で『リンデン』へ行くって…どう考えてみても、ちょっと妙な話じゃないか」
「うん、予定が変わったんだよ」
「だけど…『リンデン』なんて大したも観光名所が無い場所じゃ…」
「そんな事は無いよ。王宮が残っているし、町の中には運河が流れていて、渡し船があるよ」
「王宮か…確かあそこは100年位前に王族制度が廃止されたんだっけ?今は美術館になっているようだ」
ラルフは手にしていたタブレット端末を操作しながら言う。
「そうだよ」
「まぁ、大きな美術館があるから行ってみるのもいいかもしれないな。『リンデン』ならここ『ハイネ』から飛行機で近いしな」
ラルフの言葉に耳を疑った。
「えっ?!ひょっとして…一緒に行くつもりかい?今年は別荘へ行くって言ってたじゃないか?」
「まぁ、そうなんだけどさ…なんか、『リンデン』て名前を聞いた時、無性に懐かしい気持ちになったんだよ。それでどうしても行ってみたくなったんだよ。いいだろ?カイ。俺も付き合わせてくれよ?」
そう言うと、ラルフは笑って僕を見た―。
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