呪いをかけられた小国の姫は従者と共に旅に出る

結城芙由奈@コミカライズ連載中

文字の大きさ
7 / 24

1-4 封印

しおりを挟む
 ジークベルトは側近、将校等を集めて軍法会議を開いていた。

テーブルの中央には巨大な魔鏡が置かれている。この魔鏡には同盟の証として指輪を国の様子が映像として送られてくるようになっている。
これも先代の偉大なる魔導士の手によって作られた物だ。

「陛下、映像が入ります」

ヨハネスは魔鏡を覗き込んだ。
二人きりの時は砕けた雰囲気で話すヨハネスも、このような場面では立場を弁えた振る舞い方をする。

「よし、映してくれ」

ヨハネスが魔鏡に触れると映像が浮かび上がった。
城の内部は崩壊し、焼け焦げてすっかり原形をとどめてはいない。人の姿は全く無かったが、代わりに様々な小動物が動き回っている。

「何だ? あの動物たちは? 一体どこから入り込んできたのだ?」

ジークベルトは眉間に皺を寄せた。

「それに人々の姿も全く見られないのが気になりますね。国王や女王を含め一切人影すら見当たりません」

側近の一人が言った。

「確かにそうだ……。映像を他の場所に切り替えてくれ」

「はい、ではこの国の中央広場に映像を切り替えます」

映し出された映像を見て、皆が眉をひそめた。

「こ、これは……」
「なんて酷い……」

美しい町並みは破壊の限りを尽くされ、焼き尽くされている。そこには無数の人々の死体が折り重なるように倒れていた。中には小さな子供の姿まである。
さらに獣の身体を持つ獣人が無数にうごめいていた。

「!」

ジークベルトはあまりにも凄惨な光景に言葉を失い、ヨハネスは視線を逸らしている。

「陛下……どうされるおつもりですか?」

白髪交じりの軍曹が問いかける。

「わ……私にはこの国を、民を守らなければならない責務がある。恐らくもうこの国には生き残った人間はいないだろう」

ジークベルトは顔を上げた。

「よって私はこの国を封印し、何人たりとも出入り出来ないようにする! 全てはこの国、そして近隣の国を守る為に!!」

そして視線をヨハネスに移す。

「ヨハネス……出来るな?」


「はい、勿論です。陛下ならきっとそう言うと思っておりました」

 封印の方法は簡単だ。

『マリネス王国』にある≪マーヴェラスの指輪≫を破壊すれば良い。
ヨハネスは魔鏡の映像を切り替え、指輪を映し出した。この指輪は結界で守られており、『マーヴェラス』の魔力を持つ人間しか破壊する事が出来ない。

「ゆくぞ」

ジークベルトは立ち上がると、映し出された指輪に念を送る。

「我が名、ジークベルトが命ずる。指輪よ、その身を自らの意思で砕くのだ!」

その直後。
ピシッピシッと指輪に亀裂が生じて弾け飛ぶと同時に魔鏡からの映像も途絶えた。

ヨハネスは魔鏡を確認した。

「『マリネス王国』……完全に外界からの遮断完了しました……」

ドサリと椅子に座り込むジークベルトは激しい自責の念にかられていた。
自分はとうとう妻の国を見捨ててしまった。
そして、まだ会った事が無いレイリアの婚約者まで見捨ててしまったのだ。

荒い息を吐いてテーブルの上で拳を握って俯くジークベルトを見てヨハネスは声をかけた。

「陛下の行いは正しいです。誰一人この国の人間は陛下を責める事はありません。今は封印致しましたが、いずれ解決策が見つかった時には、再び封印を解けば良いのですから」

「その通りですぞ!」

「陛下! 我々は貴方に何処までも付いて行きます!」

軍法会議に集まった人々は皆口を揃えてジークベルトの英断を褒めたたえるのだった。

「……ありがとう、皆」

ジークベルトが周囲を見渡した時、扉がノックされた。
警備の兵士が応対するとジークベルトの側に歩み寄る。

「陛下、報告があります」

「どうしたのだ?」

「レイリア様の目が覚めたそうです。」

「何? 本当か!?」

ジークベルトは立ち上がった。

「皆の者、会議は一度終了する。ご苦労であった!」

そして足早に会議室を出るとレイリアの部屋へと向かった――

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

勝手にしろと言ったのに、流刑地で愛人と子供たちと幸せスローライフを送ることに、なにか問題が?

赤羽夕夜
恋愛
アエノール・リンダークネッシュは新婚一日目にして、夫のエリオット・リンダークネッシュにより、リンダークネッシュ家の領地であり、滞在人の流刑地である孤島に送られることになる。 その理由が、平民の愛人であるエディットと真実の愛に満ちた生活を送る為。アエノールは二人の体裁を守る為に嫁に迎えられた駒に過ぎなかった。 ――それから10年後。アエノールのことも忘れ、愛人との幸せな日々を過ごしていたエリオットの元に、アエノールによる離婚状と慰謝料の請求の紙が送られてくる。 王室と裁判所が正式に受理したことを示す紋章。事態を把握するために、アエノールが暮らしている流刑地に向かうと。 絶海孤島だった流刑地は、ひとつの島として栄えていた。10年以上前は、たしかになにもない島だったはずなのに、いつの間にか一つの町を形成していて領主屋敷と呼ばれる建物も建てられていた。 エリオットが尋ねると、その庭園部分では、十年前、追い出したはずのアエノールと、愛する人と一緒になる為に婚約者を晒し者にして国王の怒りを買って流刑地に送られた悪役王子――エドが幼い子を抱いて幸せに笑い合う姿が――。 ※気が向いたら物語の補填となるような短めなお話を追加していこうかなと思うので、気長にお待ちいただければ幸いです。

なぜ、私に関係あるのかしら?

シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」 彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。 そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。 「…レオンハルト・トレヴァントだ」 非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。 そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。 「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」 この判断によって、どうなるかなども考えずに… ※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。 ※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、 ※ 画像はAIにて作成しております

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

処理中です...