15 / 108
1章13 私の役目
しおりを挟む
――17時半
「ユニス、本当に屋敷まで送らなくてもいいの?」
見送りに出てきたリオンが尋ねてきた。
「うん、大丈夫よ。だって馬車に乗って帰るだけだもの。それよりも明日は朝早くから『ロコス』の花をお父さんと摘みに出かけるのでしょう? 私のことはいいから、今日は早く休んで。見送りしたら遅くなっちゃうから」
明日、リオンとお父さんは『ロコス』の花を摘みに夫人の故郷へ行くことが決まったのだ。
夫人の故郷は、汽車で8時間かかる遠方にあるので始発に乗ることになるだろう。
「うん、分かった。ユニス、今日は本当にありがとう。母様があんなに美味しそうにお茶を飲んだり、ケーキを食べたりしている姿をみたのは久しぶりだよ。これもユニスのおかげだよ」
「そうなのね? リオンの役に立てて嬉しいわ」
これは心からの言葉だった。
何しろリオンは前世で私の一推しのキャラだったのだから。リオンが悪役令息となって、闇落ちするのを防ぐのが私の役目だと思っている。
「あのさ……ユニス」
「何?」
「そ、その……ユニスが僕の婚約者で、本当に良かったと思っているんだ」
リオンは照れくさいのか、顔を赤らめて視線をそらせる。
まさか一推しから、そんな言葉を貰えるとは思わなかった。でも、それはまだ彼が子供で、この世界のヒロインと出会っていないからだろう。
何しろゲーム中で、リオンは一目ヒロインを見たときから強く惹かれてしまうのだから。
今は、私が婚約者で良かったと言ってくれているが……いずれリオンにとって、私は邪魔な存在になってしまうのだろう。
じっとリオンの顔を見つめていると、突然彼は右手を差し出してきた。
「だから……これから先も、よろしく」
「リオン……」
夕日のせいだろうか? リオンの顔が赤く染まっていた。
「うん。私の方こそ、これからよろしくね」
私も手を差し出すと、リオンはしっかり握りしめてきた。
「ユニス、また遊びに来てよ」
「ええ、勿論。明日、『ロコス』の花、沢山見つかるといいわね」
「父様と頑張って探してくるよ」
そしてリオンは満面の笑みを浮かべた――
****
――ガラガラガラガラ……
「……」
馬車の中から、じっと茜色に染まる夕焼けを私は見つめていた。
今回のことでリオンの母親が風土病で死ぬことは無くなるだろう。
リオンが心に闇を抱える原因が一つ消える。
次に私が防がなくてはいけないのはリオンの魔力の暴走による、屋敷の火事。
あの事件はリオンが12歳の誕生日を迎えた日に発生する。
「どうして魔力の暴走が起きたのかしら……」
ゲーム中では何故魔力の暴走が起こったのかは記述が無かった……はず。
「それとも私が忘れているだけなのかしら……?」
はっきりしているのは、いずれリオンが自分の魔力をコントロール出来なくなってしまうということだ。
私自身には魔力が全く無いので、もしそうなった場合どうしてあげることも出来ない。
「何かリオンの為に出来ることをしなくちゃ……」
だって私の役目はリオンの闇落ちを防いで、ヒロインと結ばれる手伝いをすることなのだから――
「ユニス、本当に屋敷まで送らなくてもいいの?」
見送りに出てきたリオンが尋ねてきた。
「うん、大丈夫よ。だって馬車に乗って帰るだけだもの。それよりも明日は朝早くから『ロコス』の花をお父さんと摘みに出かけるのでしょう? 私のことはいいから、今日は早く休んで。見送りしたら遅くなっちゃうから」
明日、リオンとお父さんは『ロコス』の花を摘みに夫人の故郷へ行くことが決まったのだ。
夫人の故郷は、汽車で8時間かかる遠方にあるので始発に乗ることになるだろう。
「うん、分かった。ユニス、今日は本当にありがとう。母様があんなに美味しそうにお茶を飲んだり、ケーキを食べたりしている姿をみたのは久しぶりだよ。これもユニスのおかげだよ」
「そうなのね? リオンの役に立てて嬉しいわ」
これは心からの言葉だった。
何しろリオンは前世で私の一推しのキャラだったのだから。リオンが悪役令息となって、闇落ちするのを防ぐのが私の役目だと思っている。
「あのさ……ユニス」
「何?」
「そ、その……ユニスが僕の婚約者で、本当に良かったと思っているんだ」
リオンは照れくさいのか、顔を赤らめて視線をそらせる。
まさか一推しから、そんな言葉を貰えるとは思わなかった。でも、それはまだ彼が子供で、この世界のヒロインと出会っていないからだろう。
何しろゲーム中で、リオンは一目ヒロインを見たときから強く惹かれてしまうのだから。
今は、私が婚約者で良かったと言ってくれているが……いずれリオンにとって、私は邪魔な存在になってしまうのだろう。
じっとリオンの顔を見つめていると、突然彼は右手を差し出してきた。
「だから……これから先も、よろしく」
「リオン……」
夕日のせいだろうか? リオンの顔が赤く染まっていた。
「うん。私の方こそ、これからよろしくね」
私も手を差し出すと、リオンはしっかり握りしめてきた。
「ユニス、また遊びに来てよ」
「ええ、勿論。明日、『ロコス』の花、沢山見つかるといいわね」
「父様と頑張って探してくるよ」
そしてリオンは満面の笑みを浮かべた――
****
――ガラガラガラガラ……
「……」
馬車の中から、じっと茜色に染まる夕焼けを私は見つめていた。
今回のことでリオンの母親が風土病で死ぬことは無くなるだろう。
リオンが心に闇を抱える原因が一つ消える。
次に私が防がなくてはいけないのはリオンの魔力の暴走による、屋敷の火事。
あの事件はリオンが12歳の誕生日を迎えた日に発生する。
「どうして魔力の暴走が起きたのかしら……」
ゲーム中では何故魔力の暴走が起こったのかは記述が無かった……はず。
「それとも私が忘れているだけなのかしら……?」
はっきりしているのは、いずれリオンが自分の魔力をコントロール出来なくなってしまうということだ。
私自身には魔力が全く無いので、もしそうなった場合どうしてあげることも出来ない。
「何かリオンの為に出来ることをしなくちゃ……」
だって私の役目はリオンの闇落ちを防いで、ヒロインと結ばれる手伝いをすることなのだから――
1,254
あなたにおすすめの小説
モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~
咲桜りおな
恋愛
前世で大好きだった乙女ゲームの世界にモブキャラとして転生した伯爵令嬢のアスチルゼフィラ・ピスケリー。
ヒロインでも悪役令嬢でもないモブキャラだからこそ、推しキャラ達の恋物語を遠くから鑑賞出来る! と楽しみにしていたら、関わりたくないのに何故か悪役令嬢の兄である騎士見習いがやたらと絡んでくる……。
いやいや、物語の当事者になんてなりたくないんです! お願いだから近付かないでぇ!
そんな思いも虚しく愛しの推しは全力でわたしを口説いてくる。おまけにキラキラ王子まで絡んで来て……逃げ場を塞がれてしまったようです。
結構、ところどころでイチャラブしております。
◆◇◇◇ ◇◇◇◇ ◇◇◇◆
前作「完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい」のスピンオフ作品。
この作品だけでもちゃんと楽しんで頂けます。
番外編集もUPしましたので、宜しければご覧下さい。
「小説家になろう」でも公開しています。
〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です
hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。
夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。
自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。
すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。
訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。
円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・
しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・
はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?
悪役令嬢ですが、ヒロインの恋を応援していたら婚約者に執着されています
窓辺ミナミ
ファンタジー
悪役令嬢の リディア・メイトランド に転生した私。
シナリオ通りなら、死ぬ運命。
だけど、ヒロインと騎士のストーリーが神エピソード! そのスチルを生で見たい!
騎士エンドを見学するべく、ヒロインの恋を応援します!
というわけで、私、悪役やりません!
来たるその日の為に、シナリオを改変し努力を重ねる日々。
あれれ、婚約者が何故か甘く見つめてきます……!
気付けば婚約者の王太子から溺愛されて……。
悪役令嬢だったはずのリディアと、彼女を愛してやまない執着系王子クリストファーの甘い恋物語。はじまりはじまり!
ゲームには参加しません! ―悪役を回避して無事逃れたと思ったのに―
冬野月子
恋愛
侯爵令嬢クリスティナは、ここが前世で遊んだ学園ゲームの世界だと気づいた。そして自分がヒロインのライバルで悪役となる立場だと。
のんびり暮らしたいクリスティナはゲームとは関わらないことに決めた。設定通りに王太子の婚約者にはなってしまったけれど、ゲームを回避して婚約も解消。平穏な生活を手に入れたと思っていた。
けれど何故か義弟から求婚され、元婚約者もアプローチしてきて、さらに……。
※小説家になろう・カクヨムにも投稿しています。
悪役令嬢は自称親友の令嬢に婚約者を取られ、予定どおり無事に婚約破棄されることに成功しましたが、そのあとのことは考えてませんでした
みゅー
恋愛
婚約者のエーリクと共に招待された舞踏会、公の場に二人で参加するのは初めてだったオルヘルスは、緊張しながらその場へ臨んだ。
会場に入ると前方にいた幼馴染みのアリネアと目が合った。すると、彼女は突然泣き出しそんな彼女にあろうことか婚約者のエーリクが駆け寄る。
そんな二人に注目が集まるなか、エーリクは突然オルヘルスに婚約破棄を言い渡す……。
【完結】破滅フラグを回避したいのに婚約者の座は譲れません⁈─王太子殿下の婚約者に転生したみたいだけど転生先の物語がわかりません─
江崎美彩
恋愛
侯爵家の令嬢エレナ・トワインは王太子殿下の婚約者……のはずなのに、正式に発表されないまま月日が過ぎている。
王太子殿下も通う王立学園に入学して数日たったある日、階段から転げ落ちたエレナは、オタク女子高生だった恵玲奈の記憶を思い出す。
『えっ? もしかしてわたし転生してる?』
でも肝心の転生先の作品もヒロインなのか悪役なのかモブなのかもわからない。エレナの記憶も恵玲奈の記憶も曖昧で、エレナの王太子殿下に対する一方的な恋心だけしか手がかりがない。
王太子殿下の発表されていない婚約者って、やっぱり悪役令嬢だから殿下の婚約者として正式に発表されてないの? このまま婚約者の座に固執して、断罪されたりしたらどうしよう!
『婚約者から妹としか思われてないと思い込んで悪役令嬢になる前に身をひこうとしている侯爵令嬢(転生者)』と『婚約者から兄としか思われていないと思い込んで自制している王太子様』の勘違いからすれ違いしたり、謀略に巻き込まれてすれ違いしたりする物語です。
長編ですが、一話一話はさっくり読めるように短めです。
『小説家になろう』『カクヨム』にも投稿しています。
悪女役らしく離婚を迫ろうとしたのに、夫の反応がおかしい
廻り
恋愛
第18回恋愛小説大賞にて奨励賞をいただきました。応援してくださりありがとうございました!
王太子妃シャルロット20歳は、前世の記憶が蘇る。
ここは小説の世界で、シャルロットは王太子とヒロインの恋路を邪魔する『悪女役』。
『断罪される運命』から逃れたいが、夫は離婚に応じる気がない。
ならばと、シャルロットは別居を始める。
『夫が離婚に応じたくなる計画』を思いついたシャルロットは、それを実行することに。
夫がヒロインと出会うまで、タイムリミットは一年。
それまでに離婚に応じさせたいシャルロットと、なぜか様子がおかしい夫の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる