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4章8 問い詰める人
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「やっぱりそうだったんだな……」
私の反応にすぐ気付いたフレッドはため息をついた。何も言えずにいると、突然フレッドは前を歩くセシルに声をかけた。
「セシル」
「何?」
「どうかしたの?」
セシルとエイダは足を止めると振り返った。
「悪いが、先に学生食堂へ行っててくれ。少しクラリスに話がある」
「え? 何の話なのよ」
「あんたには関係ない話だ」
エイダが尋ねると、フレッドはぶっきらぼうに返事をする。
「何よ、それ。大体……」
「分かった。それじゃ先に行って場所を取っておくよ。行こう、エイダ」
「話があるなら、今ここで言えば良いでしょう?」
すると突然、セシルがエイダの耳元で何かを囁いた。
「え? そ、そうなの?」
何を言われたのか分からないが、エイダの顔に困惑の表情が浮かぶ。
「そうだよ、だから俺達は先に行ってよう」
「分かったわ……それじゃ、クラリス。また後でね」
「ええ。また後でね」
エイダは一瞬フレッドを見ると、セシルと一緒に去って行った。
「一体セシルは何と言ったのかしら?」
遠ざかっていく2人の背中を見つめながら、疑問を口にするとフレッドはそっけなく返事をする。
「さぁな。だが、これでやっと話が出来る。何しろ、あの女がいると話が出来ないからな。クラリス、正直に話せ。彼女とは以前からの知りあいだったのか?」
至近距離で私を見つめてくるフレッド。
彼の瞳には戸惑っている私の顔が映り込んでいる。もうこれ以上、黙っているのは無理だった。
「……そうよ。エイダは……私がユニスだったときの親友なの」
「何だって? まさか自分から近づいたのか? 言っただろう? 過去の自分を知っている相手には近づくなって」
「分かってるわよ。でも違うわ。私から近づいたわけじゃない、エイダの方から友達になって欲しいって声をかけてきたのよ」
「その話……本当なのか?」
「本当よ、嘘じゃないわ。そんなに疑うならエイダに直接聞いてもらっても構わないわよ」
すると、フレッドは私から体を離すとため息をついた。
「どうやら本当みたいだな……それじゃ、さっきの話の続きだ。何故リオンと婚約者の話を聞き出そうとした?」
「そ、それは……さっきガイダンスへ行く前に中庭を通りかかったときに、ロザリンがリオンを責めているのを見てしまったの。それを2人に見つかってしまって……ロザリンに怒鳴りつけられたわ。そんな彼女をリオンは咎めたけど」
「何だって? それじゃ、2人に姿を見られてしまったってことか?」
フレッドの顔が険しくなる。
「そうなの……2人が話を始めた隙に逃げ出したけど、ロザリンからは逃げる気と叫ばれてしまったわ。リオンはロザリンの完全な言いなりみたいだった。だから気になって、エイダに話を聞こうと思って……」
すると、フレッドが私の両肩を掴んできた。
「言っただろう? 絶対にリオンとは関わるなって。ただでさえ、クラリスは目立つ存在なんだぞ? 自分が今どういう立場に置かれているか分かっているのか?」
そのとき――
「あ! あんたはさっきの失礼な女ね!」
突然廊下で大きな声が聞こえ、私とフレッドは同時に振り返った。
するとヴェールを被ったロザリンと……リオンが立っていた――
私の反応にすぐ気付いたフレッドはため息をついた。何も言えずにいると、突然フレッドは前を歩くセシルに声をかけた。
「セシル」
「何?」
「どうかしたの?」
セシルとエイダは足を止めると振り返った。
「悪いが、先に学生食堂へ行っててくれ。少しクラリスに話がある」
「え? 何の話なのよ」
「あんたには関係ない話だ」
エイダが尋ねると、フレッドはぶっきらぼうに返事をする。
「何よ、それ。大体……」
「分かった。それじゃ先に行って場所を取っておくよ。行こう、エイダ」
「話があるなら、今ここで言えば良いでしょう?」
すると突然、セシルがエイダの耳元で何かを囁いた。
「え? そ、そうなの?」
何を言われたのか分からないが、エイダの顔に困惑の表情が浮かぶ。
「そうだよ、だから俺達は先に行ってよう」
「分かったわ……それじゃ、クラリス。また後でね」
「ええ。また後でね」
エイダは一瞬フレッドを見ると、セシルと一緒に去って行った。
「一体セシルは何と言ったのかしら?」
遠ざかっていく2人の背中を見つめながら、疑問を口にするとフレッドはそっけなく返事をする。
「さぁな。だが、これでやっと話が出来る。何しろ、あの女がいると話が出来ないからな。クラリス、正直に話せ。彼女とは以前からの知りあいだったのか?」
至近距離で私を見つめてくるフレッド。
彼の瞳には戸惑っている私の顔が映り込んでいる。もうこれ以上、黙っているのは無理だった。
「……そうよ。エイダは……私がユニスだったときの親友なの」
「何だって? まさか自分から近づいたのか? 言っただろう? 過去の自分を知っている相手には近づくなって」
「分かってるわよ。でも違うわ。私から近づいたわけじゃない、エイダの方から友達になって欲しいって声をかけてきたのよ」
「その話……本当なのか?」
「本当よ、嘘じゃないわ。そんなに疑うならエイダに直接聞いてもらっても構わないわよ」
すると、フレッドは私から体を離すとため息をついた。
「どうやら本当みたいだな……それじゃ、さっきの話の続きだ。何故リオンと婚約者の話を聞き出そうとした?」
「そ、それは……さっきガイダンスへ行く前に中庭を通りかかったときに、ロザリンがリオンを責めているのを見てしまったの。それを2人に見つかってしまって……ロザリンに怒鳴りつけられたわ。そんな彼女をリオンは咎めたけど」
「何だって? それじゃ、2人に姿を見られてしまったってことか?」
フレッドの顔が険しくなる。
「そうなの……2人が話を始めた隙に逃げ出したけど、ロザリンからは逃げる気と叫ばれてしまったわ。リオンはロザリンの完全な言いなりみたいだった。だから気になって、エイダに話を聞こうと思って……」
すると、フレッドが私の両肩を掴んできた。
「言っただろう? 絶対にリオンとは関わるなって。ただでさえ、クラリスは目立つ存在なんだぞ? 自分が今どういう立場に置かれているか分かっているのか?」
そのとき――
「あ! あんたはさっきの失礼な女ね!」
突然廊下で大きな声が聞こえ、私とフレッドは同時に振り返った。
するとヴェールを被ったロザリンと……リオンが立っていた――
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