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1章8 私は『悪役令嬢』
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何処から話が洩れたのかは分からないが、私がアシルから『ルーズ』に追放処分が下された話は既に使用人達の耳に届いていたようだった。
その証拠に、廊下を歩く私に挨拶をする使用人は誰もいない。
それどころかこちらを見ながら、ひそひそと話をしているのだ。
「……オフィーリア様はとうとう追放されるらしいぞ」
「いつか、こうなるとは思っていたわ」
「聖女様の命を狙ったのだから仕方ないわよね」
「ドヌーブ家の評判が悪くならなければいいがな……」
「こんなことで、私達が世間から評判が落ちるのはイヤだわ」
時が巻き戻る前は気付かなかったが、使用人達の態度が急に冷たくなったのはその為か。
私は1人、心の中で納得した。
そもそも私は聖女の命など狙ったことはない。どれも些細な嫌がらせだった。
第一、私以外に聖女を敵視する人々は大勢いた。しかもその殆どは貴族である。
彼らは異世界から来たとか言われている素性の知れないソネットを妬んでいた。
そしてアシルを奪われた腹いせに、私が彼女に嫌がらせをしていることを一部の貴族は知っている。
彼らは私の嫌がらせに便乗し、ソネットの命を脅かしたのだ。
あたかも私が犯人かのような噂を流し……。
でも、今となってはそんな話はどうでもいいことだけど。
私は人を陥れるようなことしか考えない貴族社会とは縁を切る。
美しい自然に囲まれ、心優しい村人たちが暮らす『ルーズ』に移り住むのだ。
使用人達の向ける冷たい視線を気にすることも無く、私はステップを踏むように自室へ向かった――
****
――カチャ
自室の扉を開けた私は、思わず目を見開いた。
解放感漂う広い部屋。贅沢なシャンデリアに、天蓋付きの豪華なベッド。
バラ模様のカウチソファは私のお気に入りだった。
「懐かしい……! 60年前と同じだわ!」
口に出して、はたと気付いた。
そうだった。変わらないのは当然だ。だって私は60年前に戻って来たのだから。
「あ、そうだわ! 60年前と言う事は……」
急いで窓際に置かれたドレッサーに駆け寄り、鏡を覗き込んだ。
「わぁ……! 私って……」
鏡に映る自分に話しかける。
「……こんなに、厚化粧していたのね……」
自分の姿を見て、うんざりする。
真っ赤な口紅に白塗りした肌。目元の化粧は濃すぎて、とても目つきが悪く見える。
「確かにこれでは物語に登場する『悪役令嬢』そのものだわ……」
私は一部の貴族令嬢達から、まるで『悪役令嬢』の様だと陰で言われていた。
そこで自分なりに『悪役令嬢』というのを調べてみたことがあるのだ。
あの時は自分のどこが『悪役令嬢』なのだと思っていただけに不思議なものだ。
「確かに化粧は厚いけど……でも、やっぱり若いわ。若さっていいわね」
少しの間鏡の前で自分の顔を見つめ、我に返った。
「そうだわ! 猶予は2日間しかないのだから、それまでに今出来ることをやっておかないと!」
巻き戻る前は餞別として父が預かっていた私の通帳と、三千万ベリルを貰った。
けれど浪費家だった私は、たった2年で全てのお金を使い切ってしまったのだ。
「今回も多分、通帳は貰えるだろうけど……自分でもお金を作っておかないとね」
私は自分の宝石箱を手に取った――
その証拠に、廊下を歩く私に挨拶をする使用人は誰もいない。
それどころかこちらを見ながら、ひそひそと話をしているのだ。
「……オフィーリア様はとうとう追放されるらしいぞ」
「いつか、こうなるとは思っていたわ」
「聖女様の命を狙ったのだから仕方ないわよね」
「ドヌーブ家の評判が悪くならなければいいがな……」
「こんなことで、私達が世間から評判が落ちるのはイヤだわ」
時が巻き戻る前は気付かなかったが、使用人達の態度が急に冷たくなったのはその為か。
私は1人、心の中で納得した。
そもそも私は聖女の命など狙ったことはない。どれも些細な嫌がらせだった。
第一、私以外に聖女を敵視する人々は大勢いた。しかもその殆どは貴族である。
彼らは異世界から来たとか言われている素性の知れないソネットを妬んでいた。
そしてアシルを奪われた腹いせに、私が彼女に嫌がらせをしていることを一部の貴族は知っている。
彼らは私の嫌がらせに便乗し、ソネットの命を脅かしたのだ。
あたかも私が犯人かのような噂を流し……。
でも、今となってはそんな話はどうでもいいことだけど。
私は人を陥れるようなことしか考えない貴族社会とは縁を切る。
美しい自然に囲まれ、心優しい村人たちが暮らす『ルーズ』に移り住むのだ。
使用人達の向ける冷たい視線を気にすることも無く、私はステップを踏むように自室へ向かった――
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――カチャ
自室の扉を開けた私は、思わず目を見開いた。
解放感漂う広い部屋。贅沢なシャンデリアに、天蓋付きの豪華なベッド。
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「懐かしい……! 60年前と同じだわ!」
口に出して、はたと気付いた。
そうだった。変わらないのは当然だ。だって私は60年前に戻って来たのだから。
「あ、そうだわ! 60年前と言う事は……」
急いで窓際に置かれたドレッサーに駆け寄り、鏡を覗き込んだ。
「わぁ……! 私って……」
鏡に映る自分に話しかける。
「……こんなに、厚化粧していたのね……」
自分の姿を見て、うんざりする。
真っ赤な口紅に白塗りした肌。目元の化粧は濃すぎて、とても目つきが悪く見える。
「確かにこれでは物語に登場する『悪役令嬢』そのものだわ……」
私は一部の貴族令嬢達から、まるで『悪役令嬢』の様だと陰で言われていた。
そこで自分なりに『悪役令嬢』というのを調べてみたことがあるのだ。
あの時は自分のどこが『悪役令嬢』なのだと思っていただけに不思議なものだ。
「確かに化粧は厚いけど……でも、やっぱり若いわ。若さっていいわね」
少しの間鏡の前で自分の顔を見つめ、我に返った。
「そうだわ! 猶予は2日間しかないのだから、それまでに今出来ることをやっておかないと!」
巻き戻る前は餞別として父が預かっていた私の通帳と、三千万ベリルを貰った。
けれど浪費家だった私は、たった2年で全てのお金を使い切ってしまったのだ。
「今回も多分、通帳は貰えるだろうけど……自分でもお金を作っておかないとね」
私は自分の宝石箱を手に取った――
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