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第3話 2度目の再会
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クリスタ様と初めてお会いしてから早いもので1週間が経過した。今日もノエル様と私の週に1度の顔合わせの日。
今日の私は先週よりも気合を入れたドレスを着て、邸宅の温室が見えるテラスで椅子に座って待っていた。
「お待たせ、フローラ。」
「ノエル様・・・。」
笑顔で振り向いた私は背後にクリスタ様がいる事に気が付いた。
「まあ、クリスタ様ではありませんか。」
「こ、今日は・・・。」
クリスタ様は恥ずかしそうに前に進み出ると言った。
「ごめんね、フローラ。どうしてもクリスタがついてきたいって言うものだから・・・。」
「あら、いいんですよ。そんな事気になさらないで下さい。クリスタ様、本日もお会いできて嬉しいわ。」
にこりと微笑んでクリスタ様を見ると、頬を赤く染めて私の事を見つめ返して来た。
そこで私は気が付いた。今日は私とノエル様の2人きりで会うものだとばかり思っていたので、クリスタ様のお茶の準備が出来ていなかったと言う事に。
「お2人共、ここでお待ちになって下さい。今、お茶のセットを用意して持ってまいりますので。」
「え?そ、そんな・・・フローラ様に用意して頂くなんて・・・申し訳ありませんわ。」
クリスタ様はオロオロしている。
「うん、そうだね。流石にフローラに用意してもらうのは・・・。」
ノエル様も戸惑ったように言うけれども、こう見えても私はお茶を淹れるのが得意なのだ。
「大丈夫です。すぐにお持ちしますのでお二人でベンチに座って待っていてくださいね。」
そして私は席を立つと、お茶のセットを取りにお茶室へと向かった。
「え~と・・・どのカップがいいかしら・・・。」
棚にずらりとならんだティーカップを見渡し、バイオレットの柄が描かれている乳白色のティーカップを手に取った。
「うん・・・このティーカップならクリスタ様に似合いそう。後、お茶は・・・。」
私は茶葉がズラリと並んでいる棚に前に立ち、少し考えた。確かクリスタ様は前回、喘息の発作が出てすぐに帰られてしまった。それなら・・・。
「カモミールティーは喘息に効果があると言われているから、これを出しましょう。」
カモミールの茶葉が入った瓶とティーカップを持って私は2人の元へ戻った。
「あ・・・。」
2人が座っているベンチが見えてきた時、私は足を止めた。そこには2人が顔を寄せ合って、仲良さげに談笑している場面だったのだ。ノエル様は優しいまなざしでじっとクリスタ様を見つめている。・・・あんな表情を私は未だかつて向けて貰ったことは無い。
ズキリ
何故か一瞬私の胸が痛んだ。
「え・・・?今のは何・・?」
私は顔を上げて、もう一度2人の様子を伺った。ノエル様とクリスタ様は私に気付かずに談笑している。
そんな2人の元へ戻るのは何故か気が引けてしまった。自分があの場に戻るのは酷く場違いな気がしてならなかった。
「どうしよう・・・。」
迷っていると、不意にノエル様が私の方を振り向いた。一瞬、ノエル様の表情が強張った・・・気がしたが、すぐに口元に笑みを浮かべると言った。
「どうしたんだい?フローラ。遅かったね。」
「申し訳ございません、お茶を選ぶのに時間がかかってしまいました。」
私は2人に近寄ると言った。
「あら?何だか・・・良い香りがします。」
クリスタ様が瓶に入ったカモミールの茶葉の香りに気が付いた。
「はい、これはカモミールと言います。喉によく効くハーブなんですよ。クリスタ様の喘息にどうかと思ってこちらをご用意致しました。」
「まあ・・・私の為にわざわざ選んで下さったのですか?」
クリスタ様は頬を赤らめて私を見つめた。・・・・本当に可愛らしい方だ。これではノエル様があのような目つきでクリスタ様を見つめるのも無理は無い・・・。
私は思うのだった―。
今日の私は先週よりも気合を入れたドレスを着て、邸宅の温室が見えるテラスで椅子に座って待っていた。
「お待たせ、フローラ。」
「ノエル様・・・。」
笑顔で振り向いた私は背後にクリスタ様がいる事に気が付いた。
「まあ、クリスタ様ではありませんか。」
「こ、今日は・・・。」
クリスタ様は恥ずかしそうに前に進み出ると言った。
「ごめんね、フローラ。どうしてもクリスタがついてきたいって言うものだから・・・。」
「あら、いいんですよ。そんな事気になさらないで下さい。クリスタ様、本日もお会いできて嬉しいわ。」
にこりと微笑んでクリスタ様を見ると、頬を赤く染めて私の事を見つめ返して来た。
そこで私は気が付いた。今日は私とノエル様の2人きりで会うものだとばかり思っていたので、クリスタ様のお茶の準備が出来ていなかったと言う事に。
「お2人共、ここでお待ちになって下さい。今、お茶のセットを用意して持ってまいりますので。」
「え?そ、そんな・・・フローラ様に用意して頂くなんて・・・申し訳ありませんわ。」
クリスタ様はオロオロしている。
「うん、そうだね。流石にフローラに用意してもらうのは・・・。」
ノエル様も戸惑ったように言うけれども、こう見えても私はお茶を淹れるのが得意なのだ。
「大丈夫です。すぐにお持ちしますのでお二人でベンチに座って待っていてくださいね。」
そして私は席を立つと、お茶のセットを取りにお茶室へと向かった。
「え~と・・・どのカップがいいかしら・・・。」
棚にずらりとならんだティーカップを見渡し、バイオレットの柄が描かれている乳白色のティーカップを手に取った。
「うん・・・このティーカップならクリスタ様に似合いそう。後、お茶は・・・。」
私は茶葉がズラリと並んでいる棚に前に立ち、少し考えた。確かクリスタ様は前回、喘息の発作が出てすぐに帰られてしまった。それなら・・・。
「カモミールティーは喘息に効果があると言われているから、これを出しましょう。」
カモミールの茶葉が入った瓶とティーカップを持って私は2人の元へ戻った。
「あ・・・。」
2人が座っているベンチが見えてきた時、私は足を止めた。そこには2人が顔を寄せ合って、仲良さげに談笑している場面だったのだ。ノエル様は優しいまなざしでじっとクリスタ様を見つめている。・・・あんな表情を私は未だかつて向けて貰ったことは無い。
ズキリ
何故か一瞬私の胸が痛んだ。
「え・・・?今のは何・・?」
私は顔を上げて、もう一度2人の様子を伺った。ノエル様とクリスタ様は私に気付かずに談笑している。
そんな2人の元へ戻るのは何故か気が引けてしまった。自分があの場に戻るのは酷く場違いな気がしてならなかった。
「どうしよう・・・。」
迷っていると、不意にノエル様が私の方を振り向いた。一瞬、ノエル様の表情が強張った・・・気がしたが、すぐに口元に笑みを浮かべると言った。
「どうしたんだい?フローラ。遅かったね。」
「申し訳ございません、お茶を選ぶのに時間がかかってしまいました。」
私は2人に近寄ると言った。
「あら?何だか・・・良い香りがします。」
クリスタ様が瓶に入ったカモミールの茶葉の香りに気が付いた。
「はい、これはカモミールと言います。喉によく効くハーブなんですよ。クリスタ様の喘息にどうかと思ってこちらをご用意致しました。」
「まあ・・・私の為にわざわざ選んで下さったのですか?」
クリスタ様は頬を赤らめて私を見つめた。・・・・本当に可愛らしい方だ。これではノエル様があのような目つきでクリスタ様を見つめるのも無理は無い・・・。
私は思うのだった―。
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