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第5話 クリスタからの手紙
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「おはよう、フローラ。今朝は少し遅かったな。」
日差しがたっぷり差し込むダイニングテーブルの上座に座る父が私が部屋の中へ入るとすぐに声を掛けてきた。
「そうね、フローラ。今朝はお寝坊さんだったのかしら?」
美しい黒髪を城で一つにまとめた母が笑顔で言う。
「おはようございます。お父様、おかあ様。そしてお兄様。」
「ああ、お早う。フローラ。」
やはり美しい黒髪をした私よりも4歳年上の兄がこちらを見ると笑みを浮かべた。
「さあ、早く席に着きなさい。朝食が冷めないうちに皆で頂こう。」
父に促され、私は席に座ると、ナフキンを首に巻いた。そして家族4人が揃った朝食が始まった。
「レナート、大学の方はどうですか?」
母がパンケーキにシロップを掛けながら尋ねる。
「そうですね、後半年で卒業なので論文を書くのに少し忙しいですね。」
「そう言えば・・・マリアンナ譲とのお見合い・・・断ったそうだが・・何故なのだ?」
父の言葉に私は兄が初めてお見合いを断った事実を知った。
「え?!お兄様・・御見合いの話・・お断りしたのですかっ?!」
驚きのあまり、思わずカチャンと持っていたナイフを皿の上い落してしまった。
「ああ、そうなんだ。あの方は・・・少々性格がきつくて・・・ね・・・。」
兄は恥ずかしそうに頭を掻く。
私は改めて兄を見た。肩まで届く黒髪に、青い瞳の兄は私と違ってとても美しい外見をしている。まるで女性と見間違うほどの容貌で、密かに兄に想いをよせる男性達がいる事も・・・私はしっている。
しかし、兄はそれを迷惑そうにしているので・・・そんな趣味は無いだろうと信じたいけれども、御見合いの話を断ったと聞いて私の胸に一抹の不安が過ってしまった。
「ま、まさか・・。」
思わず呟くと、隣の席に座る兄に聞かれてしまった。
「何がまさかなんだい?フローラ。」
「い、いえ。何でもありません。」
ホホホと笑って胡麻化している所へ、父の執事がやって来た。
「お食事中、申し訳ございません。実はフローラ様に急ぎで渡して頂きたいと、つい先ほどメッセンジャーから手紙をお預かりしましたのでお持ちしました。」
「まあ・・・私に・・?」
でも丁度、朝食が済んだところだったので私は手紙を預かり、送り主の名を目にして驚いた。
「え・・・?クリスタ様・・?」
何と相手はクリスタ様からだったのだ。
「クリスタ譲・・・確か、ノエルの遠縁の女性では無いか?」
父は言う。
「一体どのようなご用件なのかしら・・?」
母は首を傾げた。
「さ、さあ・・・?」
けれど、私の脳裏には今朝見た夢の光景が頭に焼き付いて離れない。婚約者のノエル様とクリスタ様が実は・・・。
私は恐る恐る手紙を開封して、目を通した。
拝啓
親愛なるフローラ様。今度の週末・・・フローラ様にまた是非ともお会いしたく、お手紙に託しました。またノエルと一緒にお邪魔する許可を頂けないでしょうか?お返事お待ちしております。
クリスタより
「・・・・。」
私は手紙を読み終え、考え込んでしまった。ひょっとすると・・・クリスタ様は私がノエル様と2人で会う事が嫌なので、このような手紙を書いて来たのだろうか・・?やはりクリスタ様とノエル様は本当は恋人同士・・?クリスタ様はとて愛らしいお方だし、誰もお友達もいないのなら・・・私が彼女の友達になってあげたい・・・断る理由は何処にも無いわ。
すぐに返事を書いてあげなければ。
私は立ち上がると言った。
「私、お手紙を書いて参りますので、失礼しますね。」
両親と兄に挨拶をすると、私は手紙を書く為に自室へ向かった─。
日差しがたっぷり差し込むダイニングテーブルの上座に座る父が私が部屋の中へ入るとすぐに声を掛けてきた。
「そうね、フローラ。今朝はお寝坊さんだったのかしら?」
美しい黒髪を城で一つにまとめた母が笑顔で言う。
「おはようございます。お父様、おかあ様。そしてお兄様。」
「ああ、お早う。フローラ。」
やはり美しい黒髪をした私よりも4歳年上の兄がこちらを見ると笑みを浮かべた。
「さあ、早く席に着きなさい。朝食が冷めないうちに皆で頂こう。」
父に促され、私は席に座ると、ナフキンを首に巻いた。そして家族4人が揃った朝食が始まった。
「レナート、大学の方はどうですか?」
母がパンケーキにシロップを掛けながら尋ねる。
「そうですね、後半年で卒業なので論文を書くのに少し忙しいですね。」
「そう言えば・・・マリアンナ譲とのお見合い・・・断ったそうだが・・何故なのだ?」
父の言葉に私は兄が初めてお見合いを断った事実を知った。
「え?!お兄様・・御見合いの話・・お断りしたのですかっ?!」
驚きのあまり、思わずカチャンと持っていたナイフを皿の上い落してしまった。
「ああ、そうなんだ。あの方は・・・少々性格がきつくて・・・ね・・・。」
兄は恥ずかしそうに頭を掻く。
私は改めて兄を見た。肩まで届く黒髪に、青い瞳の兄は私と違ってとても美しい外見をしている。まるで女性と見間違うほどの容貌で、密かに兄に想いをよせる男性達がいる事も・・・私はしっている。
しかし、兄はそれを迷惑そうにしているので・・・そんな趣味は無いだろうと信じたいけれども、御見合いの話を断ったと聞いて私の胸に一抹の不安が過ってしまった。
「ま、まさか・・。」
思わず呟くと、隣の席に座る兄に聞かれてしまった。
「何がまさかなんだい?フローラ。」
「い、いえ。何でもありません。」
ホホホと笑って胡麻化している所へ、父の執事がやって来た。
「お食事中、申し訳ございません。実はフローラ様に急ぎで渡して頂きたいと、つい先ほどメッセンジャーから手紙をお預かりしましたのでお持ちしました。」
「まあ・・・私に・・?」
でも丁度、朝食が済んだところだったので私は手紙を預かり、送り主の名を目にして驚いた。
「え・・・?クリスタ様・・?」
何と相手はクリスタ様からだったのだ。
「クリスタ譲・・・確か、ノエルの遠縁の女性では無いか?」
父は言う。
「一体どのようなご用件なのかしら・・?」
母は首を傾げた。
「さ、さあ・・・?」
けれど、私の脳裏には今朝見た夢の光景が頭に焼き付いて離れない。婚約者のノエル様とクリスタ様が実は・・・。
私は恐る恐る手紙を開封して、目を通した。
拝啓
親愛なるフローラ様。今度の週末・・・フローラ様にまた是非ともお会いしたく、お手紙に託しました。またノエルと一緒にお邪魔する許可を頂けないでしょうか?お返事お待ちしております。
クリスタより
「・・・・。」
私は手紙を読み終え、考え込んでしまった。ひょっとすると・・・クリスタ様は私がノエル様と2人で会う事が嫌なので、このような手紙を書いて来たのだろうか・・?やはりクリスタ様とノエル様は本当は恋人同士・・?クリスタ様はとて愛らしいお方だし、誰もお友達もいないのなら・・・私が彼女の友達になってあげたい・・・断る理由は何処にも無いわ。
すぐに返事を書いてあげなければ。
私は立ち上がると言った。
「私、お手紙を書いて参りますので、失礼しますね。」
両親と兄に挨拶をすると、私は手紙を書く為に自室へ向かった─。
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