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第9話 婚約破棄の相談
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ディナーの席で私は父に声を掛けた。
「お父様、今夜は大事なお話があります。」
ステーキをカットしようとしていた父はフォークとナイフを静かに置くと私を見た。
「どうしたのだね?私に話とは。」
「はい、他でもありません。実はノエル様との婚約を破棄したいのです。」
「ゴフゥッ!!」
母が物凄い咳き込み方をし、全員の視線が母に集中する。
「コ、コホン!」
母は真っ赤な顔をしてナフキンで口を拭いた。
「フローラ、一体何故彼と婚約を破棄したいんだい?あんなにノエルに夢中だったじゃないか。」
兄はオロオロしながら私を見る。
「ああ、そうだ。フローラ、何故ノエルと婚約を破棄したいのだね?」
さあ、ここから悪役令嬢の役を演じるのよ。
「ええ、簡単な事ですわ。私・・・野心家ですの。」
「「「はあ?」」」
3人が同時に声を上げて私を見る。
「野心家って・・・一体どういう事なのかな?」
父は苦笑いをしている。
「ええ、ノエル様は我が家よりも爵位が低いお方です。私は派手な生活をしたいので、できれば伯爵家以上の家柄の方と結婚をしたいと思うのです。」
「ああ・・・なるほど。しかし・・フローラや。今までお前はそのような事一度も言った事が無かったのに・・一体どういう風の吹き回しだね?」
「はい、つい最近考えが変わっただけですので。」
私は胸をそらせながら言う。
「とにかく私の考えは述べました。なので後はお父様の方からノエル様に伝えていただけますか?きっとすぐに快諾してくれると思いますので。勿論私の方からもお手紙を出させて頂きます。」
「フローラ、貴女本気でそんな事言ってるの?以前の貴女は爵位に等全くこだわらない娘だったじゃないの。」
母は心配そうに言う。
「ええ、そうですが・・・お母様、女は・・・色々代わるものですよ?」
「そうね。言われてみればそうかもね?」
母があっさり納得したので私は少し驚いてしまった。
「そうか・・・でも、彼・・ノエルはあっさりフローラの婚約破棄を受け入れてくれるのだろうか・・・?」
「はい、勿論ですわっ!自信があります。きっと即答されるはずですから!」
兄はいらぬ心配をしていると思う。何故ならノエル様は私に少しも興味を持っておられない。だってノエル様が好きな方はクリスタ様なのだから・・・。
兎に角、家族は全員私がノエル様と婚約を破棄したい趣旨を理解してくれた。
後は・・・ノエル様にお別れの手紙を書くだけ。さて、どんな風に書けばいいだろう・・。
私は野菜のグリル焼きを口にしながら思案するのだった。
家族団らんのディナーも終わり、入浴も済ませた私は机の上に便箋にペンを持って向かっていた。
私はペンを握りなおすと、文面を書き始めた。
拝啓
ノエル・チェスター様。お身体を壊したりはされておりませんか?日頃は何をしてすごされているでしょうか?実は私は最近読書にはまっております。本はいいですね。知識や見分を広げる事が出来ますし、何より心を豊かにしてくれます。
ここまで書いて、私は手を止めた。
「だ・・・駄目だわ・・・。前置きが長すぎて・・・これでは肝心の婚約破棄の話を書き出す事が出来ないわ・・。も、もうこうなったら・・単刀直入に書くしかないわ。」
便箋をくしゃくしゃに丸めてダストボックスに捨てると、新しい便箋を用意する。
「・・・・。」
少しの間、ビンセンとにらめっこしていた私は深呼吸すると、一気に便箋にペンを走らせた。
拝啓
ノエル・チェスター様。私は貴方との婚約破棄を希望します。聞くまでもありませんが、当然返事はイエスでしょう?ですが一応返事は下さい。よろしくお願い致します。
フローラ・ハイネス
これできっとノエル様は婚約破棄を受け入れて下さるはずだろう―。
「お父様、今夜は大事なお話があります。」
ステーキをカットしようとしていた父はフォークとナイフを静かに置くと私を見た。
「どうしたのだね?私に話とは。」
「はい、他でもありません。実はノエル様との婚約を破棄したいのです。」
「ゴフゥッ!!」
母が物凄い咳き込み方をし、全員の視線が母に集中する。
「コ、コホン!」
母は真っ赤な顔をしてナフキンで口を拭いた。
「フローラ、一体何故彼と婚約を破棄したいんだい?あんなにノエルに夢中だったじゃないか。」
兄はオロオロしながら私を見る。
「ああ、そうだ。フローラ、何故ノエルと婚約を破棄したいのだね?」
さあ、ここから悪役令嬢の役を演じるのよ。
「ええ、簡単な事ですわ。私・・・野心家ですの。」
「「「はあ?」」」
3人が同時に声を上げて私を見る。
「野心家って・・・一体どういう事なのかな?」
父は苦笑いをしている。
「ええ、ノエル様は我が家よりも爵位が低いお方です。私は派手な生活をしたいので、できれば伯爵家以上の家柄の方と結婚をしたいと思うのです。」
「ああ・・・なるほど。しかし・・フローラや。今までお前はそのような事一度も言った事が無かったのに・・一体どういう風の吹き回しだね?」
「はい、つい最近考えが変わっただけですので。」
私は胸をそらせながら言う。
「とにかく私の考えは述べました。なので後はお父様の方からノエル様に伝えていただけますか?きっとすぐに快諾してくれると思いますので。勿論私の方からもお手紙を出させて頂きます。」
「フローラ、貴女本気でそんな事言ってるの?以前の貴女は爵位に等全くこだわらない娘だったじゃないの。」
母は心配そうに言う。
「ええ、そうですが・・・お母様、女は・・・色々代わるものですよ?」
「そうね。言われてみればそうかもね?」
母があっさり納得したので私は少し驚いてしまった。
「そうか・・・でも、彼・・ノエルはあっさりフローラの婚約破棄を受け入れてくれるのだろうか・・・?」
「はい、勿論ですわっ!自信があります。きっと即答されるはずですから!」
兄はいらぬ心配をしていると思う。何故ならノエル様は私に少しも興味を持っておられない。だってノエル様が好きな方はクリスタ様なのだから・・・。
兎に角、家族は全員私がノエル様と婚約を破棄したい趣旨を理解してくれた。
後は・・・ノエル様にお別れの手紙を書くだけ。さて、どんな風に書けばいいだろう・・。
私は野菜のグリル焼きを口にしながら思案するのだった。
家族団らんのディナーも終わり、入浴も済ませた私は机の上に便箋にペンを持って向かっていた。
私はペンを握りなおすと、文面を書き始めた。
拝啓
ノエル・チェスター様。お身体を壊したりはされておりませんか?日頃は何をしてすごされているでしょうか?実は私は最近読書にはまっております。本はいいですね。知識や見分を広げる事が出来ますし、何より心を豊かにしてくれます。
ここまで書いて、私は手を止めた。
「だ・・・駄目だわ・・・。前置きが長すぎて・・・これでは肝心の婚約破棄の話を書き出す事が出来ないわ・・。も、もうこうなったら・・単刀直入に書くしかないわ。」
便箋をくしゃくしゃに丸めてダストボックスに捨てると、新しい便箋を用意する。
「・・・・。」
少しの間、ビンセンとにらめっこしていた私は深呼吸すると、一気に便箋にペンを走らせた。
拝啓
ノエル・チェスター様。私は貴方との婚約破棄を希望します。聞くまでもありませんが、当然返事はイエスでしょう?ですが一応返事は下さい。よろしくお願い致します。
フローラ・ハイネス
これできっとノエル様は婚約破棄を受け入れて下さるはずだろう―。
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