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2章 10 港のレストラン
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「素敵なお店ですね。」
テーブル席に座ったカミラは向かい側に座るヒルダに言った。
「ええ、本当。とても素敵な御店よね。」
ヒルダは初めて食べるシーフード料理を上品に口に運びながら口元に笑みを浮かべた。
フランシスに案内されてやって来たレストランは港の見える海沿いに建っている白塗りの壁の、それは豪奢な造りの建物だった。店内の窓はとても大きく、軒先につるされたランタンは夜のレストランをムードある雰囲気に演出している。
食事に来ている客層も何処か品がある人々ばかりだった。
そして一方のフランシスは・・・。
白いシャツに黒の蝶ネクタイ、黒いベストに黒のズボン、そして腰から下にかけての長いカフェエプロンを身に着け、厳しい両親の元で働かされていた。
「ほら!3番テーブルに早く運んでくれっ!ぐずぐずするんじゃ無いっ!」
フランシスを叱責するのは他でも無い、父であり、シェフでもあるこの店のオーナのハロルドである。
「は、はいっ!」
(くっそ~!!ヒルダを連れて来るんじゃなかったっ!折角ヒルダと同じテーブル席で食事が出来ると思っていたのに・・・飛んだ誤算だったっ!)
フランシスは己の運の悪さを呪った。今日は平日の中日だから客は少ないと思っていたのだが、考えてみれば本日は市制記念日だったのだ。今年で首都『ロータス』が誕生して丁度200年目の年に当たる特別な日で、この町の誕生に関わった人々の御先祖たちを祝う大切な日でもあったのである。
お陰で、何処のレストランも客で溢れかえり、海辺のレストランで特に人気のあるこの店は目も回るような忙しい日となっていた。
(お、俺の計画が・・・全てパアだ・・・。)
幼い弟妹達は従業員専用の休憩室に預けられ、この店で働く親戚の女性が面倒を見ており、その代役としてフランシスは働かされていたのである。
店内でオーダーを取り、めまぐるしく動き回るフランシスを見てヒルダは言った。
「何だか、かえって彼に悪い事をしてしまった気がするわ。まさか今日が市制記念日だったなんて思わなかったもの・・。」
シーフードピザを食べながらヒルダは言った。
「そうですね・・・。ご迷惑にならないよう、食べたらすぐに退席しましょう。」
「ええ・・・。」
ヒルダは元気なく返事をした。そんな様子のヒルダがカミラは気になり声を掛けた。
「ヒルダ様、お元気が無いようですが・・どうかされましたか?」
「え、ええ・・・。実は・・・手紙が届いていたのを見てしまって・・・。」
「手紙?」
「ええ、カミラ宛てに・・・お母様から・・・。」
「えっ?奥様からですかっ?!」
「ええ・・ごめんなさい。中身は見ていないのよ。ただ送り主が・・・お母様の名前だったから・・・。」
それだけ言うとヒルダは俯いた。
「そうでしたか・・・。」
「カミラ・・もうずっとお母様と手紙のやり取りをしていたの・・?」
ヒルダは顔をあげてカミラを見つめた。
「はい。1カ月に1度・・・奥様と手紙のやり取りをしておりました。ただ、旦那様に見つかるといけませんので、偽名を使って奥様と便りを出し合っていました。」
それを聞いたヒルダの顔は曇った。
「そう・・・お父様・・やっぱり私を許しては下さらないのね・・・。」
ヒルダは寂し気に言う。
「ヒルダ様・・・。」
「それで?フィールズ家は・・・何も変わりないのかしら?」
「そ、それは・・・っ!」
カミラは一瞬口を閉ざしたが、決心したように言った。
「ヒルダ様・・・。落ち着いて聞いて下さい。旦那様は・・・跡取りにする為に今年17歳になる少年を・・養子に引き取っております・・。もう・・・完全にヒルダ様の居場所は・・・っ!」
カミラは何かを堪えるように俯き、スカートを握りしめた。しかし、ヒルダはその様子をじっと見つめると言った。
「気にしないで、カミラ。私の居場所がとうに無くなってしまったのは、カウベリーを出た時からなのよ。帰る場所がないっていう事は・・・もうとっくに知っているわ。」
ヒルダは感情の伴わない笑みを浮かべるのだった—。
テーブル席に座ったカミラは向かい側に座るヒルダに言った。
「ええ、本当。とても素敵な御店よね。」
ヒルダは初めて食べるシーフード料理を上品に口に運びながら口元に笑みを浮かべた。
フランシスに案内されてやって来たレストランは港の見える海沿いに建っている白塗りの壁の、それは豪奢な造りの建物だった。店内の窓はとても大きく、軒先につるされたランタンは夜のレストランをムードある雰囲気に演出している。
食事に来ている客層も何処か品がある人々ばかりだった。
そして一方のフランシスは・・・。
白いシャツに黒の蝶ネクタイ、黒いベストに黒のズボン、そして腰から下にかけての長いカフェエプロンを身に着け、厳しい両親の元で働かされていた。
「ほら!3番テーブルに早く運んでくれっ!ぐずぐずするんじゃ無いっ!」
フランシスを叱責するのは他でも無い、父であり、シェフでもあるこの店のオーナのハロルドである。
「は、はいっ!」
(くっそ~!!ヒルダを連れて来るんじゃなかったっ!折角ヒルダと同じテーブル席で食事が出来ると思っていたのに・・・飛んだ誤算だったっ!)
フランシスは己の運の悪さを呪った。今日は平日の中日だから客は少ないと思っていたのだが、考えてみれば本日は市制記念日だったのだ。今年で首都『ロータス』が誕生して丁度200年目の年に当たる特別な日で、この町の誕生に関わった人々の御先祖たちを祝う大切な日でもあったのである。
お陰で、何処のレストランも客で溢れかえり、海辺のレストランで特に人気のあるこの店は目も回るような忙しい日となっていた。
(お、俺の計画が・・・全てパアだ・・・。)
幼い弟妹達は従業員専用の休憩室に預けられ、この店で働く親戚の女性が面倒を見ており、その代役としてフランシスは働かされていたのである。
店内でオーダーを取り、めまぐるしく動き回るフランシスを見てヒルダは言った。
「何だか、かえって彼に悪い事をしてしまった気がするわ。まさか今日が市制記念日だったなんて思わなかったもの・・。」
シーフードピザを食べながらヒルダは言った。
「そうですね・・・。ご迷惑にならないよう、食べたらすぐに退席しましょう。」
「ええ・・・。」
ヒルダは元気なく返事をした。そんな様子のヒルダがカミラは気になり声を掛けた。
「ヒルダ様、お元気が無いようですが・・どうかされましたか?」
「え、ええ・・・。実は・・・手紙が届いていたのを見てしまって・・・。」
「手紙?」
「ええ、カミラ宛てに・・・お母様から・・・。」
「えっ?奥様からですかっ?!」
「ええ・・ごめんなさい。中身は見ていないのよ。ただ送り主が・・・お母様の名前だったから・・・。」
それだけ言うとヒルダは俯いた。
「そうでしたか・・・。」
「カミラ・・もうずっとお母様と手紙のやり取りをしていたの・・?」
ヒルダは顔をあげてカミラを見つめた。
「はい。1カ月に1度・・・奥様と手紙のやり取りをしておりました。ただ、旦那様に見つかるといけませんので、偽名を使って奥様と便りを出し合っていました。」
それを聞いたヒルダの顔は曇った。
「そう・・・お父様・・やっぱり私を許しては下さらないのね・・・。」
ヒルダは寂し気に言う。
「ヒルダ様・・・。」
「それで?フィールズ家は・・・何も変わりないのかしら?」
「そ、それは・・・っ!」
カミラは一瞬口を閉ざしたが、決心したように言った。
「ヒルダ様・・・。落ち着いて聞いて下さい。旦那様は・・・跡取りにする為に今年17歳になる少年を・・養子に引き取っております・・。もう・・・完全にヒルダ様の居場所は・・・っ!」
カミラは何かを堪えるように俯き、スカートを握りしめた。しかし、ヒルダはその様子をじっと見つめると言った。
「気にしないで、カミラ。私の居場所がとうに無くなってしまったのは、カウベリーを出た時からなのよ。帰る場所がないっていう事は・・・もうとっくに知っているわ。」
ヒルダは感情の伴わない笑みを浮かべるのだった—。
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