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第7章 15 オリエンテーリング ⑬
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ヒルダは夢を見ていた。それはあの懐かしいカウベリーにいた頃の夢。
夢の中ではヒルダの父が・・・母が、そしてエドガーが優しく笑いかけている。家族水入らずで庭のガーデニングテーブルでお茶を楽しんでいると、そこへすっかり背が伸びたルドルフが花束を持ってヒルダの元へ現れて、照れた様子で花束を差し出す。そしてヒルダは頬を染めてルドルフから花束を受け取り・・・。
ピチャン・・
ピチャン・・
何処かで雫の滴る音がする。
「う・・・。」
ヒルダは薄目を開けた。
「ヒルダ様っ?!」
薄暗い洞窟の中・・・目の前には愛しいルドルフが心配そうな顔でヒルダを覗き込んでいた。
「ル・・・ルドルフ・・・。」
「良かった・・・ヒルダ様。気が付いたんですね・・・?」
ルドルフの目に涙が浮かんでいる。その様子を見てヒルダは思った。
(ああ・・・これは夢ね・・・。私がルドルフを思うあまり・・・こんな夢を・・。夢の中でも私はルドルフを悲しませている・・・。)
「ル・・ド・・ルフ・・・。ご、ごめんなさ・・・い・・。」
ヒルダは何とか口を動かした。
「な、何故・・・何故、謝るのですか?ヒルダ様っ!ヒルダ様は何も悪くないじゃありませんかっ」
するとヒルダは苦しげに顔を歪めながら、かすれ声で言う。
「わ、私のせいで・・ル、ルドルフを・・・沢山傷・・・付けて・・・。ずっと・・・貴方に・・・謝り・・たくて・・・。」
「!」
ルドルフはヒルダの言葉に衝撃を受けた。今迄ずっとルドルフはヒルダに裏切られたショックで人間不信に陥ってしまっていた。心は凍り付き、感情を失ってしまった。傷付いたのは自分1人だと思っていたけれども、ヒルダの心も傷付いていたのだ。
「ヒルダ様・・・僕は・・・。」
しかし、ルドルフがヒルダを見ると再び意識を失っていた。青ざめた顔のヒルダは身体が冷えきっていた。
「ヒルダ様ッ!しっかりして下さいっ!」
ルドルフはヒルダの体温を逃がさないようにますます抱きしめる腕に力を籠める。
(神様・・・!お願いですっ!どうか・・・どうか僕からヒルダ様を奪い去らないで下さいっ!)
ルドルフは肩を震わせて神に祈った。ルドルフはもし、ヒルダが死んでしまうような事になれば、自分も生きてはいられないと思うと涙が溢れて止まらなかった。
外は相変わらず激しい雨が降り続いている。ルドルフはヒルダの身体が凍え無い様に必死でヒルダの身体をさすり続けた。
そして・・気付けばいつの間にかあれ程酷かった雨はやみ、温かい太陽の日差しが洞窟の中に差し込んできていた。
「あ・・・まさか雨が止んだ・・?」
ルドルフはヒルダを抱き上げ、洞窟の外に出てみた。
外は暖かい太陽の日差しが指しこみ、濡れた大地を照らしていた。落ち葉の上に溜まった水たまりは太陽の光に照らされてキラキラと輝いている。上を見上げれば木立の間からくっきりとした青空が見えた。
「う・・。」
するとその時、腕の中のヒルダが小さく身じろぎした。青ざめていた肌には血色が戻り、真っ白だった唇にも薄いピンクの色が戻っていた。
「ヒルダ様・・・。」
その時・・・。
「おーいっ!」
「ルドルフーッ!」
「ヒルダーッ!!」
遠くで2人を呼ぶ声が段々近づいてきている。やがて崖上から下を覗きこむザックと教師たちが姿を現した。
「いたぞっ!ルドルフとヒルダだっ!」
オリエンテーリングの顧問を務める教師が声をあげた。
「待ってろっ!今助けに行くからなっ!」
そして崖下から太いロープが降ろされ、がっちりした体格の教師が降りて来ると言った。
「ルドルフ。よく頑張ったな。後は先生たちに任せなさい。君も休んだ方がいい。酷い顔色をしている。」
「はい・・有難うございます・・・。」
ヒルダを抱きかかえたままのルドルフは頭を下げた。
こうして、ヒルダとルドルフは無事に助け出され、高熱を出してしまったヒルダはそのまま担架で運ばれ、ロータスへと返された。
そして今回の事件を引き起こしたマイクは謹慎処分を受けるのだった。
その後ヒルダは体調が回復してもルドルフが自分を助けてくれた事を知ることは無かった。
それはルドルフが皆に口封じをした為だった。
ヒルダに係わらないように、ただそっと見守りたい・・。
それがルドルフの願いだったから―。
夢の中ではヒルダの父が・・・母が、そしてエドガーが優しく笑いかけている。家族水入らずで庭のガーデニングテーブルでお茶を楽しんでいると、そこへすっかり背が伸びたルドルフが花束を持ってヒルダの元へ現れて、照れた様子で花束を差し出す。そしてヒルダは頬を染めてルドルフから花束を受け取り・・・。
ピチャン・・
ピチャン・・
何処かで雫の滴る音がする。
「う・・・。」
ヒルダは薄目を開けた。
「ヒルダ様っ?!」
薄暗い洞窟の中・・・目の前には愛しいルドルフが心配そうな顔でヒルダを覗き込んでいた。
「ル・・・ルドルフ・・・。」
「良かった・・・ヒルダ様。気が付いたんですね・・・?」
ルドルフの目に涙が浮かんでいる。その様子を見てヒルダは思った。
(ああ・・・これは夢ね・・・。私がルドルフを思うあまり・・・こんな夢を・・。夢の中でも私はルドルフを悲しませている・・・。)
「ル・・ド・・ルフ・・・。ご、ごめんなさ・・・い・・。」
ヒルダは何とか口を動かした。
「な、何故・・・何故、謝るのですか?ヒルダ様っ!ヒルダ様は何も悪くないじゃありませんかっ」
するとヒルダは苦しげに顔を歪めながら、かすれ声で言う。
「わ、私のせいで・・ル、ルドルフを・・・沢山傷・・・付けて・・・。ずっと・・・貴方に・・・謝り・・たくて・・・。」
「!」
ルドルフはヒルダの言葉に衝撃を受けた。今迄ずっとルドルフはヒルダに裏切られたショックで人間不信に陥ってしまっていた。心は凍り付き、感情を失ってしまった。傷付いたのは自分1人だと思っていたけれども、ヒルダの心も傷付いていたのだ。
「ヒルダ様・・・僕は・・・。」
しかし、ルドルフがヒルダを見ると再び意識を失っていた。青ざめた顔のヒルダは身体が冷えきっていた。
「ヒルダ様ッ!しっかりして下さいっ!」
ルドルフはヒルダの体温を逃がさないようにますます抱きしめる腕に力を籠める。
(神様・・・!お願いですっ!どうか・・・どうか僕からヒルダ様を奪い去らないで下さいっ!)
ルドルフは肩を震わせて神に祈った。ルドルフはもし、ヒルダが死んでしまうような事になれば、自分も生きてはいられないと思うと涙が溢れて止まらなかった。
外は相変わらず激しい雨が降り続いている。ルドルフはヒルダの身体が凍え無い様に必死でヒルダの身体をさすり続けた。
そして・・気付けばいつの間にかあれ程酷かった雨はやみ、温かい太陽の日差しが洞窟の中に差し込んできていた。
「あ・・・まさか雨が止んだ・・?」
ルドルフはヒルダを抱き上げ、洞窟の外に出てみた。
外は暖かい太陽の日差しが指しこみ、濡れた大地を照らしていた。落ち葉の上に溜まった水たまりは太陽の光に照らされてキラキラと輝いている。上を見上げれば木立の間からくっきりとした青空が見えた。
「う・・。」
するとその時、腕の中のヒルダが小さく身じろぎした。青ざめていた肌には血色が戻り、真っ白だった唇にも薄いピンクの色が戻っていた。
「ヒルダ様・・・。」
その時・・・。
「おーいっ!」
「ルドルフーッ!」
「ヒルダーッ!!」
遠くで2人を呼ぶ声が段々近づいてきている。やがて崖上から下を覗きこむザックと教師たちが姿を現した。
「いたぞっ!ルドルフとヒルダだっ!」
オリエンテーリングの顧問を務める教師が声をあげた。
「待ってろっ!今助けに行くからなっ!」
そして崖下から太いロープが降ろされ、がっちりした体格の教師が降りて来ると言った。
「ルドルフ。よく頑張ったな。後は先生たちに任せなさい。君も休んだ方がいい。酷い顔色をしている。」
「はい・・有難うございます・・・。」
ヒルダを抱きかかえたままのルドルフは頭を下げた。
こうして、ヒルダとルドルフは無事に助け出され、高熱を出してしまったヒルダはそのまま担架で運ばれ、ロータスへと返された。
そして今回の事件を引き起こしたマイクは謹慎処分を受けるのだった。
その後ヒルダは体調が回復してもルドルフが自分を助けてくれた事を知ることは無かった。
それはルドルフが皆に口封じをした為だった。
ヒルダに係わらないように、ただそっと見守りたい・・。
それがルドルフの願いだったから―。
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