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第10章 1 グレースの闇
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グレース・ミラーは一見、外見はおとなしそうに見えたが、その本性は気が強く、とても我がままな少女だった。
家は代々続く有名な商家で、『カウベリー』に住む人々よりはずっと裕福な暮らしをしていた。ミラー家の一人娘として大切に育てられたグレースは、人を思いやる気持ちに欠け、自分本位の人間へと育っていった。
そんなグレースは中学校に入学した時に1人の少年に恋をした。
少年の名前はルドルフ。平民の子供でグレースと違って苗字を持っていなかった。
父親はフィールズ家の馬番として働いており、決して裕福な暮らしをしてはいなかったが、眉目秀麗な少年だった。心も優しく、同じ学校の少女たちからの憧れの的だった。当然、そんなルドルフをグレースは放っておくことは無かった。何かと言えばルドルフに絡み、彼に近付こうとする少女たちを牽制して回った。ただ1人、自分の仲の良い少年少女以外は・・・。
ルドルフには好きな少女がいた。少女の名前はヒルダ。
とても美しい少女だった。その美貌は『カウベリー一の美少女』と言われていた。
この『カウベリー』を治める伯爵家の一人娘で、容姿もさることながら、家柄の良さでもグレースが適うような相手では無かった。ただ、一つ救いがあったのは、ヒルダは伯爵令嬢、そしてルドルフは平民。当然2人の恋はうまくいくはずはないだろうと思っていたのに、ある日を境に2人は急接近をしていった。
(許せない、ヒルダ・・。貴女は貴族のくせに・・私からルドルフを奪い去ろうとするなんて・・・。)
嫉妬のあまり、ついにグレースはヒルダに対し憎しみを抱くようになった。
そしてある悪戯心が芽生えた。それは貴族同士の集まりの乗馬大会での出来事。気前の良いフィールズ伯爵は領民たち誰もが参加出来る立食パーティーへ招いた。そこでグレースは馬に乗ったヒルダの頭上に蜂の巣があることに気づき、イワンに蜂の巣を落とさせ、・・・結果馬が暴走し、ヒルダは左足に大きな怪我を負ってしまった。
普通ならここで激しく良心の呵責にさいなまされるだろうが、グレースは違った。
(私からルドルフを奪った罰よ。いい気味だわ・・。)
そんな風にしか、思わなかった。これでようやくルドルフはヒルダから離れる・・そう思っていたのに、皮肉なことにヒルダとルドルフの距離を近づける事となってしまった。ルドルフはヒルダに怪我を負わせた罰として男爵家の爵位を与えられ、ヒルダと婚約することになってしまったのだ。
(そんな・・・!ルドルフが男爵になってしまったなんて・・・!)
焦ったグレースは両親に我がままを言い、お金で男爵家の爵位を買ってもらった。そしてルドルフとヒルダが通う中学校にも転校できたのに、トラブルを起こしてその日のうちに停学・・不本意ながら退学となってしまった。
そして更なる不運は続く。
実はグレースの父の仕事は多額の負債を抱えていた。商売は立ち行かなくり、借金を作ってしまったのだ。その借金相手はミラー家が借金返済のめどが立たないことを知り、グレースが18歳になった時に娘を差し出せば借金を免除するという提案をしてきたのだった。勿論、父は二つ返事でその提案を受け入れた。
自分にますます振りかかってくる不運な出来事により、グレースはヒルダをますます憎み・・・ついにルドルフから完全に手を引かせる為にヒルダをあの教会へ無理やり連れだした。
そして火のついた薪で少し火傷をしてヒルダのせいにしようと試みたグレースはイワンに阻まれて、薪を床に落としていまい・・あっという間に教会は燃え落ちてしまった。そして・・・今までの罰が当たったのだろうか。グレースは逃げる際に焼け落ちてきた天井の梁が顔に当たり・・大やけどを負って気を失ってしまったところを友人たちが何とかグレースを引きずって、教会から脱出することが出来たのだ。
火事の事件で目覚めた時は教会を燃やしてしまった犯人はヒルダになっていた。
イワン達は初めは犯人はヒルダでは無いと大人たちに発言しようとしたが、人々のヒルダへ向ける怒りに恐怖を感じ・・・口を閉ざしてしまった。
その事を後から知ったグレースは特に何も感じる事は無かった。単に自分からルドルフを奪ってしまったことへ謝罪なのだろうと思うだけだった―。
「・・・なんて醜い顔・・・。」
グレースは部屋にこもり、手鏡で自分の顔を見つめていた。彼女の顔の右半分は火傷の為に、酷いケロイドになっている。赤紫色に細長く盛り上がった皮膚はグレースの目元から鼻筋を通り、下唇にまで及んでいる。ケロイドのせいで唇を完全に閉じる事も、大きく口を開ける事すら出来なくなっていた。この醜い顔は・・ますますグレースの心に深い闇を落としていた。
「私がこんな顔になってしまったのは・・・全てあのヒルダのせいよ・・。」
あの火事から2年の歳月が流れた今・・・グレースは自分の火事の罪を被ってカウベリーを負われたヒルダを・・激しく憎悪していたのだった。
コンコン
そして、グレースの部屋のドアがノックされた―。
家は代々続く有名な商家で、『カウベリー』に住む人々よりはずっと裕福な暮らしをしていた。ミラー家の一人娘として大切に育てられたグレースは、人を思いやる気持ちに欠け、自分本位の人間へと育っていった。
そんなグレースは中学校に入学した時に1人の少年に恋をした。
少年の名前はルドルフ。平民の子供でグレースと違って苗字を持っていなかった。
父親はフィールズ家の馬番として働いており、決して裕福な暮らしをしてはいなかったが、眉目秀麗な少年だった。心も優しく、同じ学校の少女たちからの憧れの的だった。当然、そんなルドルフをグレースは放っておくことは無かった。何かと言えばルドルフに絡み、彼に近付こうとする少女たちを牽制して回った。ただ1人、自分の仲の良い少年少女以外は・・・。
ルドルフには好きな少女がいた。少女の名前はヒルダ。
とても美しい少女だった。その美貌は『カウベリー一の美少女』と言われていた。
この『カウベリー』を治める伯爵家の一人娘で、容姿もさることながら、家柄の良さでもグレースが適うような相手では無かった。ただ、一つ救いがあったのは、ヒルダは伯爵令嬢、そしてルドルフは平民。当然2人の恋はうまくいくはずはないだろうと思っていたのに、ある日を境に2人は急接近をしていった。
(許せない、ヒルダ・・。貴女は貴族のくせに・・私からルドルフを奪い去ろうとするなんて・・・。)
嫉妬のあまり、ついにグレースはヒルダに対し憎しみを抱くようになった。
そしてある悪戯心が芽生えた。それは貴族同士の集まりの乗馬大会での出来事。気前の良いフィールズ伯爵は領民たち誰もが参加出来る立食パーティーへ招いた。そこでグレースは馬に乗ったヒルダの頭上に蜂の巣があることに気づき、イワンに蜂の巣を落とさせ、・・・結果馬が暴走し、ヒルダは左足に大きな怪我を負ってしまった。
普通ならここで激しく良心の呵責にさいなまされるだろうが、グレースは違った。
(私からルドルフを奪った罰よ。いい気味だわ・・。)
そんな風にしか、思わなかった。これでようやくルドルフはヒルダから離れる・・そう思っていたのに、皮肉なことにヒルダとルドルフの距離を近づける事となってしまった。ルドルフはヒルダに怪我を負わせた罰として男爵家の爵位を与えられ、ヒルダと婚約することになってしまったのだ。
(そんな・・・!ルドルフが男爵になってしまったなんて・・・!)
焦ったグレースは両親に我がままを言い、お金で男爵家の爵位を買ってもらった。そしてルドルフとヒルダが通う中学校にも転校できたのに、トラブルを起こしてその日のうちに停学・・不本意ながら退学となってしまった。
そして更なる不運は続く。
実はグレースの父の仕事は多額の負債を抱えていた。商売は立ち行かなくり、借金を作ってしまったのだ。その借金相手はミラー家が借金返済のめどが立たないことを知り、グレースが18歳になった時に娘を差し出せば借金を免除するという提案をしてきたのだった。勿論、父は二つ返事でその提案を受け入れた。
自分にますます振りかかってくる不運な出来事により、グレースはヒルダをますます憎み・・・ついにルドルフから完全に手を引かせる為にヒルダをあの教会へ無理やり連れだした。
そして火のついた薪で少し火傷をしてヒルダのせいにしようと試みたグレースはイワンに阻まれて、薪を床に落としていまい・・あっという間に教会は燃え落ちてしまった。そして・・・今までの罰が当たったのだろうか。グレースは逃げる際に焼け落ちてきた天井の梁が顔に当たり・・大やけどを負って気を失ってしまったところを友人たちが何とかグレースを引きずって、教会から脱出することが出来たのだ。
火事の事件で目覚めた時は教会を燃やしてしまった犯人はヒルダになっていた。
イワン達は初めは犯人はヒルダでは無いと大人たちに発言しようとしたが、人々のヒルダへ向ける怒りに恐怖を感じ・・・口を閉ざしてしまった。
その事を後から知ったグレースは特に何も感じる事は無かった。単に自分からルドルフを奪ってしまったことへ謝罪なのだろうと思うだけだった―。
「・・・なんて醜い顔・・・。」
グレースは部屋にこもり、手鏡で自分の顔を見つめていた。彼女の顔の右半分は火傷の為に、酷いケロイドになっている。赤紫色に細長く盛り上がった皮膚はグレースの目元から鼻筋を通り、下唇にまで及んでいる。ケロイドのせいで唇を完全に閉じる事も、大きく口を開ける事すら出来なくなっていた。この醜い顔は・・ますますグレースの心に深い闇を落としていた。
「私がこんな顔になってしまったのは・・・全てあのヒルダのせいよ・・。」
あの火事から2年の歳月が流れた今・・・グレースは自分の火事の罪を被ってカウベリーを負われたヒルダを・・激しく憎悪していたのだった。
コンコン
そして、グレースの部屋のドアがノックされた―。
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