嫌われた令嬢、ヒルダ・フィールズは終止符を打つ

結城芙由奈@コミカライズ連載中

文字の大きさ
225 / 566

第10章 8 2人の秘密の漏洩

しおりを挟む
 その時―

「ねぇ・・・『ヒルダ』って・・・誰の事ですか?」

突然扉の方から声が聞こえ、エドガーとルドルフは慌てて声の方角を振り返るとそこにはエドガーの婚約者のアンナが立っていた。

「アンナ嬢・・・!」

「アンナ様っ!」

エドガーもルドルフも顔色を変えてアンナをみた。しかし、アンナはそんな事は意に介さずにコツコツとヒールを鳴らし、2人のテーブルへと向かう。そしてピタリと止まると言った。

「ずるいですわ、エドガー様。ルドルフ様。2人だけでお茶会を開くなんて・・・私も混ぜて下さいよ。ね?いいでしょう?」

「「・・・・。」」

エドガーもルドルフも神妙な顔つきで互いの顔を見たが・・相手は伯爵令嬢であり、エドガーの婚約者のアンナである。ここで無下に追い返すこと等出来るはずも無い。

「あ、ああ・・・いいよ。アンナ嬢、今メイドに君の分の席とお茶を用意させるよ。」

エドガーは笑みを浮かべると呼び鈴を鳴らし、メイドを呼びつけるとすぐにアンナの席とお茶が用意された。



****

「フフフ・・・これよ、これ。私の一番好きなお茶とケーキ。」

アンナは満足そうに『カウベリーティー』を飲むと、フルーツケーキをフォークで一口大にカットし、口に入れて満足そうに微笑む。

「そうかい・・・それは良かったね。」

エドガーはアンナに優し気に声を掛けるが、内心はとても焦っていた。

(まずいな・・・アンナ嬢にヒルダの話を聞かれてしまった・・『カウベリー』ではヒルダの話は厳禁だ。もしアンナが他の人たちに・・・ましてや父に話でもされた日には大変な事になってしまう・・・。ここは何としても彼女に口止めをしなければ・・それにしても・・・。」

「アンナ嬢、今日は家庭教師が来る日だから・・ここには来れないと言っていなかったかい?」

エドガーはアンナの機嫌を損ねないように尋ねた。

「ええ、それが今朝電話がかかってきたんです。家庭教師の先生のお宅付近で大雪が降って馬を出せないそうなので今日は中止になったの。それでエドガー様に会いに来たんですけど・・もしかして・・お邪魔でしたか?」 

アンナは寂し気に俯いた。

「ま、まさか!邪魔なはずはないだろう?」

「ええ、そうですよ。アンナ様。」

ルドルフも爵位の高いアンナの機嫌を取るのに必死だ。

「そうですか?お2人からその言葉を貰えて安心しました。それでは先ほどの話の続きを聞かせて下さい。」

アンナは顔を上げてにっこりと微笑むと2人の顔を交互に見た。

「え・・?先ほどの話って・・?」

「とぼけないで下さい、エドガー様。さっきお2人でお話されていたことですよ。教会の焼失事件で犯人が『ヒルダ』とか、本当の犯人は『グレース』だとかお話されてたじゃないですか?」

「「えっ?!」」

エドガーとルドルフは同時に声を上げる。そこまで内容を知っていると言う事は・・アンナは随分前から2人の話を盗み聞きしていたと言う事になる。これにはさすがのエドガーも困り果てて言った。

「アンナ嬢・・・人の話を盗み聞きするのは・・あまり良いことでは無いよ?」

するとアンナは口をとがらせて言った。

「何を言ってるんですか?私、何回ノックしたと思っているんですか?いくらノックしても返事が無いからお部屋に入ってきたのに・・・それでもお2人は私に全く気付かず、お話してたんですよ?」

「え・・・?」

「そ、そうだったんですか?」

2人はアンナが入ってくる気配も気づかずにヒルダの話をしていたのだ。

「それで・・ヒルダって誰ですか?教えて下さい。」

アンナはエドガーとルドルフの顔を交互に見ながら再度質問してきた。

「い、いや・・・ヒルダというのは・・・。」

思わずエドガーが口ごもるとアンナは言った。

「もしエドガー様が話して下さらないなら・・・・ハリス様に伺いますよ?」

「そんな!それだけは・・っ!」

「わ、分かった!話すからやめてくれ!」

ルドルフとエドガーは同時に声を上げ・・ついにエドガーは観念してアンナにヒルダの事を全て語る羽目になってしまった―。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

白い結婚の行方

宵森みなと
恋愛
「この結婚は、形式だけ。三年経ったら、離縁して養子縁組みをして欲しい。」 そう告げられたのは、まだ十二歳だった。 名門マイラス侯爵家の跡取りと、書面上だけの「夫婦」になるという取り決め。 愛もなく、未来も誓わず、ただ家と家の都合で交わされた契約だが、彼女にも目的はあった。 この白い結婚の意味を誰より彼女は、知っていた。自らの運命をどう選択するのか、彼女自身に委ねられていた。 冷静で、理知的で、どこか人を寄せつけない彼女。 誰もが「大人びている」と評した少女の胸の奥には、小さな祈りが宿っていた。 結婚に興味などなかったはずの青年も、少女との出会いと別れ、後悔を経て、再び運命を掴もうと足掻く。 これは、名ばかりの「夫婦」から始まった二人の物語。 偽りの契りが、やがて確かな絆へと変わるまで。 交差する記憶、巻き戻る時間、二度目の選択――。 真実の愛とは何かを、問いかける静かなる運命の物語。 ──三年後、彼女の選択は、彼らは本当に“夫婦”になれるのだろうか?  

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

お飾り王妃の死後~王の後悔~

ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。 王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。 ウィルベルト王国では周知の事実だった。 しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。 最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。 小説家になろう様にも投稿しています。

【完結】亡くなった人を愛する貴方を、愛し続ける事はできませんでした

凛蓮月
恋愛
【おかげさまで完全完結致しました。閲覧頂きありがとうございます】 いつか見た、貴方と婚約者の仲睦まじい姿。 婚約者を失い悲しみにくれている貴方と新たに婚約をした私。 貴方は私を愛する事は無いと言ったけれど、私は貴方をお慕いしておりました。 例え貴方が今でも、亡くなった婚約者の女性を愛していても。 私は貴方が生きてさえいれば それで良いと思っていたのです──。 【早速のホトラン入りありがとうございます!】 ※作者の脳内異世界のお話です。 ※小説家になろうにも同時掲載しています。 ※諸事情により感想欄は閉じています。詳しくは近況ボードをご覧下さい。(追記12/31〜1/2迄受付る事に致しました)

【完結】お世話になりました

⚪︎
恋愛
わたしがいなくなっても、きっとあなたは気付きもしないでしょう。 ✴︎書き上げ済み。 お話が合わない場合は静かに閉じてください。

記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話

甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。 王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。 その時、王子の元に一通の手紙が届いた。 そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。 王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

私達、婚約破棄しましょう

アリス
恋愛
余命宣告を受けたエニシダは最後は自由に生きようと婚約破棄をすることを決意する。 婚約者には愛する人がいる。 彼女との幸せを願い、エニシダは残りの人生は旅をしようと家を出る。 婚約者からも家族からも愛されない彼女は最後くらい好きに生きたかった。 だが、なぜか婚約者は彼女を追いかけ……

処理中です...