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第11章 7 ヒルダの帰郷 7
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ヒルダは痛む足を引きずりながら、必死で応接室を目指していた。
(お父様に見つかったら大変だわ・・お兄様がお父様を引き留めている間に早く応接室に戻って・・部屋のどこかに隠れなくちゃ・・!)
しかし、ヒルダの心は複雑だった。どうして隠れなければならないのだろう?自分はこの屋敷で生まれ育ったのに・・一度も忘れた事が無かった大切な故郷・・。そしてどんなに酷い言葉を投げつけられようとも、爵位を奪われ、たとえ親子の縁を切られても・・やはりヒルダに取っては大切な父であった。
(お父様・・・本当はお父様にも一目会いたい・・・!)
枯れ果てていたヒルダの涙は母に再会した事で涙が戻った。そのせいか・・・ヒルダはいつしか目に涙を浮かべながら必死で応接室を目指して歩き・・。
バタンッ!
突然扉が開かれ、ヒルダがドアから現れると後手でドアを閉めた。
「まあ!ヒ・・い、いえ。ライラック様、どうしたのですか?!」
椅子に座り、コゼットと紅茶を飲んでいたアンナは驚いて振り向き・・・俯いてドアに寄り掛かるヒルダを見て驚いて声を掛けた。
「う・・・。」
するとヒルダは小さく呻き、そのままずるずると床に座り込んでしまった。
「ライラック様っ?!」
アンナは慌ててヒルダに駆け寄り、身体を起こし・・ハッとなった。
「う・・うう・・・。」
何とヒルダが涙をボロボロこぼしながら泣いていたのだ。
「ライラック様・・・一体どうされたのですか?どこか痛むのですか・・・?」
アンナがヒルダの身体を支えながら尋ねた。
「お・・お父様が・・・帰ってきてしまったそうです・・・。」
「え・・?!」
アンナは青くなった。まさかハリスが帰宅してくるとは想定外だった。
「ヒルダ様・・・。」
するとヒルダは言った。
「こ・・心が・・・。」
「え?」
「心が・・痛いんです・・。こ、ここは・・・本当は私の故郷・・・大切な場所・・なのに・・いくら自分が悪いとはいえ・・私はここにいる事を許されない・・。すぐそこに・・会いたい人がいるのに・・会う事が出来ない・・。だって私は・・お父様に嫌われているから・・・親子の縁を切られているから・・。でも・・でもやっぱり私は・・・お父様に会いたい・・・会って・・強く抱きしめて貰いたい・・!」
「ヒルダ様・・・っ!」
アンナは自分よりも大きなヒルダを強く強く抱きしめた。
「私・・私が代わりにヒルダ様を抱きしめて差し上げます・・!」
アンナは泣きながらヒルダを強く抱きしめた。そして2人を見守るコゼットもハンカチで目を押さえている。
(グレース・・・・ッ!私は・・・絶対に貴女を許さない・・ヒルダ様の足を傷つけただけじゃなく・・こんなに辛い境遇に置かれているのに・・今も本人は堂々と暮らしているなんて・・絶対に・・・貴女の罪を・・暴いてヒルダ様の前で謝罪させてやるんだから・・っ!)
アンナはヒルダを抱きしめながら、心に強く誓った。
****
一方その頃―
「父上、お帰りなさいませ。」
エントランスに出迎えたエドガーは頭を下げた。すでにそこには執事のマルコの姿あり、ハリスのカバンを受け取っていた。
「おお、エドガーか。わざわざ出迎えてくれたとは・・ありがとう。」
ハリスは帽子を外し、両肩に着いた雪を払い落としながらエドガーに笑みを浮かべた。
「ええ、馬のいななきが聞こえてきたのでもしやと思い、出迎えに参りました。」
「さすがはエドガーだな。ところで・・厩舎に馬車が止まっていたが・・・ひょっとするとアンナ嬢が来ているのではないか?」
ハリスの言葉にエドガーは全身から血の気が引くのを感じた。
(そうだった・・!アンナ嬢の馬車には・・家紋が付いていた・・っ!)
「え、ええ・・実はアンナ嬢が・・来ているんです・・。」
「そうか・・なら是非とも挨拶に行かないとな。何せいずれは私の義理の娘になるお方だから。それで?アンナ嬢は今どこにいるのだ?」
「はい・・・隣の・・応接室に・・・。」
もうエドガーにはこれ以上隠し続ける事は不可能だった。
「そうか。ではさっそく挨拶に行くとしよう。」
ハリスは上着をマルコに預けると、ウキウキした様子で応接室に向かって歩いて行く。そんなハリスの後ろをエドガーはなすすべもなくついてく。
(どうか・・どうか父が・・ヒルダだと気づきませんように・・。)
エドガーには・・もはや神に祈るしか方法は無かった。
「よし、この部屋だな?」
そしてハリスはドアをノックした―。
(お父様に見つかったら大変だわ・・お兄様がお父様を引き留めている間に早く応接室に戻って・・部屋のどこかに隠れなくちゃ・・!)
しかし、ヒルダの心は複雑だった。どうして隠れなければならないのだろう?自分はこの屋敷で生まれ育ったのに・・一度も忘れた事が無かった大切な故郷・・。そしてどんなに酷い言葉を投げつけられようとも、爵位を奪われ、たとえ親子の縁を切られても・・やはりヒルダに取っては大切な父であった。
(お父様・・・本当はお父様にも一目会いたい・・・!)
枯れ果てていたヒルダの涙は母に再会した事で涙が戻った。そのせいか・・・ヒルダはいつしか目に涙を浮かべながら必死で応接室を目指して歩き・・。
バタンッ!
突然扉が開かれ、ヒルダがドアから現れると後手でドアを閉めた。
「まあ!ヒ・・い、いえ。ライラック様、どうしたのですか?!」
椅子に座り、コゼットと紅茶を飲んでいたアンナは驚いて振り向き・・・俯いてドアに寄り掛かるヒルダを見て驚いて声を掛けた。
「う・・・。」
するとヒルダは小さく呻き、そのままずるずると床に座り込んでしまった。
「ライラック様っ?!」
アンナは慌ててヒルダに駆け寄り、身体を起こし・・ハッとなった。
「う・・うう・・・。」
何とヒルダが涙をボロボロこぼしながら泣いていたのだ。
「ライラック様・・・一体どうされたのですか?どこか痛むのですか・・・?」
アンナがヒルダの身体を支えながら尋ねた。
「お・・お父様が・・・帰ってきてしまったそうです・・・。」
「え・・?!」
アンナは青くなった。まさかハリスが帰宅してくるとは想定外だった。
「ヒルダ様・・・。」
するとヒルダは言った。
「こ・・心が・・・。」
「え?」
「心が・・痛いんです・・。こ、ここは・・・本当は私の故郷・・・大切な場所・・なのに・・いくら自分が悪いとはいえ・・私はここにいる事を許されない・・。すぐそこに・・会いたい人がいるのに・・会う事が出来ない・・。だって私は・・お父様に嫌われているから・・・親子の縁を切られているから・・。でも・・でもやっぱり私は・・・お父様に会いたい・・・会って・・強く抱きしめて貰いたい・・!」
「ヒルダ様・・・っ!」
アンナは自分よりも大きなヒルダを強く強く抱きしめた。
「私・・私が代わりにヒルダ様を抱きしめて差し上げます・・!」
アンナは泣きながらヒルダを強く抱きしめた。そして2人を見守るコゼットもハンカチで目を押さえている。
(グレース・・・・ッ!私は・・・絶対に貴女を許さない・・ヒルダ様の足を傷つけただけじゃなく・・こんなに辛い境遇に置かれているのに・・今も本人は堂々と暮らしているなんて・・絶対に・・・貴女の罪を・・暴いてヒルダ様の前で謝罪させてやるんだから・・っ!)
アンナはヒルダを抱きしめながら、心に強く誓った。
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一方その頃―
「父上、お帰りなさいませ。」
エントランスに出迎えたエドガーは頭を下げた。すでにそこには執事のマルコの姿あり、ハリスのカバンを受け取っていた。
「おお、エドガーか。わざわざ出迎えてくれたとは・・ありがとう。」
ハリスは帽子を外し、両肩に着いた雪を払い落としながらエドガーに笑みを浮かべた。
「ええ、馬のいななきが聞こえてきたのでもしやと思い、出迎えに参りました。」
「さすがはエドガーだな。ところで・・厩舎に馬車が止まっていたが・・・ひょっとするとアンナ嬢が来ているのではないか?」
ハリスの言葉にエドガーは全身から血の気が引くのを感じた。
(そうだった・・!アンナ嬢の馬車には・・家紋が付いていた・・っ!)
「え、ええ・・実はアンナ嬢が・・来ているんです・・。」
「そうか・・なら是非とも挨拶に行かないとな。何せいずれは私の義理の娘になるお方だから。それで?アンナ嬢は今どこにいるのだ?」
「はい・・・隣の・・応接室に・・・。」
もうエドガーにはこれ以上隠し続ける事は不可能だった。
「そうか。ではさっそく挨拶に行くとしよう。」
ハリスは上着をマルコに預けると、ウキウキした様子で応接室に向かって歩いて行く。そんなハリスの後ろをエドガーはなすすべもなくついてく。
(どうか・・どうか父が・・ヒルダだと気づきませんように・・。)
エドガーには・・もはや神に祈るしか方法は無かった。
「よし、この部屋だな?」
そしてハリスはドアをノックした―。
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