許婚と親友は両片思いだったので2人の仲を取り持つことにしました

結城芙由奈@コミカライズ連載中

文字の大きさ
21 / 77

21 気遣い

しおりを挟む
 ロールパンを食べていると彼がテーブル席に戻ってきた。

「お待たせ。」

そして私の前にマグカップを置くと、再び向かい側の椅子に座った。そこには美味しそうな具沢山のスープが注がれている。

「あの、こちらの料理も食べられるのですか?」

「ああ、食べるよ。ただし、君がね?」

彼は言った。

「え?あの・・・?」

「冷めちゃうから温かいうちに食べた方がいいよ?それだけじゃ栄養が足りないよ。」

その声は優しかった。

「あ、あの・・・でしたらお金を・・・。」

慌てて財布を出そうとしたら止められた。

「お金なんかいらないよ。君が美味しそうな顔で食べてくれればそれでいい。」

「あ・・・。」

どうしよう。優しい言葉が嬉しくて涙が出そうになってしまった。最近ヘンリーの当たりが強くて、辛い事が多くて、落ち込む日々が続いていたから・・・。

「ありがとうございます。」

私は何とか笑みを浮かべて、スープをスプーンで口に運んだ。クリームスープに甘みのあるお野菜が、とても美味い。

「とても美味しいです・・・本当にありがとうございます。」

「・・・別にいいよ。それくらい。」

彼は優しい目でこちらを見ると言った。

「ところで・・・あのテーブルに座っているのは君の知り合いなんだろう?」

彼の向いた方向にはヘンリーとキャロルがいる。2人は楽し気に話をしながらパスタを食べていた。

「は、はい。そうです・・・。」

「さっきまで一緒にいたよね?だけど・・・君の分だけ座る席が無かったんだろう?一体、あの2人とはどういう関係なんだい?」

やっぱり見られていたんだ・・。恥ずかしくなり、思わず顔が赤面してしまった。

「俺の目には・・どう見ても君だけのけ者にされているように見えたんだけど?」

彼はじっと私の目を見つめて話しかけてくる。彼になら・・・事情を話してもいいかもしれない。だって・・私の事を心配してくれているみたいだから。

「男性は私の許嫁です、女性は私の幼馴染みで・・・親友です。」

「何だって・・・?」  

彼の顔色が変わる。一体どんな風に思われてしまっただろう?自分の親友を許嫁に預ける変わり者な女だと思われてしまっただろうか?彼には・・・軽蔑されたくは無かった。

「あ、あの。これには訳が・・・。」

訳?一体どんな訳が?
自分で言いかけて、思った。私に魅力が無いから許嫁は私に嫌気がさして、代わりに私の親友を好きになってしまったので身を引こうと思っています・・。などと言えるはずは無かった。

「君は・・・自分の許嫁が他の女性に心を奪われてもいいのかい?」

「そ、それは・・・。」

「彼のあの目は・・・恋する目だよ。彼は完全に彼女に恋をしている。」

「はい・・分かっています。」

「君はそれをどう思うんだい?」

彼は何故か食い下がって質問して来る。

「私は・・彼の事も、親友の事も大好きなので・・2人が本当にお互いの事を好き合って・・将来結ばれたいと考えているなら・・身を引こうと思っています。だって私は・・あの2人に嫌われたくはないから・・。」

最後の方は消え入りそうな声になってしまった。

「そうか・・。ごめん・・。嫌な事を聞いてしまったね・・。だけど・・。ひょっとして君は自分を責めているんじゃないのかい?」

「え・・?ど、どうして分ったのですか・・?」

「君のその自信なさげな姿でそう感じたんだよ。恐らく君にそんな思いを抱かせたのは・・彼のせいなんだろうね・・?」

「い、いえ。本当にそんな事は・・。」

すると彼は言った。

「もうそろそろお昼休みが終わるから早めに食べたほうがいいよ。」

彼は立ち上がると言った。

「あ、お世話になりました。」

慌てて立ち上がり、頭を下げた。

「別に気にする事は無いよ。それじゃあね。」

そして彼はヒラヒラと手を振ると背を向け、去って行った。私は彼の姿が見えなくなるまで見守っていた。

その私の姿を憎悪のこもった眼でヘンリーが見ていることには気付かないまま―。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです

こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。 まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。 幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。 「子供が欲しいの」 「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」 それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。

幼馴染を溺愛する旦那様の前からは、もう消えてあげることにします

睡蓮
恋愛
「旦那様、もう幼馴染だけを愛されればいいじゃありませんか。私はいらない存在らしいので、静かにいなくなってあげます」

三年の想いは小瓶の中に

月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。 ※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。

白い結婚で結構ですわ。愛人持ちの夫に興味はありません

鍛高譚
恋愛
公爵令嬢ルチアーナは、王太子アルベルトとの政略結婚を命じられた。だが彼にはすでに愛する女性がいた。そこでルチアーナは、夫婦の義務を果たさない“白い結婚”を提案し、お互いに干渉しない関係を築くことに成功する。 「夫婦としての役目を求めないでくださいませ。その代わり、わたくしも自由にさせていただきますわ」 そうして始まった王太子妃としての優雅な生活。社交界では完璧な妃を演じつつ、裏では趣味の読書やお茶会を存分に楽しみ、面倒ごととは距離を置くつもりだった。 ——だが、夫は次第にルチアーナを気にし始める。 「最近、おまえが気になるんだ」 「もっと夫婦としての時間を持たないか?」 今さらそんなことを言われても、もう遅いのですわ。 愛人を優先しておいて、後になって本妻に興味を持つなんて、そんな都合の良い話はお断り。 わたくしは、自由を守るために、今日も紅茶を嗜みながら優雅に過ごしますわ——。 政略結婚から始まる痛快ざまぁ! 夫の後悔なんて知りませんわ “白い結婚”を謳歌する令嬢の、自由気ままなラブ&ざまぁストーリー!

王命により、婚約破棄されました。

緋田鞠
恋愛
魔王誕生に対抗するため、異界から聖女が召喚された。アストリッドは結婚を翌月に控えていたが、婚約者のオリヴェルが、聖女の指名により独身男性のみが所属する魔王討伐隊の一員に選ばれてしまった。その結果、王命によって二人の婚約が破棄される。運命として受け入れ、世界の安寧を祈るため、修道院に身を寄せて二年。久しぶりに再会したオリヴェルは、以前と変わらず、アストリッドに微笑みかけた。「私は、長年の約束を違えるつもりはないよ」。

婚約破棄されたので、もう誰の役にも立たないことにしました 〜静かな公爵家で、何もしない私の本当の人生が始まります〜

ふわふわ
恋愛
王太子の婚約者として、 完璧であることを求められ続けてきた令嬢エリシア。 だがある日、彼女は一方的に婚約を破棄される。 理由は簡単だった。 「君は役に立ちすぎた」から。 すべてを失ったはずの彼女が身を寄せたのは、 “静かな公爵”と呼ばれるアルトゥール・クロイツの屋敷。 そこで待っていたのは―― 期待も、役割も、努力の強要もない日々だった。 前に出なくていい。 誰かのために壊れなくていい。 何もしなくても、ここにいていい。 「第二の人生……いえ、これからが本当の人生です」 婚約破棄ざまぁのその先で描かれる、 何者にもならなくていいヒロインの再生と、 放っておく優しさに満ちた静かな溺愛。 これは、 “役に立たなくなった”令嬢が、 ようやく自分として生き始める物語。

お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】 私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。 その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。 ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない 自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。 そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが―― ※ 他サイトでも投稿中   途中まで鬱展開続きます(注意)

かつて番に婚約者を奪われた公爵令嬢は『運命の番』なんてお断りです。なのに獣人国の王が『お前が運命の番だ』と求婚して来ます

神崎 ルナ
恋愛
「運命の番に出会ったからローズ、君との婚約は解消する」  ローズ・ファラント公爵令嬢は婚約者のエドモンド・ザックランド公爵令息にそう言われて婚約を解消されてしまう。  ローズの居るマトアニア王国は獣人国シュガルトと隣接しているため、数は少ないがそういった可能性はあった。  だが、今回の婚約は幼い頃から決められた政略結婚である。  当然契約違反をしたエドモンド側が違約金を支払うと思われたが――。 「違約金? 何のことだい? お互いのうちどちらかがもし『運命の番』に出会ったら円満に解消すること、って書いてあるじゃないか」  確かにエドモンドの言葉通りその文面はあったが、タイミングが良すぎた。  ここ数年、ザックランド公爵家の領地では不作が続き、ファラント公爵家が援助をしていたのである。  その領地が持ち直したところでこの『運命の番』騒動である。  だが、一応理には適っているため、ローズは婚約解消に応じることとなる。  そして――。  とあることを切っ掛けに、ローズはファラント公爵領の中でもまだ発展途上の領地の領地代理として忙しく日々を送っていた。  そして半年が過ぎようとしていた頃。  拙いところはあるが、少しずつ治める側としての知識や社交術を身に付けつつあったローズの前に一人の獣人が現れた。  その獣人はいきなりローズのことを『お前が運命の番だ』と言ってきて。        ※『運命の番』に関する独自解釈がありますm(__)m

処理中です...