29 / 77
29 私の肝を冷やす言葉
しおりを挟む
ガラガラガラガラ・・・
揺れる馬車の中、私の正面にはフリーダが座っている。私を馬車に乗せてくれたのは彼女だった。何故なら彼女の家の帰り道の途中に私の家があるからだ。
「テア・・・もうすぐ屋敷に着くけど本当にその怪我の事・・おばさまに何も言わないつもりなの?」
フリーダが真剣な顔で尋ねてくる。
「ええ、お願い。もしヘンリーのせいだと分かったら大事になってしまうわ。大体肝心の本人が私の手首の怪我の原因を知らないのだから。」
私はフリーダに言った。
「だけど、それはテアがヘンリーに言わなかったからじゃない。どうして本人の前ではっきり言わなかったの?貴方のせいで、こんな酷い怪我をしてしまったって。許せないわ・・男の強い力で手首を掴まれたらどうなるか分かっていないのよ!あの男は・・っ!」
フリーダは怒りが収まらないのか憤慨している。
「だけど・・・ヘンリーは仮にも私の許嫁だし・・私の家とヘンリーの家の問題にも関わってくるから・・大袈裟にしたくないのよ。」
私は友人に嘘をついてしまった。本当はヘンリーにこれ以上憎まれたり、嫌われたりしたくなかったからだとは言えなかった。
「テア・・・。」
「だから・・・お願い。フリーダ。どうかお母さんには黙っていて?」
「テアがそこまで言うなら黙っているけど・・でも、テアの心が変わってヘンリーを懲らしめたくなった時はいつでも言ってね?どんな事でも協力するから。場合によっては拉致監禁したって・・・。」
フリーダがとんでも無い事を言いだしてきたので、慌てて止めた。
「ま、待って!フリーダッ!そんな事したら犯罪よ?絶対にそんなことはしないでね?」
「ま、まあ・・・確かに拉致監禁は言いすぎちゃったけど・・・。とにかく。私たちはいつでもテアの見方だって事を忘れないでいて欲しいのよ。」
顔を赤らめ、こほんと咳払いしながらフリーダが言った。
「うん・・・ありがとう・・・。」
私はそっと、左手でフリーダの手に触れた―。
****
「まあっ!どうしたの?テアッ!その腕は・・・っ!」
私をエントランス迄出迎えた母が屋敷中に響き渡るような大きな声を上げた。
「どうして腕がこんなことになっているの?入学式で怪我をしたのね?!」
「え・ええ・・・。ちょっと廊下で転んだ時に手首をついてしまって・・・。そうよね?フリーダ」
私は背後に立つフリーダに目配せしながら言う。
「はい、そうなんです。そして手は医務室で手当てを受けたのです。」
「まあ・・・貴女って昔からぼ~っとしているところがあったけど・・気を付けるのよ?どう?痛みはあるの?」
「すこし痛むけど・・今のところは大丈夫よ。」
するフリーダが言った。
「あの、それでは私はもう帰りますね?馬車を待たせてあるので。」
「まあ・・本当にありがとう、フリーダ。テアを連れて来てくれて。この子ったら今朝は馬車も使わないし、帰りの時間も伝えていかなかったら・・・迎えを出せなかったのよ。挙句にこんな怪我迄して帰ってくるのだから・・本当に助かったわ。ありがとう。」
「本当にありがとう、フリーダ。」
私も頭を下げてお礼を言った。
「いいのよ、他ならぬテアの為だから。それじゃ、また明日学校でね?」
フリーダは笑顔で手をふると帰って行った—。
「テア?本当に手首の怪我・・自分で転んで怪我したのよね?」
フリーダがいなくなるとすぐに母が私の方を向いて尋ねてきた。
ドキッ!
「え、ええ。本当だってば。私って、ドジだから。それじゃ着替えてくるわ。」
そして部屋へ向かうために、踵を返して廊下を歩き始めると母が呼び止めた。
「待ちなさい、テア。」
「何?」
振り向くと母が言った。
「着替えを済ませたらリビングにいらっしゃい。沈痛効果のあるハーブティを入れてあげるから。」
「ありがとう、それじゃ着替えたらすぐ行くわ。」
そして私は階段を上がり、自室へ向かった。
自室へ戻ると私はすぐに呼び鈴でメイドを呼んだ。
「お帰りさないませ、お嬢様・・・。え?!ど、どうなさったのですかっ?!そのお怪我はっ!」
現れたメイドのマリが私を見るなり慌てて駆けつけてきた。
「ええ・・・ちょっと学校で怪我をしてしまったの。悪いけど・・・着替えを手伝ってもらえるかしら?」
「ええ。お任せください。」
マリは余計な質問は一切せずに着替えの準備と、着替えを手伝ってくれると最後に三角巾で腕をつってくれた。
「ありがとう、マリ。お母さんにリビングに呼ばれたから行ってくるわね?」
「はい、行ってらっしゃいませ。」
マリに見送られ、私はリビングへと向かった。
「お母さん。」
日差しの明るい、広々としたリビングへ行くと、既に楕円形の大理石のテーブルにはお茶の用意がされていた。
「着替えられたのね?」
テーブル前の椅子に着席していた母が尋ねてきた。
「ええ、マリに手伝ってもらったの。」
言いながら私は母の向かい側の席にストンと座ると、さっそく母は目の前のカップにハーブティーを注いでくれた。
「いい香り・・・。」
匂いを嗅いで笑みを浮かべると、母も自分の分のハーブティーを入れて目の前に座ると口を開いた。
「テア・・・お茶会で耳にしたのだけど・・・私の友人がヘンリーと見知らぬ少女が動物園から出てきたのを目撃した人がいるのよ。一体どういう事かしら・・?」
「え・・?」
私は母の言葉に血の気が引いた―。
揺れる馬車の中、私の正面にはフリーダが座っている。私を馬車に乗せてくれたのは彼女だった。何故なら彼女の家の帰り道の途中に私の家があるからだ。
「テア・・・もうすぐ屋敷に着くけど本当にその怪我の事・・おばさまに何も言わないつもりなの?」
フリーダが真剣な顔で尋ねてくる。
「ええ、お願い。もしヘンリーのせいだと分かったら大事になってしまうわ。大体肝心の本人が私の手首の怪我の原因を知らないのだから。」
私はフリーダに言った。
「だけど、それはテアがヘンリーに言わなかったからじゃない。どうして本人の前ではっきり言わなかったの?貴方のせいで、こんな酷い怪我をしてしまったって。許せないわ・・男の強い力で手首を掴まれたらどうなるか分かっていないのよ!あの男は・・っ!」
フリーダは怒りが収まらないのか憤慨している。
「だけど・・・ヘンリーは仮にも私の許嫁だし・・私の家とヘンリーの家の問題にも関わってくるから・・大袈裟にしたくないのよ。」
私は友人に嘘をついてしまった。本当はヘンリーにこれ以上憎まれたり、嫌われたりしたくなかったからだとは言えなかった。
「テア・・・。」
「だから・・・お願い。フリーダ。どうかお母さんには黙っていて?」
「テアがそこまで言うなら黙っているけど・・でも、テアの心が変わってヘンリーを懲らしめたくなった時はいつでも言ってね?どんな事でも協力するから。場合によっては拉致監禁したって・・・。」
フリーダがとんでも無い事を言いだしてきたので、慌てて止めた。
「ま、待って!フリーダッ!そんな事したら犯罪よ?絶対にそんなことはしないでね?」
「ま、まあ・・・確かに拉致監禁は言いすぎちゃったけど・・・。とにかく。私たちはいつでもテアの見方だって事を忘れないでいて欲しいのよ。」
顔を赤らめ、こほんと咳払いしながらフリーダが言った。
「うん・・・ありがとう・・・。」
私はそっと、左手でフリーダの手に触れた―。
****
「まあっ!どうしたの?テアッ!その腕は・・・っ!」
私をエントランス迄出迎えた母が屋敷中に響き渡るような大きな声を上げた。
「どうして腕がこんなことになっているの?入学式で怪我をしたのね?!」
「え・ええ・・・。ちょっと廊下で転んだ時に手首をついてしまって・・・。そうよね?フリーダ」
私は背後に立つフリーダに目配せしながら言う。
「はい、そうなんです。そして手は医務室で手当てを受けたのです。」
「まあ・・・貴女って昔からぼ~っとしているところがあったけど・・気を付けるのよ?どう?痛みはあるの?」
「すこし痛むけど・・今のところは大丈夫よ。」
するフリーダが言った。
「あの、それでは私はもう帰りますね?馬車を待たせてあるので。」
「まあ・・本当にありがとう、フリーダ。テアを連れて来てくれて。この子ったら今朝は馬車も使わないし、帰りの時間も伝えていかなかったら・・・迎えを出せなかったのよ。挙句にこんな怪我迄して帰ってくるのだから・・本当に助かったわ。ありがとう。」
「本当にありがとう、フリーダ。」
私も頭を下げてお礼を言った。
「いいのよ、他ならぬテアの為だから。それじゃ、また明日学校でね?」
フリーダは笑顔で手をふると帰って行った—。
「テア?本当に手首の怪我・・自分で転んで怪我したのよね?」
フリーダがいなくなるとすぐに母が私の方を向いて尋ねてきた。
ドキッ!
「え、ええ。本当だってば。私って、ドジだから。それじゃ着替えてくるわ。」
そして部屋へ向かうために、踵を返して廊下を歩き始めると母が呼び止めた。
「待ちなさい、テア。」
「何?」
振り向くと母が言った。
「着替えを済ませたらリビングにいらっしゃい。沈痛効果のあるハーブティを入れてあげるから。」
「ありがとう、それじゃ着替えたらすぐ行くわ。」
そして私は階段を上がり、自室へ向かった。
自室へ戻ると私はすぐに呼び鈴でメイドを呼んだ。
「お帰りさないませ、お嬢様・・・。え?!ど、どうなさったのですかっ?!そのお怪我はっ!」
現れたメイドのマリが私を見るなり慌てて駆けつけてきた。
「ええ・・・ちょっと学校で怪我をしてしまったの。悪いけど・・・着替えを手伝ってもらえるかしら?」
「ええ。お任せください。」
マリは余計な質問は一切せずに着替えの準備と、着替えを手伝ってくれると最後に三角巾で腕をつってくれた。
「ありがとう、マリ。お母さんにリビングに呼ばれたから行ってくるわね?」
「はい、行ってらっしゃいませ。」
マリに見送られ、私はリビングへと向かった。
「お母さん。」
日差しの明るい、広々としたリビングへ行くと、既に楕円形の大理石のテーブルにはお茶の用意がされていた。
「着替えられたのね?」
テーブル前の椅子に着席していた母が尋ねてきた。
「ええ、マリに手伝ってもらったの。」
言いながら私は母の向かい側の席にストンと座ると、さっそく母は目の前のカップにハーブティーを注いでくれた。
「いい香り・・・。」
匂いを嗅いで笑みを浮かべると、母も自分の分のハーブティーを入れて目の前に座ると口を開いた。
「テア・・・お茶会で耳にしたのだけど・・・私の友人がヘンリーと見知らぬ少女が動物園から出てきたのを目撃した人がいるのよ。一体どういう事かしら・・?」
「え・・?」
私は母の言葉に血の気が引いた―。
315
あなたにおすすめの小説
私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです
こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。
まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。
幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。
「子供が欲しいの」
「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」
それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。
三年の想いは小瓶の中に
月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。
※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。
白い結婚で結構ですわ。愛人持ちの夫に興味はありません
鍛高譚
恋愛
公爵令嬢ルチアーナは、王太子アルベルトとの政略結婚を命じられた。だが彼にはすでに愛する女性がいた。そこでルチアーナは、夫婦の義務を果たさない“白い結婚”を提案し、お互いに干渉しない関係を築くことに成功する。
「夫婦としての役目を求めないでくださいませ。その代わり、わたくしも自由にさせていただきますわ」
そうして始まった王太子妃としての優雅な生活。社交界では完璧な妃を演じつつ、裏では趣味の読書やお茶会を存分に楽しみ、面倒ごととは距離を置くつもりだった。
——だが、夫は次第にルチアーナを気にし始める。
「最近、おまえが気になるんだ」
「もっと夫婦としての時間を持たないか?」
今さらそんなことを言われても、もう遅いのですわ。
愛人を優先しておいて、後になって本妻に興味を持つなんて、そんな都合の良い話はお断り。
わたくしは、自由を守るために、今日も紅茶を嗜みながら優雅に過ごしますわ——。
政略結婚から始まる痛快ざまぁ! 夫の後悔なんて知りませんわ
“白い結婚”を謳歌する令嬢の、自由気ままなラブ&ざまぁストーリー!
王命により、婚約破棄されました。
緋田鞠
恋愛
魔王誕生に対抗するため、異界から聖女が召喚された。アストリッドは結婚を翌月に控えていたが、婚約者のオリヴェルが、聖女の指名により独身男性のみが所属する魔王討伐隊の一員に選ばれてしまった。その結果、王命によって二人の婚約が破棄される。運命として受け入れ、世界の安寧を祈るため、修道院に身を寄せて二年。久しぶりに再会したオリヴェルは、以前と変わらず、アストリッドに微笑みかけた。「私は、長年の約束を違えるつもりはないよ」。
婚約破棄されたので、もう誰の役にも立たないことにしました 〜静かな公爵家で、何もしない私の本当の人生が始まります〜
ふわふわ
恋愛
王太子の婚約者として、
完璧であることを求められ続けてきた令嬢エリシア。
だがある日、彼女は一方的に婚約を破棄される。
理由は簡単だった。
「君は役に立ちすぎた」から。
すべてを失ったはずの彼女が身を寄せたのは、
“静かな公爵”と呼ばれるアルトゥール・クロイツの屋敷。
そこで待っていたのは――
期待も、役割も、努力の強要もない日々だった。
前に出なくていい。
誰かのために壊れなくていい。
何もしなくても、ここにいていい。
「第二の人生……いえ、これからが本当の人生です」
婚約破棄ざまぁのその先で描かれる、
何者にもならなくていいヒロインの再生と、
放っておく優しさに満ちた静かな溺愛。
これは、
“役に立たなくなった”令嬢が、
ようやく自分として生き始める物語。
お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】
私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。
その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。
ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない
自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。
そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが――
※ 他サイトでも投稿中
途中まで鬱展開続きます(注意)
かつて番に婚約者を奪われた公爵令嬢は『運命の番』なんてお断りです。なのに獣人国の王が『お前が運命の番だ』と求婚して来ます
神崎 ルナ
恋愛
「運命の番に出会ったからローズ、君との婚約は解消する」
ローズ・ファラント公爵令嬢は婚約者のエドモンド・ザックランド公爵令息にそう言われて婚約を解消されてしまう。
ローズの居るマトアニア王国は獣人国シュガルトと隣接しているため、数は少ないがそういった可能性はあった。
だが、今回の婚約は幼い頃から決められた政略結婚である。
当然契約違反をしたエドモンド側が違約金を支払うと思われたが――。
「違約金? 何のことだい? お互いのうちどちらかがもし『運命の番』に出会ったら円満に解消すること、って書いてあるじゃないか」
確かにエドモンドの言葉通りその文面はあったが、タイミングが良すぎた。
ここ数年、ザックランド公爵家の領地では不作が続き、ファラント公爵家が援助をしていたのである。
その領地が持ち直したところでこの『運命の番』騒動である。
だが、一応理には適っているため、ローズは婚約解消に応じることとなる。
そして――。
とあることを切っ掛けに、ローズはファラント公爵領の中でもまだ発展途上の領地の領地代理として忙しく日々を送っていた。
そして半年が過ぎようとしていた頃。
拙いところはあるが、少しずつ治める側としての知識や社交術を身に付けつつあったローズの前に一人の獣人が現れた。
その獣人はいきなりローズのことを『お前が運命の番だ』と言ってきて。
※『運命の番』に関する独自解釈がありますm(__)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる