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54 自分勝手なヘンリー
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本日5限目の最後の外国語の授業が終わり、キャロルが机の上を片付けながら言った。
「ふぅ~・・ようやく今日最後の講義が終わったわね・・。」
「ええ。でも一番最後の講義が外国語というのは何だか疲れるわね。文法が難しくて困るわ・・・。」
すると同じ外国語を選択していたダイアナが言う。
「私は外国語の講義好きだけどね~私の将来の夢は通訳になる事だから。」
「へぇ~すごいわね・・・。ねえ、そういえばテアの将来の夢って何?」
「あ・・・わ、私は・・・。」
不意にキャロルに話を振られてドキリとした。どうしよう・・言うべきだろうか・・?だけどキャロルもダイアナも興味深げに私をじっと見ている。もう隠していてもしようがない。
「あのね・・・私の将来の夢は・・ヘンリーと結婚する事だったの・・。」
「「え・・?」」
途端にダイアナとキャロルの顔が曇る。私は慌てて言った。
「で、でも!そ、それはほんの数日前までの事だから!今はそんな事少しも考えていないから!ヘンリーとの将来なんてあり得ないからね?2年生に進級するまでに・・・考えるわ。」
「そうね、それがいいわ。私はね、卒業後は領地の農園を引き継ぐことになっているから経営技術を身に着けたいわ。」
ダイアナもキャロルもきちんと目標を持っている。私も2人を見習わなければ・・。。
「さて、それじゃ帰りましょうか?」
帰り支度が済んだのでキャロルが声を掛けた。
「ええ、そうね。」
ダイアナが返事をする。だけど・・・私はずっと気になることがあって、このまま帰ってもいいのか迷っていた。何故なら・・ヘンリーがあの後から姿を消してしまい、講義には一切顔を出さなかったからだ。するとキャロルが声を掛けてきた。
「テア、帰らないの?」
「あ、ううん。帰るわ。」
3人で教室を出て、キャロルの歩調に合わせながらゆっくり歩いていると不意にキャロルがクスクスと笑いだした。
「どうしたの?キャロル?」
私が尋ねるとキャロルが言った。
「ほら、明日大学に行けばテアの家にお泊りできるでしょう?それが嬉しくてたまらないのよ。」
「そういえばそうだったわね。キャロルの部屋は用意しておくらかね。」
するとダイアナが言った。
「あら、キャロルは週末いないのね。」
「ええそうよ。もしかして・・・寂しい?」
キャロルはダイアナに尋ねた。すると・・・。
「いいえ、そうじゃないわ。私も週末は実家に帰るのよ。汽車でせいぜい片道2時間くらいだから。」
「まあ、そうだったのね。それじゃあの部屋は2日間誰もいなくなるってことね。」
そんな2人の会話を聞きながらも、私は内心ヘンリーの事が気がかりだった。あんな公衆の面前で馬鹿にされてしまったのだ。さぞかしプライドの高いヘンリーは傷ついたのではないかと。
彼が・・・この後どう出てくるか・・一抹の不安が私の心を過った―。
****
大学の出口でキャロル、ダイアナと別れた私は1人、敷地内にある馬車の待合所に向かって歩いていた。すると突然背後から声を掛けられた。
「待ってくれ、テアッ!」
そ、その声は・・・。
恐る恐る振り返ると、そこにはカバンを下げたヘンリーが立っていた。
「良かった・・。テアに大事な話があってずっとここの茂みで隠れて待っていた甲斐があった。」
ヘンリーは自分の足元にある茂みを指さしながら言う。
「え・・?そんな狭いところで隠れて待っていたの・・?どうして?」
どれくらい待ったのかは・・あえて聞かないでおこう。
「お、お前なあ・・っ!い、いや・・。テア、君はそんな事も分からないのかい?」
ヘンリーは丁寧な言い方をしたのかもしれないが・・やはりその言葉はどこか人を見下している。・・知らなかった。冷静に分析してみれば・・。私は随分ヘンリーから格下に見られていたんだ。何故今まで気づかなかったのだろう?
私の気持ちをよそに、ヘンリーは話し始めた。
「俺がここに隠れていたのは、学食の出来事が原因だ。あそこ迄周囲に馬鹿にされたんだ。いたたまれなくて立ち去った事くらい・・テアなら分かるだろう?またここで同じような目に遭うのが嫌だったから・・隠れてお前を待っていたんじゃないか。なあ、テア・・なんであの時俺を追ってこなかったんだよ。お前・・俺の許嫁だろう?許婚が周りから馬鹿にされて・・平気でいられるのか?」
ヘンリーは自分勝手な、随分と滅茶苦茶な事を言ってきた。
今までの私なら、黙って謝っていたかもしれないけれども、皆のおかげで目が覚めた。
だから・・・自分勝手なヘンリーに今こそ、はっきり物申そうと―。
「ふぅ~・・ようやく今日最後の講義が終わったわね・・。」
「ええ。でも一番最後の講義が外国語というのは何だか疲れるわね。文法が難しくて困るわ・・・。」
すると同じ外国語を選択していたダイアナが言う。
「私は外国語の講義好きだけどね~私の将来の夢は通訳になる事だから。」
「へぇ~すごいわね・・・。ねえ、そういえばテアの将来の夢って何?」
「あ・・・わ、私は・・・。」
不意にキャロルに話を振られてドキリとした。どうしよう・・言うべきだろうか・・?だけどキャロルもダイアナも興味深げに私をじっと見ている。もう隠していてもしようがない。
「あのね・・・私の将来の夢は・・ヘンリーと結婚する事だったの・・。」
「「え・・?」」
途端にダイアナとキャロルの顔が曇る。私は慌てて言った。
「で、でも!そ、それはほんの数日前までの事だから!今はそんな事少しも考えていないから!ヘンリーとの将来なんてあり得ないからね?2年生に進級するまでに・・・考えるわ。」
「そうね、それがいいわ。私はね、卒業後は領地の農園を引き継ぐことになっているから経営技術を身に着けたいわ。」
ダイアナもキャロルもきちんと目標を持っている。私も2人を見習わなければ・・。。
「さて、それじゃ帰りましょうか?」
帰り支度が済んだのでキャロルが声を掛けた。
「ええ、そうね。」
ダイアナが返事をする。だけど・・・私はずっと気になることがあって、このまま帰ってもいいのか迷っていた。何故なら・・ヘンリーがあの後から姿を消してしまい、講義には一切顔を出さなかったからだ。するとキャロルが声を掛けてきた。
「テア、帰らないの?」
「あ、ううん。帰るわ。」
3人で教室を出て、キャロルの歩調に合わせながらゆっくり歩いていると不意にキャロルがクスクスと笑いだした。
「どうしたの?キャロル?」
私が尋ねるとキャロルが言った。
「ほら、明日大学に行けばテアの家にお泊りできるでしょう?それが嬉しくてたまらないのよ。」
「そういえばそうだったわね。キャロルの部屋は用意しておくらかね。」
するとダイアナが言った。
「あら、キャロルは週末いないのね。」
「ええそうよ。もしかして・・・寂しい?」
キャロルはダイアナに尋ねた。すると・・・。
「いいえ、そうじゃないわ。私も週末は実家に帰るのよ。汽車でせいぜい片道2時間くらいだから。」
「まあ、そうだったのね。それじゃあの部屋は2日間誰もいなくなるってことね。」
そんな2人の会話を聞きながらも、私は内心ヘンリーの事が気がかりだった。あんな公衆の面前で馬鹿にされてしまったのだ。さぞかしプライドの高いヘンリーは傷ついたのではないかと。
彼が・・・この後どう出てくるか・・一抹の不安が私の心を過った―。
****
大学の出口でキャロル、ダイアナと別れた私は1人、敷地内にある馬車の待合所に向かって歩いていた。すると突然背後から声を掛けられた。
「待ってくれ、テアッ!」
そ、その声は・・・。
恐る恐る振り返ると、そこにはカバンを下げたヘンリーが立っていた。
「良かった・・。テアに大事な話があってずっとここの茂みで隠れて待っていた甲斐があった。」
ヘンリーは自分の足元にある茂みを指さしながら言う。
「え・・?そんな狭いところで隠れて待っていたの・・?どうして?」
どれくらい待ったのかは・・あえて聞かないでおこう。
「お、お前なあ・・っ!い、いや・・。テア、君はそんな事も分からないのかい?」
ヘンリーは丁寧な言い方をしたのかもしれないが・・やはりその言葉はどこか人を見下している。・・知らなかった。冷静に分析してみれば・・。私は随分ヘンリーから格下に見られていたんだ。何故今まで気づかなかったのだろう?
私の気持ちをよそに、ヘンリーは話し始めた。
「俺がここに隠れていたのは、学食の出来事が原因だ。あそこ迄周囲に馬鹿にされたんだ。いたたまれなくて立ち去った事くらい・・テアなら分かるだろう?またここで同じような目に遭うのが嫌だったから・・隠れてお前を待っていたんじゃないか。なあ、テア・・なんであの時俺を追ってこなかったんだよ。お前・・俺の許嫁だろう?許婚が周りから馬鹿にされて・・平気でいられるのか?」
ヘンリーは自分勝手な、随分と滅茶苦茶な事を言ってきた。
今までの私なら、黙って謝っていたかもしれないけれども、皆のおかげで目が覚めた。
だから・・・自分勝手なヘンリーに今こそ、はっきり物申そうと―。
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