これは、どういう状況かしら?【意外なオチシリーズ第2弾】

結城芙由奈@コミカライズ連載中

文字の大きさ
9 / 9

第9話

しおりを挟む
「どうしたのかしら? フリッツ様。そんなところに突っ立っていないで、座ってはいかがですか? 今日はこうしてロッテもお茶を飲みに来ているところですし」

アリシア様がフリッツに座るように勧める様子を私は知らんふりしてコーヒーを飲んでいた。

「あ、ああ……そ、そうだね。でもその前に……」

突然フリッツは床に座り込むと、頭を床に擦り付けて叫んだ。

「俺が悪かった!! 許してくれ!!」

「え……?」

途端にアリシア様の顔に困惑の顔が浮かび、私とフリッツを交互に見比べる。

「あの……これはどういう状況かしら?」

うん、アリシア様が戸惑うのも無理はない。だって一切の事情をアリシア様は知らないのだから。

「すまなかった! メラニーとのことは一種の気の迷いだったんだ! 彼女はこの学園に転校してきて、まだ3ヶ月目。転校初日に、この学園で迷子になって困っているところを、俺がたまたま見かけて教室まで案内した。それが彼女との出会いだったんだ! 彼女は教室に送ってくれたお礼に翌日、わざわざ俺の教室に手作りのクッキーを持ってきてくれて……そこから、なんとなく親しくなっていった。決して浮気とかそんなつもりじゃなかったんだよ!」

床に頭を擦り付けながら必死で訴えるフリッツ。
なるほど……知らなかった。それがメラニーとの馴れ初め? だったのか。

「昨日、出掛けたのだって、本当に初めてだったんだよ!! 俺が卒業する前に、その……さ、最後の思い出が欲しいってメラニーが訴えてきたからなんだ! 誓って言う! 一緒に出掛けたのは昨日が初めてだって!! だから……」

そこでフリッツは顔を上げた。

「君との婚約破棄なんて、一切考えていない!! 卒業記念パーティーのパートナーになって下さい!!」

フリッツは、に訴えた――

「……浮気? メラニーさん……一体何のことかしら? フリッツ様」

アリシア様は、驚いた表情を顔に浮かべ……ため息をついた。

「え……? だ、だって……ロッテから証拠の写真を見せてもらったんじゃ……」

フリッツは顔を上げて、次に怯えた様子で私を見つめる。

「いいえ、私はまだ写真をアリシア様には見せていませんけど?」

私は再びコーヒーを口にした。
だいたい、私は最初からフリッツとアリシア様の婚約破棄を望んでなどいない。だって、アリシア様は私の憧れの女性なのだから。
従兄弟のフリッツとアリシア様が結婚すれば、私はアリシア様と親戚同士になれる。
だから、浮気などバカな真似はやめるようにフリッツを脅迫するために尾行して写真を撮ったのだから。

フリッツが土下座までして謝罪したのだから、きっとアリシア様は許してくれるだろう。

すると……。

「ロッテ、その写真を今持ってるのかしら?」

「はい、持っています」

返事をすると、アリシア様が手を差し出してきた。

「だったら、私にも見せてくれるかしら? 当然見る権利はあるわよね?」

「ええ勿論です!」

憧れのアリシア様のお願いを断るはずもない。早速写真をアリシア様に差し出す。

「お、おい!! ロッテ! やめろ!」

フリッツの言葉なんか、この際無視だ。

「どうぞ、アリシア様」

「ありがとう」

にっこり笑って、アリシア様は写真を見つめる。

「……まぁまぁ、とても楽しそうね……この写真は2日前に行われたお祭りの写真ね? 私が我が家に誘った日だわ」

段々アリシア様の声のトーンが変わっていく。……あれ? 何か様子が……?

「そ、そ、それは……」

「この日は久々に家で過ごす時間が取れたので、我が家に誘ったというのに……卒業記念パーティーのことで相談もあったし……なのに、フリッツ様はデートですか?」

アリシア様の口元は笑っているけれども……目が笑っていない。

「だ、だから……それは……デートとかではなく、友人として遊びに行っただけで……そ、それよりアリシア!! パートナーの返事を聞かせてくれ!」

すると……。

「は? 寝言は寝てから言ってもらえないかしら?」

アリシア様が乱暴な口調で言い放った。

「「え……??」」

今まで見たこともない態度に、私もフリッツも固まる。

「私は寝る間も惜しんで、生徒会の仕事を頑張ってきたのに……フリッツは一応、引退はしたけれども生徒会役員の一人だったでしょう? なのに、一度も手伝いに来てくれたことは無かったわよね? 私、何度も生徒会室に来てくださいとお願いしていたのに……あなたが学園内で後輩の女子生徒と仲良くしていた話を私が知らないとでも思っていたのかしら?」

淡々と話すアリシア様。いつの間にか、フリッツ様がフリッツに変わっている。
生徒会室にこもりっきりだったから、てっきりメラニーの話は知らないと思っていたのに……!!

「パートナーになって欲しい? 冗談じゃありません、お断りだわ。それに父とも話し合っていたところなんです。フリッツとの婚約解消の話をね」

その言葉に耳を疑う。

「え!! アリシア様! その話、本当ですか!?」

「ごめんなさい、ロッテ。あなたのお父様からフリッツを紹介してもらって婚約をしたけれども……こんな誠意の無い相手とは結婚なんて無理、先が見えてしまうわ。実は近い内に、あなたのお宅にそのことで相談に行く予定だったのよ」

「そ、そんな……ぁ」

あまりのショックで思わず、ソファから崩れ落ちそうになる。

「そ、それじゃ卒業式のパートナーは……?」

フリッツの言葉に、アリシア様はため息をつく。

「フリッツ……卒業まで後一月なのに、私がいつまでもパートナー不在のままで平気でいられたと思っていますか? もう父にお願いして知りあいの令息にお願いしてあります」

そして、次にアリシア様は私に視線を移した。

「ありがとう、ロッテ。あなたがフリッツの浮気写真を撮ってくれたことで、気持ちが固まったわ。パートナーになってくれる令息と、お見合いすることにします」

「ええ!? お、お見合い!!」

まさかそこまで話が飛躍するとは思わなかった。

「ええ、父の話では相手の令息は私を気に入ってくださっているそうだから……きっと話がまとまるはずだわ。ロッテ、あなたのことは本当の妹のように思っているの。だから卒業しても、私達の仲はずっと変わらないわ」

アリシア様が私の手をそっと握ってきた。

「アリシア様……」

アリシア様と親戚関係になれなかったのは残念だけども、私のことを妹のように思ってくれているのなら……まぁいいか。

となると……。

「フリッツ、もう用件は伝えたから、今すぐここから出ていってくれないかしら? メラニーさんのところに行きなさいよ」

シッシッと私はフリッツを手で追い払う。

「ロッテ!! お前、どっちの味方なんだよ!」

「アリシア様の味方に決まっているでしょう! 父にも正式にアリシア様との仲が破綻したことを報告するから覚悟していなさい!」

「ひぃっ!!」

その言葉に青ざめたフリッツは逃げるように生徒会室を走り去っていった。
二人きりになると、私は早速アリシア様に尋ねた。

「アリシア様、それでお相手の男性はどんな方なのですか?」

「ええ。いいわよ。彼はね……」

アリシア様が嬉しそうにパートナーのことを語っている。
……本当はフリッツと結婚して親戚関係になりたかったけれど……まぁいいか。

だって、こんなに幸せそうなアリシア様の笑顔を見ることが出来たのだから――


<完>

しおりを挟む
感想 2

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(2件)

キノコ♪
2024.08.14 キノコ♪
ネタバレ含む
2024.08.14 結城芙由奈@コミカライズ連載中

感想ありがとうございます。恐らくフリッツはロッテの父親にボコボコにされた……かもしれません

解除
karen-marie
2024.08.14 karen-marie
ネタバレ含む
2024.08.14 結城芙由奈@コミカライズ連載中

感想ありがとうございます。潔く、サクッと終わりました。続けて第3弾近い内に書きます

解除

あなたにおすすめの小説

殿下の御心のままに。

cyaru
恋愛
王太子アルフレッドは呟くようにアンカソン公爵家の令嬢ツェツィーリアに告げた。 アルフレッドの側近カレドウス(宰相子息)が婚姻の礼を目前に令嬢側から婚約破棄されてしまった。 「運命の出会い」をしたという平民女性に傾倒した挙句、子を成したという。 激怒した宰相はカレドウスを廃嫡。だがカレドウスは「幸せだ」と言った。 身分を棄てることも厭わないと思えるほどの激情はアルフレッドは経験した事がなかった。 その日からアルフレッドは思う事があったのだと告げた。 「恋をしてみたい。運命の出会いと言うのは生涯に一度あるかないかと聞く。だから――」 ツェツィーリアは一瞬、貴族の仮面が取れた。しかし直ぐに微笑んだ。 ※後半は騎士がデレますがイラっとする展開もあります。 ※シリアスな話っぽいですが気のせいです。 ※エグくてゲロいざまぁはないと思いますが作者判断ですのでご留意ください  (基本血は出ないと思いますが鼻血は出るかも知れません) ※作者の勝手な設定の為こうではないか、あぁではないかと言う一般的な物とは似て非なると考えて下さい ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。  史実などに基づいたものではない事をご理解ください。 ※作者都合のご都合主義、創作の話です。至って真面目に書いています。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

二度目の婚約者には、もう何も期待しません!……そう思っていたのに、待っていたのは年下領主からの溺愛でした。

当麻月菜
恋愛
フェルベラ・ウィステリアは12歳の時に親が決めた婚約者ロジャードに相応しい女性になるため、これまで必死に努力を重ねてきた。 しかし婚約者であるロジャードはあっさり妹に心変わりした。 最後に人間性を疑うような捨て台詞を吐かれたフェルベラは、プツンと何かが切れてロジャードを回し蹴りしをかまして、6年という長い婚約期間に終止符を打った。 それから三ヶ月後。島流し扱いでフェルベラは岩山ばかりの僻地ルグ領の領主の元に嫁ぐ。愛人として。 婚約者に心変わりをされ、若い身空で愛人になるなんて不幸だと泣き崩れるかと思いきや、フェルベラの心は穏やかだった。 だって二度目の婚約者には、もう何も期待していないから。全然平気。 これからの人生は好きにさせてもらおう。そう決めてルグ領の領主に出会った瞬間、期待は良い意味で裏切られた。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

王太子殿下のおっしゃる意味がよくわかりません~知能指数が離れすぎていると、会話が成立しない件

碧井 汐桜香
恋愛
天才マリアーシャは、お馬鹿な王子の婚約者となった。マリアーシャが王妃となることを条件に王子は王太子となることができた。 王子の代わりに勉学に励み、国を発展させるために尽力する。 ある日、王太子はマリアーシャに婚約破棄を突きつける。 知能レベルの違う二人の会話は成り立つのか?

殿下、その真実の愛は偽物です

ミズメ
恋愛
「この婚約を破棄する!」 とある夜会で婚約者の王太子が、唐突にそう告げた。 〇全10話/書き終わってます 〇他サイトにも掲載

報われない恋の行方〜いつかあなたは私だけを見てくれますか〜

矢野りと
恋愛
『少しだけ私に時間をくれないだろうか……』 彼はいつだって誠実な婚約者だった。 嘘はつかず私に自分の気持ちを打ち明け、学園にいる間だけ想い人のこともその目に映したいと告げた。 『想いを告げることはしない。ただ見ていたいんだ。どうか、許して欲しい』 『……分かりました、ロイド様』 私は彼に恋をしていた。だから、嫌われたくなくて……それを許した。 結婚後、彼は約束通りその瞳に私だけを映してくれ嬉しかった。彼は誠実な夫となり、私は幸せな妻になれた。 なのに、ある日――彼の瞳に映るのはまた二人になっていた……。 ※この作品の設定は架空のものです。 ※お話の内容があわないは時はそっと閉じてくださいませ。

婚約者はメイドに一目惚れしたようです~悪役になる決意をしたら幼馴染に異変アリ~

たんぽぽ
恋愛
両家の話し合いは円満に終わり、酒を交わし互いの家の繁栄を祈ろうとしていた矢先の出来事。 酒を運んできたメイドを見て小さく息を飲んだのは、たった今婚約が決まった男。 不運なことに、婚約者が一目惚れする瞬間を見てしまったカーテルチアはある日、幼馴染に「わたくし、立派な悪役になります」と宣言した。     

【完結】さよなら、馬鹿な王太子殿下

花草青依
恋愛
ビーチェは恋人であるランベルト王太子の傍らで、彼の“婚約破棄宣言”を聞いていた。ランベルトの婚約者であるニナはあっさりと受け入れて去って行った。それを見て、上手く行ったと満足するビーチェ。しかし、彼女の目的はそれだけに留まらず、王宮の平和を大きく乱すものだった。 ■主人公は、いわゆる「悪役令嬢もの」の原作ヒロインのポジションの人です ■画像は生成AI (ChatGPT)

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。