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5-19 離宮との別れ
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ジルベールが帰ったので、サフィニアとヘスティアはリビングに移動した。
二人で向かい合わせに座ると、サフィニアは小箱をテーブルに置いた。
「お土産って……一体何かしら?」
するとヘスティアは意外な言葉を口にした。
「中身は私も知らないんです。ジルベール様がご自身で選ばれたので」
「え……?」
サフィニアの目が見開かれた。
(ジルベールが……自分で? どういうことなの……?)
「どうかしましたか? サフィニア様」
ヘスティアが首を傾げる。
「い、いえ。何でもないわ。なら、早速開けてみましょう」
驚きと、言いようのない胸のざわめきを感じながら、サフィニアは小箱の蓋をそっと開けた。中には、銀色に輝く小さなウサギのブローチが収められていた。
その瞳は、まるでサフィニア自身の瞳を映したかのような深い緑色をしている。
「これは……」
言葉が自然と漏れる。
隣でヘスティアが微笑みながら言った。
「何となく、サフィニア様に似てますね。ジルベール様が言ってました、サフィニア様をイメージして買ったって」
「ジルベールが……?」
サフィニアはブローチを手に取り、光にかざした。
小さなウサギは耳をぴんと立て、遠くを見つめているようだった。
その姿に、どこか自分自身を重ねてしまう。
(今まで私に自分からプレゼントをくれたことは無いのに、突然何故……?)
サフィニアは不思議でならなかった。
いつもジルベールはヘスティアばかり優先し、自分は彼にとって空気のような存在でしかなかったのに。
(それが、なぜ今になって――しかも、私をイメージした贈り物を?)
けれど、こちらをじっと見つめるヘスティアを見て思った。
(そうだわ。きっとヘスティアにもプレゼントを買ってあげているのね。それでついでに私にも買ってきてくれたのだわ)
サフィニアは自分の中で、そう結論付けた。それでも最後にジルベールからの自主的なプレゼントを貰えたことは嬉しかった。
「……ありがとう、ジルベール」
誰に聞かせるでもなく、サフィニアは小さく呟いた。
(私はもう明日にはここを出て、二度と二人の前には現れないのに……)
目の前のヘスティアを見ていると、何故か急に悲しい気持ちがこみあげてくる。
けれど、サフィニアは涙を堪えて笑顔で尋ねた。
「今日はどこへ行って来たの?」
「はい! 手芸店巡りをしてきました。色々な刺繍材料や編み物道具を買ったんです。私、編み物も得意なんです。もうすぐ秋になるので、サフィニア様に何かプレゼントさせてください」
「本当? 楽しみにしてるわ」
もう受け取ることはない。けれど、それを告げることはできなかった。
胸の痛みを隠して、サフィニアは礼を述べた。
ヘスティアは嬉しそうに頷きながら、買ってきた材料を並べ始めて説明を始める。
その姿を見ていると、サフィニアの胸にまた切ない気持ちがこみあげてくる。
(ヘスティア。それにジルベール……。どうしてこんなにも、優しくしてくれるの……?)
複雑な思いを抑え込み、サフィニアは笑顔でヘスティアの話を聞いていた――
***
――その日の夜。
サフィニアは最後の準備をしていた。
必要な衣類をキャリーバッグに詰め、ベッドの下に隠す。
ジルベールからもらった銀色のウサギのブローチ――少し迷ったが、彼が初めて自分のために選んだくれた物だ。
その瞳は、サフィニアと同じ緑色をしている。
「これは持って行きましょう。お金に困っても絶対に売らないわ」
サフィニアはブローチを握りしめ、窓から夜空を見上げた。
空には無数の星が輝いている。
「……もう、ここから夜空を見上げることは無いのね……」
サフィニアの呟くような声は……酷く悲し気だった――
***
翌朝4時半――
まだ夜が明けきらない薄暗い空の下、サフィニアは足音を立てないように荷物を持って離宮を出た。
門扉の前には、荷馬車を用意したレオンが待っていた。
「サフィニア様、お待ちしていました」
「ありがとうございます、レオンさん」
「では参りましょうか?」
「はい」
荷馬車に乗り込むと、レオンは馬を走らせた。
遠ざかっていく離宮を見つめながら、サフィニアはぽつりと呟いた。
「……さよなら、ヘスティア。離宮の人たち……そして、ジルベール。皆……大好きでした。……ママ……ごめんなさい」
離宮で過ごした懐かしい日々がサフィニアの胸に次から次へとこみあげてくる。
鼻の奥がツンとなって、目頭が熱くなるも両手をギュッと握りしめて悲しみに耐えた。
サフィニアを乗せた荷馬車は、森の湖畔を目指して進んで行った――
二人で向かい合わせに座ると、サフィニアは小箱をテーブルに置いた。
「お土産って……一体何かしら?」
するとヘスティアは意外な言葉を口にした。
「中身は私も知らないんです。ジルベール様がご自身で選ばれたので」
「え……?」
サフィニアの目が見開かれた。
(ジルベールが……自分で? どういうことなの……?)
「どうかしましたか? サフィニア様」
ヘスティアが首を傾げる。
「い、いえ。何でもないわ。なら、早速開けてみましょう」
驚きと、言いようのない胸のざわめきを感じながら、サフィニアは小箱の蓋をそっと開けた。中には、銀色に輝く小さなウサギのブローチが収められていた。
その瞳は、まるでサフィニア自身の瞳を映したかのような深い緑色をしている。
「これは……」
言葉が自然と漏れる。
隣でヘスティアが微笑みながら言った。
「何となく、サフィニア様に似てますね。ジルベール様が言ってました、サフィニア様をイメージして買ったって」
「ジルベールが……?」
サフィニアはブローチを手に取り、光にかざした。
小さなウサギは耳をぴんと立て、遠くを見つめているようだった。
その姿に、どこか自分自身を重ねてしまう。
(今まで私に自分からプレゼントをくれたことは無いのに、突然何故……?)
サフィニアは不思議でならなかった。
いつもジルベールはヘスティアばかり優先し、自分は彼にとって空気のような存在でしかなかったのに。
(それが、なぜ今になって――しかも、私をイメージした贈り物を?)
けれど、こちらをじっと見つめるヘスティアを見て思った。
(そうだわ。きっとヘスティアにもプレゼントを買ってあげているのね。それでついでに私にも買ってきてくれたのだわ)
サフィニアは自分の中で、そう結論付けた。それでも最後にジルベールからの自主的なプレゼントを貰えたことは嬉しかった。
「……ありがとう、ジルベール」
誰に聞かせるでもなく、サフィニアは小さく呟いた。
(私はもう明日にはここを出て、二度と二人の前には現れないのに……)
目の前のヘスティアを見ていると、何故か急に悲しい気持ちがこみあげてくる。
けれど、サフィニアは涙を堪えて笑顔で尋ねた。
「今日はどこへ行って来たの?」
「はい! 手芸店巡りをしてきました。色々な刺繍材料や編み物道具を買ったんです。私、編み物も得意なんです。もうすぐ秋になるので、サフィニア様に何かプレゼントさせてください」
「本当? 楽しみにしてるわ」
もう受け取ることはない。けれど、それを告げることはできなかった。
胸の痛みを隠して、サフィニアは礼を述べた。
ヘスティアは嬉しそうに頷きながら、買ってきた材料を並べ始めて説明を始める。
その姿を見ていると、サフィニアの胸にまた切ない気持ちがこみあげてくる。
(ヘスティア。それにジルベール……。どうしてこんなにも、優しくしてくれるの……?)
複雑な思いを抑え込み、サフィニアは笑顔でヘスティアの話を聞いていた――
***
――その日の夜。
サフィニアは最後の準備をしていた。
必要な衣類をキャリーバッグに詰め、ベッドの下に隠す。
ジルベールからもらった銀色のウサギのブローチ――少し迷ったが、彼が初めて自分のために選んだくれた物だ。
その瞳は、サフィニアと同じ緑色をしている。
「これは持って行きましょう。お金に困っても絶対に売らないわ」
サフィニアはブローチを握りしめ、窓から夜空を見上げた。
空には無数の星が輝いている。
「……もう、ここから夜空を見上げることは無いのね……」
サフィニアの呟くような声は……酷く悲し気だった――
***
翌朝4時半――
まだ夜が明けきらない薄暗い空の下、サフィニアは足音を立てないように荷物を持って離宮を出た。
門扉の前には、荷馬車を用意したレオンが待っていた。
「サフィニア様、お待ちしていました」
「ありがとうございます、レオンさん」
「では参りましょうか?」
「はい」
荷馬車に乗り込むと、レオンは馬を走らせた。
遠ざかっていく離宮を見つめながら、サフィニアはぽつりと呟いた。
「……さよなら、ヘスティア。離宮の人たち……そして、ジルベール。皆……大好きでした。……ママ……ごめんなさい」
離宮で過ごした懐かしい日々がサフィニアの胸に次から次へとこみあげてくる。
鼻の奥がツンとなって、目頭が熱くなるも両手をギュッと握りしめて悲しみに耐えた。
サフィニアを乗せた荷馬車は、森の湖畔を目指して進んで行った――
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