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6-43 夕焼けの下で
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(ど、どうしてアドニス様がここにいるの……?)
今までずっと王宮騎士団施設に姿を見せなかったアドニスが、何故今ここにいるのかサフィニアは分からなかった。
驚きと戸惑いが入り混じった表情で見つめる。
「お祭りは楽しめたかい?」
アドニスは穏やかな笑みを浮かべながら、ゆっくりと近づいてきた。
「ご機嫌麗しゅうございます、殿下。まさかこちらにいらっしゃるとは思いもしませんでした」
サフィニアは恐縮しながら挨拶すると、アドニスは少しだけ眉根を寄せた。
「ソフィアさんの帰りを待っていたんだけど……殿下……か。いつものように名前で呼んでもらえないかな?」
「……そ、そんな恐れ多い……」
サフィニアは俯きながら答えた。
距離を保とうとするサフィニアの態度に、アドニスは言葉を重ねる。
「頼むから……そんな距離を空けるような態度は取らないでくれないかな?」
「は、はい……」
顔を上げると、アドニスの顔には寂しげな表情が宿っている。
(え……? どうしてそんな表情を……?)
その理由が分からず、サフィニアは戸惑うも……返事をした。
「分かりました、御命令とあれば……アドニス様と呼ばせていただきます」
「別に命令とかいう訳じゃないんだけどな」
ポツリと小さく呟いたその言葉は、サフィニアの耳に届いた。
けれど、あえて聞こえないふりをした。
……そうしなければならない気がしたからだ。
「それで、私を待っていたということですが……」
「うん、ソフィアさんに謝っておきたくてね」
「謝る? 何のことでしょう?」
「今日、エリーゼがソフィアさんに失礼なことを言っただろう? 彼女の代わりに謝りたくて。本当に……申し訳なかった」
アドニスは頭を下げた。
その言葉に、サフィニアは目を見開く。
「そ、そんな! 殿下に謝っていただくなんて……恐れ多いです。どうぞ顔を上げてください!」
慌てるサフィニアに、アドニスは顔を上げた。
「アドニスだよ」
「え……?」
「殿下じゃなく、アドニス」
「ア……アドニス……様」
するとアドニスの顔に笑顔が浮かび、サフィニアに一歩近づいた。
「あ、あの……?」
戸惑うサフィニアの眼前で止まると、アドニスはポケットから小さな箱を取り出した。
「これ……今日のお詫びに受け取ってくれないかな?」
蓋を開けると、そこには貝を加工したイヤリングが入っていた。
淡い光を放つその装飾は、素朴ながらも上品で、サフィニアの好みのアクセサリーだった。
「これは貝を加工したイヤリングだよ。ソフィアさんに似合うと思って」
「そ、そんな! 受け取れません!」
慌てて首を振ったが、アドニスは引かない。
「いいから貰ってくれないか? これは女性向だから俺が付けるわけにはいかないんだよ」
真剣な表情で妙な台詞を言うアドニスに、サフィニアは思わず笑ってしまった。
「フフ……アドニス様は本当に面白い方ですね」
すると、アドニスはほっとしたように言った。
「良かった……ようやく笑ってくれた」
「え?」
顔を上げると、アドニスは優しい笑顔でサフィニアをじっと見つめている。
「今は忙しくて、こちらに中々顔を出すことが出来ないけど……戻ってきたら、また色々話をしよう?」
「……はい」
つい、頷いてしまうサフィニア。
「良かった、そう言ってもらえて。それじゃ俺はもう行くよ。またね」
アドニスは手を振ると、サフィニアに背を向けて城へ向かって去って行った。
そしてじっとその背中を見つめるサフィニア。
手の中の小箱をそっと握りしめながら、名前を口にする。
「アドニス様……」
ポツリと呟いたその声は、夕暮れの空に溶けていく。
サフィニアの頬は、夕日で赤く染まっていた――
****
その様子を物陰から見つめる影があった。
路地裏の陰に身を潜めていたのはエリーゼ。
サフィニアの姿をじっと見つめるその瞳は、憎悪で燃えていた。
「何よ、あのメイド……」
エリーゼは悔しそうに呟いた。
「男二人を手玉に取るだけじゃ飽き足らず、よりにもよって婚約者候補の私を差し置いて、アドニス様と親し気に話をするなんて……おまけにプレゼントまで受け取るなんて……」
その言葉には、嫉妬と怒りが滲んでいる。
「ただのメイド風情のくせに生意気な……!」
エリーゼは爪を噛んだ。
「本当に……どこまでも邪魔な存在ね……」
その呟きは誰にも届かない。
夕暮れの空は……徐々に闇へと染まり始めていた――
今までずっと王宮騎士団施設に姿を見せなかったアドニスが、何故今ここにいるのかサフィニアは分からなかった。
驚きと戸惑いが入り混じった表情で見つめる。
「お祭りは楽しめたかい?」
アドニスは穏やかな笑みを浮かべながら、ゆっくりと近づいてきた。
「ご機嫌麗しゅうございます、殿下。まさかこちらにいらっしゃるとは思いもしませんでした」
サフィニアは恐縮しながら挨拶すると、アドニスは少しだけ眉根を寄せた。
「ソフィアさんの帰りを待っていたんだけど……殿下……か。いつものように名前で呼んでもらえないかな?」
「……そ、そんな恐れ多い……」
サフィニアは俯きながら答えた。
距離を保とうとするサフィニアの態度に、アドニスは言葉を重ねる。
「頼むから……そんな距離を空けるような態度は取らないでくれないかな?」
「は、はい……」
顔を上げると、アドニスの顔には寂しげな表情が宿っている。
(え……? どうしてそんな表情を……?)
その理由が分からず、サフィニアは戸惑うも……返事をした。
「分かりました、御命令とあれば……アドニス様と呼ばせていただきます」
「別に命令とかいう訳じゃないんだけどな」
ポツリと小さく呟いたその言葉は、サフィニアの耳に届いた。
けれど、あえて聞こえないふりをした。
……そうしなければならない気がしたからだ。
「それで、私を待っていたということですが……」
「うん、ソフィアさんに謝っておきたくてね」
「謝る? 何のことでしょう?」
「今日、エリーゼがソフィアさんに失礼なことを言っただろう? 彼女の代わりに謝りたくて。本当に……申し訳なかった」
アドニスは頭を下げた。
その言葉に、サフィニアは目を見開く。
「そ、そんな! 殿下に謝っていただくなんて……恐れ多いです。どうぞ顔を上げてください!」
慌てるサフィニアに、アドニスは顔を上げた。
「アドニスだよ」
「え……?」
「殿下じゃなく、アドニス」
「ア……アドニス……様」
するとアドニスの顔に笑顔が浮かび、サフィニアに一歩近づいた。
「あ、あの……?」
戸惑うサフィニアの眼前で止まると、アドニスはポケットから小さな箱を取り出した。
「これ……今日のお詫びに受け取ってくれないかな?」
蓋を開けると、そこには貝を加工したイヤリングが入っていた。
淡い光を放つその装飾は、素朴ながらも上品で、サフィニアの好みのアクセサリーだった。
「これは貝を加工したイヤリングだよ。ソフィアさんに似合うと思って」
「そ、そんな! 受け取れません!」
慌てて首を振ったが、アドニスは引かない。
「いいから貰ってくれないか? これは女性向だから俺が付けるわけにはいかないんだよ」
真剣な表情で妙な台詞を言うアドニスに、サフィニアは思わず笑ってしまった。
「フフ……アドニス様は本当に面白い方ですね」
すると、アドニスはほっとしたように言った。
「良かった……ようやく笑ってくれた」
「え?」
顔を上げると、アドニスは優しい笑顔でサフィニアをじっと見つめている。
「今は忙しくて、こちらに中々顔を出すことが出来ないけど……戻ってきたら、また色々話をしよう?」
「……はい」
つい、頷いてしまうサフィニア。
「良かった、そう言ってもらえて。それじゃ俺はもう行くよ。またね」
アドニスは手を振ると、サフィニアに背を向けて城へ向かって去って行った。
そしてじっとその背中を見つめるサフィニア。
手の中の小箱をそっと握りしめながら、名前を口にする。
「アドニス様……」
ポツリと呟いたその声は、夕暮れの空に溶けていく。
サフィニアの頬は、夕日で赤く染まっていた――
****
その様子を物陰から見つめる影があった。
路地裏の陰に身を潜めていたのはエリーゼ。
サフィニアの姿をじっと見つめるその瞳は、憎悪で燃えていた。
「何よ、あのメイド……」
エリーゼは悔しそうに呟いた。
「男二人を手玉に取るだけじゃ飽き足らず、よりにもよって婚約者候補の私を差し置いて、アドニス様と親し気に話をするなんて……おまけにプレゼントまで受け取るなんて……」
その言葉には、嫉妬と怒りが滲んでいる。
「ただのメイド風情のくせに生意気な……!」
エリーゼは爪を噛んだ。
「本当に……どこまでも邪魔な存在ね……」
その呟きは誰にも届かない。
夕暮れの空は……徐々に闇へと染まり始めていた――
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