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12-13 断罪の幕開け 2
「サフィニア王女ですって……?」
「い、一体それはどういう意味なのだ……?」
セイラと公爵は茫然とし、
ただ口を開けたまま固まっていた。
ラファエルだけは無言でセレウスを見つめ、
次にサフィニアへ視線を移す。
(銀色の髪……そうか。
やはり特別な血筋だったというわけか。
どうりでな……)
この国では銀色の髪は極めて珍しい。
ラファエルは以前から、
サフィニアの出自に何か秘密があるのではと
薄々感じていたのだ。
セレウスは鋭い声で続ける。
「言葉通りだ。
我は海洋国家『オケアリオン』王国の先王、
セレウス・アクアレイス」
その名が響いた瞬間、
謁見室の空気がさらに張り詰める。
「そして……我が妹、ナディア・アクアレイスが
産んだ娘こそが、ローズだ」
「なっ……!」
公爵の顔が青ざめる。
セレウスは公爵を鋭い眼差しで
射抜く。
「お前は王家の血を引くローズを、
まだ未成年だったにも関わらず凌辱し、
身籠らせた!
それだけではない。望まぬ形で
子を抱えることになったローズを、
誰の助けもない離宮へ追いやるとは……
恥を知るがいい! この鬼畜め!」
公爵は震えながら叫んだ。
「お、おやめください!!
どうかそれ以上は言わないでください!」
自分の過去の欲にまみれた悪行を
公の場で突きつけられた公爵。
怒りと羞恥で顔を真っ赤にして抗議する。
「……っ!」
耐え切れずにサフィニアは俯く。
「……最っ低ね……」
「チッ」
セイラは軽蔑の眼差しを父親に向け、
ラファエルは短く舌打ちした。
セレウスの話はまだ続く。
「さらにお前は、ローズを
たった一人で出産させた。
世話人を寄こすことすらせず……
その負担が、ローズの命を縮めたのだ」
セレウスの冷たい声が謁見室に響く。
「責任はエストマン、全てお前にある!
あまつさえローズが亡くなった後も、
自分の娘であるサフィニアを冷遇し続けた。
その罪は非常に重い!」
「……」
公爵は何も言い返すこともできず、
唇を噛みしめて俯いた。
セレウスは一歩前へ出る。
「よって、お前には『永久に消え去る罰』を与える」
その言葉に
公爵は悲痛な叫び声をあげた。
「ま、まさか……しょ、処刑ですか!?」
「「!!」」
処刑という言葉に、
セイラとラファエルの顔が一気に強張る。
サフィニアの肩がピクリと跳ね、
アドニスがそっと抱き寄せた。
セレウスは冷たく笑う。
「処刑だと?
お前ごときに、そんな生ぬるい罰を
下すと思うか」
「だ、だったら……何だというのです!?
この世に処刑以上に恐ろしい罰が
あるというのですか!」
「あるとも」
ゆっくり頷くセレウス。
「お前には……
この世界から忘れられる『忘却牢獄』が
ふさわしい」
「わ、忘却牢獄ですって!?」
公爵の顔が恐怖で歪む。
「忘却牢獄」とは、この世界に存在する
牢獄の中で、最も忌まわしい刑罰のひとつ。
牢獄といっても、
そこに部屋や鉄格子があるわけではない。
地面に深く掘られた穴の牢獄。
小さな穴から囚人を落とし、
蓋を閉めれば、それで刑は終わる。
一生そこから出ることは出来ない。
……死んだ後も。
そこで朽ち果て、土に還るだけ。
中は完全な暗闇で、
昼夜の区別すらつかない。
声を上げても誰にも届かず、
助けを求めても返事をする者はいない。
看守は1日2度、水と食料を
上から落として去っていく。
囚人は徐々に発狂していき、
自分が生きているのか死んでいるのかすら
分からなくなっていく。
やがて、
世界から忘れられ、存在ごと消えていく。
だから「忘却牢獄」と呼ばれる。
「そ、そんな……!」
公爵の声が恐怖で震えた。
「いや……いやよ……!
私まで、そんなところに
入れられてしまうの!?」
セイラは後ずさり、顔を真っ青にする。
ラファエルは全身を震わせながら呟いた。
「……忘却牢獄……正気の沙汰じゃない……」
公爵はついに耐えきれず、
床に手をつき、涙を流しながら絶叫した。
「お願いです!
忘却牢獄だけは……どうかそれだけは
おやめください!
他の罰ならどんなことでも受け入れます!
どうぞ……どうぞお慈悲を!!」
セレウスは冷たい声で問いかける。
「……ナディアの娘、ローズもお前に
泣きながら必死に訴えたのではないか?」
「!」
公爵の目が大きく見開かれる。
その瞬間、かつての記憶――
ローズが泣きながら必死に懇願する姿が
脳裏をよぎる。
「どうかやめてください、
助けてください、と必死に訴えたのではないか?
だが……お前は一切聞き入れずに自分の欲を
満たしたのだろう?」
「!」
サフィニアの目に涙が浮かび、両手を口で覆う。
「あ……」
公爵は何も言い返せず、
その場に膝から崩れ落ちた。
そして……。
「うあああああああー!!」
床に額を擦り付けるように
泣き叫んだ――
「い、一体それはどういう意味なのだ……?」
セイラと公爵は茫然とし、
ただ口を開けたまま固まっていた。
ラファエルだけは無言でセレウスを見つめ、
次にサフィニアへ視線を移す。
(銀色の髪……そうか。
やはり特別な血筋だったというわけか。
どうりでな……)
この国では銀色の髪は極めて珍しい。
ラファエルは以前から、
サフィニアの出自に何か秘密があるのではと
薄々感じていたのだ。
セレウスは鋭い声で続ける。
「言葉通りだ。
我は海洋国家『オケアリオン』王国の先王、
セレウス・アクアレイス」
その名が響いた瞬間、
謁見室の空気がさらに張り詰める。
「そして……我が妹、ナディア・アクアレイスが
産んだ娘こそが、ローズだ」
「なっ……!」
公爵の顔が青ざめる。
セレウスは公爵を鋭い眼差しで
射抜く。
「お前は王家の血を引くローズを、
まだ未成年だったにも関わらず凌辱し、
身籠らせた!
それだけではない。望まぬ形で
子を抱えることになったローズを、
誰の助けもない離宮へ追いやるとは……
恥を知るがいい! この鬼畜め!」
公爵は震えながら叫んだ。
「お、おやめください!!
どうかそれ以上は言わないでください!」
自分の過去の欲にまみれた悪行を
公の場で突きつけられた公爵。
怒りと羞恥で顔を真っ赤にして抗議する。
「……っ!」
耐え切れずにサフィニアは俯く。
「……最っ低ね……」
「チッ」
セイラは軽蔑の眼差しを父親に向け、
ラファエルは短く舌打ちした。
セレウスの話はまだ続く。
「さらにお前は、ローズを
たった一人で出産させた。
世話人を寄こすことすらせず……
その負担が、ローズの命を縮めたのだ」
セレウスの冷たい声が謁見室に響く。
「責任はエストマン、全てお前にある!
あまつさえローズが亡くなった後も、
自分の娘であるサフィニアを冷遇し続けた。
その罪は非常に重い!」
「……」
公爵は何も言い返すこともできず、
唇を噛みしめて俯いた。
セレウスは一歩前へ出る。
「よって、お前には『永久に消え去る罰』を与える」
その言葉に
公爵は悲痛な叫び声をあげた。
「ま、まさか……しょ、処刑ですか!?」
「「!!」」
処刑という言葉に、
セイラとラファエルの顔が一気に強張る。
サフィニアの肩がピクリと跳ね、
アドニスがそっと抱き寄せた。
セレウスは冷たく笑う。
「処刑だと?
お前ごときに、そんな生ぬるい罰を
下すと思うか」
「だ、だったら……何だというのです!?
この世に処刑以上に恐ろしい罰が
あるというのですか!」
「あるとも」
ゆっくり頷くセレウス。
「お前には……
この世界から忘れられる『忘却牢獄』が
ふさわしい」
「わ、忘却牢獄ですって!?」
公爵の顔が恐怖で歪む。
「忘却牢獄」とは、この世界に存在する
牢獄の中で、最も忌まわしい刑罰のひとつ。
牢獄といっても、
そこに部屋や鉄格子があるわけではない。
地面に深く掘られた穴の牢獄。
小さな穴から囚人を落とし、
蓋を閉めれば、それで刑は終わる。
一生そこから出ることは出来ない。
……死んだ後も。
そこで朽ち果て、土に還るだけ。
中は完全な暗闇で、
昼夜の区別すらつかない。
声を上げても誰にも届かず、
助けを求めても返事をする者はいない。
看守は1日2度、水と食料を
上から落として去っていく。
囚人は徐々に発狂していき、
自分が生きているのか死んでいるのかすら
分からなくなっていく。
やがて、
世界から忘れられ、存在ごと消えていく。
だから「忘却牢獄」と呼ばれる。
「そ、そんな……!」
公爵の声が恐怖で震えた。
「いや……いやよ……!
私まで、そんなところに
入れられてしまうの!?」
セイラは後ずさり、顔を真っ青にする。
ラファエルは全身を震わせながら呟いた。
「……忘却牢獄……正気の沙汰じゃない……」
公爵はついに耐えきれず、
床に手をつき、涙を流しながら絶叫した。
「お願いです!
忘却牢獄だけは……どうかそれだけは
おやめください!
他の罰ならどんなことでも受け入れます!
どうぞ……どうぞお慈悲を!!」
セレウスは冷たい声で問いかける。
「……ナディアの娘、ローズもお前に
泣きながら必死に訴えたのではないか?」
「!」
公爵の目が大きく見開かれる。
その瞬間、かつての記憶――
ローズが泣きながら必死に懇願する姿が
脳裏をよぎる。
「どうかやめてください、
助けてください、と必死に訴えたのではないか?
だが……お前は一切聞き入れずに自分の欲を
満たしたのだろう?」
「!」
サフィニアの目に涙が浮かび、両手を口で覆う。
「あ……」
公爵は何も言い返せず、
その場に膝から崩れ落ちた。
そして……。
「うあああああああー!!」
床に額を擦り付けるように
泣き叫んだ――
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