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第1章 26 2人で食べる夕食
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「はい、お待たせ~」
たっくんのテーブルの前に出来上がったばかりのどんぶりに入った雑炊を置いた。
「うわぁ~美味しそう!」
目を見開いて喜ぶたっくん。
「フフ…お野菜たっぷり、卵増し増しだからね~。さ、食べよ」
「うん!」
「「いただきまーす!」」
そして私とたっくんは2人で熱々の雑炊を食べながら、学校の話をした。
たっくんはやはり、拓也さんの言う通りにすぐ友達が出来たらしい。2人共虫が大好きですぐに話が合って親しくなれた事を嬉しそうに話してくれた。
「へ~…その話、本当だったんだね…てっきり作り話かと思っていたけど…」
「ううん、そんな事無いよ!それだけじゃないんだよ?お兄ちゃんてすごいんだよ。本当に予言出来るんだから」
確かに、拓也さんは何所か不思議な人だ。
たっくんのお父さんが絶対今夜は帰らないと言えば、本当に帰って来ないし、それに初めて会った時も電車の事故の話を駅の構内放送が始まる前に当ててしまったし…。
「…あの人、何者なんだろう…?」
たっくんの前だと言うのに。ポツリと口にしてしまった。
「お姉ちゃん?何か言った?」
「ううん、何でも無い」
そして私とたっくんはその後も会話をしながら雑炊を食べた―。
「はい、たっくん。これ…お姉ちゃんからの進級祝いだよ?」
食後…たっくんに青い不織布の巾着に入れられたプレゼントを手渡した。
「え…?進級祝い…?僕に…?」
「うん、そうだよ」
「開けて見ても…いい?」
恐る恐る尋ねて来た。
「勿論だよ、その為に買って来たんだから」
たっくんは袋からダブルファスナーのビニール製の黒いペンケースを取り出すと、目を見開いた。
「す、すごい…こんな格好いいペンケース…本当に貰っていいの?」
「うん。気にいってくれたかなぁ?」
「うん!すごく気に入ったよ。僕…一生このペンケース、大事にするね?」
「フフフ…一生、だなんて大げさだよ?でも良かった、気に入ってくれて」
そしてたっくんが笑顔になったところで…私は本題に入ることにした。
「ねぇ…たっくん。今日…家で何があったの…?」
するとたっくんの肩がビクリと跳ねた。
「お父さんに…暴力振るわれたんでしょう?」
「う、うん…」
たっくんは震えている。
「いいよ、無理には聞かないから…でも、本当に危険だと思ったら…お姉ちゃん、その時は通報するからね?」
「え…?」
たっくんは目を見開いて私を見た。
「だって、手遅れになったら大変だもの。お姉ちゃん…たっくんが心配なのよ」
「で、でも…そしたら、お姉ちゃんまで…お、お父さんに酷い目に遭わされるよ…?」
「大丈夫、お姉ちゃんは大人だから自分の身は自分で守れるよ」
…私は嘘をついた。たっくんを安心させる為に。そうでもしないとたっくんは私の助けを拒みそうだったから。
時計を見ると、時刻は午後9時を過ぎていた。
「…どうする?たっくんさえ良かったら泊めてあげるよ?」
「ううん、大丈夫。お父さん帰って来るからもう戻るよ」
たっくんはペンケースを持つと立ち上がった。
「本当に…いいの?」
私は心配だったから、本当は家に帰したくは無かった。
「うん、平気」
玄関へ向かうたっくんの後を私も着いて行った。そしてたっくんは靴を履くと、私に笑顔を見せた。
「今日は本当にありがとう、またね。お姉ちゃん」
「うん、またね、たっくん」
たっくんは扉を開けて部屋を出て行った。
そして…
その日の夜、たっくんの父親は帰って来ることは無かった―。
たっくんのテーブルの前に出来上がったばかりのどんぶりに入った雑炊を置いた。
「うわぁ~美味しそう!」
目を見開いて喜ぶたっくん。
「フフ…お野菜たっぷり、卵増し増しだからね~。さ、食べよ」
「うん!」
「「いただきまーす!」」
そして私とたっくんは2人で熱々の雑炊を食べながら、学校の話をした。
たっくんはやはり、拓也さんの言う通りにすぐ友達が出来たらしい。2人共虫が大好きですぐに話が合って親しくなれた事を嬉しそうに話してくれた。
「へ~…その話、本当だったんだね…てっきり作り話かと思っていたけど…」
「ううん、そんな事無いよ!それだけじゃないんだよ?お兄ちゃんてすごいんだよ。本当に予言出来るんだから」
確かに、拓也さんは何所か不思議な人だ。
たっくんのお父さんが絶対今夜は帰らないと言えば、本当に帰って来ないし、それに初めて会った時も電車の事故の話を駅の構内放送が始まる前に当ててしまったし…。
「…あの人、何者なんだろう…?」
たっくんの前だと言うのに。ポツリと口にしてしまった。
「お姉ちゃん?何か言った?」
「ううん、何でも無い」
そして私とたっくんはその後も会話をしながら雑炊を食べた―。
「はい、たっくん。これ…お姉ちゃんからの進級祝いだよ?」
食後…たっくんに青い不織布の巾着に入れられたプレゼントを手渡した。
「え…?進級祝い…?僕に…?」
「うん、そうだよ」
「開けて見ても…いい?」
恐る恐る尋ねて来た。
「勿論だよ、その為に買って来たんだから」
たっくんは袋からダブルファスナーのビニール製の黒いペンケースを取り出すと、目を見開いた。
「す、すごい…こんな格好いいペンケース…本当に貰っていいの?」
「うん。気にいってくれたかなぁ?」
「うん!すごく気に入ったよ。僕…一生このペンケース、大事にするね?」
「フフフ…一生、だなんて大げさだよ?でも良かった、気に入ってくれて」
そしてたっくんが笑顔になったところで…私は本題に入ることにした。
「ねぇ…たっくん。今日…家で何があったの…?」
するとたっくんの肩がビクリと跳ねた。
「お父さんに…暴力振るわれたんでしょう?」
「う、うん…」
たっくんは震えている。
「いいよ、無理には聞かないから…でも、本当に危険だと思ったら…お姉ちゃん、その時は通報するからね?」
「え…?」
たっくんは目を見開いて私を見た。
「だって、手遅れになったら大変だもの。お姉ちゃん…たっくんが心配なのよ」
「で、でも…そしたら、お姉ちゃんまで…お、お父さんに酷い目に遭わされるよ…?」
「大丈夫、お姉ちゃんは大人だから自分の身は自分で守れるよ」
…私は嘘をついた。たっくんを安心させる為に。そうでもしないとたっくんは私の助けを拒みそうだったから。
時計を見ると、時刻は午後9時を過ぎていた。
「…どうする?たっくんさえ良かったら泊めてあげるよ?」
「ううん、大丈夫。お父さん帰って来るからもう戻るよ」
たっくんはペンケースを持つと立ち上がった。
「本当に…いいの?」
私は心配だったから、本当は家に帰したくは無かった。
「うん、平気」
玄関へ向かうたっくんの後を私も着いて行った。そしてたっくんは靴を履くと、私に笑顔を見せた。
「今日は本当にありがとう、またね。お姉ちゃん」
「うん、またね、たっくん」
たっくんは扉を開けて部屋を出て行った。
そして…
その日の夜、たっくんの父親は帰って来ることは無かった―。
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