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第1章 58 次、会える日は…
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私と拓也さんは一緒に本屋さんへ行って昆虫図鑑を買ってラッピングしてもらった。
その後、2人でカフェに入ってボックス席に向かい合わせで座ってコーヒーを飲んでいると拓也さんがポツリと言った。
「彩花…このコーヒーを飲んだら…俺、もう行かないといけないんだ。興信所の仕事が入っていて…さ。泊まり込みなんだ」
「え…?」
そんな…今夜も一緒にいられると思ったのに…。
思わずテーブルの上で組んでいた手に力がこもる。
「そ、そっか~…でも用事があるなら仕方ないよね?それで次…」
「次に会いに来れるのは6月9日になる」
拓也さんは私が答える前に言った。
「6月9日…たっくんの誕生日の日…」
と言うことは…次に会えるのは後1週間後…1週間も拓也さんと連絡が取れなくなる…。
「彩花?大丈夫か…?」
拓也さんが心配そうに尋ねてきた。
「え?な、何が?」
「いや…顔色が悪いから心配になって…」
「大丈夫だよ。それじゃ次に会うのは来週だね?何処で待ち合わせする?」
「それなんだけど…悪いけど彩花…前日に卓也を…アパートに泊めてやってくれないか?それで…9時に駅前で待ち合わせをしよう」
「うん、いいよ。たっくんを泊めてあげればいいんだね?」
そうだ…たっくんがいてくれれば寂しい思いをしなくてもすむものね…。
「すまない…彩花。本当はもっと一緒にいたいんけど…」
拓也さんは申し訳無さげに頭を下げてきた。
「気にしないで?誰にでも…事情の1つや2つあるもの」
「その代わり…彩花。もし…無事に6月9日を…られたら…その時は、多分ずっと…側にいられるから…」
「え…?」
肝心な部分を聞き逃してしまったけれども、拓也さんがずっと側にいられるという話を聞いてしまえば、もうそんなことは些細な問題では無かった。
「ほ、本当に…?」
尋ねる声が震えてしまう。
「ああ…本当だよ」
優しい声で拓也さんは答え…テーブルの上に置いた私の手に自分の大きな手を重ねてきた。
「あ、ありがとう…嬉しい…」
胸に熱いものがこみ上げてくる。
「そんなに喜んでもらえると…俺も嬉しいよ」
そして拓也さんは笑った―。
****
それから30分後―
私と拓也さんはカフェの前で別れた。拓也さんはこれから興信所の仕事があるからと言って、私とは反対方向に去って行った。
「拓也さん…」
小さくなっていく拓也さんの背中を見つめながら、私は彼の名をそっと呟いた。
「…私も帰ろう」
そして踵を返すと、アパートへ向かって歩き始めながら、ふと思った。
そうだ、明日…たっくんとまた会えないかな?
ショルダーバッグからスマホを取り出すと、電話番号を呼び出して…スマホをタップした―。
その後、2人でカフェに入ってボックス席に向かい合わせで座ってコーヒーを飲んでいると拓也さんがポツリと言った。
「彩花…このコーヒーを飲んだら…俺、もう行かないといけないんだ。興信所の仕事が入っていて…さ。泊まり込みなんだ」
「え…?」
そんな…今夜も一緒にいられると思ったのに…。
思わずテーブルの上で組んでいた手に力がこもる。
「そ、そっか~…でも用事があるなら仕方ないよね?それで次…」
「次に会いに来れるのは6月9日になる」
拓也さんは私が答える前に言った。
「6月9日…たっくんの誕生日の日…」
と言うことは…次に会えるのは後1週間後…1週間も拓也さんと連絡が取れなくなる…。
「彩花?大丈夫か…?」
拓也さんが心配そうに尋ねてきた。
「え?な、何が?」
「いや…顔色が悪いから心配になって…」
「大丈夫だよ。それじゃ次に会うのは来週だね?何処で待ち合わせする?」
「それなんだけど…悪いけど彩花…前日に卓也を…アパートに泊めてやってくれないか?それで…9時に駅前で待ち合わせをしよう」
「うん、いいよ。たっくんを泊めてあげればいいんだね?」
そうだ…たっくんがいてくれれば寂しい思いをしなくてもすむものね…。
「すまない…彩花。本当はもっと一緒にいたいんけど…」
拓也さんは申し訳無さげに頭を下げてきた。
「気にしないで?誰にでも…事情の1つや2つあるもの」
「その代わり…彩花。もし…無事に6月9日を…られたら…その時は、多分ずっと…側にいられるから…」
「え…?」
肝心な部分を聞き逃してしまったけれども、拓也さんがずっと側にいられるという話を聞いてしまえば、もうそんなことは些細な問題では無かった。
「ほ、本当に…?」
尋ねる声が震えてしまう。
「ああ…本当だよ」
優しい声で拓也さんは答え…テーブルの上に置いた私の手に自分の大きな手を重ねてきた。
「あ、ありがとう…嬉しい…」
胸に熱いものがこみ上げてくる。
「そんなに喜んでもらえると…俺も嬉しいよ」
そして拓也さんは笑った―。
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それから30分後―
私と拓也さんはカフェの前で別れた。拓也さんはこれから興信所の仕事があるからと言って、私とは反対方向に去って行った。
「拓也さん…」
小さくなっていく拓也さんの背中を見つめながら、私は彼の名をそっと呟いた。
「…私も帰ろう」
そして踵を返すと、アパートへ向かって歩き始めながら、ふと思った。
そうだ、明日…たっくんとまた会えないかな?
ショルダーバッグからスマホを取り出すと、電話番号を呼び出して…スマホをタップした―。
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