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第2章 125 身辺整理
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午前6時半――
狭いパイプベッドで俺は目が覚めた。そして隣で眠る愛しい彩花。
「彩花……」
腕の中で眠る彩花の髪をそっと撫でる。
「う……ん……」
彩花は少しだけ身じろぎするものの、目を覚ます気配は無い。
彼女を起こさないように、そっとベッドから起き上がると床に投げ捨ててあった自分の服を拾い上げて身に着けた。
「ごめん、彩花。もう行くよ」
眠っている彩花にキスすると、俺はアパートを後にした。
部屋を出ると、ポツリと呟く。
「一度……元の時代に戻ろう」
今回のタイムトラベルで俺は彩花の身代わりになって死ぬ覚悟を固めた。
その前にやるべきことを済ませておかないと――。
それから1時間後……。
俺は『時巡神社』へとやってきていた。
「よし、戻るか」
そして、磁場発生装置を起動させると、目を閉じた――。
****
カァ……カァ……
頭上でカラスの鳴き声が聞こえてくる。
目を開けて頭上を見上げると、少しだけオレンジ色がかった空が見える。
元の世界に戻って来たのだ。
「よし、それじゃ身辺整理する為にマンションへ帰るか。宮田教授には明日、会えばいいしな」
そして俺は自分のマンションへ足を向けた――。
「何か、随分久しぶりに帰って来た気がするな」
マンションの鍵を開けて、部屋に入ると思わず口に出してしまった。
実際はここの世界はほとんど時間が経過していないのに……。
「早速荷造り始めるか」
靴を脱いで部屋に上がり込むと、早速俺は身辺整理を始めた。
「ふぅ……それにしても、たった3年しか暮らしていなくても物はたまるもんだな。ん……?これは何だっけ?」
収納棚の一番奥からB5サイズの古びたノートのようなものが現れた。
手に取ってページを開くと、現れたのは写真だった。
それも彩花と一緒に映っている。
「こ、これは……」
写真の中の俺は15年前の俺だ。
彩花と一緒に遊園地へ行った時の写真だ。2人とも、幸せそうに笑っている。
これは彩花が自撮りをして撮影した写真だ。他にも俺が弁当を食べてたり、乗り物に乗って笑っている写真もあった。
「覚えている……。楽しかったな……この頃は……」
生まれて初めて行った遊園地。
彩花と一緒に色々な乗り物に乗った。お昼は彼女が手作りしてくれたお弁当。
『外でお弁当を食べるのって何だか新鮮でいいでしょう?』
彩花はそう言って笑っていたけど、今なら分かる。本当の理由は別にあると言うことに。
なけなしのお金をはたいて、俺を遊園地に連れて来てくれた彩花。かなり経済的に苦しかったのだろう。
そこで、せめてお昼代だけでも浮かそうとして彩花は朝早くに起きて弁当を作って来てくれたのだ。
「そうだ……。俺は言葉に出来ない位……彩花に恩義があるんだ。それに、何よりもこの世で一番大切な存在……」
そんな彼女の為なら……俺が犠牲になることで、6月9日の死のループから彼女を救うことが出来るのなら、喜んで俺は自分の身を捧げよう。
「彩花……絶対にお前を救ってやる……」
決意を新たに、その日深夜近くまで俺は身辺整理を続けた――。
狭いパイプベッドで俺は目が覚めた。そして隣で眠る愛しい彩花。
「彩花……」
腕の中で眠る彩花の髪をそっと撫でる。
「う……ん……」
彩花は少しだけ身じろぎするものの、目を覚ます気配は無い。
彼女を起こさないように、そっとベッドから起き上がると床に投げ捨ててあった自分の服を拾い上げて身に着けた。
「ごめん、彩花。もう行くよ」
眠っている彩花にキスすると、俺はアパートを後にした。
部屋を出ると、ポツリと呟く。
「一度……元の時代に戻ろう」
今回のタイムトラベルで俺は彩花の身代わりになって死ぬ覚悟を固めた。
その前にやるべきことを済ませておかないと――。
それから1時間後……。
俺は『時巡神社』へとやってきていた。
「よし、戻るか」
そして、磁場発生装置を起動させると、目を閉じた――。
****
カァ……カァ……
頭上でカラスの鳴き声が聞こえてくる。
目を開けて頭上を見上げると、少しだけオレンジ色がかった空が見える。
元の世界に戻って来たのだ。
「よし、それじゃ身辺整理する為にマンションへ帰るか。宮田教授には明日、会えばいいしな」
そして俺は自分のマンションへ足を向けた――。
「何か、随分久しぶりに帰って来た気がするな」
マンションの鍵を開けて、部屋に入ると思わず口に出してしまった。
実際はここの世界はほとんど時間が経過していないのに……。
「早速荷造り始めるか」
靴を脱いで部屋に上がり込むと、早速俺は身辺整理を始めた。
「ふぅ……それにしても、たった3年しか暮らしていなくても物はたまるもんだな。ん……?これは何だっけ?」
収納棚の一番奥からB5サイズの古びたノートのようなものが現れた。
手に取ってページを開くと、現れたのは写真だった。
それも彩花と一緒に映っている。
「こ、これは……」
写真の中の俺は15年前の俺だ。
彩花と一緒に遊園地へ行った時の写真だ。2人とも、幸せそうに笑っている。
これは彩花が自撮りをして撮影した写真だ。他にも俺が弁当を食べてたり、乗り物に乗って笑っている写真もあった。
「覚えている……。楽しかったな……この頃は……」
生まれて初めて行った遊園地。
彩花と一緒に色々な乗り物に乗った。お昼は彼女が手作りしてくれたお弁当。
『外でお弁当を食べるのって何だか新鮮でいいでしょう?』
彩花はそう言って笑っていたけど、今なら分かる。本当の理由は別にあると言うことに。
なけなしのお金をはたいて、俺を遊園地に連れて来てくれた彩花。かなり経済的に苦しかったのだろう。
そこで、せめてお昼代だけでも浮かそうとして彩花は朝早くに起きて弁当を作って来てくれたのだ。
「そうだ……。俺は言葉に出来ない位……彩花に恩義があるんだ。それに、何よりもこの世で一番大切な存在……」
そんな彼女の為なら……俺が犠牲になることで、6月9日の死のループから彼女を救うことが出来るのなら、喜んで俺は自分の身を捧げよう。
「彩花……絶対にお前を救ってやる……」
決意を新たに、その日深夜近くまで俺は身辺整理を続けた――。
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