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9-3 スティーブの愚痴
「…」
執務室に戻っても、エルウィンは暫く無言だった。
右手で頬杖を付き、膝を組んでじっと何処か遠くを見つめている。
「…エルウィン様。いかがされましたか?」
とうとう耐えきれなくなったシュミットがエルウィンに声を掛けた。
「…別に」
エルウィンは返事をするも、その様子は見るからに不機嫌だった。
「…どうして…」
ポツリとエルウィンは呟く。
「え?何かおっしゃりましたか?」
「いや、何でも無い…。ところでシュミット」
「はい」
「どうだ?久しぶりに地下鍛錬場で手合わせしないか?」
「そうですね。やりましょうか?」
「ああ、なら行くか」
エルウィンは傍らの剣を掴むと立ち上がった。
「ええ、行きましょう」
シュミットも笑みを浮かべて立ち上がり、2人は連れ立って執務室を後にした―。
****
その頃―
ダリウスは粉挽きの仕事をしていた。臼を回し、粉を挽きながら何度目かのため息をついたその時―。
「よぉ、随分落ち込んでいるようだな?」
いきなり背後から声を掛けれた。
「!」
慌てて振り向くと、そこに立っていたのはスティーブだった。
「…何故、貴方がここにいるんです?」
ダリウスは不機嫌そうな表情を隠すこともなくダリウスを見上げた。
「ああ、それはな…今日は俺がここの作業場で見張りをする担当だからな」
スティーブはニヤリと笑みを浮かべる。
「見張り…ですか」
「そうだ。未だにランベール様を殺害した人物は見つからない。また同じ事件が起きては大変だからな」
「…もう起きるはずは無いのに…」
ダリウスはポツリと呟いた。
「うん?何だ?お前…今何か言ったか?」
ダリウスの呟きはあまりに小さく、スティーブの耳には入って来なかった。
「いえ、何でもありません。…それにしても珍しいことがあるものですね。貴方から俺に声を掛けてくるとは」
石臼を回しながらダリウスは尋ねた。
「ああ。お前のお気に入りのアリアドネが城に上がって、さぞかし気落ちしているんじゃないかと思って声を掛けてみたのさ」
「…随分と悪趣味ですね」
まるで睨みつけるかのような視線をダリウスは向けた。
「何とでも好きなように言えばいい」
「…それで?アリアドネは元気にしているのですか?」
スティーブに文句を言いつつも、やはりダリウスはアリアドネのことが気がかりだった。
「…ああ、元気…そうだったな」
スティーブは腕組みすると、伏し目がちに答えた。
その様子に違和感を感じたダリウスはスティーブに尋ねた。
「何だか様子がおかしいですね…。ひょっとすると貴方も城に上がったアリアドネとまともに会話すらしていないのではありませんか?」
「な、何故そう思うっ?!」
「別に…ただの勘ですよ。でもその様子だと…やはりそのようですね。逆にアリアドネがメイドになってからのほうが彼女とあまり顔を合わせてもいないのでは?」
「…」
スティーブはダリウスの言葉に黙ってしまった。
「成程…図星、ということですね」
何処か小馬鹿にしたかのようにダリウスはクスリと笑った。
「う、うるさいっ!仕方ないだろう?!アリアドネはランベール様の2人の子供達の専属メイドに決まった途端…オズワルドの腹心である男が護衛騎士についてしまって、迂闊に近づけなくなってしまったんだからなっ!」
スティーブは吐き捨てるように言うと踵を返し、持ち場へと戻って行った。
「オズワルドだって…?まさか…」
その後姿を見届けながらダリウスは呟いた―。
執務室に戻っても、エルウィンは暫く無言だった。
右手で頬杖を付き、膝を組んでじっと何処か遠くを見つめている。
「…エルウィン様。いかがされましたか?」
とうとう耐えきれなくなったシュミットがエルウィンに声を掛けた。
「…別に」
エルウィンは返事をするも、その様子は見るからに不機嫌だった。
「…どうして…」
ポツリとエルウィンは呟く。
「え?何かおっしゃりましたか?」
「いや、何でも無い…。ところでシュミット」
「はい」
「どうだ?久しぶりに地下鍛錬場で手合わせしないか?」
「そうですね。やりましょうか?」
「ああ、なら行くか」
エルウィンは傍らの剣を掴むと立ち上がった。
「ええ、行きましょう」
シュミットも笑みを浮かべて立ち上がり、2人は連れ立って執務室を後にした―。
****
その頃―
ダリウスは粉挽きの仕事をしていた。臼を回し、粉を挽きながら何度目かのため息をついたその時―。
「よぉ、随分落ち込んでいるようだな?」
いきなり背後から声を掛けれた。
「!」
慌てて振り向くと、そこに立っていたのはスティーブだった。
「…何故、貴方がここにいるんです?」
ダリウスは不機嫌そうな表情を隠すこともなくダリウスを見上げた。
「ああ、それはな…今日は俺がここの作業場で見張りをする担当だからな」
スティーブはニヤリと笑みを浮かべる。
「見張り…ですか」
「そうだ。未だにランベール様を殺害した人物は見つからない。また同じ事件が起きては大変だからな」
「…もう起きるはずは無いのに…」
ダリウスはポツリと呟いた。
「うん?何だ?お前…今何か言ったか?」
ダリウスの呟きはあまりに小さく、スティーブの耳には入って来なかった。
「いえ、何でもありません。…それにしても珍しいことがあるものですね。貴方から俺に声を掛けてくるとは」
石臼を回しながらダリウスは尋ねた。
「ああ。お前のお気に入りのアリアドネが城に上がって、さぞかし気落ちしているんじゃないかと思って声を掛けてみたのさ」
「…随分と悪趣味ですね」
まるで睨みつけるかのような視線をダリウスは向けた。
「何とでも好きなように言えばいい」
「…それで?アリアドネは元気にしているのですか?」
スティーブに文句を言いつつも、やはりダリウスはアリアドネのことが気がかりだった。
「…ああ、元気…そうだったな」
スティーブは腕組みすると、伏し目がちに答えた。
その様子に違和感を感じたダリウスはスティーブに尋ねた。
「何だか様子がおかしいですね…。ひょっとすると貴方も城に上がったアリアドネとまともに会話すらしていないのではありませんか?」
「な、何故そう思うっ?!」
「別に…ただの勘ですよ。でもその様子だと…やはりそのようですね。逆にアリアドネがメイドになってからのほうが彼女とあまり顔を合わせてもいないのでは?」
「…」
スティーブはダリウスの言葉に黙ってしまった。
「成程…図星、ということですね」
何処か小馬鹿にしたかのようにダリウスはクスリと笑った。
「う、うるさいっ!仕方ないだろう?!アリアドネはランベール様の2人の子供達の専属メイドに決まった途端…オズワルドの腹心である男が護衛騎士についてしまって、迂闊に近づけなくなってしまったんだからなっ!」
スティーブは吐き捨てるように言うと踵を返し、持ち場へと戻って行った。
「オズワルドだって…?まさか…」
その後姿を見届けながらダリウスは呟いた―。
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