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9-16 誤解の素
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「ロイ、もういいから下ろしてくれる?これくらい1人で歩けるから…」
「駄目だ。足首を捻挫しているのだから、1人で歩かないほうがいい」
今、ロイはアリアドネを抱きかかえてエルウィンの執務室を目指して歩いていた。
(こんな姿で執務室に姿を見せたらエルウィン様に何て思われるか分かったものではないわ…)
アリアドネの脳裏にゾーイに言われた言葉が蘇ってくる。
『一体…どんな手を使ってロイ様とエルウィン様を誘惑したのよ』
自分がロイとの仲を疑われていることに気付いた以上、抱きかかえられて執務室に連れて行かれるのだけは避けたかった。
「ねぇ、本当にお願いだから下ろしてくれる?ただでさえ、周囲の人達は私達のことを誤解しているのに」
「誤解?どんな誤解だ?」
ロイは本当に何も分かっていないのか、首を傾げる。
「そ、それは私とロイがその…恋仲だと思われていることよ」
「…」
するとロイは目を見開き、立ち止まると腕の中のアリアドネをじっと見つめた。
「な、何…?」
あまりにも凝視してくるので、たまらずにアリアドネは声を掛けた。
すると…。
「別に周りのことなんかどうだっていいだろう?言いたい者には好きに言わせておけばいいんだ」
それだけ言うと、再び大股で歩き始めた。
「ロイッ…!」
しかし、それ以上ロイは返事をすること無くアリアドネを抱きかかえたまま歩き続ける。
「はぁ~…」
ついにアリアドネは観念してため息をついた。
(そうよね…周囲がどう言おうと、私にとってロイは弟みたいな存在なのだから…気にしても仕方ないわね。いずれ噂も収まるだろうし…)
そしてアリアドネはおとなしくロイに抱きかかえられたまま、エルウィンの執務室へ向った―。
****
その頃、シュミットはエルウィンを見送ってから、執務室でずっと1人で仕事を続けていた。
「…よし、次はこの書類か…」
シュミットが書類に手を伸ばした時―。
コンコン
扉をノックする音が聞こえた。
「おや?誰だろう…?エルウィン様ならノックなどせずに入ってくるし…」
首を傾げながらシュミットは扉を開けに向った。
「どなたですか?」
シュミットは扉越しに声を掛けた。
『私です、リアです』
その言葉にシュミットは驚いた。
「え?アリアドネ様っ?!」
ガチャッ!
慌てて扉を開けたシュミットは更に驚いた。
「ええっ?!」
何と眼前にロイに抱きかかえられたアリアドネの姿があったからだ。
「こ、これは一体…?」
「このような格好で申し訳ございません…その、実は足首を怪我してしまって…それでロイがここまで私を運んでくれました」
アリアドネは恥ずかしそうに言った。
「えっ?!怪我を?!それで手当はされたのですかっ?!」
「はい、医務室で手当はしていただきました」
「そうですか…それは良かったです」
そしてシュミットはチラリとロイを見た。
「…」
ロイは一言も口を聞かず、黙ってアリアドネを抱きかかえている。
「と、とにかく中へお入り下さい」
シュミットはアリアドネを抱きかかえているロイに複雑な気持ちを抱きながら、執務室へ招き入れた―。
「駄目だ。足首を捻挫しているのだから、1人で歩かないほうがいい」
今、ロイはアリアドネを抱きかかえてエルウィンの執務室を目指して歩いていた。
(こんな姿で執務室に姿を見せたらエルウィン様に何て思われるか分かったものではないわ…)
アリアドネの脳裏にゾーイに言われた言葉が蘇ってくる。
『一体…どんな手を使ってロイ様とエルウィン様を誘惑したのよ』
自分がロイとの仲を疑われていることに気付いた以上、抱きかかえられて執務室に連れて行かれるのだけは避けたかった。
「ねぇ、本当にお願いだから下ろしてくれる?ただでさえ、周囲の人達は私達のことを誤解しているのに」
「誤解?どんな誤解だ?」
ロイは本当に何も分かっていないのか、首を傾げる。
「そ、それは私とロイがその…恋仲だと思われていることよ」
「…」
するとロイは目を見開き、立ち止まると腕の中のアリアドネをじっと見つめた。
「な、何…?」
あまりにも凝視してくるので、たまらずにアリアドネは声を掛けた。
すると…。
「別に周りのことなんかどうだっていいだろう?言いたい者には好きに言わせておけばいいんだ」
それだけ言うと、再び大股で歩き始めた。
「ロイッ…!」
しかし、それ以上ロイは返事をすること無くアリアドネを抱きかかえたまま歩き続ける。
「はぁ~…」
ついにアリアドネは観念してため息をついた。
(そうよね…周囲がどう言おうと、私にとってロイは弟みたいな存在なのだから…気にしても仕方ないわね。いずれ噂も収まるだろうし…)
そしてアリアドネはおとなしくロイに抱きかかえられたまま、エルウィンの執務室へ向った―。
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その頃、シュミットはエルウィンを見送ってから、執務室でずっと1人で仕事を続けていた。
「…よし、次はこの書類か…」
シュミットが書類に手を伸ばした時―。
コンコン
扉をノックする音が聞こえた。
「おや?誰だろう…?エルウィン様ならノックなどせずに入ってくるし…」
首を傾げながらシュミットは扉を開けに向った。
「どなたですか?」
シュミットは扉越しに声を掛けた。
『私です、リアです』
その言葉にシュミットは驚いた。
「え?アリアドネ様っ?!」
ガチャッ!
慌てて扉を開けたシュミットは更に驚いた。
「ええっ?!」
何と眼前にロイに抱きかかえられたアリアドネの姿があったからだ。
「こ、これは一体…?」
「このような格好で申し訳ございません…その、実は足首を怪我してしまって…それでロイがここまで私を運んでくれました」
アリアドネは恥ずかしそうに言った。
「えっ?!怪我を?!それで手当はされたのですかっ?!」
「はい、医務室で手当はしていただきました」
「そうですか…それは良かったです」
そしてシュミットはチラリとロイを見た。
「…」
ロイは一言も口を聞かず、黙ってアリアドネを抱きかかえている。
「と、とにかく中へお入り下さい」
シュミットはアリアドネを抱きかかえているロイに複雑な気持ちを抱きながら、執務室へ招き入れた―。
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