お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから

結城芙由奈@コミカライズ連載中

文字の大きさ
33 / 90

第3章 12 呼び出し

しおりを挟む
 翌朝――

殆ど眠れないまま、起床時間になった。
隣のベッドにいるリリスをそっと見ると、気持ちよさそうに眠っている。
その寝顔は、まるで天使のように美しい。

眠っているリリスを起こさないように、そっとベッドから起き上がると自分の部屋に戻る。
メイド服に着替えると、いつものように朝の仕事をするために部屋を出た。


……このときの私はまだ何も知らなかった。

真夜中の件が大問題に発展していたということに――


****

午前7時。

 リネン室でリリスの衣類やシーツ類を分類して、リリスの部屋に到着すると、部屋の扉をノックした。

――コンコン

「リリス様、お目覚めでしょうか? フローネです。失礼いたします」

声をかけて扉を開くと、既にリリスは服に着替えてソファに座っていた。

「あ! 起きていたらしたのですね? お召し替えの手伝いが出来ずに申し訳ございません」

するとリリスが私の方を向いた。

「フローネ。クロードが先程、部屋に来たのよ。私の父から電話が入って、急ぎの用事があるので大至急帰宅するようにとのことだったわ。もう、こちらに迎えの馬車をよこしているそうなの」

「え? そうだったのですか!? それはまた随分急なお話ですね」

もしかして、専属メイドの私もついていかなければならないのだろうか?

「あの……それでは私も……?」

「いいわ、父から1人で帰宅するように言われているの。多分、もう到着している頃だろうから、行くわ」

立ち上がるリリス。

「では、こちらのコートをお召下さい」

フックにかけてあるリリスのコートを着せてあげた。

「……ありがとう。ところで、フローネ……」

「は、はい……?」

リリスがじっと見つめてくる。すると、突然私の耳元に口を寄せると囁いてきた。

「勝手に私の元からいなくなったら……承知しないわよ」

「え……?」

その言葉に背筋がゾッとする。

「リ、リリス……様……?」

するとリリスは笑みを浮かべ、いつの間に準備したのか足元に置かれた小さなボストンバッグを指さした。

「このバッグを持ってエントランスまでついてきなさい」

「は、はい……」

リリスの言葉で震えている指先を無理に抑え込むと、彼女のボストンバッグを手にした――



****

 
「あ……」

思わず、口の中で小さな声が漏れてしまう。何故ならエントランスにはクリフと彼の両親が揃っていたからだ。
既に扉は大きく開かれ、迎えの馬車が停まっていた。

「リリス、気をつけて行っておいで」

クリフが優しい笑みを浮かべてリリスをそっと抱きしめた。

「ええ、行ってくるわ」

クリフの胸に顔を埋め、返事をするリリス。
その姿を見るだけで、私の胸は締め付けられる。
……私は馬鹿だ、こんな状況でも未だにクリフへの恋心を捨てきれずにいるなんて。

「リリス、今日は無理に帰ってくる必要はないよ。久しぶりの実家なのだから」

「ええ、そうよ。クリフは明日もここにいるから、遠慮しなくていいわよ」

おじ様とおば様が交互にリリスに声をかけてくる。

「ありがとうございます、お義父様。お義母様。では行ってまいります」

リリスはクリフの手を借りて、馬車に乗り込むと私に視線を移した。

「フローネ」

「は、はい」

リリスの次の言葉を待つも彼女はじっと私を見つめるだけで何も言わず、クリフとおじ様達に笑顔を向けた。

「では、行ってきます」

クリフが扉を閉めると、リリスを乗せた馬車は走り去って行った――




※ 後1話で鬱展開終わりです(次話、要注意です)
しおりを挟む
感想 381

あなたにおすすめの小説

あなたの片想いを聞いてしまった夜

柴田はつみ
恋愛
「『好きな人がいる』——その一言で、私の世界は音を失った。」 公爵令嬢リリアーヌの初恋は、隣家の若き公爵アレクシスだった。 政務や領地行事で顔を合わせるたび、言葉少なな彼の沈黙さえ、彼女には優しさに聞こえた。——毎日会える。それだけで十分幸せだと信じていた。 しかしある日、回廊の陰で聞いてしまう。 「好きな人がいる。……片想いなんだ」 名前は出ない。だから、リリアーヌの胸は残酷に結論を作る。自分ではないのだ、と。

国王陛下、私のことは忘れて幸せになって下さい。

ひかり芽衣
恋愛
同じ年で幼馴染のシュイルツとアンウェイは、小さい頃から将来は国王・王妃となり国を治め、国民の幸せを守り続ける誓いを立て教育を受けて来た。 即位後、穏やかな生活を送っていた2人だったが、婚姻5年が経っても子宝に恵まれなかった。 そこで、跡継ぎを作る為に側室を迎え入れることとなるが、この側室ができた人間だったのだ。 国の未来と皆の幸せを願い、王妃は身を引くことを決意する。 ⭐︎2人の恋の行く末をどうぞ一緒に見守って下さいませ⭐︎ ※初執筆&投稿で拙い点があるとは思いますが頑張ります!

お認めください、あなたは彼に選ばれなかったのです

・めぐめぐ・
恋愛
騎士である夫アルバートは、幼馴染みであり上官であるレナータにいつも呼び出され、妻であるナディアはあまり夫婦の時間がとれていなかった。 さらにレナータは、王命で結婚したナディアとアルバートを可哀想だと言い、自分と夫がどれだけ一緒にいたか、ナディアの知らない小さい頃の彼を知っているかなどを自慢げに話してくる。 しかしナディアは全く気にしていなかった。 何故なら、どれだけアルバートがレナータに呼び出されても、必ず彼はナディアの元に戻ってくるのだから―― 偽物サバサバ女が、ちょっと天然な本物のサバサバ女にやられる話。 ※頭からっぽで ※思いつきで書き始めたので、つたない設定等はご容赦ください。 ※夫婦仲は良いです ※私がイメージするサバ女子です(笑) ※第18回恋愛小説大賞で奨励賞頂きました! 応援いただいた皆さま、お読みいただいた皆さま、ありがとうございました♪

その結婚は、白紙にしましょう

香月まと
恋愛
リュミエール王国が姫、ミレナシア。 彼女はずっとずっと、王国騎士団の若き団長、カインのことを想っていた。 念願叶って結婚の話が決定した、その夕方のこと。 浮かれる姫を前にして、カインの口から出た言葉は「白い結婚にとさせて頂きたい」 身分とか立場とか何とか話しているが、姫は急速にその声が遠くなっていくのを感じる。 けれど、他でもない憧れの人からの嘆願だ。姫はにっこりと笑った。 「分かりました。その提案を、受け入れ──」 全然受け入れられませんけど!? 形だけの結婚を了承しつつも、心で号泣してる姫。 武骨で不器用な王国騎士団長。 二人を中心に巻き起こった、割と短い期間のお話。

好きでした、婚約破棄を受け入れます

たぬきち25番
恋愛
シャルロッテ子爵令嬢には、幼い頃から愛し合っている婚約者がいた。優しくて自分を大切にしてくれる婚約者のハンス。彼と結婚できる幸せな未来を、心待ちにして努力していた。ところがそんな未来に暗雲が立ち込める。永遠の愛を信じて、傷つき、涙するシャルロッテの運命はいかに……? ※十章を改稿しました。エンディングが変わりました。

もう二度と、あなたの妻にはなりたくありません~死に戻った嫌われ令嬢は幸せになりたい~

桜百合
恋愛
旧題:もう二度と、あなたの妻にはなりたくありません〜死に戻りの人生は別の誰かと〜 ★第18回恋愛小説大賞で大賞を受賞しました。応援・投票してくださり、本当にありがとうございました! 10/24にレジーナブックス様より書籍が発売されました。 現在コミカライズも進行中です。 「もしも人生をやり直せるのなら……もう二度と、あなたの妻にはなりたくありません」 コルドー公爵夫妻であるフローラとエドガーは、大恋愛の末に結ばれた相思相愛の二人であった。 しかしナターシャという子爵令嬢が現れた途端にエドガーは彼女を愛人として迎え、フローラの方には見向きもしなくなってしまう。 愛を失った人生を悲観したフローラは、ナターシャに毒を飲ませようとするが、逆に自分が毒を盛られて命を落とすことに。 だが死んだはずのフローラが目を覚ますとそこは実家の侯爵家。 どうやらエドガーと知り合う前に死に戻ったらしい。 もう二度とあのような辛い思いはしたくないフローラは、一度目の人生の失敗を生かしてエドガーとの結婚を避けようとする。 ※完結したので感想欄を開けてます(お返事はゆっくりになるかもです…!) 独自の世界観ですので、設定など大目に見ていただけると助かります。 ※誤字脱字報告もありがとうございます! こちらでまとめてのお礼とさせていただきます。

あなたが決めたことよ

アーエル
恋愛
その日は私の誕生日パーティーの三日前のことでした。 前触れもなく「婚約の話は無かったことにしよう」と言われたのです。 ‪✰他社でも公開

あなたへの愛を捨てた日

柴田はつみ
恋愛
公爵夫人エステルは、冷徹な夫レオニスを心から愛していた。彼の好みを調べ、帰宅を待ちわび、献身的に尽くす毎日。 しかし、ある夜会の回廊で、エステルは残酷な真実を知る。 レオニスが、未亡人クラリスの手を取り囁いていたのだ。 「君のような(自立した)女性が、私の隣にいるべきだった」 エステルは悟る。自分の愛は彼にとって「重荷」であり、自分という人間は彼にとって「不足」だったのだと。その瞬間、彼女の中で何かが音を立てて砕け散る。

処理中です...