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第13話 ついに会えた許婚
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「う~ん……参ったな。こんなにもシェリルに会うことが難しいとは……何だか永久に会えない気がしてきたぞ」
中庭の茂みからシェリルの部屋を覗き見しながら思わずポツリと言葉が漏れてしまった。
すると…。
「ローレンス様!何て情けないことを仰っているのですか!いいですか?そんなこと思っても口にするものではありませんよ?!言霊と言う言葉をご存知ないのですか?!」
何故かトニーが顔面蒼白になって僕の襟首を掴んできた。
「う、うわっ!な、何だよ!トニー!じょ、冗談に決まっているだろう?!」
「そうですか……冗談なのですね?なら構いませんが……」
パッと手を離し、溜息をつくトニー。
「シェリル様は何処かへ出掛けているかもしれませんから、今日は帰りましょうか?また出直しましょう」
「え?!もう諦めて帰るのか?!」
既にシェリルの屋敷に足を運ぶのは今日で2回目なのに?!
「仕方がないではありませんか!私はこの後、お屋敷に戻ってやらなければならない仕事が残っているのですから!」
「え?仕事……?仕事だって?!」
「ええ、そうですよ。私はローレンス様の専属フットマンではありますが、お屋敷の仕事もしなくてはなりませんからね。今日は午後3時半からお庭の芝を整える仕事が待っているんですよ」
ペラペラと喋るトニー。
だけど……。
「トニー。つまり、仕事が残っているから帰ると言うんだな?」
「ええ、そうですよ」
「だけど、その仕事には僕は関係ないよな?」
「確かにそうなりますね?」
「だったらトニーが1人で屋敷に帰ればいいだろう?!僕は帰らないからなっ!シェリルに会うまではこの屋敷を離れないと決めたんだよっ!」
又出直すなんて冗談じゃない。
それにシェリルの体調が気になって仕方が無いのに、このまま帰れるものか。
「ローレンス様、子供みたいに駄々をこねないで下さい。ほら、一緒に戻りましょう。又出直せば良いのですから」
妙に自分と一緒に帰ることを強要?してくるトニー。
さては……。
「トニー」
「はい、何でしょう?」
「お前、ひょっとして興味本位で僕についてきているだろう?」
「え?!」
トニーの方がビクリと跳ねる。
「ははぁん……やはりな……」
やっぱりそうだったんだ。
トニーは口では僕に協力すると言っているが、全て自分の好奇心を満たす為。
冗談じゃない!
何故主の僕が使用人の欲求を満たす為に何故、何度も出直さなければならないんだ?!
「もういい!お前は帰れよっ!僕は子供じゃないっ!1人で何とかしてみせる!」
そしてトニーに背を向けると、ずんずん歩き始めた。
「ロ、ローレンス様っ!どちらへ行かれるのですか!」
「そんなの知るかっ!お前はもう帰れよっ!」
僕は振り返ることなく、呆然としているトニーをその場に残し……宛てもなく足を進めた。
「あれ?いつの間にここへ来てしまったのだろう?」
気付けば僕は小さな池のあるガゼボが置かれた庭にやってきていた。
「参ったな……。無意識のうちに入り込んでしまったみたいだ…」
思わず、フウとため息をついた時‥‥ガゼボに座る1人の人物を発見した。
「あ‥‥あれは……シェリルじゃないか!」
白い帽子をかぶり、ぼんやりと池を見つめているシェリル。
やった!ついに…シェリルに会えたぞっ!
僕はガゼボに駆け寄り、彼女の名を呼んだ――。
中庭の茂みからシェリルの部屋を覗き見しながら思わずポツリと言葉が漏れてしまった。
すると…。
「ローレンス様!何て情けないことを仰っているのですか!いいですか?そんなこと思っても口にするものではありませんよ?!言霊と言う言葉をご存知ないのですか?!」
何故かトニーが顔面蒼白になって僕の襟首を掴んできた。
「う、うわっ!な、何だよ!トニー!じょ、冗談に決まっているだろう?!」
「そうですか……冗談なのですね?なら構いませんが……」
パッと手を離し、溜息をつくトニー。
「シェリル様は何処かへ出掛けているかもしれませんから、今日は帰りましょうか?また出直しましょう」
「え?!もう諦めて帰るのか?!」
既にシェリルの屋敷に足を運ぶのは今日で2回目なのに?!
「仕方がないではありませんか!私はこの後、お屋敷に戻ってやらなければならない仕事が残っているのですから!」
「え?仕事……?仕事だって?!」
「ええ、そうですよ。私はローレンス様の専属フットマンではありますが、お屋敷の仕事もしなくてはなりませんからね。今日は午後3時半からお庭の芝を整える仕事が待っているんですよ」
ペラペラと喋るトニー。
だけど……。
「トニー。つまり、仕事が残っているから帰ると言うんだな?」
「ええ、そうですよ」
「だけど、その仕事には僕は関係ないよな?」
「確かにそうなりますね?」
「だったらトニーが1人で屋敷に帰ればいいだろう?!僕は帰らないからなっ!シェリルに会うまではこの屋敷を離れないと決めたんだよっ!」
又出直すなんて冗談じゃない。
それにシェリルの体調が気になって仕方が無いのに、このまま帰れるものか。
「ローレンス様、子供みたいに駄々をこねないで下さい。ほら、一緒に戻りましょう。又出直せば良いのですから」
妙に自分と一緒に帰ることを強要?してくるトニー。
さては……。
「トニー」
「はい、何でしょう?」
「お前、ひょっとして興味本位で僕についてきているだろう?」
「え?!」
トニーの方がビクリと跳ねる。
「ははぁん……やはりな……」
やっぱりそうだったんだ。
トニーは口では僕に協力すると言っているが、全て自分の好奇心を満たす為。
冗談じゃない!
何故主の僕が使用人の欲求を満たす為に何故、何度も出直さなければならないんだ?!
「もういい!お前は帰れよっ!僕は子供じゃないっ!1人で何とかしてみせる!」
そしてトニーに背を向けると、ずんずん歩き始めた。
「ロ、ローレンス様っ!どちらへ行かれるのですか!」
「そんなの知るかっ!お前はもう帰れよっ!」
僕は振り返ることなく、呆然としているトニーをその場に残し……宛てもなく足を進めた。
「あれ?いつの間にここへ来てしまったのだろう?」
気付けば僕は小さな池のあるガゼボが置かれた庭にやってきていた。
「参ったな……。無意識のうちに入り込んでしまったみたいだ…」
思わず、フウとため息をついた時‥‥ガゼボに座る1人の人物を発見した。
「あ‥‥あれは……シェリルじゃないか!」
白い帽子をかぶり、ぼんやりと池を見つめているシェリル。
やった!ついに…シェリルに会えたぞっ!
僕はガゼボに駆け寄り、彼女の名を呼んだ――。
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